その4 適度な嘘と適当な距離
入学式は別に省略でいいよな。
たいした事起こんなかったし。
てか、入学式で理解したのはパイプ椅子で寝ると首が痛くなる 以上。
いや、卒業式でも思ったから再認識か。
先生の号令に従って、同じ髪の色した同じ服を着た生徒たちが
蟻みたいに綺麗に並んで、教室に戻る。
誤解があるとヤダから言うと別にこういうのが嫌いなわけじゃない。
長時間の集団行動は嫌いだけど 自分の行きたいとこにいけないし。
教室でのLHRも終わって、
適当に折ったプリント類を適当に鞄に詰め込む。ハラヘッタしとっとこ帰ろう。
鞄を持って教室の引き戸に手をかける。
「トワ〜。」
気のせいだ 背後からの声と視線と駆け寄る足音は気のせい。
とりあえず、その気配に追いつかれる前に素早く教室から出て扉を閉める。
ついでに近くにあった箒で扉につっかえ棒をしておく。
逃げる時間を稼ぐため。 あんな目立つ奴と一緒に1年間過ごすつもりは無い。
ため息を一つついてから、適当に廊下を歩き出す。
すれ違うのは廊下の近くで駄弁ってる男子女子の皆さん。
素早くお友達を作れるその才能には脱帽します いや、まったく羨ましくないけど。
「トワ〜?!」
あ〜、もう追いついてきた。
振り返らずに、周りを見渡すとちょうど近くで駄弁ってるグループが一つ。
無駄に筋肉ついてるし、体育系部活関係か。
背筋を伸ばして、髪をクシャリと乱したり、眼鏡を外してポケットに突っ込んだり
何時もは全く浮かべない気さくな笑顔というのを顔に貼り付けながらそいつらに、歩み寄る。
とりあえず、よく喋ってるやつに目をつけそいつが口を閉ざした瞬間を狙って声掛けて
「おっす、久し振りだな。」
「おっす!わりぃけど誰だっけ?お前?」
わるくない、当たり前だ初対面なんだから。
でも口に出さない、表情に出さない。
俺って、名役者
「ほらっ、練習試合で会っただろ?忘れちまったか?」
「う〜〜〜〜ん?覚えてないな、お前どこ中だったんだよ。」
「市立緑丘中、本気で覚えてないのか。薄情な奴だな〜。」
「そんな中学と練習試合なんかしたっけなぁ。」
明るめの声を出すように心がけながら、俺の名を呼ぶ声が通り過ぎ。
そのまま遠ざかっていくのを確認する。
いまだ首を傾げつづける、気の良い男子。
お前本気でいいやつだよ、振り込め詐欺に引っかからないように注意しろよ。
「お前は何中だっけ?」
「俺か?岩名中。」
「榛名中じゃなくて?」
「岩名岩名、榛名ってどこだよ。」
「あ〜〜〜〜〜〜、他人の空似だったぽいな。手間取らせて本気でわりぃ。」
頭を下げてその上でパンッと頭の前で手を合わせる。
これって、体良く相手の目から視線外せるよな 考えた奴、頭良い。
「いいって、それより俺たちこれから野球部仮入部しに行くけどおまえも来るか?」
野球部なのか、見たまんまだな。
「いや、俺これからバイトの面接あってさ。牛乳配達で面接してどうすんだろな?」
「そっか〜、んじゃまたこんどな〜。」
もう絶対話し掛けないだろうけどなぁ、とか思いながら
ぞろぞろと移動していくグループを見送って。
「あ〜、疲れた。」
背骨伸ばしたせいで何か変な筋肉つった。
まぁ、いいや。
眼鏡をかけてから、窓の外を眺める。
………げっ、大翔のやつ校門前でうろうろしてるし。
確か此処って裏門あったよな。
裏に回んのメンドクセ かといって、正門行った方がめんどくさそうだ。
くしゃくしゃにした髪に適当に手櫛をかけながら
俺は裏門に行くために、階段を下りた。
てか、エレベータあんのに生徒は使用禁止ってケチだよな?
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配布元 遙彼方