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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
2章ですよ 嬉し恥ずかし同棲生活です。
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14話 ハードルが高いお守りからの中年行商人

今回も視点がコロコロ変わります。 読み難かったらすみません。

どうもこんにちは、木です。


 ただいま私は自分に穴を空けてます。

 蔓の先を硬くして、幹の辺りを、こう……グリグリっと。


 いえ、当然好きでやってるワケじゃありませんよ? ぺルルちゃんが妖精界のお土産に持って来てくれたお守りを使うためです。

 いや~、驚きました。 綺麗な宝石みたいな物を持ってきたと思ったら、


 「お守りよ。 さあ、体に埋め込んで」


 とか言われた時には、自分の耳を疑いましたよ?

 まあ、私に耳はありませんが。


 自分で自分をグリグリするのも何かいやなので、ぺルルちゃんに頼もうとしたんですけど、ぺルルちゃんはちくわちゃんを指差して、


 「バカ言わないでよ! あの子の目の前で貴方に穴を空けたりしたら、今度こそ殺されるわよ!?」


 って言って断られたので、しかたなく自分でグリグリしてます。

 ちくわちゃんは涙目でプルプルしながら見ていますね。

 あ~、そんな泣きそうにならなくても、この体ならそれほど痛くないから平気ですよ。

 前世で言えば、健康診断の採血くらいの痛みですかね? まあまあ痛いけど我慢できますよ…… っと。 ふう、終わりました。


 でも、体内に埋め込んで使うとは、妖精界のお守りはハードルが高いですね。


 「kgP4ゆ3ヨ!」


 涙目のちくわちゃんが傷痕をナデナデしてくれます。 心配してくれるんですか? ちくわちゃんは優しいですねー。

 私も蔓でちくわちゃんの頭をナデナデしました。


 ナデナデ  ナデナデ  ナデナデ  ナデナデ


 「……ねえ、貴方たち、いつまでやってるのよ?」


 ぺルルちゃんが私を冷たいジト目で見つめていました。

 その目で見るのはやめてください。 そのうち気持ち良くなりそうです。



 「これでお守りの方はいいわね、あとは、貴方がディアモン様の協力者になるって話の方だけど……正直な話、妖精界の勝手な都合ではあるんだけど、できれば……」


 ディアエモン・キョウリョク・OK・カマヘン・マカシトキー


「え!? そんなあっさりと、いいの!?」


 うーん、そんな驚くほどの事でもないと思うんですけどね?

 名目だけでもディアえもんさんの仲間でいれば、これからもぺルルちゃんが側にいてくれるんですよね? 下手に関係が(こじ)れてぺルルちゃんが呼び戻されたら嫌ですし。


 ディアエモン・キョウリョク・ぺルル・ズット・イッショ


 「うっ……そ、そうね。 貴方がディアモン様に協力するなら、私は……その、一緒にいるわよ? ほら、仕事だしね?」


 照れて真っ赤になったぺルルちゃんも可愛いですね。

 最近ぺルルちゃんの配合比率がわかってきました。


 しっかりした良識派と元気な食いしん坊のブレンドにツンデレで香り付けした絶妙な配合。 甘味と苦味が丁度いいバランスで、後味もスッキリ。 という感じの性格ですねー。


 ぺルルちゃんの絶妙なブレンドを見てホッコリしていると、足音が聞こえてきました。

 あれは…… おお! セクシーさん! そう言えば近くで見るのは初めてですね。

 紫の長い髪にダイナマイトボディ、プックリ厚めの唇の下にあるホクロ!

 まさにセクシー、と言う感じですね~。 ヒモみたいな水着が似合いそうです!


 ちなみに前世の私はスクール水着の着こなしには絶対の自信がありました。

 おっと、今は関係の無い話でしたね。



 セクシーさんが、ちくわちゃんに何か話しかけて、それでもってちくわちゃんが私の方を見て、


 「レ@r3wLやt?」


 村の方を指差して、何かを言いました。

 多分、『えへへ♪ ねえ、お姉ちゃん、ちょっと村の方に行ってきてい~い?』 みたいな事を言ってると思います。

 うん、私も言葉のニュアンスくらいはなんとなく判るようになってきましたね。


 行ってらっしゃーい、と枝を振ってあげると、ちくわちゃんはニコっと笑って、また何か言った後にセクシーさんと一緒に歩いて行きました。

 多分『ありがとう! お姉ちゃん大好き!』とか言っているハズですね、うん。


 横を見るとぺルルちゃんが冷たいジト目で見つめていました。

 その目で見るのはやめてください。 そのうち気持ち良くなりそうです。




ーーーーー フリージア視点 




 「ねえ、また行商が来てるわよ。 一緒に見に行かないかしら?」


 ローズさん、わざわざ呼びに来てくれたんだ。

 むぅ……行商かぁ。 見たいけど、巫女が精霊様から離れるのも良くないよね……。


 でも、きっと精霊様なら、お願いしたら行かせてくれると思う。

 ……ちょっとお願いしてみようかな?


