1-1 神と口論になった結果俺は転生させられた(上)
・・・・。
「ここはどこだ……?」
目が覚めた場所。
そこは天国でも地獄でもなかった。
何もない暗闇。
俺の声だけが木霊する。
「俺は確か電車に轢かれて……」
そう、俺は人生に疲れ、線路を逆走した。
「ってことは魂浮遊中ってとこか?」
見ると俺の体は薄っすらと光透けていた。
と、何もない暗闇に突如謎の光が現れた!
その光は俺の目の前を上下し、そして音とともに弾け飛ぶ。
視界が光に包まれる。
「何だこの光……」
俺は目を眩ませながらも光の正体を見ようとする。
謎の光、その正体は……
「……老人⁉」
俺の目に映ったもの。
それは、杖を片手にした白いロン毛に顎ひげの高齢者だった。
「誰が老人じゃい! わしゃこう見えてもまだ10億年とちょっとしか生きとらんわ!」
「ふぁ⁉ いや、十分すぎるくらいに生きてるから!」
俺は思わず即行でツッコミを入れてしまった。
「まー、そうじゃの。お主見たく17歳で死のうとは考えんからの~」
老人は俺に嫌味をぶつけてきた。
「あぁー、だいたいこの後の想像つくわ。あれだよな? あんたは神様みたいなおちだろ?」
俺は謎の老人に尋ねる。
「うむ。最近の子供は話が早くて助かるのう。いかにも、わしゃ神だ。」
——やっぱりか……
「で? その偉い偉い神様が俺にどういった要件だ?」
「うむ。神に対してその口調はどうかと思うがまぁ置いておくとしよう。では、本題に入るぞ。お主の生前はわしもずっと見とった。辛い人生じゃったのう……」
俺は神に同情され、少し嬉しかった。
が、しかし!
よくよく考えると俺が生前不幸だったのは、この目の前にいる白髪爺さんのせいではないか!
俺はそれを言葉にした。
「おい、こらっ爺さん! なんか同情してくれてるみたいだけど、全部あんたのせいじゃねぇかよ! こちとら生まれてから死ぬまで終始一貫くそみたいな人生送ってんだぞ! いや、違うか…… 送らされたんだぞ!」
俺は今にも老人に飛び掛かりそうな勢いだった。
「うむ。お主の意見はこうじゃな? 人間は自分の意志で生きているように見えるが、実際は全て神により支配された世界に生きている。と?」
老人は声色を少し変え、真面目な語り口になった。
「あぁ、俺はこの世界全てが神によって支配されてると思ってる。実際そうだろ! 俺は何も悪いことなんてしてねぇ! それなのに俺の人生はどうだ? むちゃくちゃ酷かったぞ!」
俺は自分の人生を神に訴える。
俺は悪くない悪いのは全て神だと。
しかし、
神は俺に告げた。
「お主の人生を決めたのはお主自身じゃ。わしゃ何も決めとらん」
「どういうことだ? 俺が自分から不幸になったとでも言うのか?」
「うむ。そういうことじゃ。確かにわしゃお主に人生の分かれ道を作る。じゃが、その結果までは作っておらぬ。意味が分かるかね?」
俺は少し考え、答えた。
「何本もの道を人間に与えるが、どの道を選ぶかまでは神の力じゃ決められない。ってとこか?」
「うむ。決められんとは言わんが道を選ぶのは人間じゃ。つまりお主が選んだ道が不幸じゃったというわけじゃ。」
——俺が自分から不幸になっただと……
いや待てよ……もう一つ反論がある……
「ちょっと待てよ爺さん。その与えられた道が全て不幸だったら俺がどの道を行こうと不幸確定じゃねぇかよ!」
老人は目をくわっと見開いた。
「なんじゃ? お主そこまでしてわしゃのせいにしたいのか? いくら神とはいえ常識くらいわきまえとる。そんな理不尽なことはしたりせんわい!」
少し怒り気味に神は答えた。
「証拠あんのかよ! 人間にはどうせ見えないからって不幸な道ばっかり用意してたんじゃねぇの?」
俺は声を荒げて神に反抗する。
「むむ……証拠と言われてもな……」
当然だ。
人間に見えないものを証明することなど神だろうと不可能だ。
「なんだ? やっぱり俺は理不尽な線路の上を走らされたのか?」
——上手い。俺の終着地点はまさに線路の上だ。
「お主……心がかなりやられておるの……」
老人は困り果てた顔で呟いた。