表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
2章ですよ 嬉し恥ずかし同棲生活です。
23/151

12話 悪質リフォームからの光るリンゴの真実

書きたいエピソードは色々あるのに、それを話の中に綺麗に盛り込むのが難しいですね。

どうもこんにちは、木です。


 今日は、朝から村の皆さんがやって来て、ちくわハウスの補強をしています。

 まだ建てたばかりなのにリフォームをするんですか?

 確かに少し手抜き工事っぽいですかね? という完成度の部分もありましたけど、こんなすぐにリフォームするくらいなら、最初から百人乗っても大丈夫なくらい頑丈に建てるべきでは? という疑問がわいたので、ぺルルちゃんに質問してみます。


 チクワハウス・デキタテ・ホヤホヤ・タクミ・is・ナンデヤネン。


 「え? タクミって匠? なに? 建て直しのこと……かしら? つまり、まだ新しい家を建て直すのはなんで? て事でいいの?」

 正解です。 しかし、ぺルルちゃんって理解力高いですねー。


 「この世界の流儀は(うと)いから、あくまで私の想像だけど、多分この家とか祭壇とかって、貴方を(まつ)るものでしょ? だから、建てたときも、人が住む家として建てたんじゃなくて、儀式の中の流れとして『建物を建てるという行為』が必要だったとか?

 だから実用性を後回しで建てて、後で調整する形にしたとかじゃないかしら?」


 おお、信憑性は不明ですが、なんかそれっぽいです。


 ぺルル・カシコイ! と褒めると、ぺルルちゃんも満更でもない感じで、

 「まあ、妖精も場所によっては祀られる側の立場だからね」


 と、ややドヤ顔で言いました。 あ、やっぱり妖精ってそうなんですか。



 それからも、4人体制で交代しながら建築作業は続いて、夕方には、ちくわハウスは、立派にリフォームされました!


 なんと言うことでしょう。

 ベニヤ板のような粗末な木材と丸太で組まれただけの飾り気のなかった壁は、石膏のような物で補強された上に色のついた小石を張りつける事でカラフルな壁に早変わり。


 何人かが壁に軽く張り手をして強度を確認していますが、びくともしません。

 おお、丈夫に出来ていますね! いい仕事です!


 ん? そこにマッスルさんがやって来て…… あの…… マッスルさん?

 ……あぁ~…… マッスルさんのマッスル張り手が直撃して、壁が崩落しました。



 なんと言うことでしょう。

 石膏と小石でカラフルに生まれ変わったばかりの壁が、無惨な瓦礫に早変わり。

 匠(笑)の脳筋さが光る大胆な悪質リフォームです。


 あ、ちくわちゃんがマッスルさんの足を蹴っています。 まあ家の壁が強制的に大胆リフォームされたら腹も立つでしょう。


 と言うか、今は夕方ですから夜までに修理は間に合いませんよね?

 ちくわちゃんは誰かの家に泊まる事になるという事でしょうか?

 村には、前に見たセクシーさんのように女性もいるので、泊まる所はあるでしょうけど…… ですが…… もしも……


 私の頭に浮かんだのは、宿命のライバル・ぽっちゃり係長さん。

 ちくわちゃんが、ぽっちゃり係長さんの家にお泊まりする映像が思い浮かびます。


 おっ……お姉ちゃんは許しませんよー!!?


 あんなに可愛い子から目を放す訳にはいきません!

 何とかちくわちゃんを私の目の届く範囲に留めなくては!


 う~ん、 あっ! 思いつきましたけど、その前に確かめる事がありますね。


 ぺルル・イマ・キセツ・アツイ・サムイ・ドッチヤネン?


