最終話 帰ってきた日常からのこれからのウッディライフ!
最終話です。 前半は三人称です。
最後なのに、思ったより長くなっちゃいました。
戦いが終わり、迫りつつあった危機は去った。
街には喜びの声が飛び交っていたが、訓練所に隣接する医務室の中、そんな喜びとは無縁かのように虚ろな表情をして自分の手のひらを見つめる人物がいた。
「魔法は……ほとんど使えないか……ははっ」
医務室のベッドで目を覚ましたアナベルは、自分の体から大半の魔力が失われている事に気づき、すぐに確かめた。
結果は…… 平均的な人間以下。 エルフの基準では幼い子供にも劣る量である。
「……僕は、自分の魔力1つを武器にここまで来たんだ…… それを失って、これからどうやって生きろっていうんだよ……」
絶望の中で呟いたその声に、どこからか少女の声が答える。
「勇者になるんじゃないの? ……もうやめちゃうの?」
その声の主は、モーリンにフラスケと名付けられた精霊の少女であった。
「もうダメさ……。 僕は聖域を滅ぼす切っ掛けを作ってしまった罪人だ。
それに魔力も失ってしまったんだ。 もう勇者にはなれないよ」
アナベルは、更に続ける。
「それにさ…… 僕は気づいちゃったのさ。
僕は勇者になりたかった訳じゃなかったんだ。 皆に認めてもらって、褒められて、そして沢山友達が欲しかっただけなんだよ。 ……我ながら小さい理由だよね」
「そっかー……じゃあ、友達をいっぱい作りに行こうよ。
私も友達が増えたら嬉しいの、だから一緒に友達を作ろうよ」
当たり前の事を言うような態度でそう言った少女に、アナベルは苦笑しつつ問いかけた。
「友達……作れるかな? 勇者になれない、魔力も失った……こんな僕にさ」
「わたしとジャッドは、アナベルの友達だよ? それに、きっとおかあさんも友達になってくれると思うの。 魔力が無くても『ありがとう』と『ごめんなさい』ができれば、友達は作れるの」
アナベルはしばらく黙って俯いていたが、やがて顔を上げると口を開く。
「……ダメだね。 何も無いままの僕じゃあ責任を取ることさえ出来ないよ。
まずは、僕は僕としての価値を見つけてみせる。 ……感謝も謝罪もそれからさ」
そういって立ち上がったアナベルは、ふらつく足で出口へと向かった。
「ダメ!? まだ疲れてるし、ご飯も全然食べてないから、大人しくしたほうがいいの!」
「いやだね。 このまま世話をされるなんて情けないまねはしたくない。
僕は、このまま旅に出るよ。 そして皆に必要とされるような、僕だけの何かを見つけてから戻ってくる。 それができたら……迷惑をかけた皆に謝って、それから……色々やり直したいなぁ……」
「そう思うなら、今すぐにでもみんなにごめんなさいをして、そこから始めればいいと思うの。 ……でも、アナベルがそうしたいなら、そうするの。 じゃあどこに行くの?」
「いや、君は連れて行かないよ。 今の僕じゃあきっと君に頼りっぱなしになるからね、そんなカッコ悪いのはゴメンさ。 君はここで精霊姫様と……お母さんと一緒にいるといい」
『お母さんと一緒に』……その言葉を言えば、彼女は喜んでそうするだろうと思っていたアナベルだったが、彼女の答えは予想とは違うものであった。
「ダメだよ、アナベルは友達なの。 友達が悩んでいるのを放っておいたらダメなの」
「……ズルいなぁ。 友達なんて言われたら断れないよ。 ……いいよ、一緒においでよ。
そうと決まったら早く行くよ、見回りがきたら面倒だしさ」
そう言って扉を開けて、外に一歩踏み出したアナベルの目の前に、1人の少年が飛び出して来た。
「おっ……と。 なんだい? 急に飛び出して来たら危ない事くらい分からないのかい? まったく君は…… 君……は……?」
迷惑そうなしかめっ面で少年に目を向けたアナベルだったが、少年の顔を見たとたん、信じられない物を見たような表情に変わっていった。
その少年は、10歳ほどの幼い人間の少年だ。
そう、どう見ても人間の少年だ。 だが、その顔は……
「ジャッド……なのかい? なんでここに…… それに、なぜ人間の姿に……」
その人間の少年は、妖精であったはずのジャッドであった。
ジャッドは、思い詰めたような表情で、アナベルに向かって大きな声で……
人通りのある街中で、不特定多数に聞こえる程にハッキリした声で言った。
「ぼく……こんな体になっちゃって、もう元の生活には戻れないんだよ。
一緒に連れていってよ。それともこんなになっちゃったボクは……キライかなぁ?
