7話 特殊性癖疑惑からのシャイニングちくわちゃん
ここから2章です。
どうもこんにちは、木です。
ポーク騒動が終わり、皆さんが本格的に村を改良し始めてからしばらく経ちました。
うんうん、なかなか村らしくなって来たように見えますね。
少し前までは村と言うより、満員のキャンプ場を柵で囲ったという感じでしたからね。
数えるほどですけど、ログハウスみたいな家も何軒か建ちました。
もちろん現代日本人の感覚で見れば立派とは言えない簡素な造りですけど、その素朴な外見から温かさが感じられるようで、とても素敵な家です。
食料倉庫っぽい小屋もできましたし、川の側には水車小屋も完成しました。
うんうん、どれも大事な物ですね~、そう言うものを建てるのは必要ですよね。
ですけど……。
……この、私の正面に建てられた祭壇は、本当に必要な物なんですか?
いや、予想は出来ていましたよ? 前にポークの頭が大量納品された辺りから、おやおや? これはもしや? とは思ってましたけど……
……もしかしてあなた達、私をゴッド的な何かだと思ってますか?
期待には応えたいですが、私を拝んでもご利益は無いと思います。
学業? 私の成績は中の下ですよ? 取り敢えず赤点は取らないですむ、というレベルでした。
恋愛? まともな色恋沙汰は経験ありませんね~。 某・歌劇団チックな御姉様に、妹にならないかい? っていう告白はされたことがありますが、遠慮しましたし。
健康? 確かにポテチとエナジードリンクだけで10日生活した事があるというのは、ある意味タフかもしれませんが、決して健康では無いでしょう。
うむむ、やっぱり私はご利益の方面では役に立てる気がしませんね。
と言うことで、私にできるお仕事を頑張ります。
きらめけ! 私のF P S!
最近も日課として1日1回のサーチは続けています。
と言っても、ポーク騒動の後は不穏な反応は…… ありました!?
1つの反応が、もの凄いスピードで、一直線に突っ込んで来ます!?
「fhやcGム#・ちくわ!」
あ、ちくわちゃんでしたか。 勢いがありすぎて魔物かと思いました。
ちくわちゃんは、仔犬が甘えるように飛び付いてきました。
とても可愛いですけど、木に体当たりして痛くないですか?
彼女はしばらくぴょんぴょん飛び跳ねた後、私のそばにペタンと座りました。
そして私を見上げながら、一生懸命何かを話しかけてくれています。
ごめんなさい、話しかけてくれるのは嬉しいんですけど、何を言っているのかわかりません。
流石にノーリアクションでは悪いかと思ったので、相づちを打つような感覚で、枝をワサワサ振ってみます。
すると、それを見て嬉しそうに手足をパタパタと動かすちくわちゃん。
おぉっ! しっぽを振る仔犬みたいで、とても可愛いです!
私はそれを見て嬉しくなって、つい枝をワサワサと振ってしまいます。
すると、それを見たちくわちゃんは、更にパタパタ動かします。
ワサワサ パタパタ ワサワサ パタパタ
……不思議と、ちくわちゃんと理解し合えた気がしました。
いえ、実際には多分、何も理解してないんですけどね?
ボディランゲージでのガールズトークが終わっても、ちくわちゃんは私の側でニコニコパタパタしています。
前世を含めても、ここまで真っ正面から好意をぶつけられたのは初めてですね~。 照れますけど嬉しいです。 これが所謂『嬉し恥ずかし』という気分ですか。
ん~……でも、何でこんなに好かれたんでしょうか?
もしかして私の葉っぱ辺りから、幼女に好かれるパウダーとか出てますかね?
いえ、この村には他にも幼女ちゃんがいますけど、その子達は熱烈アプローチをして来たりはしませんね?
ということは理由は私ではなく、ちくわちゃんにあるという事にですか?
……まっ……まさか、木に興奮するようなパンチの効いた性癖が!?
不埒な可能性が頭に過って、つい私はちくわちゃんをまじまじと見つめました。
ふわっと柔らかい金髪にクリッと大きめの青い目の、文句なしの美少女が無邪気に笑っています。 うん、その笑顔……プライスレス。
やっぱり特殊性癖で興奮している感じには見えませんね。
……いえ、当然本気で疑っていたわけではありませんよ? ただ、私は特別は理由も無く、無条件で自分がこんなに好かれるのは不思議だな~、と思ったので、ついそれで妙な可能性がチラリと頭に浮かんでしまいまして。
ふと気づくと、さっきまで笑顔だったちくわちゃんの表情が曇っています。
「eG5……ユm»ら*……」
何かを呟いた、その声にもいつもの元気がありません。
もしかして、私の疑惑の視線に気づいてショックを受けちゃいましたか!?
