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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
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後日談 6話 ハチミツ入りちくわからの観葉植物

 どうもこんにちは、盆栽です。


 昨日の夜はちょこっと雨が降りました。 でもって朝には晴れになったので、今は土も程よく湿っていながらお日さまも出ているという状況です。

 う~ん! 植物としては実に快適なお天気ですねー! すぐそばにはちくわちゃんとぺルルちゃんもいてくれてますし、今日も素敵な1日になりそうです!




 この前プランターに植え替えてもらってから数日経ちましたよ。

 最近はちくわちゃんがプランターごと持ち歩いてくれるからあまり人型になる必要もないんですよ。

 なのでほとんどの時間を盆栽モードで過ごしています。


 そのお陰か、2~3日ほど前から体の調子が良いんですよねー。

 これは体に魔力が戻って来てるという事でしょうかね? 自分ではあまりわからないので、ぺルルちゃんに聞いてみましょう。


 ぺルル・ワタシ・ムッキムキ?


 「何よ突然。 どう見ても全然ムキムキじゃないわよ。 ……ああ、魔力が回復してるかどうかって意味? そういう意味ならそうね、結構戻って来てるわね。

 最近は木の状態でいる時間を多く取ってるっていうのもそうだけど、きっと街の人達と会っているのも影響していると思うわ」


 ふむふむ、確かにここ数日は、毎日の様にちくわちゃんがプランターごと私を背負って街に連れて行ってくれるので、皆さんとお会いする機会も多いですけど……それが私の魔力の回復に関係してるんですか?


 「精霊って言うのは大きく分ければ神族に属するのよ。 だから信者から祈りを捧げられれば、それが力になるわ。

 少なくともこの街に最初からいたメンバーはリンに対して信仰心を持っているから、その人達から祈られれば力になるはずよ」


 そう言ってからチラリとちくわちゃんの方を見ました。

 ちくわちゃんは……なんか私の葉っぱに顔を突っ込んで匂いを嗅いでます。

 んー、ちょっと恥ずかしいですねー。


 「本当は巫女の祈りが一番力になるんだけど……その子の祈りは、純粋な信仰心以外にもドロリとした何かがこもってそうなのよね…… いや、信仰心が高い事は間違いないんでしょうけど」


 信仰が力に……ですか。 それはあまり期待出来ないと思いますねー。 皆さんにゴッド的な何かだと思われた事もありましたけど、そろそろ私の本性が平凡な小市民だと気づいて、皆さん、私への信仰心なんて失っている頃だと思います。


 それにしても、ちくわちゃんの祈りにドロリとした何か、ですか?

 ……ハチミツか何かですかね? 確かにプリティなちくわちゃんには甘い物が似合いますし。


 あっ……そう言えばハチミツ入りちくわというのをスーパーで見たことがありますね。 ですがあれってほんのちょこっと練り込んであるだけなんですよね。 実は私は最初にあれを知ったとき、ハチミツたっぷりのちくわスイーツかと思ったんですよ。

 ほら、おせち料理の伊達巻とかって、魚肉を使っているのにほぼスイーツみたいな物じゃないですか、だから凄く甘いちくわというのもありだと思うんですよね~。 ……おや? 何の話をしていましたっけ?


 「……なんかまた思考が横路に逸れてるっぽいわね。 まあいいいわ、とにかくリンが順調に力を取り戻しているのは保証するわ。 精霊としての核もちゃんと成長してるみたいよ」


 ふむふむ、それはありがたいです。

 んー、ですけど、そのわりには少しも大きくなってる気がしませんねー?

 順調に力が戻っているというなら、ほんの少しくらいは大きくなっても良いと思うんですけど、なんでいつまでも盆栽サイズのままなんでしょうかね?


 ぺルル・ワタシ・フルタイム・ボンサイ・is・ナンデヤネン?



 「は? 何で盆栽かって言われても……リンが盆栽になろうとしてるから盆栽になってるんじゃないの? えっ? 違うの?」


 不思議そうな顔をするぺルルちゃん。 きょとんとしてる顔もかわいいですねー。


 ……ふむふむ、私が盆栽になろうとしたから盆栽に?

 ですが、今の私は盆栽ですから、盆栽が盆栽であろうとしてもおかしくないですよね? それを盆栽である私が盆栽になろうとしているから盆栽のままだと言われましても、盆栽だから盆栽だとしか言えないわけで、盆栽が盆栽の時、盆栽である私が盆栽な盆栽を盆栽で……

 ふむ……つまり、『宇宙は盆栽だった』……そういう事ですね? 


