表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
124/151

ストーンライフ! 2話 現地人たちとの初遭遇 そして心機一転!

 頭がボーッとする。 ……あれ? どういう状況だったかしら?


 ああ、思い出したわ。 よくわからないけど、いきなり何かが爆発したみたいになって、空を飛ぶはめになって何かにぶつかって……

 それでなぜか私の魔力が増えた感じがあったのよね。 そこでなぜか気を失ったんだっけ。


 ……ふう、思い直すと我ながら『何か』とか『なぜか』が多いわね。 ハッキリしない事ばかりでモヤモヤするわ。 まあ、目が見えてないから状況が把握できてないのは仕方ないんだけどね。


 とりあえず意識を集中させてみようかしら、なにか分かるかもしれないし。


 

 そう考えて、意識を集中させてみると、まず自分の魔力が増えている事に気づいたわ。 理由は分からない……というか、思考がまとまらないわ。

 考え事をするにしても、まずは意識を切り替えて思考力を上げないとダメね。

 

 私は、大きくなった自分の魔力に意識を同化させるイメージを作る。 そして意識を切り替えると……何よこれ? 普通に周りの景色が見えてるんだけど……。

 いえ、視覚だけじゃあないわね。 風が体に触れる感触や、音も分かる。 五感が鋭くなった? ……まだ味覚と嗅覚についてはは分からないけど、少なくとも視覚・触覚・聴覚は人間の時として同じくらいになってるかも。


 うーん……能力が成長するのはもちろん有難いと思うんだけど、自分でも切っ掛けが分からないのに急に能力が進化するのってなんか怖いわね。

 とは言え怖がっていても仕方ないか、せっかく視覚を手に入れたんだから、まず周りの様子を見てみましょうか。



 周囲は荒れ地ね。 今のところ異世界っぽいモノは……ああ、あったわ。

 私のすぐ近くにカラクリ人形っぽいモノの残骸が落ちているんだけど、その破片には魔法陣っぽいものが刻まれているし、呪文みたいな文字がびっしりと書かれた布なんかも散乱しているわ。

 これは異世界っぽいわね。 いえ、でも日本でも中二病インテリアとしてどこかに売ってるかも知れないから、異世界っぽいとは言い切れないのかな?


 どう見ても壊れているみたいだけど、コレ何かしら?

 


 何か分かるかも知れないと思ってよく見てみると、壊れた人形の上にはうっすらと灰が積もっている事に気づいた。 これは……火山灰かしら? 

 少し遠くには微かに煙を上げている山が見えるし、もしかしてあの山が噴火したって事?。


 ……あっ、私はさっき、地面が爆発したように感じて、その直後に空を飛んだわよね? あれは噴火で飛ばされたって事かもしれないわね。

 じゃあ、そのあとで何かにぶつかった感触がしたのは、この人形に当たったって事?


 そう考えると辻褄が合うわね……うわ、じゃあこの人形は私が壊したって事じゃない!

 こんな凝った造りの人形が捨ててあるとも思えないし、多分、誰かの持ち物よね? 事故とは言え壊しちゃった事は申し訳ないわ。

 持ち主はこのそばに居るのかしら? 話す事も動く事もできないけど、気持ちの上だけでも謝っておきたいんだけれど……。


 うん? 誰か来るわ。 ……紫色の服を着た男の人ね、あの人が持ち主かしら?


 白人……顔立ちからするとイタリア系っぽいわね。 この世界ではまだこの人しか見てないから、この地方の人種が皆この系統の顔立ちなのか、それとも個人の外見的特徴なのかは分からないけど。


 あ、こっちに来て壊れた人形を見て驚いた顔をしているわね。 やっぱりこの人が持ち主なのかしら……って! ちょっと!?

 お尻がっ! お尻が近づいて来る!? えっ? 私に座るの!?


