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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
2章ですよ 嬉し恥ずかし同棲生活です。
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11話 ミートソース製造未遂からの友情物語

今回は主人公視点・フリージア視点・また主人公視点と切り替わります。

これは『木と、ちくわの視点が行ったり来たりする物語です』と言うと、知らない人は、作者の頭は大丈夫か? と思うかもしれませんね。

どうもこんにちは、木です。


 ただいまちくわちゃんの捕獲を完了しました。

 伸ばした蔓で縛って、(今日は蔦じゃなくて蔓が出ました)

 優しく頭を撫でて落ち着かせます。 まあ、蔓では上手く撫でれませんが、それでもできる限り優しく感じられるように頑張ってます。


 何でこんな事をしているかと言うと、ですね? 実は、ちくわちゃんが、

 ぺルルちゃんをガチで殺しにかかったから……なんです。


 いや、今回は本当に目玉が飛び出るくらい驚きましたよ。

 私に目玉は無いですけど。



 ーーーーーー



 私はぺルルちゃんに私が転生してからの事を話していると(例によって片言ですけど)ちくわちゃんがやって来ました。


 「pZ*るe9!」


 またご飯を持ってきてくれたみたいです、今日はビスケットみたいなやつですか。

 今の私は味を感じないから勿体ないんですけど…… 私が食べないと、ちくわちゃんも食べてくれないので、大人しく食べることにします。


 「えへへっ! ひとつ貰いっ!!」


 それをぺルルちゃんが横からつまみ食いしました。


 ぺルル・ギョウギ・ワルイ・チクワ・イタダキマス・スル・ヨロシ。

 「大丈夫よ、今の私は姿を消してるから、この子からは見えていないわ」


 ってドヤ顔で言った瞬間、ちくわちゃんがスッゴいパンチを繰り出しました。


 「うっきゃあぁ!!?」


 ぺルルちゃんは、転げ落ちるようにしてギリギリで避けましたけど、数メートル先に生えていた草の上半分が無くなりました。

 ……絶対に届いてないはずなんですけど、衝撃波とか出ました?

 あ! そう言えば、ポークと戦ってる時にも見えない衝撃波を出してましたね。

 あの時のちくわインパルスの親戚みたいな技でしょうか?


 「な、なんで!? 私と同等以上の魔力が無いと姿が見えないようにしてるのに!?」


 ぺルルちゃんはちくわちゃんを撹乱するように飛び回りますが、ちくわちゃんの視線は的確にぺルルちゃんを捉えています。 ……あれ、絶対に見えてますよね。


 そして、ちくわちゃんが拳を握りしめて構えました。 この一撃で決まるか!?


 ……いやいや! 『決まるか!?』 とか実況してちゃダメですよね!?

 決まったらぺルルちゃんが妖精からミートソースに転生しちゃいますってば!

 ちくわちゃんを止めましょう! つまみ食いで処刑とか恐怖政治すぎます!!


 幸か不幸かミートソースを想像したおかげで、枝はすんなりパスタ状にしなって蔓になりました、では……GOです!


 シュルシュルとちくわちゃんに絡みつく蔓。 抵抗されたら力を強めようと思っていましたけど、ちくわちゃんは私がやったと気づくと抵抗をせずに大人しく捕獲されてくれました。


 でも、顔は機嫌が悪そうな表情をしてますね…… 機嫌を直してくださ~い、 と、私は蔓で頭をナデナデします。



 っと、ここで冒頭のシーンになるわけですよ。


 「なに!? その子、迷わず殺しに来たわよ!? 思ったより強いのも驚いたけど、どっちかと言うと精神面が怖いわ!」


 うむむ、ちくわちゃんは素直な仔犬みたいなイメージだったんですけど、実は二面性のあるタイプなんでしょうか?


 あ! 仔犬と言えばペットって、新入りのペットに嫉妬で攻撃したりしますよね? ちくわちゃんをペット扱いするのは失礼ですけど、ああ言う感情なのかも知れませんね。


 ……ふむ、ペットの感覚だと仮定すれば、先輩後輩が明確になればあまり攻撃的な態度は取らなくなるのでは? そうなると、申し訳ないですがぺルルちゃんに一歩譲ってもらえば、案外すぐに仲直りできるかも知れません。


 タノム・ぺルル・チクワ・テイネイ・アイサツ・OK?


