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出逢いはいつだって最高なんだ

作者: 叔父ジャッジ

アニメ、声優、漫画しか好きな物がないとある学生がロックミュージックとの初めての出逢いを書きました。

普通の日常、僕にとってはそれが居心地よくてしかしどこか退屈だと感じてもいる日々だ。

あまり積極的ではない僕は友達も少なく部活も入っていない。

だからこそ凹凸のない普通の日常が淡々と続くわけだ。

今日もいつも通り学校に行き、熱血教師や荒川を歩いていたら生徒に声をかけられるような先生でもない、

普通のどこにでもいる先生の授業を聞き、そんなことを6回も繰り返せばもう帰る時間になる。

帰りは部活もやっていなければ遊んでいくような明るい友達もいないので僕は世間話や趣味程度なら話すことができる唯一の友達と帰るのが定番だ。

この友達も僕といっしょであまり人生を謳歌しているタイプではない。

名前はけんすけという。

友達になったのも僕がたまたまその時流行っていたアニメキャラのキーホルダーを鞄につけていてそれをけんすけが見つけたのが始まりだ。

「あ!それがんばるぞいのだよね?僕も好きなんだ!ねぇ友達になろうよ!アニメ好きがいてうれしいなー!」

そんな会話から始まり今に至るのだ。

つまりまだ僕はうんともいいえとも返事をしていないままなのだ。

まぁそれでもアニメを語れるのは楽しいので気にしないが。

「今週の作画は戦闘シーンだけすごかったよね」

「うん、作画もそうだけど声優さんの声がようやくキャラとシンクロしてきたというか似あってきたというか・・・」

今日もそんなさえない二人がやれこのアニメが面白いだのやれ新作のゲームはここがつまらないだのこれまたあまりさえない会話をしている。

自分で言うのもおかしいことだが最近の10代はネットにより色々な情報を得ることで人よりも自分の方が全てのジャンルにおいて詳しいと思ってしまうところがあるらしい。

もちろんここでいう全てのジャンルというのはアニメ、ゲーム、漫画、声優だ。

10代の学生の半分はこの4つが世界のすべてだと本気で思い込んでいる。

僕たちみたいなその半分の中でさらにちょっとさえない学生はそのまた半分、いや2割ぐらいだろう。

つまりはほとんど居場所がない僕たちはかなりの希少種なのだ!

話は戻して、そんな風に自分が全知全能だと思い込んでいる者同士の意見がもし対立したら・・・

そうなった場合、リアル世界では言い合いをしない。

今の学生たちはSNSで対立した同じような意見の人を探しその顔も知らぬアカウントに向けて自分の意見をマシンガンのごとく打ち込むのだ。

もちろん批判されたらとんづらさ。

向きになって言い合いになってしまっても時間を浪費するだけさ。

そんな格下と言い合っていても時間の無駄ということをわかっているが故、言いたい事やうっぷんを

吐き出したら興味はなくなるのだ。

もちろん相手の顔が真っ赤になるのを楽しむやつらもいるが、僕はそこまで好戦的ではない。

すっきりしたら後は撮り貯めしておいた今期のアニメの今週分を見て、あとは適当にネットサーフィンして寝る。

つまりこれが僕のローテーションの全貌だ。

他にも僕には好きなアニメやお気に入りのゲームの音楽を聞くのも好きで、よく一人で家の中で軽く歌ったりしている。

カラオケなんかにはいかないよ、行く度胸もなければ行けるほどの友達もいないしね。

だからこうして家の中で一人で口ずさむのさ。

これまた10代の学生の半分はアニソンこそが日本の誇れる音楽だと思っており今の日本の音楽業界は腐っている!J-POPは死んだ!なんてことをへいきで発言する。

僕も当時はそう思っていた半分の中にいたのだが、アニメやゲームが好きな若い子には良くある傾向なので見逃してほしい、若気の至りというやつだ。

そんな音楽といえばアニソン、アニソンこそが世界一と思っていた僕にある事件が起こる。


夏休みの初日に棒動画サイトで動画を見ていたら関連動画に好きなアニメのMAD動画が上がっていた。

MAD動画とは簡単に言えば作者好みに編集されて出来上がった動画である。

音楽に乗せてPV風にしてみたり面白い場面だけを切り取って面白動画シーンを作ったりされている。

僕はこの関連動画に上がっていたMAD動画を見始めた。

(ん?アニメ関連でこんな曲あったか?)

最初はピアノから始まり、徐々に盛り上がっていくのだがこんな曲はアニメにはない。

もしアニメに合わない感じだったらbadに1票入れるからな?そんなことを思いながらMAD動画を見ていたのだが、見終わる頃にはそんな考えはどこかへ吹き飛んでしまい、ただ呆然と画面を見ている僕がいた。

動画がかっこよくて唖然としているのではなかった。

あんなに好きなアニメの動画なのに一切画面内の出来事は頭の中に入ってこなかった。

ただずっとMAD動画に使われていた曲に圧倒されて曲以外の情報が入ってこなかったのだ。

(わからない・・・よくわからないんだけど・・・なんだろう、このこみ上げてくる感情は!これを、こういうのをかっこいいっていうのか!)

