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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
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後日談 18話 お友達紹介コーナーからのカタカナでバーベキュー

大変お待たせしました。

 どうもこんにちは、モーリンです。


 稲穂ちゃんと再会した後、ぽっちゃり係長さんが稲穂ちゃんに挨拶してくれました。

 ホッとしましたよ。稲穂ちゃんは魂は立派に人間ですけど体は漬物石なので、ちゃんと仲間として扱ってもらえるか心配していたんです。

 ぽっちゃり係長さんが漬物石にも偏見を持たずに挨拶してくれる器の大きい人で良かったです。

 もしかすると子供の頃に漬物石の友達とか幼なじみとかが居たのかもしれませんね。



 ぽっちゃり係長さんはその後すぐにどこかに歩いて行ったので、挨拶だけして帰ったのかなーって思っていたんですが、しばらくしてセレブお嬢さんとセクシーさん、そしてマッスルさんと若頭さんまで連れて改めて遊びに来てくれました。

 おお、勢揃いですねー。



 「……この人たち、みんな鈴の知り合い?」


 頭に稲穂ちゃんの声が聞こえてきました。

 そうですよー、っと返事をしようと思ったんですけど、そう言えば私から稲穂ちゃんへの声は届かないんでしたよね。


 まあ肯定や否定をするだけなら精霊語を喋れなくてもボディランゲージでどうにでもなります。

 私は稲穂ちゃんを見つめながらコクコクと頷いて見せました。

 みんな大事なお友達ですよー!


 「……ふうん」

  

 稲穂ちゃんはそれだ言うと黙ってしまいました。

 おや、リアクションそれだけですか? むむむ、なんだかあんまり機嫌が良くなさそうですね……もしかしてお腹でも空いているのですかね?


 あっ、もしかして初対面の人が沢山、しかも年齢や性別もバラバラで色んな人がいるから警戒してるんでしょうか?

 稲穂ちゃんってクール系ですし、親しくない人にはちょっと距離を置いて接するタイプですからね。

 

 ですけど稲穂ちゃんは別に人付き合いが苦手という訳ではないので、何かきっかけがあれば皆さんとも仲良くなれるとは思うんですよ。

 んー、何か良いきっかけは無いですかねー。


 そんな事を考えていると、セクシーさんがこちらに近いて来て、稲穂ちゃんに対して頭を下げて何かを言いました。

 相変わらず喋っている内容はわかりませんけど、仕草を見る感じでは稲穂ちゃんに挨拶してくれているようですね。

 セクシーさんの後ろでは他の皆さんも並んで挨拶のタイミングを伺っているようですし、皆さん、順番に稲穂ちゃんに挨拶してくれるつもりのようです。

 

 おおっ! 言っている側から仲良くなれるきっかけができましたねー。

 誰かを好きになるには、やっぱりその人の事を知ることが第一だと思うんですよ。なので1人ずつご挨拶に来てくれているこの機会に、私がその人がどんな人なのかを稲穂ちゃんに紹介してあげましょう。

 お友達紹介コーナー、スタートです! 繋がれ、友達の輪!


 ……と思ったところで、ある事にハッと気がつきました。

 紹介すると言っても私は精霊語を話せないので、まずは念話でペルルちゃんに伝えて、それを通訳してもらう事になりますよね?

 ……なら始めからペルルちゃんが稲穂ちゃんに紹介すれば良くないですか?


 ペルルちゃんに面倒を掛けたくないですけど、手間という点で考えれば私を含めて伝言ゲームみたいに会話するよりはペルルちゃんと稲穂ちゃんで直接お話しするほうがまだ手間は少ないでしょう。


 私はそれをペルルちゃんに言ってみました。

 