 「あの、行商人が来てるって……見に行っていい?」


 すると精霊様は、行ってらっしゃい、って言うみたいに枝を振ってくれた。

 うん、やっぱりいいって言ってくれた。 でも、巫女ってこんなに自由に行動していいのかな? でも、精霊様がいいって言うならいいんだよね?


 「行ってきますね、……精霊様に何か買ってきますから。 あと妖精にも」






 「ウフフ、あれから妖精ちゃんとは仲良くなれた?」


 ローズさんが聞いてきた。 妖精と仲良く…… なれたのかな? どうだろう?


 「むぅ…… わかんない。 一応、握手はしたけど…… 仲、良さそうに見えてる?」


 「わからないわ。だって、私には妖精ちゃんは見えてないもの。 少し光ってる気がするだけ」


 え? 見えてない?


 「ほとんどの妖精は、普段姿を隠しているのよ。 見破れるのは、その妖精より魔力が大きい人だけ。 私で見えないなら、この村ではフリージアちゃんにしか見えてないはずよ。 だから、妖精ちゃんと友達になれるのは貴方だけ。 ……仲良くしてあげなさい」


 そう言ったローズさんの顔は優しくて、どこか寂しそうだった。

 もしかしたら…… ローズさんは妖精と友達になりたかったのかな?



 「あ、ほら、あそこに居るわ。 フフッ、子どもたちはお菓子ばかり見てるわね」


 水車小屋の手前の切り株に座って、若い行商人が品物を広げていて、そこから少し離れた所には中年の行商人が休んでいる。

 あ、若い人の方がこっちに気づいた。


 「やあ、はじめてまして。 親子ですか? お母さんも娘さんも美人ですねー!」

「一度だけ」    「へっ?」


 「()()()()、やり直しを認めてあげるわ。 ……さあ、挨拶からやり直してごらんなさい?」


 「やっ……やあ、はじめまして。 し、姉妹、ですか? お姉様も妹様も、お若くてお綺麗ですね~……」


 「ウフフッ、まあ、お上手な商人さんねぇ。 お安くして下さるかしら?」

 「そっ……それはもう!」


 むぅ……どうしよう、ローズさんが怖い。



 「じゃあ、見せて貰うわね?   ……へぇ、その歳なら、まだ駆け出しかと思ったけど、品揃えは悪くないわね?」


 「オイラは駆け出しですが、鼻は利くんです。 儲け話を見つけるカンには自信があるんです」


 若い行商人は、そう言って笑ってからまた話し始めた。 


「ほら、この村にもありますよね? 儲け話。 いやー、さっき少年に頂いた果物は、とても美味しかったですね。玩具と交換して貰ったんですけど、いい取引でした」


 えっ……!? 精霊様の実を玩具と交換した!? 誰っ…… 誰がそんな事を!?


 私は、そんな馬鹿な事をした誰かに腹を立てた。 でも、その怒りはすぐに終わった。


 ……もっと腹の立つ事があったから。


 「私の兄の店には優れた接ぎ木のノウハウがあるんですよ。

 この村に面白い木があるでしょう? その枝を、一本でも貰えれば新しい商売ができるんです。 どうです? 木の枝一本でいいんで、売って貰えませんかね?」




  何を、 言ったの?



 ……今! この男は!  何 を 売 れ と 言 っ た !?



 魔力が感情に任せて黒く渦を巻く。 止まらない、止める気もない。

 私は、目の前の()()に向けて、魔力を……


 「ダメよ! やめなさい! それをやれば間違いなく殺すわ!」


 ? それの何がいけないの?

 むぅ…… ローズさんが変なことを言っている。 よく意味がわかんない。


 まあいいや、終わってから考えればいいよね?



 「っ馬鹿ヤロウがっ!!」


 突然、中年の方の行商人が、あの男を本気で蹴り飛ばした。


 「すまない! この若いのがふざけた事を言ったようだ。 コイツは、たまたま道で一緒になった他人だが、それでも同じ商人として代わりに頭を下げさせて貰う。 すまなかった!」


 むぅ…… 魔法を撃ち込むタイミングを失っちゃった。


 「商人が金の事を考えるのは当然だが、誇りや魂に関わるものは金だけでどうこうする話じゃない。 多分この村にとって、その木の話ってのはそう言う事なんだろ?」


 そう言って頭を下げる中年行商人に向かって、ローズさんが話しかけた。


 「貴方はそっちの男より話がわかるみたいね。

 雰囲気も、ただの行商人にしては大物っぽいわ。 ……何者かしら?」


 「俺は商人ギルド幹部のアウグスト。 この村の調査に来た者だ」


 「商人ギルドが調査? 冒険者ギルドではなくて?」


 「辺境での取引には、旨い儲け話もあれば触れると不味い逆鱗もある。 ここみたいな新しい村はまだ情報が無いから、今後の交渉のためにも早いうちに儲け話と逆鱗を調べておく必要があるのさ。 ……まあ、逆鱗については、たった今そこの馬鹿が触れちまったみたいだがな」