 「……私からあの子に歩み寄れっていうの? 嫌よ。 殺されかけたのに、私から頭を下げるのは絶対に嫌!」


 うむむ……確かに、被害者に頭を下げろと言うのは筋が通らないかも知れません。

 ……やはり、ちくわちゃんを叱るのが筋……ですね。

 他人を叱るのはメチャクチャ苦手ですが、私がやるべき事です。 覚悟しましょう。



 私は蔓でちくわちゃんをぺルルちゃんの側に移動させました。

 またちくわちゃんがハッスルしたら困るので、腕に絡んだ蔓は残してますよ。


 そのあとツンツンして意識を蔓に向けてから、その蔓をぺルルちゃんに向けます。 これで『ぺルルちゃんに謝って』と言っているのが伝わるでしょうか?


 ちくわちゃんは……目をそらしました。


 悲しいです…… ですが、ちくわちゃんが謝らないなら仕方ありません。


 私は、蔓の先にひょうたんの実を創り出して (……ああ、やりたくないです……) それをちくわちゃんの頭に降り下ろします!!


 ゴチンと鈍い音が響くと、ちくわちゃんが驚きと悲しみの混ざった涙目になりました。 ……うぅ、心が痛いです。

 それからもう一度、蔓をぺルルちゃんに向けると、ちくわちゃんはしばらく黙った後でぺルルちゃんに頭を下げ、振り向いて私にも頭を下げました。


 あ、いえ。 私には謝らなくても…… と、困惑で力を抜いてしまった瞬間に、私の蔓からスルっと抜け出したちくわちゃんは、走り去ってしまいました。


 「……貴方は最後まであの子を庇うかと思っていたわ。 ちゃんと公平に考えられるのね、少し見直したわよ」


 あぁ、ちくわちゃんが行ってしまいました~。 き、嫌われて無いですよね?


 「ちょっと! せっかく私が見直したって言ってるんだから、話を聞いて…… って!? 貴方! 葉っぱが枯れてきてるわよ!? 大丈夫!?」


 ぺルルちゃんが喋っていましたが、私の頭の中でちくわちゃんの涙目がフラッシュバックしていて、雑談をする心のゆとりはありませんでした。





 ーーーーーー フリージア視点



 私は感情のままに走り続けた。 ……気づいたら、村はずれの水車小屋の前まで来ていた。


 どうしよう…… どうしよう!?  精霊様を怒らせちゃった……

 嫌われた? もしかして、私嫌われた!?


 ……うん、わかってる。 私が悪いんだ。

 ……きっと、あの妖精は精霊様の仲間、いや、友達かもしれない。

 その妖精に、全力で殴りかかっちゃったんだ、それに…… 一撃目を外した時、自分でも驚くくらい威力が強くなってる事に気づいた、当たればちょっとした魔物なら一撃で倒せそうな威力だった。


 そう、一撃目で危険性に気づいたのに、私は二撃目を放とうとしたんだ!


 あの妖精は精霊様と会話していた。 声は聞こえなかったけど、雰囲気や表情の動きで、楽しそうに会話してるのは伝わって来た。

 私もお話した事無いのに、って…… 嫉妬した。


 それに、ビスケットを食べた! あれは私が作って、今までで一番上手く出来たものだったのに! 精霊様に最初に食べて貰いたかったのに!


 腹がたった。 許せなかった。 憎かった!

 ……でも、それでも、私は攻撃するべきじゃなかった。


 私は精霊様がくれた実のお陰で強くなったのに、その力を精霊様の仲間に向けた。

 これじゃあ精霊様への裏切りだ。


 そう思ったとたんに、心に殴りつけられたような衝撃が走って、膝から力が抜けて座り込んでしまった。


 (そっか…… 私は、()()()()()()()()()()……)



 「あら? フリージアちゃん。 こんな所に座ってどうしたの? ……ちょっと、貴方、すごく顔色が悪いわよ!? 大丈夫!?」


 「……ローズさん? 私は…… 私は!!」





 「……そう、確かに殴りかかったのは良くないけど、気持ちはよくわかるわ。 他者と接する限り、大抵どこかに嫉妬はついてまわる物よ」


 「私は…… どうすればいいのかな?」


 「精霊様は、貴方を叱ったのよ。 怒ったんじゃなくて、叱ったの。 ……その違いはわかるかしら?」


 「よく……わかんない」


 「怒るのは、自分自身の感情をスッキリさせたいだけ。 叱るのは、相手が間違えた時に、次は間違えないように、って教えて導くためよ。

 ……誰も期待しない相手を叱ったりしないわ、精霊様は貴方の帰りを待ってると思うわよ?」


 「でも、私は、あの妖精に酷いことを……」


 「その妖精ちゃんとは…… そうね、友達になっちゃったらどう? 貴方は精霊様と友達になりたいんでしょう? だったらその妖精ちゃんは友達の友達よ。 仲良くなった方が、きっと楽しいわ」


 友達の友達…… うん、だったら仲良くしたい。 ……仲良くなれたらいいな。


 その時ローズさんは、私の手を引いて立ち上がった。


 「今、人間の街から行商人が来てるの、甘いお菓子も売ってるのよ。 持っていったら妖精ちゃんも喜ぶと思うわ。 さあ、見に行きましょう?」


 「……うん!」





 ーーーーーー 木(主人公)視点



 あぁぁぁ! ちくわちゃんを叩いてしまいました! 可愛い妹に暴力を振るうとは! 私は、血も涙も無いバイオレンスお姉ちゃんですー!

