表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
119/151

後日談 3話 お花見の余興からの懐かしい気配

どうもこんにちは、ちびモーリン ~ 季節のキノコを添えて ~ です。


 今回はちょっとオシャレなフランス料理っぽく言ってみましたが、まあ要するにまだキノコは生えたままだというわけです。

 ……なんだかだんだんとキノコが生えている事が自然に感じてきましたねー。

 実は私には昔からキノコが生えていたのでは? なんて考えてしまうくらいに馴染んでいる気がします。 もうこのままでも良いですかね? ……いえいえ、皆さんが心配するといけないので、やはり取れたほうがいいですね。


 自由に出したり引っ込めたり出来れば解決なんですけどね。 んー、今度練習してみましょうか?


 ……まあ、それはそれとして、今日は別の話題が色々とあります。



 今日はキノコが生えて2日後。 キノコが取れる予定の日です。


 昨日はどうしたのかって?

 んー、昨日はお話するほど変わった事はなかったんですよ。 一応あの駆け出し君と会ったのですが、1分くらいしか一緒にいられなかったですし。


 駆け出し君は、昨日、ヒョコっとちくわハウスまで顔を出してくれたんです。

 あ、珍しく槍のお姉さんは一緒ではなく、1人だけでしたよ。

 

 駆け出し君は私の顔を見ると、すぐに頭のキノコを指差してゲラゲラ笑ったんですよ。

 で、更にキノコにデコピンをびしびしと何発か食らわせて……でも次の瞬間、気がつくといなくなっていたんですよね。


 きっと急用でも思い出して急いで帰ったんでしょうけど、足が速いですねー。 いつの間に消えたのかわかりませんでしたよ。


 ……そう言えばあの直後、ちくわちゃんが何か重そうなモノが入った大きな布の袋を外に放り出しているのを見ましたけど、ゴミ出しでもしてたのでしょうかね?



 とまあ、昨日はそれくらいしか変わった事はなかったです。 なので今日の話をしましょうか。


 今日は、前にコーヒーゼリーたちと戦った辺りに来ているんですよ。

 いえ、まあ私が来たというか、ちくわちゃんにだっこされて来たんですけどね。


 すると、驚いたことに戦いの中で咲かせた、あの桜の木が残っていたんですよー!

 今のSDサイズに生まれ変わった時に、悲しいことにそれ以前咲かせた花は枯れてしまったんですよ。

 ああ、いえ、全部ではありませんよ? まだ咲いてる所には咲いてるんですけど、幾つかは枯れちゃってるんですよ。


 多分私がちっちゃくなって、力も弱くなっちゃったので、花を満開のまま維持できる数が減っちゃったという事なんだと思います。

 なのであの桜なんかは真っ先に枯れちゃってると思ったんですよね、ほら、どう見ても他の花よりエネルギーを使いそうですし。

 それがまだ元気に咲いていたなんて、とても嬉しいですねー!


 で、その桜を囲むようにして座っている人たちがいるんですけど、お花見ですか?

 おや? 良く見るとこの人たちって、森が滅びてしまって、最近ここに避難してきたエルフさんたちですよね?

 だとしたら、んー…… ……あー、いませんかぁ。

 フラスケちゃんとフードさんがいるんじゃないかと思ったのですけど、ここじゃなかったようです。 あの戦いの後から見かけないので心配なんですけど。



 あ、戦いの後から見かけないと言えば、この人たちもそうだったんですけど、もしかしてあの後からずっとここでお花見してたんでしょうか?

 それはまた、よっぽどお花見が好きなんですねー! 桜の花をそこまで愛して貰えると、元・日本人としては嬉しいですよ。

 

 私は桜を愛してくれた皆さんに、感謝の気持ちを込めてワサワサしました。

 ワサワサ ワサワサ ワッサワサ。


 んー、体がちっちゃくなったせいで、ワサワサというよりピコピコって感じの動きになってる気もしますが、まあ気持ちの上では雄大に羽ばたいてるつもりです。

 この心、届きますか?


 すると皆さんが、ハッとした表情をしたあと、一斉にワサワサし返してくれました。 おおっ! 心が届きましたか?

 ですが皆さん、少し神妙な表情ですねー? なんでこんな偉い人に会ったみたいに硬くなっているんですかね? 折角のお花見なので、もっと弾けても良いと思うのですが。


 ……あ、なるほど! お花見なのに盛り上がりがいまいちだから、なにか余興をしてほしいと思って私を呼んだというわけですね?

 そう言う話なら任せてください! ……と言いたい所なのですが……

 んー、今の体で出来る事って限られてますし……何をすればいいですかね?


 お花見の余興と言えばすぐに思いつくのは、ショートコント……後は歌とか踊りとか、手品とかでしょうけど、声を出せないのでショートコントと歌は難しいですよね。

 いえ、サイレントネタというのもありますが、あれは動きをメインにするものですから、体が小さくなっている今では、後ろの方にいる人まで見てもらえないかも知れません。

 ……あ、動きがよく見えないなら踊りもダメですね。


 では手品ですか? ここは『親指が取れたように見える』という必殺のネタの出番ですかね?