 「ああ、そういうことね。 じゃあ貴方を長老の所へ連れていくわ。 情報収集の許可については、自分で長老に頼んで下さる?」


 よくわからないうちに長老の所へ行くことになってた。

 さっきのふざけた男は逃げたみたいだけど、まあ二度と村に来ないならいいや。






 ……そして私たちは、長老と行商人を連れて、精霊様の前に来ていた。


 村の事を訊かれた長老が、気持ちよさそうに色んな事をペラペラと話して、

 結局、精霊様の事まで話しちゃったのだ。


 精霊様が兄さんを救ってくれた話。

 オークの襲撃の時には直接的に援護してくれたって話も。

 珍しくて美味しい果物を村のみんなに配ってくれた話まで。


 むぅ…… 確かに、気持ちはわかる。

 今まで身内でしか話すこともなかった精霊様の話を、外の人間が興味深そうに聞いてくれたら、それは喋りたくなっちゃうよね。

 でも、長老が率先してペラペラ話すのって危機感が足りなくないかな?

 しかも、こうやって精霊様のそばまで通すなんて。



 まあいいか。 精霊様に変なことをしたら、その時は()()()()()()貰えばいいんだし。



ーーーーー 商人ギルド幹部 アウグスト視点




 なんてこった、コイツは予想外だ。


 俺は、ここの村人が『精霊様』と呼んでいる木の前に立っている。


 長い伝統を持つ少数民族などは、魔力を含む実や花をつける木を御神体として祀る事も少なくない。

 だから、この村の『精霊様』も、そう言うものだと思っていたのだが……


 一目でその不思議な存在感と、何とも言えない神々しさを感じた。 だが本当に驚かされたのは、その見た目に…… ではなかった。


 ワサワサ


 「で、今後、目先の欲に走る二流商人や、強欲な権力者から村を守る意味でも、調査に協力を……」


 ワサワサ


 この木は、俺が話しかけると相づちを打つように動くのだ。

 それは魔法や細工で動いている感じではなくて、仕草の端々(はしばし)から知恵を持つ生物の意思を、明確に感じる動きだ。


 なるほど……『精霊様』か、まさか本物に出会うとはな。


 「商人ギルドの名と俺自身の商人の誇りにかけて、絶対に他に流出はさせない! だから、あんたの実とやらを調べさせてくれないか!? これは、今後の村のためにもなる事なんだ!」


 「……本当に、精霊様の実を、お金儲けのために売らないと誓えるの?」


 さっきの小さい女の子が問いかけてきた。 くっ……この少女はなんだ? 昔に何度か会った、闇ギルドの戦闘員や、ヤバい教団の狂信者とかの雰囲気を思い出させやがる!!  この子は、絶対に怒らせてはダメだ!


 俺が内心で気圧(けお)されていると、『精霊様』が動き出し、それを見た少女が俺への威圧を止めてくれた。

 助かった。  正直、変な汗が止まらなかった。



 『精霊様』は、枝を俺に向かって伸ばすと、光と共に実を生み出した。

 それはオレンジを小さくしたような実で、長年商人をやっている俺も見た記憶が無い果物だ。


 それは、狙ったように俺の手の内に転がり落ちてきた。

 いやっ…… 俺としては嬉しいんだが、こんなにアッサリ貰っていいのか!?



 木にするな、と言うようにワサワサ枝を振る『精霊様』。

 その仕草は『裏切らないだろう?』と俺を信用しているようにも、

 『ここで裏切るならその程度の人物だ』と試されているようにも感じた。


 始めから裏切る気など無かった。 だが、この態度を見てしまうと、もはや裏切る気持ちなど欠片も無くなった。


 「協力に感謝しますぜ、精霊様。 じゃあこれを調べるためにも俺は一度街に帰らせて貰う。 ……悪いようにはしないから信用してくれ」





 あれから数日後。 俺はギルド内の自室で、研究結果が書かれた資料に目を通していた。


 味は超一流で栄養価も高い。 おまけに魔力を多く含んでいて、魔法薬の材料としても期待が持てるか。 すげぇ果物だな。


 「あの様子だと、簡単に取引させてはくれないだろうが、友好関係は築いておくべきだな」


 机の上のベルを鳴らして秘書を呼び出して伝える。


 「例の村へ行く商人は、できるだけ俺の側の人間で固めて、ほかの組織が手出ししにくい状況にしとけ。 権力者相手なら俺の名前を出してもいい」


 その言葉に秘書が顔色を変えた。


 「それは! ……商人ギルド北方支部のマスター権限も全て使う、という事ですか?」


 「おう、勿論だ。 ああ、それと俺も一人の行商人として定期的にあの村へ行く事にしたぞ」


 「王族にもコネがある大商人が今さら行商人ですか!? なぜです!?」


 何故かって? 俺は無意識にニヤリと挑戦的な笑みを浮かべた。


 「久しぶりにギルドマスターじゃあ無い、この俺という個人の商才を認めさせたい相手ができたんだよ」



 『精霊様』! 俺があんたの最高のビジネスパートナーになって見せるぜ!

ちくわちゃんが時々ヤバい気配を出してますが、主人公は気づいてません。

主人公からは、純粋で仔犬っぽい天使な妹キャラに見えてます。

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