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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
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後日談 15話 妙に落ち着かない気分からの懐かしいぬくもり

 どうもこんにちは、木です。


 昨日の夜は綺麗な星空を見上げながらまったりとした時間を過ごしました。なので今朝は気分がリフレ~ッシュされて、とっても穏やかな心で朝を迎えられるんでしょうねー、とか思っていたんです。

 ですけど朝日が上ってきたあたりから、なんだかわかりませんが妙に落ち着かないんですよねー。

 今は木の姿だから動いてませんけど、もしも人間の姿になっていたら今頃きっと意味も無くその辺りをうろうろ歩きまわったりしてたと思います。

 う~ん、ソワソワします。


 とはいっても胸騒ぎのような悪い感じのソワソワではなくて、楽しいような嬉しいような……例えるなら待ち合わせ場所で友達が来るのを待っている時の感覚といえばいいでしょうか? なんかそんな気分なんですよ。

 これは何か楽しい事の前触れでしょうか? もしそうだったらいいですねー。


 あー、ダメです。やっぱり落ち着きません。体を動かしたいです。といっても今の姿で自由に動かせるのは枝くらいなので、せめて思いきりワサワサしちゃいましょう。 そいやー!


 ワサワサワサワサワサワサワサワサ!!


 「ぎゃー! ちょっと、いきなり何!?」


 あっ! ご……ごめんなさい! 私がいきなり枝を上下に振ったから、上に座っていたぺルルちゃんに強制的にヘビメタバンドばりのハードなヘッドバンギングをさせてしまいました。



 「い、いきなり暴れないでよ。勢いで飛んで行くかと思ったじゃないの! もう!」


 うう、怒られちゃいました。

 反省しなくてはいけないのですけど、『ぷんすかっ!』って感じの怒りかたで、なんか可愛いと思ってしまいました。

 言ったらもっと怒られそうなのでナイショにしますけど。



 「今後は気をつけてよね。……まあそれはもういいわ。で、どうかしたの? 突然枝を振り回すなんて何かあったんじゃないの?」


 ぷんすかしていたぺルルちゃんでしたが、すぐに怒りを収めると今度は心配そうな表情で私に尋ねました。


 ぺルルちゃんって、ただ怒るだけじゃなくてこうしてちゃんと理由を聞いてくれる所がお姉さんっぽくて素敵ですよねー。

 ええと……上手く伝わるかわかりませんけど、頑張って説明してみましょう。


 私はぺルルちゃんに念話で語りかけました。


 ホシガ・キラキラ・ココロ・ホワホワ・タイヨウ・サンサン・リユウ・ナゼナゼ? ココロ・ソワソワ・ダカラ・ワサワサ。OH、YEAH!


 「……なによその出来の悪いラップみたいな説明。……えーっと、星が出ているうちは心が落ち着いていたけど、太陽が出てきた頃から理由は不明だけど落ち着かない気持ちになったから、つい枝を振り回したくなっちゃった……って事でいいのかしら?

 で、どうせリンのことだから多分最後の『OH、YEAH!』は単にノリで言っただけで意味は無いのよね?」



 うわっ、スゴいです! 説明した私が言うのもなんですけど、今のでよくわかりましたね~。



 「朝から気分が落ち着かない? うーん……理由が無くても不安になったり落ち着かなかったりするって事も、別に普通にあることだけど……」


 むむむ……言われて見れば確かに気分なんて日によってコロコロ変わってもおかしくないものですし、単に今日がたまたま気分が落ち着かない日だっただけ、というのは普通にありえますよね。

 ならあんまり気にしなくてもいいのかも……っという結論を出そうかと思ったその時、ぺルルちゃんが言葉を続けました。


 「気のせいならそれでいいわ。でも気のせいじゃなくて、本当にリンの心が落ち着かなくなるような原因があるっていう可能性もあるわね。

 リンは頭脳は残念だけど頭脳以外のスペックは高いから、意識していなくても本能的に何かを感じ取っているってことも考えられるわ」



 なるほど! ……って、あの……ぺルルちゃん? 今、サラッと私の頭脳が残念だと言いませんでしたか?