 「まあそうね。私もここにいるみんながどういう人かくらいは多少は知ってるし、別にやってあげてもいいわよ紹介くらい」


 そう言ってペルルちゃんは引き受けてくれました。うぅ、いつもお手数お掛けします。

 私はせめてもの協力として、稲穂ちゃんとセクシーさんがお互いの姿を見やすくなるように、顔の高さに合わせて持ち上げました。

 はじめましての挨拶の時は、お互いの顔が見えてるほうがいいですからね。……まあ今の稲穂ちゃんに顔はありませんけど。



 「gア6jM1もT……」


 セクシーさんの挨拶のスピーチ(確信は無いですが多分そうでしょう)が聞こえる中、ペルルちゃんは稲穂ちゃんのすぐそばにパタパタ飛んでいます。

 私には声は聞こえていませんけど、時々ボディランゲージっぽい動きをしたりもしているので何か話しているんでしょうね。

 あっ、今『胸がボイーン』みたいなジェスチャーをしましたねー、おそらくセクシーさんについて紹介してくれているんでしょう。



 それからしばらくした後……


 「彼女について簡単に紹介してもらったわ」


 稲穂ちゃんがそう言いました。

 そして、本名がわからないから『セクシーさん』というあだ名で呼んでいることや、酒場を経営していて大工さんとか冒険者の人たちとかに人気なこと。

 他には魔法で姿を消しているペルルちゃんの気配をぼんやりと察知できるくらい魔力が高いことなんかを説明されたと教えてくれました。



 「大人の色気がある綺麗な人ね。ハリウッド女優みたいで同じ女性から見ても憧れるわ。……『セクシーさん』ってあだ名はどうかと思うけどね」


 あー、言われて納得しました。確かにセクシーさんって芸能人で分類するならハリウッド女優タイプって感じですね。

 ちなみに周りの他の女の子たちを分類すると、ちくわちゃんとペルルちゃんはアイドル系、セレブお嬢さんと稲穂ちゃんはファッションモデル系ですかねー。

 ……私? 私は芸能人に例えられるようなルックスではありませんけど、強いて分類するなら幼児向け番組で歌のお姉さんの後ろで踊ってるマスコットですかね? あれを芸能人に分類するかは知りませんけど。

 

 子供たちに囲まれて踊るのって楽しそうですよねー、今度やってみましょうかねー、なんてどうでもいい事を考えているうちにセクシーさんはペコリと頭を下げてから後ろに退がりました。どうやら挨拶は終わったようです。



 そしてそのセクシーさんと交代するように、次はセレブお嬢さんが近づいてきました。どうやら次はセレブお嬢さんが挨拶してくれるようですね。

 私はまた稲穂ちゃんを少し高く持ち上げてセレブお嬢さんの方に向けて、お互いの姿が見やすいようにしました。


 そしてしばらくすると、また稲穂ちゃんの声が聞こえます。



 「聞いたわ。この人はここにいるメンバーの中でも特に鈴と付き合いが多い方で、家に泊まっていく事もあるらしいわね。

 ……なるほど、彼女の事はよく覚えておく事にするわ。目を離さないようにしっかりチェックしておかないと」

 

 

 おお、『目を離さないようにしっかりチェック』ですか。どうやら稲穂ちゃんはセレブお嬢さんに興味を持ったようですね。

 きっとお友達になれそうなオーラをキュピーン、っと感じ取ったのでしょう。


 うんうん、私もこの2人は相性が良さそうだと思っていたんですよ。

 2人とも仕事のできる知的美人って感じの女の子ですし、なんか話してみたら共通点とか多く見つかりそうですよね。

 2人が仲良しになる日が楽しみですねー。


 ん? なんだかペルルちゃんが呆れた目で私を見ているような気がしますねー?

 いえ、今日はまだ呆れられるような事はしてないはずなので気のせいですよね。うん。

 


 セレブお嬢さんが一礼して後ろに下がると、次に挨拶に来てくれたのはマッスルさんです。


 マッスルさんは、ババッ! って効果音が聞こえそうな感じの、素早くてキレの良い動きで一礼してくれました。

 さっきのセクシーさんやセレブお嬢さんが貴族っぽい挨拶だとすると、マッスルさんの挨拶は軍人っぽいというべきでしょうか?

