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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
番外編&後日談ですよ まだやりたい事がありますから。
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後日談1話 抱っこでお散歩からのふと思い出す故郷の友達

本編最終話の続きです。

どうもこんにちは、盆栽(ぼんさい)です。


 この前、1度…… あっ、いえ正しくは2度目ですが、死にかけてしまってからの奇跡の生還を果たしたのですが、その時に30センチくらいのSDキャラクターの姿になってしまいました。

 で、この姿も意外に皆さんには好評だったのですが、問題が1つありまして、この体になってから私は力が弱い上に疲れやすいんですよね。


 最初の木の姿から、人間型になって、そしてこのSDバージョンと、なんで私は体が小さくなればなるほど燃費が悪くなってしまうんですかね?

 普通はコンパクトになるとエコ仕様になると思うんですけどねー……。


 なので、少しでも燃費を改善できないものか? と考えた結果、木の姿になってみようと思ったんですよ。 ……で、試したら盆栽サイズの木になりました。

 せっかくなのでもっと盆栽っぽくなってみようと思ったので、葉っぱを松の葉っぱにしてみたんですが、どうです? 和風テイストになってますかね?

 我ながらワビサビの香りが感じられる気がします。 こう(おもむき)のある和の香りがフワッと……


 ……おや? よく嗅いだらワサビの香りですね、コレ。

 ワビサビになるには、ビが1つ足りませんが……んー、まあ、ワビサビもワサビも和風テイストには違いありませんよね? ならOKです。


 ということで、今の私は、ワサビの香りがツーンと漂う松の盆栽から学芸会の木のようにスポッと顔を出した状態です。

 微妙にカオスな状態になってしまいましたが、盆栽サイズでも、とりあえず土からの魔力補給はできるみたいですね。 うん、良かったです。



 「モーリン! まja#5Z!」


 あっ、ちくわちゃんが来ましたね。

 この前、ちくわちゃんが私を抱っこして空を飛んで行ったじゃないですか。 あの後、道に迷ってしまって結局ここへ帰って来るのに数日かかっちゃったんですよ。

 なので、その件についてマッスルさんやセレブお嬢さんにお説教されていたようです。

 ……まあ、こうやって元気に笑顔で手を振っている姿を見る限り、あんまりお説教は効いてなさそうですけど。


 私は、ソイヤー! っと気合いを入れて、人間の姿に変身しました。 ちくわちゃんとスキンシップするなら、人間の姿のほうが良いですからね。

 いえ、まあ人間というかSDキャラといった方が正しいでしょうけど。


 「モーリン! モーリン!」


 パタパタと走ってきたちくわちゃんが私を胸元に抱きしめます。

 ちくわちゃんは元々スキンシップが多い子でしたが、私がSD化してからは更にぐいぐい来る感じですねー。 やはり、ちっちゃい生物を抱きしめたくなるの万国共通なんですかね。

 セレブお嬢さんやぺルルちゃんのスキンシップも増えましたし。


 あ、ぺルルちゃんと言えば、どうやら今度偉くなるらしいです。

 出世ですねー。 おめでたいですねー。

 でも、そのお勉強のために忙しくなってしまったので、前ほどずっと一緒にはいられないのが寂しいですね。 今も妖精界でお勉強しているようです。


 私もぺルルちゃんを見習ってお勉強をしたほうがいいですかねー?

 するとしたら、やはり言葉を覚えるべきだと思うんですけど…… 私も言葉を覚えたい気持ちはあるんですが、なかなか覚えられないんですよね。

 なにせ覚えようにも、何を言っているのか聞き取る所から苦戦してますからねー。


 まあ、言葉がわからなくても、ちくわちゃんとは何となく意思の疎通は出来ていますし、他の皆さんも良い人ばかりなので生活に困ることは無いからいいと言えばいいんですけど……

 ですけど勉強くらいしないと申し訳ない気持ちなんですよねー。

 ぺルルちゃんはお勉強、村の皆さんはお仕事で忙しくしていますが、私は今の体では果物を創ることも難しいですし、何かが起きても戦いも魔力の浄化も出来るかわかりません。


 せいぜい光合成して酸素を出すくらいしか皆さんのためになることができていないので、何か今の私にできる事があればいいんですけど…… んー……。


 おや? 考え事をしているうちに、気づけば目の前の景色が変わっています。 ……ま、まさか! 世界が動いたとでも!? 

