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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
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後日談 4話 マハトマぺルルからの忘れていた基礎

 どうもこんにちは、ちびモーリンです。


 今日はちょっと機嫌がいいんです。 こんなに機嫌がいいのはいつぶりでしょうか?

 きっと昨日ぶりですねー。 それとも一昨日でしょうか?


 ……おや? どちらにせよ結構最近ですねー? ……というか、考えてみると私は基本的に機嫌が悪いことは少ないですね。 いつもニコニコ無表情です。


 ということで私の機嫌はいつも通りと判明しましたが、嬉しい事があったのは本当ですよ。

 実は最近忙しくてあまり会いに来てくれなかったぺルルちゃんが、またちょくちょく会いに来てくれるようになったんですよー。 とても嬉しいです。


 最近は出世するためのお勉強をしていたらしいのですが、それが一区切りしたとのことです。 資格試験的なものに合格したってことですかね?

 んー、その辺について詳しいことは知らないんですよねー。 忙しそうにしていたので、あんまりぺルルちゃん本人に質問しなかったんですよ。

 これからぺルルちゃんとお話できる機会が増えるなら、その辺りを聞いてみるのもいいかも知れませんね。



 「リン、来たわよー!」


 可愛らしい声と、窓をトントンとノックする音が聞こえました。

 噂をすればなんとやら。ぺルルちゃんの登場ですね。 こにゃにゃちわー。


 私は窓を開けてぺルルちゃんをちくわハウスに迎え入れます。

 おおっ! 今日のぺルルちゃんはいつもにも増して清々しい表情をしてる気がしますねー。 やっぱり勉強が終わったから解放感があるんでしょうか?



 「今日からまたしばらく一緒にいられるわよ! それに、リンに対して今までよりも直接の手助けもできるようになったわ! 喜んでっ!」


 今まで以上ですか? んー、今までもぺルルちゃんにはたくさん手助けしてもらっていたと思うんですけど、これ以上何を手助けしてくれるんでしょうか? 

 ……あ、もしかしてコントの相方とかやってくれるんですかね? それは嬉しいですねー! では、早速コンビ用のネタを考えなくては。

 ぺルルちゃんはどういう芸風が好きなんでしょうか?


 ぺルル・ドツキマンザイ?・リズムネタ?・ドッチヤネン?


 「どっちでもないわよ! ねえ、なんか勘違いしてない?」



 おや? 一緒にコントをやると言う話じゃありませんでしたっけ?

 コンビ名は、ぺルルとモーリンで2人合わせてぺルリンなんてどうでしょうか? ちょっとドイツの街の名前っぽいですけど。 ぐーてんもるげ~ん!


 「うん、確実に変な事を考えてるわよね。 ……いいわ、詳しく説明するわよ」



 向かい合ってお話を始めようとしたところで、ちくわちゃんがお茶を持ってきてくれました。 あ、気が利きますねー、ありがとうございます。

 テーブルにお茶を置いてくれたので、椅子に座ろうと思ったのですが、今の私の身長だと椅子に座るとテーブルの上まで手が届かないのでテーブルの上に正座することにしました。

 お行儀悪くてごめんなさいねー。


 ちくわちゃんはそのまま私たちのそばの椅子に座っていますが、ぺルルちゃんの雰囲気から大事な話をしていると気づいたのでしょうか?

 話の邪魔にならないように大人しくしています。



 ぺルルちゃんは、お茶を一口飲んでから話し始めました。

 

 「実は、私は次の大妖精の候補になったのよ」


 大妖精? 大妖精って……確かディアえもんがそうでしたよね?

 おお! 妖精さんの階級については知りませんけど、ディアえもんと同じというならきっとかなりのエリートですよね? ぺルルちゃん、大出世です!


 ぺルル・スゴイ・エライ・マハトマぺルル?


 「マハトマぺルルって何よ? 百歩譲って英語でスーパーとかグレートならまだしも、なんでサンスクリット語なのよ」

 

 おや? ダメですかね? マハトマぺルルって、なんか語感が良い気がしたんですけどねー?

 『魔女っ子妖精 マハトマ☆ぺルル』とか日曜日の朝に放送してそうな気がしませんか?



 「まあマハトマについてはどうでもいいわ。 とりあえず簡単に経緯を説明すると、大妖精は4人いるんだけど、ディアモン様とオベロン様の2人と残り2人で権力争いみたいな形になってたのよ。 それでこの前、ディアモン様とオベロン様のタッグが勝ったことで相手の2人が勢力を弱めたってことがあったのよ」


 ふむふむ、権力争いですか……妖精さんの世界も大変なんですねー。


 「で、負けた2人の内1人が大妖精を引退することになって、次の大妖精候補を探して教育することになったの。 で、私がその候補の1人に決まったのよ。

 まあ、あくまでも候補になっただけだから大妖精になるのが確定した訳じゃないけどね」


 なるほど、オーディションの一時審査を突破した段階って感じですかね。

 んー、ですけど、さっき私を直接手助けできるようになったと言ってましたよね?