 い、いえ、まあ悲しいことにそこは全然否定出来ないので一旦スルーしておくとして、この体が私には勿体ないくらいハイスペックなのは確かですし、無意識で何かを感じ取っているというのはあるかもしれません。


 無意識で感じ取れるという事は、意識的に探ればもっとバッチリ感じ取れるということですよね?

 そういえば今日はまだ周囲の魔力をチェックしていなかったですし、ちょうどいいから今調べてみるとしましょう。

 何かわかるかもしれませんし、それで何も無かったなら無かったで別にいいですし。


 ということで……(とろ)けろ! 私のFPS(不思議パワーサーチ)!!



 おお、周りにたくさんの反応を感じますねー。反応が多いという事は街の住人が増えて賑やかになったという事ですからそれは嬉しいんですけど、1つ1つの魔力をしっかりとチェックするのが難しいという難点がありますねー。

 え~っと、この中でなにか気になる魔力は……っと。


 ふむふむ、こちらに近づいて来る魔力がありますねー。この反応は……えーっと、多分これはワイルド商人さんだと思います。

 私は魔力だけで個人を判別するのは苦手ですが、それでもワイルド商人さんくらい接する回数が多い人ならわかりますね。


 おや? ワイルド商人さん以外にも魔力を感じますねー。他に誰かいるんでしょうか?


 んー、この魔力は……心当たりは無いはずなのですが、妙に懐かしいような気がしますねー。……いえ、懐かしいというか、もはや実家レベルの安心感を感じるんですがなぜでしょう? うむむむむ……この魔力、凄く気になります。

 もしかして朝から感じている胸のソワソワの原因はこの魔力でしょうか?

 えーと、多分もうすぐ見えてくると思うんですけど…… あっ、見えて来ましたね。ワイルド商人さんの登場です。


 あっ、今日は馬車に乗ってるんですねー。遠出する時ならともかく、この家に来る時に馬車で来るのはちょっと珍しい気がしますね。

 パッと見た感じ、謎の懐かしい魔力の持ち主さんの姿は見つかりませんけど、あの馬車の中にでもいるんでしょうか。



 ワイルド商人さんは馬車を止めて降りて来ると、私の方を向いてワサワサと両手を振って挨拶してくれました。

 これはご丁寧にありがとうございます、こちらからも挨拶をお返ししますよー。ワサワサ。


 私とワイルド商人さんが向かい合ってワサワサし合っていると、家の中からちくわちゃんが出て来ました。

 きっと音か気配でワイルド商人さんが来た事に気づいたんでしょう。


 ワイルド商人さんはしばらくの間ちくわちゃんとお話しした後、馬車に戻って荷台から荷物を持ってきました。

 おお、何かはわかりませんけど沢山ありますねー。


 ワイルド商人さんは沢山の荷物の中から『君に決めた!』って感じで、1つのツボを選んでちくわちゃんの前に持って行きました。

 ツボの大きさは片手でも持てはするけど少し大きいってかなー、ってくらいで、形は……あれですね。

 世界的に有名な黄色いクマさんのお話に出てくるハチミツのツボに似ています。


 フタを開けると、中に入っていたのは大きめの飴玉くらいの……あれはなんでしょう? 見ただけではよくわかりませんねー。



 「お菓子みたいね。多分ナッツ系の何かとドライフルーツを丸く固めた物っぽいわ。……美味しそう」


 ツボの中身を見たぺルルちゃんがそう言いました。

 食いしん坊さんのぺルルちゃんが美味しそうだと言うんだから、あのお菓子はきっとなかなかの逸品なのでしょう。

 ふむふむ、ワイルド商人さんは食べ物のお裾分けに来てくれたんですね。いつも色々と良くしていただいてありがとうございます。

 んー、だとするとあっちの木箱とかその奥の樽とかも食べ物なんでしょうかねー?