 ……まあ、私は貴族の挨拶にも軍人の挨拶にも詳しくないので、どちらも勝手なイメージなんですけどね。というか私の場合は一般的な挨拶の作法にもあんまり自信は無いんですけどねー。


 あっ、でもでも芸人さんの挨拶なら知っているつもりですよ。

 舞台袖から音楽に合わせて登場して『はいどうもー!』って挨拶して、最後は『もうええわ!』って言って締めた後に深くお辞儀してから退場、というのが基本ですよね。


 たまにその定番とは違う個性的な登場をする芸人さんもいますしそれはそれで面白いアプローチだとは思いますけど、私はやはり登場と退場は基本パターンを守ってネタの中身で個性を演出する方が好きかもしれませんねー。あ、いえ、別に変わった登場をする芸人さんが嫌いな訳ではありませんよ? ただ、挨拶にインパクトがありすぎると視聴者さんの中でその挨拶の印象ばかりが強くなってしまって、肝心のネタの印象が弱くなってしまう恐れが……

 ……って、おや? 何の話をしていたんでしたっけ?


 ああ、マッスルさんが稲穂ちゃんに挨拶しに来てくれたんでしたね。

 それではペルルちゃん。稲穂ちゃんにマッスルさんについて紹介を……


 「へえ、この人は街の警備隊長みたいな人で、鈴がこの世界で初めて会った人なのね」


 おや? どうやら私が芸人さんについて考えているうちにペルルちゃんからの紹介はもう終わって、稲穂ちゃんが感想を言うターンになっていたようです。


 「鈴がこの世界で最初に出会った男、か。……少し顔立ちが濃いけど男前ね……。念のため訊くけど、街の仲間という以上の特別な関係では無いのよね?

 その……『男』として見てるとか、そういう事はないわよね?」


 稲穂ちゃんは私にそんな質問をしてきました。

 真剣な雰囲気ですから、こちらも真剣に答えてあげるべきなんでしょうけど……

 んー……あんまり質問の意味がわかりませんねー?

 

 『男』として見てるか? それはどういう事でしょうか? 男として見るも見ないも、事実としてマッスルさんは男の人ですよね?

 男の人を男として見るのは当たり前の事なのに、それをわざわざこんな真剣なトーンで確認するということは……

 

 ま、まさか、マッスルさんは男ではない…… つまり女の人だったとか!?

 

 むむむっ……顔立ちも体型も男性に見えますし、声だって低いですよね?

 で、ですが確かに今までマッスルさんの裸を直接見て確認したわけではありませんし、私が勝手に性別を勘違いしていたという可能性も……!?

 だとすれば今まで私は身近な人の性別を間違えるという失礼な事をしていたことに……?

 い、いえ、改めて近くで見ましたが、のど仏がありますし、アゴにはちょっとだけ剃り残したらしいヒゲがうっすらあります。

 やっぱり男の人ですよね? どう見ても。

 では稲穂ちゃんの言葉は一体どういう意味なのでしょうか? 謎は深まるばかりです。



 稲穂ちゃんの言葉の意味がわからず、私はマッスルさんと稲穂ちゃんの間でキョロキョロと視線を行ったり来たりさせていました。


 「……ああ、鈴の態度で分かったからもういいわ。私が余計な心配してただけみたいね。変に混乱させてごめん。今の質問は忘れて」


 ふむ? んー……なんだかよくわかりませんけど、稲穂ちゃんがそう言うなら今の話は忘れましょうか。

 丁度次に並んでいた若頭さんが近づいて来たところですし、マッスルさんの話は置いておくとしましょう。



 若頭さんは、『やれやれ』って感じのダルそうな態度でニヤニヤしながら敬礼っぽい挨拶をしてくれました。

 『はいはい。ほらよ、これでいいんだろう?』って感じのセリフが聞こえて来そうな雑な挨拶で、それを見た他の皆さんはムッとした表情をしていますが、私はこういう態度の方が若頭さんらしくていいと思います。


 さて、それではまた紹介をお願いしますね、ペルルちゃん。


 ペルルちゃんをチラリと見てみると……おや? 今までの人に関しては迷わずすんなりと紹介している感じだったのに、若頭さんの紹介をしている時のペルルちゃんはなんだか難しい顔をして時々止まったりしているようです。

 なんか話すのが難しいことってありましたっけ?