……でも、ボクにとってアナベルは特別なんだ! 大好きで、ずっと一緒にいたいんだよ! アナベルも、ボクを特別だって言って優しくしてくれたよね? なんでもするから!
ほら、前みたいに、人目につかない物陰で体を洗ったりもするから、連れていってよ!」
少年の声が響くと、通りがかった人々がザワリとした。
一部の女性が、嬉しそうに『まぁ♪』といってネチャリと微笑む。
「うわぁっ! 誤解を生みそうな言い方はやめてくれ! と、とりあえず一緒に来てよ。 事情は別の場所でゆっくり聞かせてもらうからさ」
そう言ってジャッドを抱えて走るアナベルと、それについて行った精霊の少女は、そのままこの街から逃げるように姿を消した。
アナベル自身が望んだように、新しい自分を見つけ、胸を張ってここに帰ってくる日が来るかどうかは、今はまだ誰も知らない。
……アナベルが休んでいた訓練所と医務室のある建物。
その屋根の上には、3人が街を出る姿をじっと眺めていた2つの影があった。
「ねえ、ディアモン。 君ってクールそうに見えて、実は甘過ぎないかい?」
屋根の端に座って足をぷらぷらとさせていたオベロンが、隣にいるディアモンに言った。
「……なんの話だ?」
「白々しいなぁ。 ジャッドの事だよ。 魔力を持ち出して騒動の切っ掛けを作った事への罰が、
『魔力の少ない人間の姿で生きろ。 そしてアナベルがまた道を踏み外さないか監視しろ』
って言うヤツさ。 あれって罰なの?」
「妖精の中でも魔力が多い方だったジャッドが、魔力の少ない人間になり、その状態で終わりの見えない任務を果たさなくてはいけないんだ。 充分に罰と言えるだろう?」
さも当然。 といった様子でそう語るディアモンに対して、オベロンはニヤニヤとした意地悪そうな笑顔を浮かべた。
「ふーん…… 任務を与えたのは、アナベルと一緒にいるための大義名分。 人間になるのは、魔力を失ったアナベルじゃあ妖精の姿が見えないから。 ……そういう理由かと思って、
『ディアモンってツンデレ! かーわーいーいー☆』っとか思ったんだけどねー」
「気持ち悪い事を言うな! この罰に他意は無い。 ……強いて言えば、あの2人が不幸になる事を望まないであろうモーリンへの気遣いは多少あるかも知れないがな」
「……ふーん。 まあ、ディアモンの世界のトラブルだから、キミがそう決めたならそれで良いけどね。 で、モーリンはどうするの? あれだけの力があって、更に信仰まで集めているんだから、正式に土地神としてボクら管理者側にスカウトしても良いと思うんだけどね?」
「いや……彼女は、精霊としての自覚すら怪しいのだ、もしも土地神などになっても自覚や責任など持てないだろう。 彼女は、自由にさせたほうが無自覚に土地神らしい仕事をしそうだ。 ……それに……」
ディアモンは、いつもより幼い少年のような表情でオベロンを見て、言葉を続けた。
「彼女は、好きに動いている方が、見ていて楽しい……だろう? オベロン」
その言葉を聞いたオベロンは、一瞬だけキョトンとしたあと、嬉しそうに笑ってディアモンの背中をバンバンと叩いた。
「なんだよ~、ディアモン! 生真面目キャラに見えて、案外分かってるじゃないかー!
いや~、今日のキミとは良いお酒が飲めそうだよ~! ねえ、これからボクの家においでよ! 飲もう飲もう! モーリンの話題をツマミに朝まで飲もうよ!」
「何を言っている? 私たちに酒を飲んでいる暇など…… お、おい! 離せ! ぬぅ!? 呪縛魔法まで使うな! うおっ! 強制転移魔法まで!?
