2-1 帰ってきた人生日記
「————⁉」
俺は目を覚ました。
そして、すぐさま辺りを見渡した。
辺りは何もない暗闇から転じ、何もない草原へと変わっている。
「どこだよ…ここ……」
俺は自分の状況が理解できないでいた。
それもそのはず、見渡す限り草原だけが永遠と広がっている。
特に目立つような生き物がいなければ、特に目立つ岩すらもない。
ただただ、短い草だけが大地を覆っている。
「たしか俺は、神様に飛ばされそうになってそれで……」
俺はもう一度辺りを見渡した。
・・・・。
「ってことは、ここが異世界かよ……」
俺はようやく自分の置かれている状況がわかった。
——異世界……想像していたものと全く違う……
空は青。
草は緑。
空気は清く澄んでいる。
何から何まで地球と同じような環境だった。
「ハッ⁉ そういえば初期装備どうなってんだ」
俺は自分の体や周りをくまなくチェックした。
しかし、何も見当たらない……
防具は学校帰りの制服。
武器は剣や弓などではなく素手。
アイテムは……無し。
俺はかなり落ち込んだ……
「完全に0からスタートかよ……」
「てか、俺の持ち物どこ行ったんだよ! 支給なしのうえ、アイテム没収はさすがに酷すぎだろ!」
俺は愚痴った。
空に向かって大声で愚痴った。
——わかっている。所詮学校に持って行くようなもので異世界に対応できるものなどないと。
だが、俺は愚痴った。百も承知で愚痴り続けた。
と、空からノートのようなものが舞い落ちてくる。
ページがもの凄い速度で捲れるそれは、俺の顔にばさりと着地した。
「なんだ? なんでノートが降ってくるんだ?」
俺は顔からノートを引き離した。
見ると、そのノートには太いペンでこう書かれていた。
『高柳 蓮の人生日記』
「・・・・えっ?」
俺は頭が真っ白になった。
「何故ゆえに俺の人生日記が空から降ってくる……」
俺は全くもって理解できなかった。
・・・・あっ⁉
ようやく俺は理解に至った。
「つまり俺が持ち物を返せと愚痴ったからノートが返って来たと……」
俺はノートを眺めながら思う。
——いらねぇ~‼
破れたノート修復するくらいなら武器よこせよ!
「マジで意味わかんねぇ……これでどうやって魔王攻略するんだよ……」
俺はそう言って、草原が広がる大地に寝そべった。
何もない草原にそよ風が流れる。
それはとても心地よく、俺の心を落ち着かせた。
「やーめた。こんな劣悪な装備で魔王なんて倒せるかよ!」
青い空を眺めながら、俺は静かに目を閉じた。
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あとがき
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
2-1 帰ってきた人生日記において主人公 高柳 蓮 は魔王討伐を諦めておりますが、
筆者である私、天音は諦めておりません。
作品は今後も続きますのでご安心ください。
今後も読者の皆様に楽しんでいただけるような作品作りを心掛けていきますので応援のほどよろしくお願いいたします。
by 天音