 あっ、違いました。 ちくわちゃんが私を抱っこして歩いているだけでしたね。

 もー、驚いちゃいましたよー。


 今日のちくわちゃんは、リュックサックを背負っています。 お出かけですか?

 ふむふむ、これは嬉しいですねー。 私も街を見て歩きたかったんですよ。


 ほら、この前の黒いモヤモヤ襲来事件の後、私が死にかけたり、生き返ったり、ちっちゃくなったり、ちくわちゃんと一緒に飛んでったりとゴタゴタしていたので、事件後の街の様子は、ちゃんと見ていなかったんですよね。


 今の歩幅ではお散歩するのも一苦労でしたから、ちくわちゃんが抱っこして歩いてくれるのはありがたいですねー。 




 街に出た私たちは、まず中央の通りを見て歩きました。

 まだまだ大きなお店は少ないですが、屋台みたいなお店や、地面に布を敷いて品物を並べている行商人さんとかがいて、活気がありますねー!


 商人さんがこんなにいるという事は、この前の黒いモヤモヤ襲来事件の影響で景気が悪くなったりはしてないと思っていいんですかね? ふむふむ、それは一安心です。


 おや? ちくわちゃんが、1軒のお店に近寄りましたね。

 んー、アクセサリーとか人形とかが並べられています。 お土産屋さん的なお店ですかね?


 ……奥に並んでいる、髪の毛がワサワサしていて無表情でチンチクリンな女の子の人形と目が会いました。 んー……なぜでしょう? この人形、見たことある気がするんですが、思い出せません。

 もしかして、どこかでモデルになった女の子と会った事とかありましたかねー?


 ちくわちゃんも、その人形を眺めていますが…… 何でしょう? 美術品を鑑定する鑑定士みたいな凄味のある表情でジロジロと見てますね?

 こんなちくわちゃんは、あまり見たことがありません。


 やがて、ちくわちゃんは静かに頷くと…… おっとっと。 抱っこしていた私を頭の上に乗せて、空いた手で懐からスタンプを取り出すと、お店の看板にポンっと押しました。 鈴蘭みたいなマークですね、ちくわの形のマークだったら面白かったんですが。


 何かわかりませんけど、店のおじさんがそれを見て嬉しそうにしているので、きっと価値があるものなんでしょうね。

 ちくわシュラン3つ星の名店に選ばれた! とか、そういう権威があるのかもしれません。

 

 ちくわちゃんは、どこかで見た気がするチンチクリン人形を1つ買ってから、また歩き出しました。


 そのまま進むと、大きなお店に着きました。 ああ、大きなお店といっても、周りの屋台のようなお店と比べてということですよ。

 実際の大きさは、一軒家より大きいくらいです。

 そこは八百屋さん……ですかね? 野菜やキノコや小麦や謎の葉っぱなんかが並んでいます。


 ちくわちゃんは、そのお店には入らないで、その裏にある石造りの蔵みたいな建物に入りました。 おや? ここって倉庫ですよね? 勝手に入っていいんですか?

 

 倉庫の中では、ワイルド商人さんとぽっちゃり係長さんが、箱詰めされた荷物と書類を見比べて難しい顔をして話し合いをしていました。

 多分、仕入値がどうだとか在庫がどうだとか、そういうお話をしているんだと思います。


 ちくわちゃんは、2人に近づくと、また私を自分の頭の上に乗せました。

 そして空いた手でリュックサックから書類を挟んだファイルを取り出すと、ワイルド商人さんに渡そうとしました。

 おや? そのファイルはセレブお嬢さんが使っているものですよね?

