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母なる大地を夢見て  作者: 文風ラムタラ
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第1話「邂逅」

シリアス重視のSF小説です。

まだまだ若輩者ですが、よろしくお願いいたします。

 かつて緑豊かであった地球型惑星、メルコムは、90年以上前に起きた上空での大爆発をきっかけに、乾燥した大地が延々に広がる、灼熱の大地へと変貌を遂げていた。

昼間の気温は摂氏50度近くにもなり、太陽が沈めば今度は凍りつくような寒さがやって来る。先述の爆発の影響で、木々の大半が焼き払われ、惑星からは保温機能が失われてしまっていたのだ。

もはや、人の居住に適した環境とはお世辞にもいえず、地球連邦は勿論、現在それらを実質的に支配しているイーヴァ帝国の者達ですら、進んで近寄ろうとはしない。それでもこの惑星では、未だに多くの人が生活している。

理由は、メルコムがその気候を活かした"流刑地"として、イーヴァ帝国に利用されているからだ。彼らが発布した"居住区域再編政策"によって、一部の例外を除いて地球人とイーヴァ人は、完全に住む惑星を分けられることとなった。

その政策の中で、地球人に割り当てられた惑星の一つが、このメルコムだったのである。このような極端な気候の惑星に、支配者層が進んで住もうとは思わない。ある意味、当然の結果であるといえよう。

しかし、そうした過酷な状況は、時として人の反骨心を引き出す。まして、上流階級の地球人が、自分達と同じはずの地球人が、元の階級の高さだけを理由に、名誉イーヴァ人として優遇されている姿を目の当たりにしたのならば、尚更だ。


 ―――ドォォォォン―――

 メルコムの中心部に、爆発音が響き渡った。監視役として現地に駐留しているイーヴァ人達が、悲鳴を上げながらあちらこちらへ逃げ出していく。


「イーヴァ帝国駐留公館の爆発を確認!」


一人のオペレーターが、少し上ずった声でそう伝える。今、中心部にて破壊活動を行っているのは、2年前にこの地にて蜂起した人類抵抗軍、「ガイア」の面々だ。

地球人としての独立を取り戻す、という目的を果たすために設立されたガイアは、1年前に起きた当時の総統の死という事件によって一旦は沈静化するも、その後新たな総統が誕生したのを機に、再蜂起。現在に至る。


「了解。民間人には手を出すな、攻撃するのは敵軍のみにしろ」


報告を受け、指示を出しているのが、現在の総統、クレスト・ロートウィッスルだ。彼は以前、単なる一般兵に過ぎなかったが、総統の息子であるという理由で、新総統に選出されたという経歴を持つ。

まだ経験が浅い以上、時として優柔不断さが顔を出すこともあるが、周囲もそれを理解した上で、彼を支えていくことで同意している。―――一部を除いては。


『指示はそれだけか? 二世総統』


彼女にとってみれば、足らない指示であったのだろう。ガイアの司令官の一人であるリュティエ・グレイソヴリンは、現地にて戦闘を続けながら、クレストに対して罵倒とも取れる反発を示す。


「ああ、敵軍を確認したら……」

『貴様の指示を待っていては日が暮れる。戦場における指揮権はたった今より、私に移った。攻撃隊は私の指示に従え』


リュティエは半ば強引にクレストから指揮権を奪いあげると、攻撃隊に的確な指示を出し、イーヴァ帝国駐留公館を包囲していく。彼女のそのような態度を見ても、クレストが反抗する様子はない。


「いいんですか、あのまま任せてしまって」


心配そうな表情でクレストを見つめるのは、義勇軍としてガイアへ参加しているルイズ・オーエンテューダー。地球連邦第二主星であったラヴィエの出身だが、彼女は居住区域再編計画の煽りを受けて、メルコムに移住させられたという過去を持つ。

ルイズは、仮にも指揮官であるクレストがぞんざいな扱いを受けているのを見かね、話しかけたようだ。


「いいんだ、僕が指示を出すより、彼女がやった方がうまくいくのは間違いない」


半ば諦めも混じったような表情でそう呟くクレスト。自分には戦闘のセンスもなければ、指揮官として優れた資質があった訳でもない。何故総統に選ばれたかといえば、それは父親が前の総統であったからというだけ。そんな自分に、父の代からガイアの"エース格"として活躍してきたリュティエが不信感を抱くのは、仕方ないことだ。


「それでも……」

『お話をしている暇があったら戦況を見返したらどうだ? 何より、貴様が前線に立っていないのが気に食わん。優れた指揮官というものは、自ら戦場に立って味方を鼓舞するものだ。それすらもできんお前は指揮官ですらない、ただの穀潰しだ。言い返せるものなら言い返してみろ』


リュティエの厳しい言葉に、ガイア本部のオペレーションルームの空気が凍りつく。彼女が、クレストに一切の信頼を置いていないのは明らかだ。

クレストはリュティエに返答しようとしたが、それを聞く前に彼女は通信を切ってしまった。彼の声

は戦場へ届くことなく、闇へと消えていく。


「くそっ……僕も今から戦場へ向かう。ルイズ、代わりにここをお願いしていいかい?」

「えっ? あ、はい。分かりました」


悔しさからなのか、それとも総統としての責務を果たさんとする義務感か。クレストはリュティエの言葉に促された形ではあるも、出撃を決意する。代わりに本部での指揮は、ルイズが担当することとなった。


ロッカールーム。ガイアに所属する者達の私物や装備が集める部屋だが、毎日一回清掃が入るため、見た目に反して清潔さが保たれている。総統であるクレストのロッカーは、部屋の一番奥にあった。