 「ちょっと……リン、大丈夫!? なんか目がクルクル回ってるけど、ちゃんと正気は保ってる? 混乱してない!?」


 ……はっ!? 今、なにか宇宙の真理に触れたような気が……?

 うっ……頭が……。 え~っと、なんの話でしたっけ?



 ぺルルちゃんはしばらく私の顔を覗き込んだあと、

 「うん、大丈夫そうね。 いつもの眠そうな目だわ」と言って頷くと、改めて説明をしてくれました。


 「私が言いたいのは、リン自身がいつもの盆栽の姿をイメージしてるからその姿で固定されているんじゃないかって事よ。

 ちゃんと大きくなった姿をイメージしてその姿になろうと意識してる?」


 あっ……なるほど、そういう事でしたか。

 私は魔力が回復すれば、勝手に体がニョキニョキ大きくなって行くと思っていましたが、そうではなくて自身で意識して体を変化させる必要があったということでしたか。

 確かにそれはやっていませんでしたね、うっかりしてました。


 ふむふむ、では早速やってみましょうか。 せーの……


 「ちょっとストップ! そのまま大きくなったら、せっかく貰ったばかりのプランターが壊れちゃうかも知れないわよ? 念のために一回地面に植え直すわ」


 おっとっと……そうですね、せっかくちくわちゃんとセレブお嬢さんからプレゼントしてもらったのに、壊してしまっては2人に悪いですし、何より私自身が悲しくなっちゃいます。

 それではお手数かけますけど、植え替えをお願いしますねー。



 ぺルルちゃんはポンポンとちくわちゃんの肩を叩きました。

 ちくわちゃんが『なんじゃらほい?』って感じで振り向くと、ぺルルちゃんは地面を指差してから私を引っ張るジェスチャーをしました。


 ちくわちゃんはそれで理解したらしく、日当たりのいい場所の土を掘り返します。

 その間にぺルルちゃんは私を大根のようにズボッと引っこ抜いて、ちくわちゃんが掘った穴の所まで抱っこしたまま飛んで持って行ってくれました。

 ……盆栽を抱っこしてパタパタと飛んで行く妖精さんというのもレアな光景ですよね。

 あっ、そもそも妖精さんそのものがレアな存在でしたか。



 二人は私を地面に植え替えて、土をかけてくれます。 んー、やっぱりこの、土をかけてもらう瞬間が凄く心地良いですねー、ちょっぴり癖になりそうです。

 ……おっと、植え替えも終わったようですね。 ふむふむ、それでは巨大化できるか試してみましょうか。


 では……忍法・ビッグモーリンの術!


 あ、別に私は忍者ではありませんが、なんか必殺技っぽくイメージしたほうが気合いが入りそうだったので、適当に考えてみました。


 おお、やはりネーミングが良かったのでしょうか? 成功したようです。

 体の中から、ゴゴゴゴッて感じに膨らんでいく不思議なサムシングがキュイインでブワアァーってなる感覚と共に、私の体が大きくなって行きます。

 大きくな~れ、大きくな~れ、大きく……あっ、ここで終わりですか。

 んー……何とも中途半端な感じで止まっちゃいましたね。



 以前が木の着ぐるみを着た人間サイズで、さっきまでが盆栽サイズと例えるなら、今は大きめの観葉植物という感じでしょうか?

 ほら、オシャレなお家の玄関とかにありそうな、1メートルちょっと位の高さの木があるじゃないですか、そんな感じです。

 相変わらず、幹の部分から顔がニョキッと生えてますけど。

 ……うん、前言撤回です。 オシャレなお家の玄関に人面観葉植物なんてありませんね。


 それにしても……大きくなれたのはいいのですが、どうせなら以前のサイズまで1発で戻りたかったですね。

 ビッグモーリンの術とか名付けましたがビッグというほどのサイズではありませんし……ふむ、ミドルモーリンの術に改名しましょうか。



 「モーリンkWeよgP$!」


 ちくわちゃんが満面の笑みで何かを言っていますね。 相変わらず『モーリン』の部分しか上手く聞き取れませんが、多分、私が大きくなった事を喜んでくれているんだと思います。

 ……良かったです、ちくわちゃんは盆栽サイズの私を気に入ってくれているようだったので、大きくなったらガッカリするんじゃないかとちょっぴり心配していたんですよね。 嫌われなくてホッとしましたよ~。



 「へえ、結構大きくなったわね。 多分、葉っぱや根っこが大きくなった分だけ日光や土からの魔力の吸収効率も上がってるだろうし、元のサイズまで成長するのも近いと思うわ」


 ぺルルちゃんはそう言った後、私をジーっと眺めました。

 なんでしょう、何か変な所があるんでしょうか?