 「え? 今は夏の終わりの方だから暖かいけど…… 自分でわからないの? なんか植物って季節に敏感そうなイメージがあったんだけど?」


 あ~、私は花も実も自分の意思で創れるので、季節感とは縁が無いと思います。

 そんな事より、今の気温が重要です。 ……そうですか、今は暖かいんですよね? ふむふむ、それは好都合です。

 暖かいなら、ちくわちゃんが風邪を引かなくて済みますね。


 では始めましょう。 蔓を伸ばして、蔓を編み込んで、編み込んで……。

 巻き巻きして、ひ~て、ひ~て、トントントン♪

 ハンモックの完成です! あっ、中に葉っぱも敷いておきましょうか。

 ワサワサっと。 これでバッチリですね。


 やっほー! ちくわちゃ~ん、ちょっと来てくださ~い。

 私は蔓でちくわちゃんの肩をツンツンしてから、クイッ、クイッ、と動かして、ちくわちゃんに近くに来てもらいます。 ハイ、かもーん♪ かもーん♪


 パタパタと走って来たちくわちゃんは、ハンモックを見て不思議そうにしていましたが、少しして、 あっ! って感じで何かに気づいた顔をしました。

 ……なのに、登って来ません。


 そう言えば、ちくわちゃんって、いつも遠慮なく飛びついて来るわりに、上に登っては来ません。 彼女なりに、越えないボーダーラインとかを決めてるのかもしれませんね。


 私、個人としては、ちくわちゃんなら枝に洗濯物を干されようが、枝を使って鉄棒競技にトライされようがウェルカムなんですがね~。


 どうやらちくわちゃんは自分から登りそうにないので、蔓で、うにょーんと持ち上げてハンモックに乗せてあげました。


 おおぅ…… 自分から登るのは遠慮するわりに、私が乗せてあげるとアグレッシブになりますね~。 ハンモックに乗ったちくわちゃんは、楽しそうにハンモックを揺らしています。


 なんか仔犬がはしゃいでるみたいで可愛いですねー、っと見ていると…… 何やら視線を感じますね?


 「ねえ……そのハンモック、私の分も作ってよ」


 あ~、ぺルルちゃんは勝手に私の葉っぱに潜り込んで寝たりしてるんで、今さらかと思ったんですけど…… まあ、たしかに不平等は良くないですね。


 私はぺルルちゃんのために、小さいハンモックを追加で作りました。

 ……サイズ的にハンモックというより、みかんが入ってるネットっぽいですね。 折角嬉しそうにしてるぺルルちゃんが、複雑な気分になりそうなので言いませんが。


 ふと、ちくわハウスの方を見ると、我がライバル・係長さんがこっちを見て一度、微笑んでからクルリと後ろを向いて去って行きました。その去り際は、

 『フフフッ……今日はその子たちの笑顔に免じて退いてあげるよ』


 と言う王者の余裕が透けて見えます。 やはり手強い。



 ……ちなみにマッスルさんは、ちくわハウス破壊の責任を取ってか、1人で瓦礫の撤去作業をしていました。



 ーーーー



 朝が来ました。

 二人はハンモックを揺らして遊んでいたんですけど、そのまま疲れて寝てしまったようです。


 二人とも寝顔が可愛いですね。 本当なら目覚めに何かスッキリする果物でも食べさせてあげたいんですけど、まだ私は自分の実の安全性に不信感があるので気軽に食べさせてあげられません。

 うむむ…… 歯がゆい。


 「うぅ~ん……おはよ」


 あ、ぺルルちゃんが起きましたね。


 「あ~、目覚めに何かスッキリする果物でも食べたいわ…… ねえ、貴方は食べれる実は創れないの?」


 おや?、見事に私が1分前に考えてた事を言いましたね…… 食べさせたい気持ちはやまやまですが……。


 チクワ・クダモノ・マルカジリ・カラダ・ヒカル・トイレ・マッハGO!