「……お父さん。どうして僕なんかが選ばれたんだ……?」


父の形見である家族写真を見つめながら、クレストはそう呟く。何もかも未熟な自分が、ガイアの総統なんかに居座っていいのだろうか。自分が原因で負けるようなことがあったら……

クレストの頭に浮かぶのは、マイナスの思考ばかり。浮かない気持ちで剣を取り、彼は戦場へ向かう。ルイズが指示していたのか、本部の外に出ると、そこには移動用の車両が待機していた。言葉を発さぬまま、クレストは車の後部座席へと乗り込む。

流れていく景色は、どこも見ても一面の砂。緑はほんの僅かに存在するだけで、地表から立ち上った熱気が車内にも流れ込んでくる。

こんな惑星がかつて緑豊かな星であったなど、到底信じられない。何せ、クレストがここへやってきた頃には、メルコムはもう砂漠の星であったからだ。

これも、戦争の代償なのだろうか。少なくとも、この星での戦いが続く限り、環境が元に戻ることはないに違いない。

しかし、今のクレストに、そんなことを考える余裕などはなかった。彼は、ガイアの総統としてどう振る舞うのが正解なのかを考えるだけで、精一杯であったのだ。


 ところ変わり、砂塵が巻き上げられる戦場。爆発によって飛び散った瓦礫が、地面を覆う。そんな混乱の中心に、リュティエはいた。


「何を狼狽えている? 指揮官はこの私だ、立ち止まっている暇はないぞ」


あまりの気迫に圧倒され、完全に固まっていた周囲の味方が、はっと気付いたように動き出す。今回の作戦は、急襲作戦。基本的には敵軍がやって来る前に、完了しなければならないのだ。


「グレイソヴリン司令官! 報告です! 遠方に敵増援を確認! その数は……約1万!」


だが、少々時間をかけすぎてしまったせいか、既にメルコムの郊外から、イーヴァ帝国の軍勢が押し寄せつつあった。計算では、どんなに急いでも数時間はかかる距離まで出払っていたはずなのだが……


「ふん……無能な総統のお陰で不完全燃焼だな。追手は私が引き受ける。全軍、撤退を開始しろ」


元より、撹乱が目的の作戦で、いたずらに被害を増やす訳にはいかない。リュティエは追手を一手に引き受け、先に味方を逃がす。


「またお前か。そろそろ、独りよがりでは我々に勝てないことを学習したらどうだ?」


地球人とほぼ変わらぬ特徴を持ちながら、長く尖った耳が特徴のイーヴァ人。そんな彼らの軍勢を率いてやってきたのは、これまた地球人とも、イーヴァ人とも似つかない容姿を持つ人物。

彼女、レラ・ド・アルムヒェンドルフは、短く切り揃えられた白髪と耳の部分から生えた二対の赤い角、更には両手を覆う白いもこもことした毛、極めつけには背中から生えた羽と、おおよそ普通の人間とはかけ離れた姿をしていた。

それは、人類がまだ地球にしか生息していなかった頃からイーヴァ人と長きに渡る宇宙戦争を繰り広げていた種族、ハ・アラクラン人に見られる特徴だ。

彼らの特徴は、人間と虫類が混ざったような容姿をしていることだが、彼女のような姿を取れるのは種族の上位の者だけであり、力のない者は単に虫が巨大化したような姿をしている。

上空に目を向けてみれば、レラ・ドに従っているであろう、数匹の"蛾"が編隊を組んで飛行していることに気付くだろう。


「笑わせてくれる。戦わずして敗北を受け入れた軟弱者がそれを言うか」


ハ・アラクラン人は、ある時を境に急速にイーヴァ帝国との和平へと方針展開をし、今では多くが名誉イーヴァ人として帝国へ迎え入れられている。

リュティエは、それを戦わずに敗北を受け入れること……つまりは降伏であると称した。その言葉を聞いたレラ・ドの顔に、嘲笑の表情が浮かぶ。


「敗北を受け入れた、だと? 馬鹿げたことを。これは和平だ。お前達のように、わざわざ種を絶滅させるような事態を招かないための、な」


レラ・ドはハ・アラクラン人の選択が和平であると強調した上で、それを選んだ理由が、種の存続という目的にあったことを語る。同時に、地球人が、戦いによって滅亡への道を歩んでいるということも。


「これ以上話しても無駄のようだな。味方の撤退も完了した。あいにく、私には貴様に付き合っていられるほどの時間の余裕はない」

「こんなことをしでかしておいて、逃げられると思ったのか? 人間」


刹那、レラ・ドが翼を広げ、そこから大量の毒の鱗粉が放たれる。鱗粉は、一直線にリュティエへと向かっていくが……

リュティエは、それが着弾する直前で手を振り下ろす。すると、彼女の眼前に風の防壁が姿を現し、鱗粉を霧散させた。

エーテルを源とする、超常の力……魔法ともいうべき技だ。イーヴァ人曰く、宇宙基準ではエーテルを扱えることは常識らしいが、人類でそれを行使できるのは、限られたごく一部の者のみである。


「エーテルが使えるからといって粋がるなよ。所詮、お前は人間だ」

「それはこっちの台詞だ。貴様も所詮、虫だ。この際、どちらが上かはっきりさせてやる」


先ほどよりも遥かに高い速度で鱗粉を放つレラ・ドに対し、再度風の防壁を展開しながら、地面を蹴って突っ込んでいくリュティエ。二人が激突すると同時に、周囲に激しい衝撃波が撒き散らされた。

頭の中にある設定を活かしきれるかどうかが不安ですが、頑張っていきます。

クレストが主人公なのに、早速リュティエが主役のような状態に……

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