 ふむふむなるほど。 さっきお説教された時に、ついでにワイルド商人さんに届けるようにお使いを頼まれたってところでしょうか。


 ワイルド商人さんは、書類を受け取ろうとしましたが、ちくわちゃんの頭の上にいる私を見つけると、まずはしっかりと私に一礼して、それから書類を受け取りました。

 係長さんも挨拶してくれましたが、こちらはなんか営業担当の人が取引先の会社に挨拶しているような雰囲気ですね。 いえ、それはそれで礼儀正しいんですけとね。


 うーん。 しかし、やはり出来る男性というのは礼儀もきちんとしてますねー。 2人とも私みたいなSDゆるキャラにも頭を下げるとは。

 ですけど、私に対しては『オイッス』くらいの軽い挨拶でいいんですよ?



 そのあとは、2人の会話にちくわちゃんが参加して、みんなでお話をし始めました。

 ……多分、2人はお仕事の話をしていたと思うんですが…… これ、ちくわちゃんが参加してから、ただの雑談をしてますよね?


 んー、ですけど…… いいですよね?

 ワイルド商人さんも係長さんも仕事に一生懸命な人なので、たまにはまったり雑談するのも気分転換になっていいと思います。

 そういう意味では、ちくわちゃんはナイスです。

 ちくわちゃんがいることで、ほどよく気が抜けて雑談ムードになりましたから。



 私は、黙って3人の雑談を聞いていました。

 もちろん何の話しをしているかはわかりませんけど、お友達が楽しそうにしているだけでも嬉しいものですからねー。


 ですが、そのとき『力仕事が得意です!』という感じのゴッツい男の人が現れて、倉庫に新しい荷物を運んできたことで、一気にまたお仕事モードの空気に変わってしまいました。

 ……まあ、ずっとお仕事をしないのも問題ですし、気分転換はここまでって事でいいですかね。


 ちくわちゃんもこれ以上雑談していると邪魔になってしまうと思ったのか、話を切り上げて帰るようです。

 ちくわちゃんは、頭の上にいた私を再び両手で抱っこして、倉庫の出口へと向かいます。

 そこで荷物を運んできた男の人とすれ違ったのですが、そのとき私は男の人が運んできた荷物をチラリと見ました。


 あっ、麦の束ですかね? 小麦か大麦かライ麦か…… 種類はよくわかりませんが、この辺りでよく見る麦とは種類が違いそうです。


 そう思ったところで、何かが少し引っ掛かりました。

 ……なんか今の、すごく見覚えがありませんでしたか?


 そう思ってちくわちゃんに合図をして少し止まってもらうと、私は改めてその荷物をジー、っと見ました。 うーん、どこかで見覚えが……。

 んー……んー……んー……  ……ん?


 あっ! 麦の束ではなくて稲穂ですねこれ。 ということは、この国にはお米があるんですねー!


 私の主食はお菓子とジャンクフードとエナジードリンクでしたから、実を言うとそこまでお米に思い入れは無いんですが、それでも故郷の主食を見つけると少し嬉しいですねー。



 それにしても稲穂…… 稲穂ですか。 懐かしい響きですねー。

 私の中では、稲穂と聞くとお米よりもあの子が先に思い浮かびます。

 寂しくなってしまうのでこちらに来てからはあまり思い出さないようにしてたのですが…… 元気にしていますかね?

 優しい良い子ですし、私より勉強も運動もできたので、きっと元気にやってますよね。

 ……まあ、私より勉強も運動もできない人は、あんまり見たことありませんけど。


 私は、久しぶりに故郷の友達の事を思い出しました。

 



 

お土産屋の無表情の人形は、当然モーリン人形です。

この街ではモーリングッズを売ることは許されていますが、クオリティがあまりに低い物は撤去されます。

ですが、ちくわちゃんを含む一部の上層部が認めたものは、公式グッズとして他の街で売る事を認められます。



最後にモーリンが思い出した友達の話は次回です。 投稿日は決めてませんが、あまり遅くならないように気をつけます。

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