ええい! 酒に誘うのにそこまで本気になるヤツがいるか!」
屋根の上で騒ぐ大妖精たちに気付く事もなく、1人の男が医務室の扉を開けた。
「……あん? 誰も居ねえな。 医務室にいると思ったんだが……勘が外れたか?」
医務室を覗き込んだ男…… ロドルフォが「無駄足か……」と呟き舌打ちをした所で、その背中にティートが声をかける。
「あっ、ロドルフォさんじゃないスか。 医務室なんか覗いて、怪我でもしました?」
「ティート。 それにジーナもいたか。 ちょうど良い、お前らを探してたんだよ。
つうか、怪我をしていたはずだから医務室にいると思ったんだが……無傷みてえだな?」
「トレニアさんに回復魔法をかけてもらったし、フリージアちゃんの知り合いだって名乗ったぽっちゃりした薬師のオジサンにもスゴく効く薬をもらったんですよ」
ジーナから事情説明を聞いたロドルフォは、「……ヒースの野郎か」と言って苦い顔をした。
「あっ、それで、オレらを探してたってのは、何でなんスか?」
「ああ、まだ決定してはいねえんだが…… おそらく、遠くない内にこの街に冒険者ギルドの支部が建てられるはずだぜ。
その後、お前らがここを拠点にする気があるのか? ってのを訊いておきたくてな」
ジーナが驚いたように訊き返す。
「ギルドが? でも、この街はモーリンちゃんを信仰している街ですよ?
精霊を魔物として見る冒険者ギルドとは相容れないのでは?」
「ああ、相容れないさ。 だから、恐らくギルド全体のスタンスは変えねえで、あくまでこの街の支部だけ精霊を敵視しない……みてえな中途半端な対応だろうがな」
「うーん、もしもここに支部ができるなら、ここを拠点にしてみるのもいいかなーっとは思うっスけど、何で急に支部ができるなんて話が出てきたんスか?」
「実は今回の戦いに、ギルドの幹部も身分を隠して参戦していたらしくてな。 それで、あの戦いの最後を自分の目で見たって事だ。
……あの光景を見ちまったらここの精霊姫サマを邪悪な存在だなんて思えないだろうさ。
アレを敵視してるなんて言ったら、この戦いを見た連中からは不信感を持たれそうだから、ギルドから歩み寄る姿を見せようって考えだろうな」
ロドルフォの言葉に、ティートは微妙な表情をした。
ティートの中では、モーリンは珍妙なチンチクリンという印象で固定されているため、そのモーリンが多くの人の心を動かすような光景を作り出したと言われても、半信半疑なのだ。
「あー……オレは途中で脱落したんで見てないんスけど……そんなに凄い光景だったんスか?
正直、あのモーリンが神々しかったって聞いても、全然想像できないんスけど…」
「ああ、お前らはアレを見てねえんだな。 それは……損したな。
信仰心なんか欠片も持ってねえオレでも、神話の中の光景かと思ったくらいだ。実際、涙を流して祈る奴もかなり居たしな。
多分、冒険者ギルド側だけじゃなくて、王国側でも精霊を魔物扱いする流れは変わるだろうな」
「そうか、そんなにかぁ。 ……どうする? 姉さん」
「そうね…… まだ確実な話じゃあないみたいだけど、とりあえずこの街に留まりましょうか。 本当にこの街にギルド支部ができるかどうか、流れを見極めてから動いても遅くはないわよ」
「まあ、好きなようにするといいさ。 ただ、ここを拠点にするならこれからも顔を会わせることも多くなるだろうな。
……おっと、話は変わるが、お前らもう怪我は平気なんだろう?
なら、ちょいとお使いを頼むわ。 オレはちょいとやることがあるから、オレの代わりにこれをアウグストの旦那に届けてくれ。 あの戦いに参加した冒険者で、最後まで仕事をした奴らの名簿だ」
「了解、届けておきます。 ティート、行くわよ」
「おう。 じゃあロドルフォさん、オレらはこれで」
ティートとジーナは軽く会釈して歩き出すと、早速アウグストが事務仕事に使っている大きめの小屋へと向かった。
小屋と呼ぶには少し大きく、一軒家としてはやや小さい。 そんな建物の中で、アウグストはイライラした様子で書類を睨みつけていた。
「雇った冒険者への報酬はこう。 んで、後払いの契約で貸し出した薬や矢を差し引きすると…… あん? この冒険者は確か戦闘中に逃げたバカ野郎じゃなかったか? こんな奴に払う報酬はねえよ! あ~……こっちのヤツは、ただウロウロして戦ってるフリをしていたアホだよな?