 私は並べられた他の荷物にチラリと目をやりました。

 ……ん? 気のせいでしょうか? 奥にあるあの樽から、朝から感じている懐かしい魔力が漂ってくるような気がします。

 ぺルルちゃんにも報告しておくとしましょうか。


 ぺルル・ココロ・ソワソワ・ゲンイン・is・キット・タルヤネン。


 「えっ? 樽って、あそこの樽?」


 ぺルルちゃんは樽の方を2~3秒ほどジッと見た後、難しい顔をして首を傾げました。



 「本当だ。あの樽から霊的生命体っぽい波長の魔力を感じるわね。リンが懐かしいと感じるってことは同族……つまり精霊?

 うーん、でも精霊にしては少し魔力が小さいから妖精? 確かに私も不思議と懐かしいような感覚を感じてるし、その可能性も……

 でもなんか妖精とも違う気がするのよね。……危険ではなさそうだし、ちょっと近づいてみようかしら」


 

 ぺルルちゃんが樽に近づこうとしてパタパタ飛び始めた時、丁度ワイルド商人さんがその樽に手を伸ばしました。

 樽の上に載っていた石がどかされてフタが開かれると、中から出て来たのは……なんと! 大根のぬか漬けでした。



 「……あれ? 漬物? 精霊か妖精が入っているんじゃなかったの?」


 ぺルルちゃんは呆気に取られた様子で、その場でパタパタと飛んでいます。


 まさか大根のぬか漬けがこの世界にあるとは思いませんでしたねー。これにはぺルルちゃんも流石に意表をつかれたようです。

 ふむふむ、ぬか漬けなら前世が日本人だった私が懐かしい気配を感じても仕方ありませんね。んー、懐かしい故郷の気配が漂って来ます。

 ……って……おや? 違いますねー? いえ、ぬか漬けが懐かしいのも間違いではないのですけど、この、胸が痛くなるくらいの懐かしさは、それとは別のものから感じられる気がします。


 むむむむっ……なぜでしょうか? この気配の持ち主だけは、私が見つけなくてはいけない気がします!

 どこですか? この気配はどこから感じるんですか?


 私は感覚を研ぎ澄まして一生懸命気配を探ります。

 ……っ! わかりました! この気配は漬物石から感じます!

 ですけど…… ですけど、この気配は……。


 私は蔦をにゅっと伸ばして、漬物石を恐る恐る突っついてみました。



 どうもこんにちは、モーリンです。そして、毛利 鈴でもあります。

 あなたは……誰ですか?

 もしかして…… もしかしてなんですけど、あなたは……。


 

 ツンツン、っと私が漬物石に触れた瞬間、頭の中で、ピカッ! っと強烈なフラッシュが起きたような感覚がありました。

 そしてその直後、前世の思い出が鮮明に浮かび上がりました。


 今までも別に記憶を失っていた訳ではありません。ですけど、寂しくなると困るから普段は考え過ぎないように気をつけていたんです。

 でも今はその思い出が、押さえきれない勢いでどんどんと溢れ出てきて止まらないです……!


 色々な思い出が頭の中でランダムに再生されます。

 家でゴロゴロして学校に行って、帰ってきたらまたゴロゴロするだけの、平凡で、だけどとても楽しかった日常……。

 そして、そんな日常の中で、『まったく、鈴はしょうがないわね』って言って、私の隣で笑ってくれていた大切な友達……。

 

 やっぱり、やっぱりあなたは……!


 ここにいるはずがありませんし、根拠だってありません! だけど自信が……

 いいえ、自信ではなく確信がありますっ!!

 これは…… この漬物石は、稲穂ちゃんですっ!!


 私はたまらずに走り出そうとしました。ですが今の私は木の姿です。

 足は根っこになってしっかりと地面に食い込んでいるので、走るどころか少しも動かすことができません。

 

 うぬぬぬっ! もどかしいですー! ……ごめんなさい! まだぺルルちゃんから許可は出てませんが、どうしても我慢できません!

 後で全裸土下座でもなんでもするので、今は許してください!


