2-5 始まりの町
——始まりの町 フォルトニア——
「とうちゃーく! いや~ 走ったからすぐだったね~」
セリナは一軒の店らしきところで急停止した。
「ど、どこがすぐだよ……ほぼ全速力で30分は走ったぞ……」
俺は死にそうなほど呼吸が荒れていた。
「あはははは! 途中で中休み入れてたじゃない(笑)」
「あれのどこが休憩だよ! 途中で足がもつれて転んだら、そのまま引きずられたんだろ! どんだけ痛かったと思ってんだよ!」
「あはははは! いや~ごめんごめん(笑) 疲れて休憩したのかなと思って~」
セリナは笑った。
「『思って~』じゃねぇよ! てか、なんで疲れてないんだよ! 体力どうなってんだよ!」
「体力? 私、体力ないよ~」
セリナはとぼけるような顔で答えた。
「いや……それだけピンピンしてて体力ないとか言っちゃったら、俺はどうなんだよ……この世界は化け物みたいなやつばっかなのか……」
「違うよ~ うーん……なんて説明すればいいのかな? とりあえず説明は登録してからでいいかな?」
セリナは微笑を浮かべながら目の前の木の扉へと手をかけた。
俺が小さく頷くと彼女は扉を押した。
古びた扉は犇めく音と共に開かれる。
その扉の先にあったもの。
それはアニメのような光景だった。
俺はあまりの衝撃に絶句した。
「なんだここ……」
店内には長いカウンターと、座席、そして酒やら食べ物やらで賑わう人で溢れかえっている。
服装から見るに魔王攻略を目指している人達だろうか?
鎧を着ている人がいれば杖を持つ人、斧を担ぐ人があれば剣を腰に携えている人達でいっぱいだった。
「やっほー 今日も来たよ~」
セリナはもの凄いテンションでセリナは店内に入っていき、みんなに挨拶した。
と、カウンターの奥から返事が返って来る。
「やぁ、セリナちゃん。今日も来てくれたんだね。 おや? 後ろの連れはニューフェイスだね。どこから連れて来たんだ?」
セリナの言葉に返事を返したのは中年の男だった。
格好から推測するにおそらくこの店のマスターだろう。
白いシャツに黒いウエイトレス服を重ねていた。
「えーとね。この子はさっき草原で見つけた新人さんだよ! 名前は確か……れ、れんこん君だったかな?」
セリナは後ろにいる俺を指さし、紹介してくれた。
名前を覚えられてないみたいだが……
「あっ、初めまして。高柳 蓮と申します。」
俺は簡単に挨拶した。
もちろんちゃんと名前も訂正する。
「初めまして。『グランティア』のマスターを勤めさせていただいております、スクエイドと申します。呼び方は『マスター』で構いませんので気軽にお話ください。」
中年の男性。自称『マスター』は深々とお辞儀する。
「マスター! 今日ここに来たのは、この子をギルド登録するためなんだけど……私説明苦手だから代わりにお願いしてもいいかな?」
セリナは少しだけ声のトーンを落とし、マスターに説明を求めた。
「構いませんよ。セリナちゃんはうちの常連客ですからね」
そう答えるとマスターは店の奥へと消えていった……