 「えっと、前にこの子が貴方の実を食べた時に体が光って猛スピードでトイレに走った……てこと?  ん? 食べて体が光る?」



 ぺルルちゃんはいかにも、何か考えています! と言う表情で、寝ているちくわちゃんを眺めています。 うんうん、可愛いからつい見てしまう気持ちはわかりますよ。


 「ねえ、この子の魔力って、年齢のわりに大き過ぎると思ったんだけど、貴方の実を食べたからじゃないの? 調べてみるから、ちょっと創ってみてくれる? この子のあげた実と…… あと、普通の果物も1つ」


 あ、確かにぺルルちゃんに調べて貰うという手がありましたね?

 では、お言葉に甘えて品質調査をお願いしまーす。


 まずは普通のリンゴを作ります、これは簡単ですね。 ほい! 完成でーす。

 で、次は問題の、光る金のリンゴですね。 これは気合いを入れて…… ふぬぬっ! ソイヤ!


 そして完成した光るリンゴ。 う~ん、前にちくわちゃんに食べさせたやつの方が、ゴージャスでしたけど、まあ誤差の範囲としましょう。


 はい、ご注文の『季節のリンゴ2種盛り』お持ちしました。 ご注文は以上でよろしいでしょうか? ごゆっくりどうぞー。


 ぺルルちゃんは顔に変な汗を浮かべて、私を睨んでいます。

 おや? なにか問題が?


 「こっちの普通のリンゴは大丈夫よ。 でも、そっちの光るやつは、もう二度と創らないで」


 あ、やっぱり強力な下剤みたいな成分でもありますか? なんて軽く思っていた私の(とぼ)けた考えはぺルルちゃんの次のセリフで吹き飛びました。


 「それがこの世界でどういう扱いかは知らないけど…… ()()()()暴力的な手段を使ってでも手に入れたいくらいの価値があるはずよ、それがこんな小さな村で手に入ると知られたら……わかるでしょ?」



 わ……私は、そんなものを、ちくわちゃんに食べさせた……?



 「何を考えてるか想像できるけど、その子は、多分それほど問題にならないわ」


 ちくわちゃんに視線をやったぺルルちゃんがそう言いました。  本当に? 本当に問題無いんですか?


 「それは食べた者の魔力と肉体を強化して寿命も伸ばすって、とんでもない物だけどエルフなら強くて寿命が長い個体も居るから、この子も凄い天才児くらいの認識で済むハズよ。 でも、普通の人間が食べたら…… 『英雄』か『化け物』のどちらかの名で呼ばれる事になるわね」


 それを聞いて私は、この能力を封印する事を決めました。


 「まあ、普通のリンゴの方は食べても問題無いから…… ってナニコレ美味しい!?」


 何気ない仕草で普通のリンゴにかぶりついたぺルルちゃんが叫びました。


 「ねえ、光るリンゴは絶対創っちゃダメだけど、普通の果物は創ってくれない? 想像以上に美味しいわ! お願い!」


 ……ぺルルちゃんの要望で私の能力の封印は早くも解かれました……

 あの…… 珍しく結構シリアスに決意したつもりだったんですけど。



 普通のリンゴのほうを食べきったぺルルちゃんは(この小さな体のどこに入ってるんでしょう?)

 光るリンゴを担いで、「ディアモン様に報告して来る」と言って、ピカッと光って消えました。 おお、あれが噂の転移魔法ですか。


 ……ぺルルちゃんは頼りになりますね~。 ちょっとお姉ちゃん的というか……

 あ、でもちくわちゃんのお姉ちゃんの座は私のものですよ!?


 私はちくわちゃんの寝顔を眺めます。 この寝顔、プライスレス。



 ぺルルちゃんも普通の果物は大丈夫だって言ってましたし、目が覚めたらちくわちゃんにも何か食べさせてあげましょうか。


 私は、どんな果物を食べさせてあげましょうかね~? と考えながら、ちくわちゃんの寝ているハンモックを揺りかごのように揺らし続けました。

主人公が、やっと自分の実の価値を知りました。

ちなみに普通と思っている方の果物も、魔法的な効果が無いと言うだけで、最高レベルの味と栄養があり、半年以上腐らないというスーパー食品なので、とりあえず普通では無いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