 ……う~っ、ズムッ! って感じの感触が……。


 ……うん、分かってるわ。 今の私は石だもの。 私だって石に座った事くらいあるし、そりゃあ私が誰かに座られる事もあるわよね。 

 でも、よりによって鋭敏な五感を手に入れた直後におじさんのお尻の感触を味わう事になるとは思わなかったわよ……。



 おじさんはそのまま私に座っていたわ。

 触感をシャットアウトできないかと試してみたけど、試してみたら視覚や聴覚もシャットアウトされちゃうみたい。

 少しでも情報が欲しいときに視覚と聴覚を失うわけにはいかないし、触感だけを切ることができない以上、このままでいるしかないわよね……

 ……この生暖かい感触を感じないようにしたいんだけど……我慢するしかないか。



 その後、おじさんの集団が現れて、皆で何やら会話を始めた。

 全員が紫色の服を着ているし、会話してる様子も親しそうに見えるから、なにかのチームとかサークルとか、そういう集まりかしら?

 

 最初のおじさんはイタリア系の顔立ちだったけど、このグループにはアジア系や北欧系も居るみたい。 この辺りは多民族国家なのかしら?

 いえ、外見の個人差が大きいだけで同じ民族って可能性もあるかな。


 話してる言葉はまるで分からない。 発音はちょっとラテン語っぽいけど、私が知っている言語ではないわ。 いずれ覚えられれば良いけど短期間では難しいでしょうね。



 そんな分析をしていると、ふと体が軽くなったのを感じた。 あ、私に座っていたおじさんが立ち上がったみたいね。

 ……っと思ったら、別のおじさんが座って来たわ。 ちょっと、他にも座る物はあるでしょ? 何で私に座るのよ?


 ふう……良かった。 今のおじさんはすぐに立ち上がってくれたわ……って、何でまたすぐに別のおじさんが座るのよ!?


 そのまま代わる代わる私に座るおじさん逹。 ねえ、あなた逹は何がしたいのよ!?

 ちょっと、あなたはさっきも座ったでしょう!? ウソ!? 二週目に突入!?




 その後、おじさん逹は私をどこかに持っていく事にしたみたい。

 私も元・人間の女だから、おじさんの集団に持ち運ばれるのは不安を感じるんだけど、このまま何もない荒野に置き去りにされるよりはマシよね。


 ……それにしても、なんで皆あんなに私に座りまくったのかしら?

 うぅ……なんだか、まだお尻の感触が体に焼き付いている気がするわ。 ……水浴びしたい。




 この人たちは私と壊れた人形を拾ったあと、小さな村に立ち寄ったわ。

 

 ……なんかちぐはぐね。 建物も村人の服も基本的な部分は中世ヨーロッパっぽいけど、それにしては作りが良いわ。 村も村人もそこそこ清潔だし、顔色や体格を見た感じでは栄養状態も悪くはなさそう。

 うーん……なんていうかテーマパークっぽいというか……近代の技術を使ってわざと中世の生活を再現したような印象を受けるわね。


 少し違和感があるけど地球の文化と同じ進化を辿ったわけじゃないんだろうから、この世界はこういうものだと受け入れるべきかしら。

 無理に地球の歴史や文化に当てはめて考えないようにしましょうか。



 この後、おじさんたちは村の集会所みたいな所で偉そうなお爺さん(村長かしら?)と話をしてから宿らしき建物に行って荷物をまとめると村を出たわ。

 この紫のおじさんたちはこの村の人なのかと思ったけど、違ったみたいね。


 

 おじさん逹は道を歩き続けている。 私は布の袋に詰められているから外は見えないかと思ったんだけど、試してみたら袋越しに外が見えた。

 どうやら私は透視ができるみたい。 自分でも驚いたけど、嬉しい誤算ね。

 まったく知らない世界だもの、ただ見ているだけでも面白いわ。 このまま異世界の景色を楽しみましょうか。



 しばらく歩くと小さな林が見えた。 近づいてみるとその林の中には泉があったわ。

 わき水かしら? 綺麗な水ね、そのままでも飲めそうだわ。 まあ私は石だから物理的に飲めないんだけどね。


 それにしても休憩するには良さそうな場所ね。 ……っと思ったら先に休憩してる人が居たわ、大きな馬車が一台停まっていて、1人のおじさんと馬が休憩している。


 ……それにしてもこの世界に来てからおじさんとの遭遇率がやけに高いわね、別に人口割合的に中年男性が多い世界ってわけじゃあないわよね?