 「へえ、この人は街の防衛戦力として雇ってる腕利きの冒険者なのね。

 前にも冒険者っていう人に会ったことはあるんだけど、どういう仕事かいまいち分からないのよね。傭兵みたいなものって考えていいのかしら」


 うーん、確かに冒険者って漫画やゲームで出てくるから何となく知っている気になってますけど、言われてみるとハッキリとした定義ってよくわかりませんよねー。

 ……って、あれれ? ペルルちゃんから聞いたのは腕利きの冒険者だって話だけなんですか? 若頭さんにはもっと色々な逸話が……


 ……あー、なるほど。部下を引き連れてこの街に殴り込んで来て私を斧で切り倒した人ですよー、なんて話をしたら稲穂ちゃんがビックリしちゃいますもんね。

 いらない混乱を避けるために、その辺は内緒にしておくって事ですか。


 ふむふむ、さっきペルルちゃんが喋りにくそうにしてたのはその辺を誤魔化しながら紹介してたからですね。理解しました。

 確かに初対面で妙な先入観を植え付けてしまうと稲穂ちゃんと若頭さんの今後の付き合いに影響してしまうかも知れませんし、若頭さんについては簡単な紹介だけにとどめておきましょうか。

 


 という事で次のメンバーの紹介を…… おや? もう誰も並んでませんねー?

 ああ、そういえばワイルド商人さんは一足先に帰ってしまいましたし、ちくわちゃんとぽっちゃり係長さんはもうすでに稲穂ちゃんとの挨拶が済んでいましたね。

 ですけどその時に紹介はしてませんでしたから、ちょっと遅くなってしまいましたけど今までからでも紹介しておいた方がいいですよね。


 私が稲穂ちゃんをぽっちゃり係長さんの方に向けて、ペルルちゃんに『お願いしまーす』ってアイコンタクトを送ると、ペルルちゃんはすぐに気付いてくれたようで、こちらを見てコクリと頷いて、稲穂ちゃんへの紹介を始めました。



 しばらくして紹介を聞き終えた稲穂ちゃんが、ちょっと呆れたような声で言いました。


 「あんた、この人のこと『ぽっちゃり係長さん』なんて呼んでるの? 他の人達のあだ名もどうかと思ったけど、それに輪をかけておかしなあだ名ね。

 ……でもまあ中間管理職っぽいっていうのは少し分かるかも知れないわ。どこがってわけじゃないけど、なんか雰囲気がそんな感じするかも」

 

 あっ、やっぱり稲穂ちゃんもわかってくれましたか? ぽっちゃり係長さんって、偉い人っぽいオーラは無いんですけど、でも下っ端ではなさそうな絶妙な存在感があるんですよね。


 まあ実際には中間管理職どころか、結構発言力がありそうですけど。

 大人数での話し合いみたいな事があると大体真ん中に近いポジションにいますからね、この人。

 

 

 さあ、次は……

 ついに我らがアイドル、ちくわちゃんを紹介する時が来ましたね。

 まあ稲穂ちゃんとちくわちゃんは、さっきも空間が歪むほど情熱的な握手を交わしたりしていましたから、今さら紹介なんかするまでもなく既に熱い友情が芽生えているとは思いますけどね。


 私が稲穂ちゃんをちくわちゃんの方に向けて、お願いしますねー、って感じでペルルちゃんにアイコンタクトを送ろうとすると……


 おや? ペルルちゃんがすっごい嫌そうな顔してますねー。どうかしましたか?


 「いや……この2人の関係については下手に触れないようにした方が良いんじゃないかなー、って思うのよね。少なくとも私は関わりたくないわ」


 ふむ、2人の関係に触れない方が良い……ですか? んー……なるほど、言われてみればこの2人は自分たちで友情を築き始めていますから、変に横から私たちが干渉するのは野暮という物かも知れませんね。

 私たちが何もしなくてもすぐに仲良しになるでしょう。

 

 なんたってこうしてる今だって、ちくわちゃんはとても情熱的な瞳で稲穂ちゃんを見つめているくらいですからねー。よっぽど稲穂ちゃんに興味津々なんでしょう。

 うわっ、スッゴいですねー、瞳がギラギラと光っていますよ。ビームとか出そうです。

 


