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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
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後日談 7話 キノコ・タケノコ論争からの中途半端な回復

今回はちょっと長めです。

最初と最後がモーリン視点で、中盤はちくわちゃん視点です。

 どうもこんにちは、盆栽改め観葉植物です。


 ちくわちゃんにおんぶされて、街までお散歩に来ましたよ。

 うーん、今日も活気がありますねー。 まだ昼前ですけど人がたくさんいます。


 おや? 何だかこちらを見て呆然としている人たちがいますねー? ふむふむ、さてはちくわちゃんがあまりに可愛いから注目の的になっているんですね?

 ちくわちゃんは大人気です! 流石はちくわちゃん! 略して『さすちく』です!


 ちくわちゃんが皆さんに好かれると、なんだか私まで嬉しくなってきますねー!

 今日も楽しい気分でお散歩できそうですね。 ワッサワサ。





 ーーーー フリージア視点




 えへへっ! 嬉しいな!

 今日はモーリンの方から一緒に散歩がしたいってアピールしてくれたんだ。

 だから私は今、木の姿のモーリンを背負って歩いているんだ。

 

 でも、なんだかこっちを見てヒソヒソ言っている人が多いなぁ。

 ……あっ、さてはみんなモーリンが神々しくて魅力的だから注目してるんだね? うーん、やっぱりモーリンは大人気だね。 流石はモーリン!


 モーリンの事を好きな人が増えると、なんだか私まで嬉しくなってくるなぁ。

 でも、モーリンの事を1番好きなのは私だからね。 誰にもあげないよ?

 なんちゃって。 えへへっ。



 今日も楽しく過ごせそうだね。 さて、今日はどこを歩こうかな?


 モーリンを色んな場所に連れて行ってあげたいし、それに……内緒だけど、実はモーリンを背負って歩いている姿を、みんなに見せて自慢したいって思っちゃってるんだよね。

 自慢はあんまり良くない事だけど……少しくらいなら良いよね?


 やっぱりモーリンと仲の良いところを見せびらかすなら、人通りの多い所が良いかな。 うん、ローズさんの酒場の前を通ってみよう。


 それじゃあこっちの角を曲がって……っと。



 あれ? ローズさんの酒場の正面に大きな家を建てているね。

 まだ作りかけみたいだけど、大きいなあ。 これが完成したら、この街で2番か3番くらいに大きな建物になるんじゃないかな?

 あっ、1番大きな建物は当然、モーリンの神殿だよ? まあ、モーリンは私の家に住んでるからあんまり神殿は使ってないんだけどね。



 「……あら?」


 ん? この声は……。

 声のした方を振り向くと…… あ、やっぱりローズさんだ。


 「モーリン様、おはようございます」


 ローズさんがモーリンに向けてワサワサした。

 む、むぅ……! 腕をワサワサする度に胸もユサユサ揺れてるっ……!

 う、羨ましくないもん! 私の胸はモーリンとお揃いのサイズなんだから、このままの方が良いんだもん!



 「それとフリージアちゃんもおはよう。 何を見ているの?」


 むぅ……! ローズさんの胸を睨んでたのがバレた!?

 

 「ああ、向かいの建物を見てたのね? これは冒険者ギルドの支部を建てているんですって」


 そっちか。 胸を睨んでたのはバレなかったみたいだね。

 ……でも冒険者ギルド? ギルドの支部がこの街にできるの?



 「むぅ……でも冒険者ギルドは精霊を嫌ってるんだよね? この街で精霊が嫌いなんて言ったら叩き出されるよ?

 って言うか私が叩き出すよ? 叩き出すっていうか叩き潰すよ?」


 「そこはちゃんと考えてあるみたいだから、叩き潰しちゃダメよ? とりあえず立ち話もなんだから、私の店へどうぞ。 ちょうど中でもその話をしていた所なのよ」


 「ふうん。 じゃあお邪魔するね」


 

 私は案内されるままローズさんの店に入って……カウンター席を見た。


 「……むぅ……。なんかいる」



 「おいおい、その『なんか』ってのはオレの事かい? 相変わらずだなぁ」


 ロドルフォだ。 むぅ……昼間から酒を飲んで、やっぱりダメなヤツだ。

 

 ロドルフォはどうでもいいけど、そばのテーブル席にジーナとティートもいるから挨拶くらいしておこうかな。

 ……あれ? 他にも誰かいるね、女の人とおじさんだ。 むぅ……会った事がある気がするんだけど……誰だっけ?