 日本にいた頃この手品を友達に見せたら「え? そ、それは……」と唖然とした表情をしていたんですよ。

 その友達はクール格好いい系の女の子なんですが、そんな子が開いた口がふさがらないくらいに驚いていたネタなので、きっとここの皆さんも驚いてくれると思うんですよ。

 

 あっ! ですけど、これも体が小さい状態では後ろにいる人には見えないですよね。 おや? それでは手品もダメということですか?

 

 うぬぬ……どうしましょうか。 実は私は水芸も体得しているのですが、あれは仕込みが必要なので即興ではできませんし……これはまさか、万策尽きちゃいました? 



 はうっ……皆さんが期待するような目で見ています! まあ何人かは頭のキノコを見ている気もしますが、それでも私に注目していることには違いありません!


 ここで何もしないなんて芸人の名折れです! さあ! 何か考えるのです! 私、ファイトです!


 私は頭をカラカラと回転させてアイデアを考えます。

 うーん、うーん、……あっ、1つ思いつきました。 出来るかわからないんですけど、なんとなく行けそうな気がします。

 まあ、失敗しても誰かに危険があることではありませんし、ちょっとやってみましょうか。



 私はちくわちゃんの手から降ろしてもらって、自分で歩……こうとしたのですが、ちくわちゃんが抱っこしたまま離してくれません。

 もー、甘えん坊さんですねー。 そんなところも可愛いんですけどね。


 仕方ないので、身振り手振りでちくわちゃんにお願いして、抱っこのまま桜の木の所まで運んでもらいました。 これで桜まで手の届く距離に……あ、ごめんなさい、嘘です、今の腕の長さでは届きませんでしたね。

 まあ、手じゃなくてもいいですね。 ということで、ホイっと。


 私は髪を伸ばして桜の木に繋げました。

 おや? 電源コードを差し込むイメージを思い浮かべたら、本当にそんな感じでスコンと繋がりましたよ。 便利ですけど不思議ですねー。


 でもって、んー、これは~……うん、行けそうです!

 うぬぬぬぬ…… そいやー! 



 気合いと共に、桜の木がワサワサと枝を振りました。

 おお、動きました動きました! この桜は私が創ったものですから、触れていれば動かせるんじゃないかなー、とか思ったんですけど、やっぱりできましたねー!


 ですが、私がこの世界に来た直後の、人の姿になる前の木の時の感覚で動かしてみたんですけど、あの時の感覚ともまた少し違いますねー。

 自分の体を動かしてる感覚が無いので、ゲームのキャラクターを操作してる感じです。

 もしかしたらラジコンの操作みたい……と言っても良いのかも知れませんけど、私はラジコンを操作した事が無いのでわかりません。


 まあ、とりあえず自由自在とは行きませんがどうにか動けるので、この桜を使って何か余興をしましょうか。

 この木のサイズなら後ろの方にいる方までバッチリ見えるでしょうしねー。


 そーれ、そーれ、ダンシ~ング!


 私は桜をワサワサ動かして踊らせてみました。 ですけど枝を動かすだけではあんまりダンスっぽくなりませんねー。 ちょっと芸としては地味ですか?

 では、せめて華やかさをUPさせるために花びらの色を変えてみましょうかね? 桜と言えば白とか薄いピンクとかの淡い感じのイメージですし私もそれを綺麗だと思いますけど、この世界の人はそう言う先入観が無いでしょうからカラフルな花びらも受けるかも知れませんし。



 ということで、んー…… ソイヤ!


 おお! 色とりどりになりましたねー! なんだか少しちらし寿司みたいです!

 普通の桜の方が風情がありますが、こういうポップな桜もたまには良いですよね。


 エルフの皆さんは…… おお! 良いリアクションで喜んでくれていますね! うんうん、これならやってみた甲斐がありましたよー!

 

 それと1つ発見しましたが、桜に繋がっている状態だとあんまり消耗しませんね。 ちっちゃくなった今の私の力だとすぐに疲れてしまいますかねー? とか思っていたんですが、思ったより余裕があります。


 ……ですが、これってつまり、私の消耗の何割かをこの桜の木に肩代わりさせているということですよね? だったらあんまり無茶をしたら桜が可哀想です。

 もうちょっとだけカラフル桜を楽しんだら、元に戻して休ませてあげましょう。


 

 皆さん、カラフル桜を堪能してくれましたかねー?

 私はチラリと皆さんの様子を確認すると…… おや? さっきまでテンションが上がっていたはずの皆さんが、今度は泣いてますよ? いったいどうしたことでしょうか?


  んー……あっ! ここはお花見の席ですから、皆さんお酒を飲みすぎてヨロレリホーになってしまったのかもしれません。 皆さん、泣き上戸……というやつなのですね?