 私はおそらく過去最速のスピードで人間の姿に変身して、一気に走り出しました。


 

 「ちょっ……! いきなり変身なんかしてどうしたの!?」


 ぺルルちゃんが驚いたように叫びました。きっとちくわちゃんとワイルド商人さんも驚いていることでしょう。

 ですが、今はそれを気にしている心の余裕はありません。


 あと2歩……! 1歩っ……! ……稲穂ちゃんっ!!


 私は稲穂ちゃんに向かって両手を伸ばして、そしてギュッと、強く胸に抱き締めました。


 石の体には人間と同じ体温なんて無いはずです。

 だけど私は、あの頃に感じていたのと同じ懐かしいぬくもりを、今、確かに感じています。



 あははっ…… 稲穂ちゃん、お久しぶり……ですねー。





 ーーーー フリージア視点



 「むぅ……とうもろこしの粉と芋くらいしかない……。どうしよう」


 

 そろそろお昼ご飯を用意しようと思って棚の中を覗いてみたけど、あんまり材料が残っていなかった。

 昨日のうちに市場で買っておけばよかったのにうっかりしてたなぁ。外でモーリンと妖精を待たせているから早く用意しなくちゃいけないのに。


 家で作るのは諦めて、モーリンと妖精と私の3人で屋台の軽食でも食べに行こうかな? う~ん、でもお金が足りないから先にモーリン神殿で寄付金を受け取って……あっ! でも神殿からお金を受け取る時は兄さんかヒースさんの付き添いがないと駄目って言われてたんだっけ? じゃあ先に兄さんかヒースさんに声をかけなきゃいけないのか……めんどくさいなぁ。


 「むぅ……私はもう一人前なのに、なんでお金の管理を任せて貰えないんだろう? 大人のレディとしての待遇を要求する! ……それはそれとして、ご飯どうしようかな?」



 ぶつぶつと文句を言いながら昼ご飯の事を考えていたその時、遠くから何かの音が近づいて来るのに気づいた。


 「この音は……馬車かな。誰だろう?」


  知らない人ならここに近づく前に警備兵が止めるはずだから知ってる人のはずだけど、もしもモーリンの敵だったら倒さないとね。


 私は念のためにいつでも戦えるように心の準備をしながら外に出た。



 「おっ、出てきたか」


 そこにいたのはアウグスト君だった。

 ……まあ、考えてみれば当然かな? 私の知り合いで馬車に乗って来そうなのってアウグスト君かトレニアくらいしかいないし。

 だけど、家の前まで馬車で来るのは珍しいよね。



 「アウグスト君、なんで馬車なんて連れているの?」


 「ん? ああ、手で持ち歩くにはちょっと荷物が多くてな」


 「荷物? 何を積んでるの?」


 「色々だ。俺が数日前から出かけてたってのは知ってたか?」



 そういえば、アウグスト君が出かけてるっていうのは何日か前に聞いた気がする。えーっと、確か……。


 「思い出した。どこかで荷馬車が動けなくなったから受け取りに行ったんでしょ? 確かトレニアの実家から送って来た荷物だっけ?」


 「ああ、街の発展のために、って名目で色々と寄付してくれたよ。……商人から商人への寄付が100%の善意なんてことはまずあり得ないから、後で見返りに何か面倒なものをガッツリと要求されるんだろうが……まあそこは持ちつ持たれつってヤツだな。

 で、それで貰った荷物に食い物もいくつかあったんだが、1人で食うにはちょっと多かったから少し分けようかと思って持って来たんだ」


 

 そう言いながらアウグスト君は馬車の荷台を軽くポンポンと叩いた。

 食べ物をくれるの? やった! ご飯の用意をどうしようか考えてたところだったから、丁度良かった!