 まあいいや、ジーナかティートが教えてくれるよね。



 「ジーナ、ティート、こんにちは。 ……あと、そこの2人は誰だっけ? 見たことあるけど忘れちゃった」


 「お、お前……よくそんな事をハッキリ言えるな? 普通は覚えていなくてもそんなにズバリとは言わないだろ?」


 ティートが口元をヒクヒクさせながら言った。

 むぅ……失礼なのはわかってるけど、忘れちゃったものは仕方ないと思うよ?

 


 「忘れちゃった? フリージアちゃんは2人とも会ったことあるんだけど」


 ジーナが困ったような顔で言った。

 うん、会ったことがあるのは覚えてるんだけど……でも、どこで会ったのかが覚えてないんだよね。



 「うう……ひどいよ、フリージアさん。 ほら、冒険者ギルドの受付で何回か会ってるでしょ? 思い出してよ~」


 あっ、女の人が涙目になっちゃった。

 そっか、思い出した! この人って私がギルドに登録した時の受付嬢さんか。



 「むぅ……思い出した。 忘れててごめんなさい」


 「ああ、うん! いいよいいよ、謝らなくても! 思い出してもらえれば」


 受付嬢さんは手をパタパタと振りながら笑っている。 うん、機嫌が直って良かった。

 だけど……。 むぅ……もう1人のおじさんはどうしても思い出せない。

 


 「うーん、まあ俺みたいなくたびれたオッサンの事は覚えてなくても仕方ないんじゃないかなぁ? 実際、お嬢ちゃんと会ったのは少しだけだからねぇ。 あっはっはっ」


 おじさんはそう言って頭をボリボリ掻きながら笑ったあと、私に1度ウィンクしてから自己紹介を始めた。

 


 「改めて自己紹介するよ。 オッサンはBランク冒険者ダレスってんだ。 今度こそ覚えてくれると嬉しいなぁ」


 Bランク……ふうん、ロドルフォと同じかぁ。


 私はなんとなくロドルフォの方を見ると、ロドルフォはニヤリと笑った。

 むぅ……なんか腹が立つ。 笑うな。


 「まあBランクには違いないが、ダレスの旦那は本人が断り続けているだけで、何度もAランク昇格の話も出た事がある凄腕だぜ? で、付いた異名が『最強のBランク』だ」


 「最強? へぇ……ならAランクになっちゃえばいいのに」



 「いやいや、Aランクと言えば冒険者たちの憧れのヒーローだよ?

 それがこんなショボいオッサンだったら、皆ガッカリしちゃうじゃないか。 だからオッサンはAランクになんて、とてもなれないよ~」


 むぅ……このおじさん、なんか本気か冗談かわからない話し方をする人だなぁ。 悪い人じゃあなさそうだけど。



 そのとき、ローズさんがお盆にカップを載せてやって来た。


「さあ、お茶を持って来たからフリージアちゃんも椅子に座ったらどう?

 モーリン様の分は、山で汲んだ湧水を用意したわ」


 「ローズさん、ありがとう。 じゃあ座らせてもらうね」


 私は椅子を2つ引いて、片方の椅子の上には背負っていたモーリンを降ろしてから隣の椅子に座ると、ローズさんのくれたお茶を一口飲んだ。

 あっ、花の香りがしてほんのり甘くて美味しい! 家だとヒースさんがくれた薬草茶ばかり飲んでるから、こういうお茶は久しぶりだ。


 水をもらったモーリンも、伸ばした蔦でちゅーちゅー飲んでいる。

 あれ? いつもは頭からザブンとかぶるのに。 ……ああ、ローズさんのお店に水が跳ねたら困るから静かに飲んでるのか。



 「ん? なんだその植木。 うおっ!? なんか顔があるし……って、あれ? この見覚えのある無表情は……もしかしてこれってモーリンか!?」

 

 ティートが驚いてる? ジーナも目を丸くしてるし。

 ……あれ? もしかしてこの2人ってモーリンが木になってるのを見たことなかったっけ? うーん、そう言えばこの2人とモーリンが会うときは、人型の時ばっかりだったかもしれないね。