そ……そうですよね、年若い娘さんが性癖を疑われたら傷つきますよね……。
申し訳ない事をしてしまいました……。
ちくわちゃんの心のハートをハートブレイクさせてしまいました……。
謝りたいのに、木の体では謝罪の言葉を口にする事も、頭を下げる事もできません。
ど……どうすればいいんでしょうか?
うぅ、仕方ないですね。 ……私は、物で謝罪するという考えは、酢豚に入っているパイナップルと同じくらい嫌いなのですけれど、今の私に出来る事は他にありません。
謝罪の気持ちを込めて、なにか果物をプレゼントしましょう。
今回は謝罪の証ですから、いつもより気合いを入れて不思議パワーをガツンと大盛りで枝に送り込みます!! 究極で至高の果物を創ってみせます!!
一口食べたらあまりの衝撃に色々と駄々漏れになるほど美味しいものを目指しちゃいます!!
さあ、気合いをこめて…… えいや! っと不思議パワーを放出して、 ソイヤ! とそれを枝に送って、ぬうりゃ! と収束させて、ちぇすと! と生成を開始して、ハラショー! で完成しました!!
よし! これで美味しいリンゴが……って、あっれえぇ!?
光ってます! なんかこのリンゴ、メッチャ光ってます!!
しかも実自体も、金箔を貼ったみたいに鮮やかな金色ですし!? え? これリンゴですか?
ま……まあ、完成には違いないですし? ある意味では、究極で至高の果物っぽくはなりました……よね? では、ちくわちゃんにプレゼントしましょう。
うにょーん、って感じで枝を伸ばして、ちくわちゃんの目の前までリンゴを持って来ましたけど、ちくわちゃんは驚いた顔のまま固まっています。
受け止ってもらえませんか? なんなら食べなくても、ハデに光ってるんで照明とかインテリアとかにしてくれてもいいですし。
目の前でリンゴを、ほ~れ、ほ~れ、っていう感じでプラプラと揺らしてあげると、ハッとしたような表情でちくわちゃんが再起動して手を広げたので、その手のひらの上にリンゴを投下しました。
「$k よ3wYtエに?」
リンゴを受け止ったちくわちゃんは、呆然とした顔で何かを呟いたあと、急に顔色を青白くして……
え~っと…… なんか変な汗をダラダラ流しながら目を泳がせています。
なんでしょう、明らかに挙動不審ですね。
おや? 今のちくわちゃんの姿、どこかで見たことがあるような?
あっ、思い出しました、柔道部の山崎君が公園に落ちてたエッチな本を拾うかどうか迷っていた時の態度に似てる気がします。
その時、山崎君は結局キョロキョロと周りの目が無いことを確認したあとでコソコソ拾って行ったんですよね~。
……山崎君……実はあの公園は私の家のベランダからハッキリ見えるんですよ。
おっと、今は山崎君よりちくわちゃんの事でしたね。
ちくわちゃんはしばらくの間、小さな声でブツブツと何か呟いたあと、キッ! と、覚悟を決めたような表情をして、一気にリンゴにかぶり付きました。
そして……
ちくわちゃんは光りました。
もはやシャイニングちくわちゃんと名付けてもいいほど、激しく光っています。
あ……あれ!? もしかして、あのリンゴって、食べたらヤバいやつでしたか!?
ばっ、爆発とかしませんよね!?
大丈夫ですか!? ちくわちゃん!!
しばらくして光が収まると、ちくわちゃんは確認するように自分の体を見回したり、両手を閉じたり開いたりして……
「ハeLDろt#*ヨ2wUTあ6y!!」
何かを叫んで、猛スピードで走り去って行きました……
トイレ……ですかね?
やっぱり食べさせたらヤバい物だったんでしょうか?
うう、ちくわちゃん、ごめんなさい……。
主人公は自分が創った実がマジックアイテム化してるとは気づいてません。
前に瀕死のムスカリを助けた時も、タウリンを配合したから元気になった! タウリンって凄いな~、とか思ってました。