くそっ! ちゃんと最後まで戦った奴が分かる名簿は無いのかよ?」
不機嫌そうにボリボリと頭を掻くアウグストの耳に、扉をノックする音が届いた。
「誰だ? 今は忙しいから用があるなら勝手に入れ。 用が無いなら帰れ」
アウグストの言葉を聞いた訪問者は扉を開けて入室する。 それはティートとジーナだった。
「失礼します。 ロドルフォさんの指示でこれを届けに来ました。
なんでも、最後まで仕事をした冒険者を書き出した名簿だそうです」
アウグストはニヤリと笑った。
「アイツ……良い仕事をするじゃねえか。 報酬に少し色をつけてやるとするか」
その時、奥の机で書類に埋もれていたトレニアが質問をした。
「あの! その名簿には、花園の民が雇った冒険者も書いてありますか?」
「どれどれ…… おっ! ちゃんと雇い主も区別して書いてあるぞ!?
やるな、ロドルフォ……戦いの無いときは、事務をやらせる事も考えておくか」
「ああ! 良かった! これで仕事が捗りますわ……!
早く仕事を終わらせてお姉様の所へ行かなくては。 こうしている間もフリージアさんと、あの妖精さんの2人がお姉様を愛でているはずです! 私をのけ者にして! ああっ! なんて羨ましい!」
怨念のこもった目をギラギラと光らせて、鬼気迫る様子で書類を片付けていくトレニアを見て、アウグストは苦笑しながら言葉をかけた。
「トレニア嬢。 後は俺がやっておくから、モーリン様の所へ行ってきて良いぞ。 正直、見ていて痛々しい」
「ほっ、本当ですか!? あの……いかほどお渡しすれば? お姉様と過ごす時間が手に入るのでしたら、実家の宝物庫を空にする覚悟もありますわ!」
くわっ! っと目を大きく見開いて詰め寄るトレニアに、ついアウグストは後退りした。 元が美人なため、表情が崩れると妙に狂気的な迫力がある。
「い……いや、そういうのは良いから、早く行ってこい。 トレニア嬢は、このままモーリン様と会わなかったらおかしくなっちまいそうだ。 治療だと思って行ってこい」
「感謝しますわ! それではお言葉に甘えて失礼させていただきます!」
いつもの優雅な雰囲気を何処かへ置き忘れたかようにバタバタと走り去るトレニアを見送ったアウグストは、ティートとジーナに話しかけた。
「……なあ、2人とも。 優秀な冒険者になるためには事務や雑用も経験しておくべきだと思わないか?」
「はあっ!? まさか、オレみたいな無学なヤツに書類を手伝わせるつもりじゃあ…… えっ! マジで!?」
「ええっと……私で良ければ手伝いますけど、正直な話、ティートはそういう仕事は……」
「大丈夫だ。 なにも書類にサインしろなんて無茶は言わないさ。 ただ、オレが仕事をしやすいように整理を手伝うだけでいいんだ。 それが嫌なら、俺の気分転換の手伝いでもいいぞ?
終わらない書類整理にイライラして無性に誰かを殴りたくなった時に、少し手伝ってくれるだけの簡単な仕事だ。 ちゃんと回復薬は支給するぞ。
さあ、どっちの業務を手伝ってくれるんだ?」
ゴツい拳をグッと握ってニヤリと笑ったアウグストを前にして、ティートが選ぶ事ができる答えは1つであった。
「……書類整理を手伝わせてイタダキマス……」
「よし、頼むぜ」
こうしてアウグストは、臨時で雇った2人の助手と共に仕事を進めるのであった。
そのころ、フリージアはモーリンを抱え込んで、ゴロゴロと転がっていた。
「えへへっ、えへへへへ……モーリン、モーリン」
そう、モーリンは小柄なフリージアがスッポリと抱え込めるほど小さな姿になっていたのだ。
「えへへ、うぇへへへ、モーリン、モーリン、モーリン」
フリージアは仰向けになると、高い高いをするようにモーリンを持ち上げた。
すると、横から餌を狙う猛禽類のような鋭い動きで飛んできたぺルルが、モーリンを抱き抱えて飛び去った。
「むぅ……! 待て、モーリン泥棒! コラ! 飛んで行くなー!」
今のモーリンはぺルルと同じくらいの身長であり、魔力で肉体強化をすれば、ぺルルでも十分抱いて飛べる重さだ。 ぺルルが飛ぶのに合わせて両手を羽ばたかせるモーリンの姿は、まるで自分で空を飛んでいるかのようだった。
ちょうどそこに、衣服が乱れるほどの勢いでトレニアが駆け込んできた。
「お姉様! お姉様はいらっしゃいますか!? はっ! お姉様が私の元へ飛んで来ました!?