 ちゃんとこの姿のモーリンも紹介しておこうか。



 「うん、モーリンだよ。モーリンは木の姿の方が魔力の回復が早いみたいなんだ。 それで最近は元の力を早く取り戻すためなのか、ずっとこの姿になってるんだよ。 えへへ、この姿のモーリンも素敵だよね」


 「……素敵? いや、見てて面白いとは思うけど……素敵かぁ?」


 「むぅ……! モーリンが素敵に見えないなんて、ティートはきっと目が腐ってるんだと思う。 ここに来るまでも、街の人たちの視線を釘付けだったんだよ?」


 「視線を釘付けって……それは単に、ちびエルフが木を背負って歩く姿が珍しいから見てただけ……むぐっ!?」

 「しーっ、そこまでよ」


 まだ何かぶつぶつ言っていたティートの口をジーナが手でふさいだ。

 なんだろう? ……まあいいか。

 私はお茶をもう一口飲んだ。 ふう、美味しい。



 「あのー……」


 受付嬢のお姉さんが質問でもしたそうに手を上げた。


 「別にいちいち手を上げなくていいけど、なに?」


 「モーリンって、確かこの街で祀っている精霊の名前だよね? もしかしてその木が?」


 「うん、モーリンは精霊だよ。 この前の戦いで力を使いすぎて小さくなっちゃったんだ」


 「精霊……」


 

 お姉さんは複雑そうな顔をして黙っちゃった。 ……あ、精霊をモンスターだと思ってる人も多いんだっけ?

 むぅ……もしかしてこの人も? ならちゃんと訂正しなきゃ。

 うん、やっぱりしっかりと話し合うことは大事だよね?


 私は握りしめた拳を魔力で強化する。 よし、話し合いの準備は出来たね。

 

 

 「お、おいおいお嬢ちゃん!? な~んか物騒な事を考えてないかい? その魔力を引っ込めてくれないと、オッサンちびっちゃうよ? 中年オヤジの失禁シーンなんて見たくないでしょ?」


 「むぅ……それは確かに見たくない。 でも、魔力を引っ込めるかどうかはモーリンをどう思ってるか次第」


 

 その時、入り口が開いて見覚えのある人影が店に入って来た。



 「お待ちなさい、フリージアさん。 そこは心配いりませんわ」


 「あれ? トレニア? ……今日は用事があるんじゃなかったの?」


 「ええ、ここでの話し合いがその用事というやつですわ。 フリージアさんこそなぜここに? お姉様まで連れて」


 「モーリンと散歩してたら、なんか成り行きで。 それより、さっきの心配いらないって言うのはどういうこと?

 精霊の事をどう思っているか訊も……質問しておかなくて良いの?」


 「うわっ……コイツ、今『訊問』って言いかけたぞ?」


 ティートがボソッと何か言った。



 「むぅ……ティート、うるさい。 トレニア、続けて」



 「この2人はこの街の冒険者ギルドで働いてもらうために、私とアウグスト様が選んでスカウトした人員ですわ。

 当然、精霊に対して悪感情を持っていない事は確認済みです」


 そっか、トレニアとアウグスト君が選んだなら信用してもいいかな。


 「むぅ……2人とも疑ってゴメン」


 私は拳に込めていた魔力を解除した。



 「いやいや、わかってくれればオッサンはそれでいいよ。 それよりオッサンたちもモーリン様にご挨拶させてもらってもいいかな?」


 「モーリンは……うん、機嫌良さそうだね。 じゃあ挨拶していいよ」


 私はモーリンを抱き上げておじさん……ダレスさんだっけ? その人の目線の高さに合わせた。

 するとダレスさんはモーリンに頭を下げて自己紹介を始めた。



 「はじめましてモーリン様、俺はランクB冒険者のダレスって者です。噂の精霊様にお会いできて光栄ですよ。

 この街の冒険者ギルドでギルドマスターをさせてもらうことになりましたんで、今後ともよろしくお願いします」


 え? このおじさんギルドマスターになるの? それは聞いてなかった。

 でも他のみんなは驚いていないみたいだから、私以外は知ってたのかな?