 紫のおじさんと馬車のおじさんは何やら話し込んでいるわね。

 そして紫のおじさんがお金を払って馬車に乗り込んでゆく。 ああ、この馬車ってタクシーみたいなものなのかしらね。


 

 私は、他の荷物と一緒に馬車に運び込まれた。 馬車の中には……あら? 先客が居たみたいね。

 フードを被った人物と、小学生くらいの少年と中学生くらいの少女の3人ね。

 ああ、やっと若い人に会えたわね。 ……それにしても男の子も女の子も、凄く可愛いわね。 地球なら今すぐに芸能界デビューできそうなレベルだわ。


 私は驚いて2人の顔をジーっと見てしまったんだけど…… この女の子、私を見てる? 目が合った気がしたんだけど。

 気のせいかしら? ……いえ、やっぱりこっち見てるわよね?


 そんな事を考えていると、女の子はこっちに歩いて来て、私の方へ手をかざして……

 っ! なに? 今、この子から凄い魔力を感じたわ!



 「こんにちは、わたしは精霊。 名前はまだ無いの。 あなたはだーれ?」


 っ! 日本語を話した!?


 私はハッと彼女を見た。


 「こんにちは、聞こえている? あなたはだーれ?」


 違う、話していない。 口が動いていないし、よく集中してみると音として伝わっているんじゃないって事がわかるわ。 テレパシー的なものかしら?


 この子……精霊って言ってたわね。 私も鈴と過ごすためにも精霊を目指したいと思っていたし、ここで出会えたのはラッキーね。

 悪い子じゃなさそうだし、なんとかコミュニケーションが取れれば良いんだけど。 


 私は、この体でも見ることも聞くこともできている。

 多分、どうにかすれば話す事もできるはず。 きっとあの不思議な部屋でオベロン君と話していた時の感覚で良いんだと思うんだけど……

 どうすれば良いのかしら? 意識すると分からないわね。



 私は何とかして心の声を伝えようとしてみるけど、上手く伝わってないみたい。

 でも何度も何度も試してみたら、

 「今、何か言ったの? うーん、気のせいかなぁ?」

 ……って言った。 言葉にはなってないみたいだけど、何かの反応は伝わっているみたいね。 一歩前進だわ。


 女の子は後ろを振り返って仲間たちに何かを言った。

 この言葉は日本語じゃなかったから何を言ってるか分からなかったけど、周りのみんなは驚いているみたいね。

 

 なぜかその女の子は、その後もずっと私の事を笑顔で抱いていた。

 ……なに? もしかして気に入られたのかしら? まあ、おっさんに座られるよりは女の子に抱きしめられてる方がいいけどさ。



 それからどれくらい経ったかしら? 私の透視能力は触れているものしか透視できないみたいで、女の子に抱かれてる状態だと馬車の外は見えなかった。

 だけど、女の子がずっと私に声をかけてくれているから退屈はしないわね。


 「ろs6Eす*り2po@よ$メめ?」

 「わたしの声は聞こえてる? 言ってること分かる?」


 1度目は知らない言葉……多分、ここの現地語ね。 で、2度目は日本語。

 こうして続けて聞くと分かるけど、現地語は音として聞こえてるけど日本語は情報として直接伝わってる感じがあるわね。

 相変わらず口も動いていないし、日本語の方はテレパシーかしら?

 でも、何で日本語だけテレパシーにしてるのかしら? ……いえ、そもそもの話だけど、何でこの子は日本語がわかるのかって所から疑問よね?


 分からない事は多いけど、この子はよく話しかけてくれるから、それをよく聞いていたらなにか分かるかもしれないわね。


 結局その日、女の子は一晩中話しかけてくれた。

 私は言葉の勉強になるからありがたいけど、この子は寝なくて大丈夫なのかしら? ああ、精霊だって言ってたから寝なくても平気なのかもしれないわね。



 次の朝、女の子と男の子が私を馬車の外に持っていった。

 まさかポイ捨てする気じゃないわよね? 


 少し怖い想像していたら、女の子が水を出して私を洗ってくれた。

 ……変な疑いをかけてごめんなさい。 ありがとうね、やっとおじさんのお尻の感触が洗い流されたわ。

 それにしても何も無い空間から水が出ているけど、魔法かしらね?