 ぺルル・ワタシ・ドコカ・ヘン?



 「リンが変かどうかって言うなら、そりゃ変だって即答するわね。 でも、今は別に変だから見てたんじゃなくて、体の大きさを見てたのよ。

 ……そのサイズならギリギリだけどそのプランターに入れそうね。

 どうする? そこにいる? それともプランターに植え替える?」


 そうですね~……本当は地面に生えている方が植物としては自然なんでしょうが、あのプランターはちくわちゃんとセレブお嬢さんがくれたお気に入りですから、入れるサイズでいる内はあっちにいたい気がしますね。

 では、植え替えをお願いしましょう。


 ワタシ・プランター・ウエカエ・ヨロシコ。



 「了解よ。 よいしょっ! うっ……そのサイズになると私の腕力だと引っこ抜くのは難しいわね。 魔法を使えばどうにでもなるけど……まあ、大人しくこの子に頼みましょうか」


 そう言うとぺルルちゃんはちくわちゃんに合図をしようとしましたが、それよりも先に私がちくわちゃんをツンツンして合図をして、その後に髪の毛をうにょ~んと伸ばしてプランターの方をクイッ、クイッと示しました。

 私の植え替えをしてもらうんですから、ぺルルちゃん経由ではなくて自分で伝えるのが筋ってものですからね。



 すると私の言いたいことが伝わったのか、ちくわちゃんはニッコリと笑ってコクコクと頷くと、根っこを優しく掘り返してから私を引っこ抜いて、プランターに植え戻してくれました。

 

 私の体はプランターにスッポリとパイルダーオン。

 ……うん、サイズ的に確かにギリギリです。 まだ窮屈というほどではありませんけど、あまり余裕もありません。

 早く大きくなりたい気持ちもありますが、これ以上大きくなるとこのプランターが使えなくなってしまうと思うと寂しさもあって、複雑な気持ちに……って、おおぉ? なんか急に目線が高くなりましたねー?

 

 おや? いつの間にかちくわちゃんがベルトに腕を通して私を背負っていますね。 ああ、それで目線が高くなったんですか。

 んー、そのまま街の方へと歩き始めましたね。 お出かけですか?

 いつものお散歩の時間より少し早い気もしますけど……。



 「あっ、もしかして……」


 ん? ぺルルちゃんが何か気づいたようです。


 「リンがプランターに入りたがったのを見て、背負って街に連れていって欲しいっておねだりしてると解釈したのかも。

 ほら、あれよ。 散歩したくなった飼い犬が、飼い主の所にリードをくわえて持って行って催促したりするじゃない。

  ……だってコレ見てよ。 その子、珍しくリンの方から甘えてきたと思って、凄く嬉しそうにニコニコしてるわよ。 これは今さら訂正できない感じだわ」

 

 

 おおっ……確かにちくわちゃんが、凄く機嫌良さそうにニコニコしていますね。


 ふむふむ、私はペットを飼ったことはありませんが、動画サイトでリードをくわえて飼い主の所に行くワンちゃんの動画は見たことがありますね。

 んー、私がお散歩のおねだりをしてると思われましたか~、なんか恥ずかしい気がします。

 ですけどちくわちゃんとお散歩する事が大好きなのは本当ですから、別に訂正する必要はありませんね。 せっかくおんぶしてくれるというなら、このままお散歩に行きましょうか。

 うーんお散歩、楽しみですね~。 ワッサワサ!



 「うわ……観葉植物を背負って歩くエルフの巫女って、インパクトのあるビジュアルね。 盆栽の時でもアレだったけど、より破壊力が増してるわ。

 しかもその観葉植物には顔があって、枝をワサワサ振ってるんだから、もう理解の難しい前衛芸術みたいな光景よ。 夢に出そう」


 おや? ぺルルちゃんが何か言ってますねー? よく聞こませんでしたけど。

 ……あっ、そうです。 ぺルルちゃんも一緒にお散歩に行きましょうよ!


 ぺルル・レッツゴー・オサンポ・エブリバディ・オサンポ!



 「うーん、お誘いは嬉しいけど私は少し調べものをしたいから遠慮しておくわ、今日は2人で行ってらっしゃい」


 あ~、そうですね。 ぺルルちゃんは出世するための試験中ですから、いつもいつも遊んでばかりもいられませんか。

 無理に誘うのもよくないですから、今日はちくわちゃんと2人で行きましょうか。


 それではちょっとお散歩に行ってきまーす。 ワッサワサ。

 

 

 


 

 

 


 

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