 次は受付嬢のお姉さんが自己紹介を始めた。

 

 「こんにちは、モーリン様。 あの、私は冒険者ギルドの受付嬢でクララーラって言います。 よ、よろしくお願いします!」


 あ、お姉さんはクララーラって言うんだね。 初めて知った。

 でも、なんかラの多い名前だね。



 モーリンは2人を見てワサワサと羽ばたいて挨拶を返した。

 無表情だから分かりにくいけど、多分この2人の事は悪くは思ってなさそうだね。 まあモーリンが初対面で誰かを嫌いになるのは想像しにくいけど。

 



 自己紹介が終わったあとは、ギルドが出来た後の事についての話し合いが始まった。



 「この街の支部では精霊を敵視しないことに決まったが、冒険者ギルド本部のスタンスは今後も変わらないから……」


 「むぅ……! 本部に殴り込もう!」



 「精霊が魔物だ、という認識の冒険者がこの街のギルドに立ち寄った場合は……」 


 「むぅ……! すぐに叩き出そう!」

 


 「フリージアさん? 気持ちは分かりますけど、この街に支部を作る以上はお互いに納得できる妥協点を……」


 「むぅ……! ならこの街に支部を作るのをやめよう!」



 「えぇ? で……でも王国としても、精霊を信仰する街を警戒して、ギルドを通して見張るって意味もあって決めた事だから、支部を作らないって突っぱねるのも『反逆の意志あり』って取られちゃう可能性が……」


 「むぅ……! モーリンを敵視するなら国の方が反逆者だ! お城に殴り込もう! そして王様を部屋に閉じ込めてモーリンの魅力を理解できるようになるまで説得するんだよ!」




 ーーーー



 ……むぅ……追い出された。 何がいけなかったんだろう?

 うーん、わかんないや。 やっぱり難しい話はトレニアに任せよう。



 「モーリン、行こっか」


 私はまたモーリンをおんぶして散歩を続けた。

 次は~……あそこかな?




 神殿に顔を出してみたら、親方がまた新しいモーリンの石像を彫っていた。

 うん、相変わらず良い出来だね。 モーリンも喜んでいるみたいだった。


 親方が言うには神殿はもうほとんど完成していて、あとは仕上げだけなんだって。 遂にモーリン神殿の完成かぁ。楽しみだなあ。



 その後は屋台が並んでいる通りへ行って、食べ物を見て歩いた。

 肉団子の入ったスープを大盛りで頼んで、モーリンとはんぶんこして食べた。

 モーリンは水と土があればご飯を食べなくても大丈夫なのは知ってるけど、やっぱり一緒に食べたほうが美味しいよね。


 周りの人たちが、肉団子を食べるモーリンを見てザワザワしていた。

 うん、わかるよ。 食べ物をモグモグしてるモーリンも可愛いよね。



 肉団子スープを食べ終わると、その隣の屋台を覗いてみた。

 リンゴのハチミツ漬けを売っていたから、妖精へのお土産に買うことにした。


 モーリンの果物に慣れてからは普通の果物を食べる気にはならなかったけど、ハチミツ漬けなら果物ってよりお菓子の枠に入るから食べられる。

 きっとあの妖精も喜んでくれるよね?


 ……そう言えば最近、モーリンの果物を食べてないなぁ……。

 でも今はモーリンが魔力を温存してるから仕方ない。 我慢、我慢!

 魔力に余裕が出来たらまた美味しい果物を創ってくれるはずだから、それまではこういう果物のお菓子で我慢しよう。


 さて、お土産も買ったことだし、そろそろ帰ろうかな。



 「今日は帰ろうか。 また明日もお散歩しようね」


 私は背中のモーリンに声をかける。

 おんぶしているから顔は見えなかったけど、背中の上でワサワサしているのがわかった。

 




 ーーーー モーリン視点



 今日はセクシーさんの酒場へ行きました。


 中から大勢の人の気配がしたので、昼間から酒場が繁盛するとはこの街は飲んべえさんが多いんですねー、とか思っていたのですが、中にいた人の大半は知っている人でした。


 まずは店主であるセクシーさん。 あと駆け出し君と槍のお姉さんの姉弟と、若頭さんがいました。

 それと、はじめましての人が2人いましたね。


 まず1人目は、えーっと……ほら、なんかサスペンスドラマで、普段は地味な部署で眠そうにしている冴えない窓際ヒラ刑事なのに、事件が起こると飄々とした態度で大活躍するタイプの主人公とかいるじゃないですか。 あんな雰囲気のおじさんです。