 まだあくまで候補の1人だという段階でそんなにできる事って変わるものなんですか? ……っと考えたところで、丁度その話題になりました。


 「それで次の試験として、限定的に大妖精の力の一部を使えるようにしてもらったの。 この力でこれから何をどうするかで私の大妖精としての適正を審査するらしいわ。

 だから私はリンの手助けをする事にしたのよ」


 そう言って右手をこちらに伸ばして見せるぺルルちゃん。 おや? 薬指にプラスチックっぽいツヤツヤした指輪がはまってますね。 あれが大妖精の力の一部が使えるようになるアイテムでしょうか?

 小さな女の子向けのおもちゃみたいに見えますけど。


 ……ん? でも大妖精の力というのは、たしか世界を管理する力なんですよね? その力を私のためなんかに使ったらマイナス査定になりませんか?


 ぺルル・ワタシ・テダスケ・ナンデヤネン?



 「多分、リンがリンらしく行動していたら世界にとってプラスになるわ。だから私はリンのために力を使うのよ。 ……それに予想なんだけど、これは管理者としての適正を見るものだから、おそらく自分で直接動くよりは、世界のために動く誰かをサポートするってやり方のほうが評価されると思うのよ」



 私らしい行動が世界のためになる……ですか?

 んー、つまりこの世界に地球のお笑いを広めろ……ということでOKですか? 確かに昔から笑う門には福来ると言いますしね。

 なるほど、さっきはぺルルちゃんがお笑いコンビの相方になってくれるのかと思っていましたが、相方ではなくプロデューサー兼マネージャーみたいな事をやってくれるわけですね?

 つまり、ぺルもと興業株式会社の設立ですか!?



 「リン、また変な事を考えてるわよね? ……でもまあいいわ、今までの事を考えるとリンはアホの子のままでいてくれたら結果的に良い方向に転びそうだし」


 そう言ってお茶をグイッと飲み干してから立ち上がるぺルルちゃん。

 ……んー、私って、そんなにアホの子ですかねー? 



 「さて、それじゃあまずはリンの力を取り戻す事から始めましょうか。

 個人的にはリンが私と同じくらいの身長なのって、なんか少し嬉しいんだけど、やっぱり今のままだと不便でしょう?

 一部だけとは言っても、大妖精の力を使えるようになっている今の私なら、多分、リンが力を取り戻す切っ掛けくらいは作れるはずよ。

 色々調べてみるから、少しリンの体を見せてもらうわね」



 それはありがたいですねー。 この小さな体も悪くないのですが、皆さんに果物を創ってあげられないのには困っていたんですよね。

 それにお笑いライブもやりにくいですし、以前の状態に戻れるなら助かりますね。 ではぺルルちゃん先生、診察をお願いしまーす。


 「モーリンn3eRo7れ!?」


 「っ! ちょっ!? リ、リン! 服は脱がなくていいわよ! 見るのは魔力の流れなんだから! ていうか、脱ぐにしても普通上からでしょ!? なに下から脱いでるの!?」


 おや? 脱がなくていいんですか? これはうっかりしてました。

 それにしてもぺルルちゃんもちくわちゃんも顔を真っ赤にしてますけど照れ屋さんですねー。 女の子同士なので気にしなくてもいいんですけど。


 私は服を着直して、ぺルルちゃんの前に立ちました。 するとぺルルちゃんは私の胸へと手を伸ばしました。


 ……おっと、この言い方ではぺルルちゃんが私の胸をモミモミしようとしてるみたいに聞こえちゃいますね。 訂正します。 ぺルルちゃんの手は私の胸の前で止まっているので、触れてはいませんよ。

 まあ、そもそも私の胸をモミモミするのは物理的に難しいでしょうけどね。 まず、もめるほどのボリュームがないですからねー。


 ん? 何で貧乳の話題になったんでしたっけ? ……ああ、ぺルルちゃんが私の胸の前に手をかざしたって話でしたよね。

 えーと、ぺルルちゃんが私の方へ手を伸ばすと、その右手の指にはめている例の指輪が、ぬぼー、って感じに光り始めました。

 ぺルルちゃんはそのまま目を閉じて『むむむっ……!』とか言いそうな顔をしています。


 「むむむっ……!」


 おや? 本当に『むむむっ……!』って言いましたね。

 しばらくするとぺルルちゃんは目を開けて、手を下ろしました。



 「リンが力を取り戻す方法が分かったわ。 というか、リンが力を取り戻せなかった理由が分かった……と言ったほうが良いかもしれないわね」


 おおっ! もう分かったんですか? やっぱりぺルルちゃんは頼りになりますねー。


 「今のリンは精霊としての核が育っていないわ。 この前、核が壊れて死にかけちゃった時に、不完全な状態で復活したみたい。 だから今のリンは魔力そのものは充分にあるんだけど、その魔力を自分の力に変換できてないのよ。