 そういえば私は木なので本当に血も涙も無いのでした! 道理でこんな不埒(ふらち)悪行三昧(あくぎょうざんまい)ができる訳ですね、納得しました!


 出家して仏門に入れば許されるでしょうか!? でも、木が仏門に入るには、いったいどうすれば!?

 はっ!! 木魚ですか? 木魚に加工されれば仏門に入ったことになりますか!?


 「……貴方、木の癖にくねくねして不気味よ? シャキッとしてよね」


 ぺルル・モクギョ・ワタシ・モクギョ・カコウ・ヨロシコ・モクギョ・モクモクギョ。


 「落ち着いて! いつも以上に意味不明よ!?」



 その時、視界に小さな人影が映りました。

 あぁ、私はここまでなのでしょうか? 可愛い天使さんが迎えに来ました。 ちくわちゃんによく似た天使さんですね~。

 でもちくわちゃんを叩いてしまった私は地獄行きになるはずですから、あの子は、実は悪魔?

 あの外見で悪魔ですか? 実はドSですか? それはまた、一部の紳士にはご褒美ですね~。 とか考えていたんですが、どうやら彼女は本物のちくわちゃんのようです。


 叩いてごめんなさい! そして、お帰りなさい! ちくわちゃん万歳! ビバ! ちくわちゃん!


 泣き笑いの表情を浮かべたちくわちゃんは、意を決したようにグッと踏み出して駆け寄りました! ……ぺルルちゃんに向かって。


 「へ!? なんで私? まさか今度こそ殺しに!?」


 ちくわちゃんは、ぺルルちゃんの側で立ち止まり、頭を下げて両手で何かを差し出しました。 ちょうどラブレターを差し出すようなポーズです。


 「かyA1! vら*……ちくわ!!」


 あ、『ちくわ』 がでました。 ぺルルちゃんは怪訝な表情で差し出されたものを覗き込んで、少し表情を柔らかくしました。


 「ハチミツのお菓子…… な、なに? 私が貰っていいのかしら?」


 ぺルルちゃんとちくわちゃんは、お互いに相手の真意を探るかのようにジっと見つめ合っています。


 先に動いたのはぺルルちゃんでした。 お菓子をちょいちょいと指さしてから自分を指さして、首をかしげます。


 多分、『これを私に?』という動きでしょう。


 それを見たちくわちゃんは、コクコクと頷いています。

 少しの間、またジっと見つめ合って…… ぺルルちゃんが、お菓子を受け取ってかぶり付きました。 一口サイズの球体のお菓子ですが、身長30センチちょっとくらいのぺルルちゃんが食べていると、大きめの菓子パンにかぶり付いてるみたいですね。


 美味しそうに食べているぺルルちゃんを見て、嬉しそうに笑うちくわちゃん。

 その笑顔、プライスレス。


 やがて、ちくわちゃんがそっと手を差し出します。 ぺルルちゃんはそれを少しの間ながめて……そして、その手、と言うか指をつかんで握手しました。


 おお! やりました! 仲直りです! あぁ、美しい光景です。

 見ているだけで心が浄化されます! ……リフレ~ッシュ……!



 少し恥ずかしそうにぺルルちゃんが、


 「私から頭を下げる気はないけど、向こうから歩み寄るなら仲良くしてもいいわよ?」


 と言っていました。 なかなかのツンデレぶりに、心の中でニヤニヤしていると、


「変な事考えているでしょ? いつも気持ち悪いけど、今は、いつも以上に気持ち悪い気配がしたわ!」


 と言って睨まれました。

 えっ? 私、いつも気持ち悪いですか!? ちょっとそこ詳しく!?




 うん、良かったです。

 ぺルルちゃんとちくわちゃんも、まだお互いに遠慮があるけど仲良くなれそうですね。

 もちろん私も二人と、もっともっと仲良くなってみせますよー!


 私たち三人の友情物語に、乞うご期待!!

もちろんフリージアは、本当にぺルルを殺そうとした訳でなく、今の自分の力がどれくらいなのかを把握していないので、やり過ぎただけです。 撃ちかけた二発めは、つい熱くなった、という面があるので有罪ですが。



毎日投稿のノルマがボディブローのように効いてきました……

でも、もう少し頑張ってみます。

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