 で、もう1人はバラエティー番組で裏通りにある変わった飲食店特集とかのリポートに抜擢されるタイプの女子アナみたいなお姉さんです。

 ほら、番組MCをやってる毒舌芸人にイジられそうな感じです。


 なんか2人ともちくわちゃんの顔見知りっぽい感じでしたね。

 ちくわちゃんの友達なら私の友達ということですよねー。

 よろしくでーす。 ワッサワサ。


 セレブお嬢さんも途中からサプライズ出演して、賑やかな感じになって来ました。

 その後はみんな仲良く和やかにお茶会……となれば良かったのですが、残念ながらそういう訳には行かず、何か真面目な顔をして討論みたいな感じになってしまいました。


 で、なんどかちくわちゃんも発言していたようですが、反応を見る限りではちくわちゃんの提案はあまり賛成されてはいない感じですねー。

 最終的にはセクシーさんに笑顔でやんわりと店から追い出されてしまいました。



 あの真剣な会話風景と、ちくわちゃんが追い出されてしまった事から話の内容を想像すると……多分、あれですね。


 キノコのチョコとタケノコのチョコ、どっちが好きかを討論していた時に、ちくわちゃんが横から『両方食べたら?』と正論を言って、『そういう話じゃないんだよ、少し引っ込んでろ』って追い出されちゃった感じでしょうね。

 うん、きっとそうです。

 

 正論が正義とは限らないという話ですね~。 世の中とは複雑な物です。

 追い出されてしまったのは残念ですが、ちくわちゃんも良い経験になったでしょうね。

 さあ、今日の所はもう行きましょうか。



 そのあと私たちはお笑いライブ会場へと行って、親方さんと会いました。

 親方さんは私の等身大フィギュアを作っていました。

 ……小さくなってから私は芸人活動を休止しているというのに、今も親方さんは私の復帰を信じて、公式グッズを作り続けているんですね……頭が下がります。


 私の芸人活動再開を信じてくれている親方のためにも、早く力を取り戻して復帰ライブを開催しなくては!


 私は感謝の気持ちと復帰への決意を込めて、親方さんにワサワサしてからその場を去りました。

 



 その後は屋台でご飯を食べて、お菓子を買ったあと、ちくわハウスへと帰りました。


 ちくわちゃんが帰り際に買ったリンゴのお菓子はぺルルちゃんへのおみやげだったようです。 あー、私もおみやげを買ってあげたかったですねー。

 ですが、私は無一文なのでおみやげを買うこともできません。


 それにしても、2人が仲良しなのはとても嬉しいのですが……

 むむむ……加工したお菓子とは言え、私以外の木から収穫した果物を美味しそうに食べるなんて……なんだか浮気された気分です。 ちょっぴりジェラシーです!


 2人とも、今に見ていてくださいね? すぐに力を取り戻して、美味しい果物を食べさせてあげますからー!

 

 そうと決まればトレーニングですよ! 果物~実れ~、ソイヤ! ソイヤー!


 気合いと共に、枝の先にキュイーンと集まるサムシング……おや? この感覚は…… もしかして果物が実ってます?

 ちくわちゃーん! ぺルルちゃーん! ちょっと見てください!

 来てます、来てます。 力が戻って来てますよー!!

 ワサワサ ワサワサ ワッサワサ!


 「ちょっとリン、何をジタバタしてるのよ…… って、それはっ!」



 フッフッフ、驚いてますね? さあ、久しぶりの果物ですよ。

 是非ともちくわちゃんとぺルルちゃんに食べてもらいたいです。 どうぞどうぞ遠慮なく食べてください!


 ぺルル・フルーツ・デキタ・タベチャイナヨ・You !



 ですが、ちくわちゃんは満面のちくわスマイルを見せてくれたのですが、ぺルルちゃんは微妙な顔をしています。

 おや? どうしました?



 「……なんで銀杏?」



 おや? ……あっ、本当です、何故か銀杏が実ってますねー?

 んー、食べられはしますが、これはフルーツとは言えませんね。

 ……あっ! ちくわちゃん、ストップです! ごめんなさい、そのまま食べちゃダメですよ。 色々と下ごしらえしなくては。




 それからも何度か試してみましたが、銀杏やドングリや松ぼっくりは創れるのですが、果物らしいものは創れませんでした。

 んー、なんとも中途半端に力が戻って来たものです……。



 とりあえず1歩は前進しましたが、どうやら私がピーク時の魔力を取り戻すには、もう少しかかりそうですねー。

 

次回から2~3話はセリーナ編(ストーンライフ!)の方を書く予定です。

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