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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
1章ですよ 誕生して成長して、団体さんが引っ越して来ました。
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閑話 大妖精ディアモンの憂鬱

主人公を転生させたイケメン妖精、大妖精ディアモン視点です。

「アッテンの森で新しい妖精が生まれた? 森の名前だけでは判らん! まず、何処の世界かを言ってくれ。 ビヨンドラだと? ならサフィールを迎えにやれ」


 「リーズガルドのサマリー草原で魔力枯渇? ……おい、リーズガルドの地図が無いぞ!? 誰が持っていった?」


 「……よし、霊玉50個精製完了、これをアンブルの所に届けて…… 何? ジャッドも霊玉を欲しがってる? アイツは創造魔法が使えるだろう!? 自分で創らせろ!!」



 『妖精』と聞くと多くの者が、

 『陽気で気まぐれ』 『その場のノリで行動する』 『子供っぽくて遊び好き』

 といったイメージを持つらしい。


 まさしくその通り。 否定の言葉も無い。 大多数の妖精は、その通りの性格だ。

 ……だが、大多数が不真面目だからこそ、一部の妖精は、非常に忙しく働く事になるのだ。


 ……この私のように……。



 ーーーーーー 大妖精 ディアモン視点



 ふう、これで急ぎの仕事は終わったか? とりあえず少し休憩を……


 「ディアモンさまー、オベロンさまがーきてますよー」


 伝令妖精がやる気の無い声で、とんでもない事を報告する。

 「っ!……すぐに通すのだ!」


 実は妖精界という世界は1つでは無い。

 妖精という種族は、神から世界の魔力バランスを管理する仕事を与えられているのだが、管理対象の世界は複数あるために、4つの妖精界で担当を分けて管理している。


 そして、それぞれの妖精界の代表達は名目上は対等という事になっているのだが、やはり実際には個人の魔力量やキャリアなどによって格の上下がある。


 そして、これからここへ来るオベロンは、最も格上の大妖精だ。 ……しかも……


 「……地球の担当だったはずだ。 今回来たのは()()の件……だろうな」


 私はすぐに応接室に向かった。


 「やあ! ディアモン君! お邪魔してるよ?」


 「……久しぶりだな、オベロン。 妖精族の序列1位がわざわざ何の用かな?」


 「うっわ~、何さ? その嫌そうな顔! それに序列1位なのは、ボクじゃなくって、ボクの奥さんの方だよ?」


 この男……オベロンは最上位・最古参の妖精なのだが、その態度はまさしく世間が想像する、『気まぐれで子供っぽい妖精』そのものだ。

 ……私は彼の能力を認め、尊敬しているが、人格的には苦手だ。 正直な話、本人に楽な態度で接しても良いと許可されているのは助かった。 ……この男に平伏するのは耐え難いからな。


 「……お互い忙しい身だ、早く本題に入ろう」


 「本題? 本題ね~? ……わかってるクセに白々しいなー♪」


 オベロンが顔をのぞき込んでくる。 ……くっ!? やはり威圧感が凄まじい!


 「キミの所のちっちゃい妖精ちゃんが、地球の人間、殺しちゃったよね? いや~、困るよ~、本当に困る。 だって、ボクの世界の魂がキミの世界の冥界に流れちゃったよね? 結構な事故だと思わない?」


 やはりそう来たか!



 魂には縁と言う繋がりがある。

 死者は冥界で穢れ(けが)と記憶を洗い流され、その時に現世の罪と記憶は消えるのだが、縁は消えずに引き継がれ、縁の繋がる者を来世で互いに引き合わせるのだ。

 だが、魂が別世界の冥界で洗い流された場合は、縁も引き継がれずに消えてしまう。

 更にそれは本人だけに止まらず、そこから縁で繋がる魂全てに連鎖的に不具合を与える。


 つまり、一つの魂が別世界の冥界に紛れ込むだけで、その家族や恋人や友人の来世にまで悪影響を与える恐れがあるのだ。 簡単に見過ごせる被害では無い。


 意地の悪そうな笑顔でニヤニヤするオベロン。

 恐らく、この被害の賠償と言う形で何かを要求するつもりだろう。 ……だが。


 「彼女は、私の権限を使って直接リーズガルドに転生させた。 一瞬たりとも冥界の地を踏ませていないから彼女の魂の縁はまだ消えていない。

 今回の命で魂の格を高めれば、次の転生で融通を効かせられるはずだ。

 それで彼女から繋がる縁者への悪影響もカバーできるだろう」


 私の手札を見せると、オベロンの顔が驚きに歪んだ。


 「えー!? だって、個人的な判断で転生させる権利って100年に1人分しか使えないでしよ? キミ、まだ権利を残しておいたの? っていうか、そもそも人間の魂が直接妖精界まで転移したのに、そのまま転生できるくらい綺麗に残ってたの? 普通は消滅しない?」


 「権利については、今回初めて使ったくらいだからな、まだ数回分残っているぞ? 魂の損傷については運が良かっただけか……(ある)いは、彼女の魂が規格外に頑丈だったかのどちらかだな」


 オベロンは不満そうに頬を膨らませながらも、次の質問に移った。


 「でも、転生させてすぐ死んだら無意味だよね? ちゃんと死ににくい転生先を選んだの? 何に転生させたのさ?」


 うぐっ!? ……何に転生させたか…… そ、それを訊くか……!?