 集中してみると女の子から魔力が放出されてるのが分かる。 ああ、やっぱり魔法か。 便利なものね、旅人をする上で水に困らないっていうのはかなりありがたい事だと思うわ。

 魔法か…… オベロン君の話だと、鈴も色々と不思議な事ができるようになったって言ってたし、私も使えるようになるかしら?

 ちょっとこの子の魔力の動きを意識して見るようにしましょうか。 魔法を覚えるヒントになるかもしれないし。



 そう思って、それからは女の子が何か行動する時にその魔力に注目してみるようにしていたんだけど、そしたらテレパシーで話しかけてくるときの魔力の動きで気がついた点があった。


 この子、話す時に自分の魔力で私の魔力に触れて、一部を同化させているわね。

 同化と言っても一方的に私の魔力に侵食してくるわけじゃなくて、例えるなら、彼女が赤で私が青だとすれば、魔力がふれ合っている部分を紫という中立地点にして、そこを窓口にしてメッセージを送って来ている感覚ね。


 なんとなく理解できた気がするから、自分なりに感覚を再現して返事をしてみようした。

 ……うーん、結構難しいわね。 なんか変に引っ掛かるというか、抵抗感みたいなものがある気がするわ。 ……あっ、しっかりした言葉として送る感じじゃなくて、心というか思いというか、そういうもの自体を伝えるイメージで試してみましょうか。


 「ねえ。私の声が聞こえる?」


 「っ! 今、お話ししたの? もう一回なにか言って!」


 伝わった!? この感覚を忘れないうちにもう一度やってみよう!



 「聞こえる? ねえ、私の声が聞こえてるかしら?」


 「やっぱりお話ししてる! やったー! ……でも、飛び飛びになってて良く聞こえないの」



 よし、何とか声を届ける事には成功したわね。

 でも、飛び飛びになってるのかぁ。 やっぱりまだ上手くできていないみたいね。


 「f5kI#やsA*ー」


 嬉しそうに仲間達になにか言ってるわね。 私と話せた事を報告してるのかしら?

 ……フードを被った人が水を吹き出したわ。 クールっぽい雰囲気なのに良いリアクションをする人ね。


 「石さん石さん、もっとお話しして欲しいの」


 女の子が笑顔でそう言ってくる。 後ろで仲間がむせてゲホゲホ言ってるのに、結構マイペースな子ね。 まあ良いけど。

 私もこの会話方法をもっと練習したいから、この子が話し相手になってくれるのは願ったり叶ったりだ。


 「こんにちは、精霊さん。 私は芹沢 稲穂(せりざわ いなほ)よ」


 お話ししてと言われても何を話して良いか迷ったから、とりあえず私は自己紹介をした。


 「えっ? ごめんなさい、『こんにちは』しか聞き取れなかったの……」


 あ、今度も上手く伝わらなかったか。 なかなか難しいわね……。 でも『こんにちは』まで伝わったなら、やり方は間違ってなさそうね。

 よし、もう一度チャレンジよ。

 


 「私の名前は芹沢稲穂よ。 せ り ざ わ い な ほ」


 「名前を教えてくれるの? え~っと……せり……なあに?」


 「芹沢稲穂だよ」


 「ん? せり……いな……? セリーナっていうの?」


 あー……惜しいわね。 『沢』と『穂』が聞こえてなかったか……。

 あ、でも確かオベロン君から聞いた話だと、鈴も『もうり・りん』から1文字抜けて『モーリン』になったって言う話だし、私もセリーナで良いかもね。 ネーミングの経緯が鈴とお揃いだって思うと、少し嬉しい気がするし。

 転生して心機一転ってことで名前を変えてみるのもありか。 ……よし。



  「……そうよ、精霊さん。 私の名前はセリーナ。 よろしくね」 



 この時から、私はセリーナと名乗る事にした。

 


稲穂がセリーナと名乗る事になりました。

彼女の話は少しお休みして、次はモーリン側の話に戻るつもりです。


稲穂・改めセリーナの話の続きはモーリン側を数話進めてから書きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