 「……チッ」


 ん? 今、稲穂ちゃんが舌打ちしましたね。

 あはは、きっとちくわちゃんからあまりに強烈に見つめられたから照れちゃったんですねー。稲穂ちゃんは少しツンデレっぽいところがありますから。


 うんうん、この2人の関係って横から見ていて本当に微笑ましく感じますよねー。


 周りの皆さんもそんな2人の様子が気になるようで、何かの合間合間にそれとなくチラチラと見ているようです。

 んー、まるで、仲良し姉妹を微笑ましく見守る親戚一同みたいな構図ですねー。



 「……なんでこの空気をそんなほのぼのした様子で見てられるの?

 どう見ても、今にも喧嘩しそうな猛犬たちをヒヤヒヤしながら監視している飼育員たちの構図じゃない」


 ん? 何か言いましたか? ペルルちゃん。

 ペルルちゃんの呟きを聴き逃してしまった私は首を傾げました。


 「……なんでもないわ。多分言っても分からないだろうから気にしないで」


 そうですか? なら気にしませんけど。

 



  


 日が落ちてきた頃、若頭さんの部下の冒険者さんが大きなお肉の塊を持って来てくれました。

 豚か牛か羊か、それとも私の知らない謎の生物なのかは知りませんが、それを使って皆さんでバーベキューパーティをしました。

 これはもしかしたら稲穂ちゃんの歓迎会のつもりなのかも知れませんね。うーん、皆さん、あったかい人ばかりです。

 残念ながら稲穂ちゃんは物を食べれないみたいですが、きっと皆さんの歓迎の気持ちは伝わっているでしょう。


 それにしても大人数でバーベキューなんてしていると、なんだかみんなでキャンプに来たみたいでワクワクしますねー。

 ……どうでもいい話ですけど、アルファベットでBBQと言うとなんかパリピっぽいイメージがあってオタクな私には敷居が高い気がしちゃうので、私はカタカナでバーベキューと言う派です。

 

 うん、本当にどうでもいい話でしたね。





 食事が終わり、そろそろ解散ですかねー、と思った辺りで皆さんがゾロゾロとお家の中に入って行きました。

 あれれ? もしかして皆さん、今日は泊まっていく感じですか?

 

 お泊まり会をするのはとても楽しそうで良いんですけど、あの……このお家にその人数は狭くないですか?

 いえ、皆さんが狭くても気にしないというなら私は歓迎しますけど。



 皆さんは家の中に入っていったので、今ここにいるのは私と稲穂ちゃんとペルルちゃんの3人です。

 さっきまでが賑やかだったので、急に静かになったような気がしますねー。

 

 

 「賑やかだったわね。少し疲れたかも」

 

 稲穂ちゃんがそう言いました。


 「こういうのも嫌いじゃないけど、正直な気持ちを言うと今日は鈴との再会を2人きりで喜び合いたかったわ」

 

 それは……んー、まあ確かにありますね。

 沢山のお友達とワイワイするのは好きですし、皆さんに対して不満なんて全くありませんけど、今日だけは稲穂ちゃんと2人で過ごすのも良かったかなー、という気持ちはあります。


 ですけど夜の時間というのは案外長いです。私も稲穂も眠らなくていい体ですから、明日皆さんが起きて来るまで一晩中お話しできますよ。

 今からでも改めて再会を喜び合いましょうよ。


 そんな言葉を伝えるため、ペルルちゃんに通訳を頼もうとして……

 やっぱりやめました。

 多分ですけど、こういう気持ちは言葉にしなくても伝わりますから。 ……伝わりますよね?


 私は胸元で稲穂ちゃんを抱きしめる力を、ほんのちょっとだけ強めました。



 「……鈴」


 稲穂ちゃんが私の名前を呼びました。

 なんですか? 稲穂ちゃん。


 「本当に良かったわ。もう一度会えて」


 ……はい。私もですよ。

 

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[一言] 更新待ってました いつも楽しく読ませて頂いてます
[一言] 更新ありがとうございます。 久しぶりにリンのすっとぼけが読めて面白かったです。
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