 「今すぐ食べるからちょうだい。あっ、もちろんモーリンと妖精の分も用意してね」


 「ははっ、もしかしてまだ飯を食ってなかったのか? あんまり主食になるような食べ物じゃなくて悪いが、すぐに支度しよう」



 アウグスト君は笑いながら地面に大きな布を敷くと、その上に荷台から降ろした木箱とか樽とかを並べた。

 そしてその中から手に乗るくらいのつぼを手に取って、私の目の前でフタを開けて中を見せてくれた。 


 「まずこれはどうだ? クルミとドライフルーツに砂糖と小麦粉をまぶして焼き固めたものだ」


 「それ美味しそう! あっ……だけど甘いものは最後にとっておきたいから、先に他のやつを見せて」


 「あいよ、了解。ここにあるやつで甘くないのは……炒った豆、魚の干物、東国風の漬物の3つだな」


 アウグスト君は並べた木箱や樽を順番に指差して説明してくれた。

 炒った豆と魚の干物はわかるけど、東国風の漬物? ……どこの国でも漬物は漬物じゃないの?



 「ねえ、東国風の漬物って何? 普段食べてる漬物と違うの?」


 「ん? ああ、漬けてる野菜も漬け方も違うぞ。だからもちろん味や匂いもこっちの漬物とは随分と違う。……味見してみるか?」


 「むぅ……漬物はあんまり好きじゃないけど、興味あるから食べてみる。1口だけちょうだい」


 「おう、ちょっと待ってろ」


 アウグスト君は上に乗っていた石をどけてフタを開けた。するとなんだかムワッて感じの匂いが辺りに広がる。

 むぅ……変な匂い。我慢できないほど臭いわけじゃないけど、あんまり美味しそうな匂いじゃないなぁ。

 モーリンはこの匂い大丈夫かな。嫌がってない?


 もしもモーリンが嫌そうな反応をしてたら漬物は引っ込めてもらおう。そう思ってモーリンの様子を見ると……

 あれ? なんだろう。モーリンは漬物の入った樽の方じゃなくて、どけた漬物石の方をジッと見ている。

 ……それに、モーリンの表情がいつもと違う?


 パッと見ただけならいつも通りの無表情に見えるけど、よく見るといつもより目を大きく開けてるし、眉毛も少し上がってる。

 他の人ならきっと気づかないくらいの、ほんのちょっとだけの変化だけど私にはわかるよ。モーリン、すごく驚いてるみたい。

 どうしたんだろう……あの石に何かあるのかな?



 「周りのぬかを取って……っと。よし、1口分だけ切ったぞ。ほら、味見を…… ん? フリージア先輩? どうかしたのか?」


 切った漬物を小皿にのせたアウグスト君が、私の様子に気づいてそう言った。


 「むぅ……わかんないけど、なんかモーリンの様子が変」


 

 モーリンは蔦をにゅるっと伸ばして何かを確かめるみたいに恐る恐る石をツンツンと突っつくと、次の瞬間いきなり人間の姿に変身して走り出して、飛び付くようにしてその石を抱き上げた。

 

 モーリンが混乱している? もしかしてあの石がなにかしたの?

 むぅ! このっ! 石のクセにっ……!! 

 

 私は石を叩き割ってやろうと思って拳に魔力を込める。……だけど、いざ殴りかかる直前で気づいた。

 モーリンは確かに混乱しているみたいだけど、それは別に怒ったり悲しんだりしているわけじゃないって事に。

 

 だって、石を抱き締めるモーリンの雰囲気は、とても優しくて穏やかで幸せそうだから。


 あの石が何なのかは全然わからないけど、モーリンがあの石を凄く大切に想っているっていう事だけは、よくわかる。

 多分…… 多分、私の事を想ってくれているのと同じくらいに。


 きっとあの石はモーリンにとって凄く大切な物なんだと思う。モーリンが大切な物と出会えたなら、それは凄く良いことだよね。


 ……だけど…… むぅ……なんだか心の奥がモヤモヤする……。 

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませていただいてます。 おお~、ようやく合流できましたね。 リンとちくわちゃんのボケっぷりに、稲穂ちゃんの心労が大変なことになりそうですが^_^; 将来的にはフラスケちゃん…
[一言] やっと会えた もうちょっとで邂逅するって所から長かったなぁ(70日)
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