 そうね…… 周りに食べ物はたくさんあるのに、食べた物を体の栄養に変えられてない、って例えれば分かりやすいかしら?」



 ああ、食べても食べても太らない体というやつですか。 実は私は人間だったころからそのタイプだったんですよねー。

 お陰でアレやらコレやら、色々と小さいままですよ。


 まあそれについてはもういいのですが、力として蓄えられないというのは困りますね。



 「元々、リンは普通の……いえ、あんまり普通ではなかったけど、木の姿だったわよね?

 その状態で力を蓄えて、その後でオベロン様の力を借りて人間の姿になった。

 だけどこの前に復活したときは、木から進化していくプロセスをすっ飛ばしていきなり人間…… うーん、人間って言えるかはまあ微妙だけど、今の姿になったわ。 だから木の精霊としての部分が不完全なままなんだと思う」



 その言葉を聞いて、私は衝撃を受けました。

 昔の少女マンガなら、背景を黒のベタ塗りにして白目状態で「なんですって!?」とか言っちゃう感じの衝撃でした。


 ……意識して力を蓄えていた自覚はありませんでしたが、言われてみれば最初の木のときって、騎士さんとワンちゃんを養分にしたところから始まって、ポーク軍団の生首を養分にしたり、他にも手探りで色々な能力の練習をしたりと、一番頑張っていた時期かもしれませんね。

 その頃と比べると、確かに今の私は自分の本質であるはずの『木』の部分を疎かにしてしまっているかもしれませんねー。

 いやはや面目ないです。 何事も基礎が大切だと言うのに、どうやら私はその基礎を忘れていたようです。


 うむむ……これはいけませんね、早く木としての魂を取り戻すためにも、これからしばらくは盆栽モードで過ごす時間を増やしましょう!

 ということで早速、盆栽モードに変身ですよー!


 にゅにゅにゅっ! という感じで体の形が変わっていきます。 よし、変身完了です!


 どうもこんにちは、盆栽です。 って……ほわぁ!? 机の上で盆栽になったので、根を張るところがありません!

 あ~れ~、倒れますよ~!


 「モーリンgiK7z!」


 ちくわちゃんが慌ててキャッチしてくれました。 ふぅ、ありがとうございます。


 「……2めx>A8w#Jw?」


 不思議そうな顔で何かを言うちくわちゃん。

 多分、『なんでここでいきなり盆栽になるねん?』みたいな事を言っているんだと思います。

 当然会話のできない私は返事ができないので、とりあえずワサワサしてみます。


 ワッサワサ



 するとちくわちゃんはしばらく考えこんだ後、私を持って外へ歩いていって、日当たりの良い場所を選んで私を植えてくれました。

 ちくわちゃん、ありがとうございます! 私は感謝の気持ちを込めて、またちくわちゃんに向かってワサワサします。

 するとちくわちゃんも可愛く笑いながらワサワサし返してくれました。

 うーん、相変わらずちくわちゃんは可愛いですねー!


 うん、早く能力を取り戻して、ちくわちゃんとぺルルちゃんに美味しい果物を食べさせてあげたいですね。



 「私も協力するわね。 リンを成長させる魔法は使えないけど、リンが効率よく成長できる環境を作るサポートくらいはしてみせるわよ」


 そう言って、ビシィッ! と私を指差すぺルルちゃん。 あ、そのポーズ、久しぶりに見ましたね。



 ……うん、あんまり急いで元のサイズに戻らなくてもいいかと思ってましたけど、ちょっと頑張ってみましょうかね。

 ということでまずは全力で光合成です! お日さまを浴びながら、二酸化炭素を吸って酸素を吐きますよー! ひっひっふー! ひっひっふー!


 ひっひっふ……おや? なんだか体が粉っぽくなってきましたねー?



 「リン! 体から凄い勢いでデンプンが出てるわよ!? 普通デンプンは内部に貯めるものでしょ? なんで体の表面に生成してるの!? なんか怖いからやめなさい!」



 んー、気合いが空回りしちゃいましたかね?

 うん、やはりマイペースでほどほどに頑張ることにしましょうか。

 


 

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