それから僕はその動画を何度も何度も見直した。

曲を聞くためだけに見直した。動画サイトなのに曲を聞くために見直すなんて変な話だが本当の事なのだ。

それが僕とロックの最初の出会いだった。

調べていくうちにこのバンドはオルタナティブロックというジャンルでMy Chemical Romaceというバンド名らしい。曲名は動画の説明欄に記載されており、Welcome To The Black Paradeというらしい。

初めて聞いた時のあの衝撃はすごかった。

最後の盛り上がりなんて初めて聞いた曲なのに涙が出るぐらい感動していたほどだ。

僕は10代の学生の半分が知ってるもの以外のもので感動していたのだ。

最初はこの曲だけ聞きまくって満足していたけど次第にほかのロックとやらも聞きたくなっていき、僕は関連動画からいろいろな曲を聞きまくった。

それからだ、僕は常にロックの事が頭から離れなくなったのは。

ロックとは別にメタル、ブルース、ファンクといったジャンルがあること、バンドについて、楽器についてなど調べまくった。

ネットの履歴はアニメやピンクなものから音楽関連ばかりに変わっていたのだ。

いつの間にか僕はアニメを見る時間よりもロックを聞く時間のほうが長くなってしまった。

これじゃあけんすけとも語り合えなくなってくるなぁなんて思いながらも聞きこんでいった。

いままでだらだらと貯め撮りしていたアニメを見たり動画サイトで例のアレを惰性で見ていた時と違い、今年の夏休みはとても流れるのが速かった。

誰とも遊ばず出かけずなのに。

そして夏休み最後の日、僕は今まで貯めていたお金でCDショップに向かった。

夏休み前はあんなに、貯めたお金で円盤買うんだ!なんて意気込んでいたのに今じゃすっかりそんなことも忘れてしまっている。

動画で聞いて気に入ったバンドのアルバム、前情報なしで気になったジャケットのアルバム、今一押しされているアルバム、とにかくお金がある限りいろいろ買った。

こんなに楽しかった買い物は初めてコミケに参加した時以来だ。

何枚購入しただろうか、とりあえず買ったCDを音楽プレイヤーに取り込みまくった結果今まで入れてたアニソンの曲数よりも多くなってしまったのだ。

そんな音楽プレイヤーで音楽を聞きながら登校するのを楽しみに思い浮かべながら僕は眠りについた。


夏休みが終わりいつも通りの学校が始まる。

2学期の始まりはいつも憂鬱と共に幕を開けるのだが今回は違うぞ。

なんせロックを聞きながら登校できるのだ。

まぁそれだけなんだけど。

しかし僕にとっては大事なことだ!登下校が楽しくなるのだ!いつも朝起きた段階で祝日になることを願っていた僕が登下校の間だけはそんなことを思わないでいられるのだ。

しかし失ったものもある、それは夏にやっていたアニメを見ることができなかったことだ。

アニメよりもライブ動画などを見ていたためすっかり今期のアニメを見逃してしまったのだ。

唯一の友達であるけんすけとの会話アイテムが今手持ちゼロになってしまった。

彼と会ったらとりあえず謝ろう。

そう考えて教室に入ると今まさに頭の中で登場していたけんすけが挨拶してきた。

「おはよう!久々だねー!」

「お、おう。おはよう」

返事はしたがやはりどこか緊張する。

早めに謝ったほうがいいかもしれんと僕は思い謝ろうとした

「すまんけんすけ、今期のアニ」

謝ろうとしたその時とっさの行動だったのでイヤホンが音楽プレイヤーから外れてしまった!

大音量で一瞬だけ聞いていた曲が流れてしまった、恥ずかしい。

「す、すまん。けんすけ、言いそびれてしまったが今期のアニ」

「今のWelcome To The Black Paradeでしょ?」

「へ?」

「今流れた曲はマイケミのWelcome To The Black Paradeだよね?かっこいいよね!最後の盛り上がりにかけてのドラマチックな展開やギターのメロディは最高だよね!というか音楽プレイヤーのプレイリストがロックバンドばかりじゃん!ロックが好きならもっと早く言ってよー!」

なんだ?けんすけの目がいつもより輝いている、というかテンション高いな!

「け、けんすけ、君もロックが好きなのか?」

「あたりまえだよ!むしろこっちがその質問したかったよ!!」

(こんな偶然なんてあるもんなのだな)

そんなことを思っているとけんすけが喋りだした。

「ロックってさ、僕らみたいなさえない何も長所がないような人達を救ってくれるんだよね。どんな嫌なことがあっても、一人ぼっちになったとしてもロックを聞いてると勇気が湧いてくるんだ。確かに最近はロックなんて聞いてる人も少なくなったしダサいと思われてるかもしれない、でもそれでも僕はロックの力を信じていたいんだ。さえない僕にも勇気を与えてくれる。そんなロックが大好きなんだ。だから今ここでロックの力を借りてもう一度言うね、友達になろうよ!」

僕はなんのためらいもなく首を縦に振り彼と握手をした。

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