さあ、お姉様! 私の胸に飛び込んでいらして!」
そう言って、後ろのぺルルごとモーリンを抱きしめたトレニアは、高価な服が汚れることも気にせずに、そのまま地面をゴロゴロと転がった。
「ウフフ、ウフフフフ…… お姉様、お姉様」
「むぅ……! 待て、モーリン泥棒! コラ! 転がって行くなー!」
ーーーーーー モーリン視点
どうもこんにちは、ちびモーリンです。
なんだか小さくなりました。 あ、元から小さいというツッコミは無しでお願いします。
いやー、復活する時に、体を創る分の質量が足りない感じがしたので、なんとかコンパクトな肉体になれば行けるのでは? っと考えたりしたので、小さくなった事は、まあ想定の範囲内なんですけど…
でも、コレなんか違いませんか? 元の外見のまま倍率が小さくなるか、あるいは幼女化するかと思ったんですけど、まさかの2・5頭身のSDキャラになっちゃいました。
んー、順調にマスコット化が進んでいますねー。
いえ、狙ってこうなったわけではありませんが。 ……本当ですよ?
ただ、漫画とかが無い世界で、当然デフォルメという概念がないはずなので、こういう不自然にぷにっとツブれた見た目は受け入れられないかと思ったんですけど……
少なくとも女性陣には予想以上の大好評でした。
ぺルルちゃんは日本のサブカルチャーとかもある程度知っていますから、まあSDキャラを受け入られるのはわかるのですが、ちくわちゃんとセレブお嬢さんまで、まるで仔猫でも可愛がるようなリアクションをするとは思いませんでしたねー。
世界を越えても、やはりデフォルメは女性受けするということでしょうか?
あるいは、キモ可愛いポジションと思われてますかね?
そんな事を考えている間にも、ちくわちゃんに抱っこされたり、ぺルルちゃんに空輸されたり、セレブお嬢さんに抱っこされたりしています。
私ってばモテモテですねー。 照れちゃいます。 ……みんな同性ですが。
いえ、木になった以上、生身の男性にモテたとしてもあまり意味は無いですし、そもそも今の私は特定の誰かと恋愛するよりも、大切な皆さんとワイワイ楽しくやっているやっている毎日が幸せですからこれでいいんですけどね。
あっ、今のままでも幸せは幸せですが、お笑いライブの成功。 お祭りで皆さんに果物を配る事。農家になって街の収穫量を増やす事。 そんな目標に考えていた事が、今の体ではどれもできませんから、とりあえず元の体に戻る手段は探さないといけませんかね?
自分の今後の予定を考えていた私でしたが、いつの間にか視点が高くなっている事に気づきました。
おや? ……おお? おおおっ!?
ちくわちゃんが羽を生やしたエンジェルモードになって、私を抱えたまま空を飛んでいます!
おー、速いです! 高いです!
うーん、ちくわちゃんに抱っこして飛んでもらうのも楽しくて気持ちいいですねー!
さっきぺルルちゃんに抱っこされたのも新鮮でしたし、案外今の体も悪くないのかもしれませんね?
うん、前言撤回です。 この体だからこその目標というモノも見つかるかもしれませんし、急いで元の体に戻ることも無いのかもしれませんね。
焦ってバタバタと生きるのは私らしく無いですし、のんびりまったりと行きましょうか!
2度も死にかけておいて言うのもなんですが、きっとこれからの人生は……
いえ、これからの樹木生活はまだまだ長いはずです!
ゆっくりとしっかりと楽しんで生きないともったいないですよね!
……ところで、ちくわちゃん? どこまで飛んで行くのですか? なんだか地上には見たことの無い景色が広がっているんですけど……
あの、ちくわちゃん? 帰り道はわかっているんですよね? その不安そうな表情は、どういった意味でしょうか?
ちくわちゃん? あの、ちくわちゃん? なにやら挙動不審になってませんか?
あ~……うん、まあ……なるようになりますかね?
あっ、夕日が綺麗です。 ふむふむ、きっと明日も良い1日になりますね!
これにて本編完結です。 今まで読んでいただき、ありがとうございました。
ブクマ、評価、感想、誤字報告などをして下さった人たちにも改めてお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました!
この作品も、今後ネタが固まり次第、後日談などを投稿するつもりですが、しばらくは完結済み扱いとさせていただいて、別の作品を書こうと思っています。
新作は、2月8日金曜日の夜に1話目を投稿しようと思っています。
タイトルは 『悪役令嬢型アンドロイド・エリザベスX』 です。
名前の通りのアホな作品です。 投稿ペースは今作よりは少しのんびり投稿しようかと考えています。
そちらも読んでもらえると嬉しいです。
今まで応援ありがとうございました!
そして、できれば今後も応援よろしくお願いいたします!