 もー、皆さん飲み過ぎは良くないですよ? 


 うむむ……あんまり桜に無理はさせたくないのですけど、仕方ないですねー。

 ちょっとだけですよ? ……そいや!



 私は桜の花から、良い感じに気分をリフレッシュしてくれそうな香りを出しました。

 具体的に言えば、ほんわりとしながらもキンと来てぴしゃん、って感じの香りに、少しだけショワワ! って雰囲気を足した感じの香りと言えば伝わりますよね?


 一発で気分爽快! こんにちは、新しい自分っ! ってほどにはリフレッシュしないでしょうけど、多分、胸がスーッとするくらいの効果はあると思います。

 これでOKですね、そろそろ桜の木も休ませてあげましょう。


 桜さん、ありがとうございました。今度、良い肥料でも持ってきますねー。



 私とちくわちゃんは、今日の所はお家に帰ることにしました。


 ほら、お花見エルフの皆さんが酔いから覚めた時、自分たちが私やちくわちゃんみたいなちっちゃな女の子の前で酔っぱらって泣き出したと知ったら恥ずかしいと思うんですよ。

 なので、今の内に帰ろうというわけです。

 私だってそれくらいの気遣いができるんですよ?


 ……そういえば前世、国語のテストで『気(づか)い』の読み仮名を『キチ○イ』と書いて先生に呼び出された事がありましたねー。 懐かしいです


 おっと、話が脱線しちゃいましたが、そろそろ失礼しますね。

 皆さん、お酒はほどほどにしましょうねー。



 ーーーー



 ……ということでちくわハウスに戻ってきました。

 あ、そう言えばそろそろ頭のキノコが取れる時間ですかね? んー、いざ取れるとなったら少し寂しい気もしますけど……まあ、仕方ないですか。


 あ、最後だからちょっとアンテナごっこをしてみましょうかね?


 キノコに意識を集中して、うぃ~ん、って感じで動かしながらの~……

 戦慄(わなな)け! 私のF P S(不思議パワーサーチ)! (キノコアンテナ付き)


 ……な~んちゃって。 頭にキノコが生えてるくらいで感度がUPしたりなんかするわけがないですよねー。 ははは。

 ……って、あれれ? これ、本当に感度UPしてませんか?

 なんか、体験したことが無いくらいの情報量が頭に流れ込んで来るんですけどっ!?


 お……おぉー? これは感度は高いんですけど、精度は低い感じですか?

 距離とか方向とかがハッキリしないんですけど、手当たり次第に片っ端から色んな情報を受信してる感じです!


 いつもは場所や数はハッキリわかるのにそれが誰の反応か? とか、どれくらいの力を持っているか? とかがわからないので、このキノコアンテナは普段と逆ですね。

 誰の反応かはわかるのに、どこにいるのかわかりません。

 面白いですけど、場所がわからないのではセンサーとしては使いにくいですねー。


 ……あっ! 今、フラスケちゃんとフードさんの反応がありました!

 良かったです。 どこにいるかはわかりませんが、元気でやっているようですねー。


 おお、今度はワイルド商人さんの奥さんの反応がありました。

 すごいですねー、ちょっとしか会ったことない人でも、なんとなく誰の反応なのかがわかりますよ!



 それで次の反応は~………… んー……ん? ……えっ? 稲穂ちゃん……?



 え……えぇ!? なんで稲穂ちゃんの反応が!?

 ちょっと、今の場所をもう一回っ…… ああっ!? キノコが取れましたー!?

 なんでこのタイミングで!? あと3分待ってくださいよー!?



 私は取れたキノコをもう一度頭に乗っけてみたりもしましたが、もうくっついてはくれませんでした。

 うぬぬ……稲穂ちゃんの反応をもう一度調べたかったのですが……。



 あー……でも、よく考えたら、このキノコは地球と繋がるアンテナだという話でしたし、世界を越えて稲穂ちゃんの気配を感じ取ったってことですかね?

 稲穂ちゃんがこの世界にいるはずないですし……。


 ……ちょっとだけですけど、稲穂ちゃんの気配を感じ取れて嬉しかったです。

 ありがとうございました、キノコアンテナさん。


 私は、役目を終えたキノコアンテナさんに、お疲れ様の気持ちを込めて軽くポンッと手を置きました。


 ……あ、ところで、この取れたキノコアンテナさんはどうしたらいいんでしょうか?

 思い入れもあるので捨てるのは嫌ですし……今度ぺルルちゃんが来たら訊いてみましょうか。



 私は、とりあえずキノコを布で包んで置いておきました。




 ……翌日、ちくわちゃんがオシャレなビンに入れて部屋に飾っていました。

 いえ……まあ私は別に良いんですけど、でもなんか恥ずかしい気がしますね。

次回は今回の話の別視点を書く予定です。

文字数に余裕があれば稲穂ちゃんの話も少し書こうかと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