 「……木……だ……」

 「へ? いま何て言ったの?」


 や、やはり聞き返されたか!?


 「木に転生させたと言ったんだ!!」


 大声ではっきり伝えた私に、オベロンは当然の質問をしてくる。


 「いや……あの転生の権利って、本人が同意しなきゃ無効だったよね? ……えぇ? なに? 彼女、木になれって言われて素直に同意しちゃったの!? プふ! なっ…… 何それ!? 笑えるんだけど!?」


 笑い出すオベロン。 ……笑い者になっている彼女には悪いが、私は内心では、しめた! っと思った。

 オベロンは笑うほど面白い事があると、明らかに機嫌が良くなるのだ。

 このまま素直に帰ってくれるかも知れない。


 「ねえ、彼女の今の姿を見せてよ。 ボク、凄く興味が出てきたな」


 オベロンの、その注文に私は焦った。


 最近忙しかったため、彼女の事は転生した初日しか見ていなかった……。

 つまり、私も彼女の今の生活を知らないのだ。 だが、断れる状況では無い。


 私は彼女の今を映し出すため、持ち主の望む場所の景色を映す魔道具、『遠見の鏡』に魔力をこめる。

 どうか、オベロンの機嫌が悪くなるような光景が映らぬように、頼む!!


 魔力を受けた遠見の鏡は、小石が投げ込まれた水面の様な波紋を1度広げ、その後にある景色を映し出した。



 ……その景色の中では、樹齢30年ほどの聖王樹が、木の実を投げてオークを爆撃していた。



 「「 はあ!? 」」


 私とオベロンの驚愕の声が重なった。 そして私達は顔を見合わせる。


 「えっと、……1つずつ訊くよ?」


 「……ああ」


 「転生させてから数ヶ月だよね? なんであんなに育ってるの?」


 「……知らん、余程大量の魔力を吸収すれば?…… いや、だが、短期間に吸収できる許容量には限界が……なぜ?」


 「……次の質問。 キミの世界の木は、実を自分で投げるの?」


 「そもそも普通の木は動かん。 魔物化や精霊化すれば出来なくは無いが……あんな攻城兵器の様な投げ方は見たことが無い」


 「じゃあ、瞬時に木の実を作ってるヤツだけどさ。 あれって、創造魔法の一種だよね? なんで使えるの? キミ、そう言う加護とかあげた?」


 「そんな便利な加護が使えるなら、まず自分の部下に使うぞ。 彼女が創造魔法を使える理由は知らん。 むしろ私が知りたい」


 先程から私とオベロンの視線は定まらず、お互いの顔と鏡に映る彼女の姿とを行ったり来たりしている。


 「さっきから『知らん』ばっかりだね? もう少ししっかりと小まめに彼女の様子を見て……

 プふぉ!? あははっ! 今、オークキングの口にすっぽり行ったよ!?

 しかも、なんか枝に花咲かせて踊ってるし!? あははははっ!! 何あれ? 彼女最高!」


 腹を抱えて笑うオベロン。

 う……うむ、オベロンの機嫌が良くなるのはありがたいのだが、このまま彼女を放置するのは不味い気がして来たな……。


 「はぁ、笑わせてもらった。 ……彼女が楽しそうに暮らしてるのもわかったから、今日は帰るよ。 あっ! あと、彼女の居る座標教えてよ、帰ってから、うちの奥さんにも見せるから。 いや~、いい娯楽になりそうだ」


 こうしてオベロンは帰って行ったが、まだ私の心は晴れない。


 「彼女には、お目付け役が必要かもしれないな…… だが、人材不足の妖精界から使える人材を減らすわけにも行かんか……」


 今の妖精界で重要な仕事をしておらず、お目付け役がこなせる程度には信頼できて、時には彼女のサポートもできる人材…… くっ、難しい人選だな。


 一度、若い妖精達の名簿を引っ張り出すか。


 「うぬぅ……また仕事が増えたか……」


 ……どうやら今日の休憩時間も無くなったらしい。

閑話はここまで。次からは2章がスタートですが、取り敢えず一区切りしたので2日ほど投稿を休ませて頂きます。

8月4日 土曜日の20時頃に投稿を再開する予定です。

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