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レイナ その1

シュウ君が迷宮都市に向かって走っている間の、レイナ編です。


前にシュウ君が建てたフラグの回収工事が始まります。

「....はぁ。」


思わずため息が出てしまった。



私は今、とある街の宿に在籍している。


少し前までは、帝都に住んでいたのだが、帝都の近くはモンスターが寄って来ないのでつまらなかった。

近くにダンジョンもあるのだが、帝都の近くにあるダンジョンは、弱すぎる。


だから、今は近くに、ある程度強いモンスターが出るこの街にいる。



そして昨日、私はゴブリンの大群を"感知"して、街から西にある草原ヘ向かった。


けれど、向かっている途中で、突然大きい地響きが聞こた。

急いで駆け付けてみると、ゴブリン達は私が"感知"できない「何か」を囲んでいた。


そして同時に、その「何か」から、あり得ない程の殺気と衝撃波が出てくるのを感じた。


一瞬で十体程度ゴブリンの感知が消えた。


その後、「ウル○ラソード!」という掛け声がした。どうやら私が"感知"できない「何か」は男性で、この殺気でもまだ本気ではないらしい。


また、数十体が消えた。


おそらくふざけた「ウル○ラソード」で、この威力。本当に「こんなの、ふざけている」と感じたわ。


そしてゴブリン達はその後もどんどん消えて行き、とうとう「何か」の姿が見えて来た。

黒い髪、すらっとした体躯。黒い半袖半ズボン。その「何か」は服装を除いて、思っていた以上に普通の人間に見えた。けれどそれも一瞬だった。


彼はゴブリン達の正面を、ただ、歩いていた。それだけで近づいたゴブリンは切れていっていたわね。それが一瞬でも普通の人間に見えた私は凄いと思うわ。


けれど彼は殺戮の歩みを止めた。ゴブリンキングと対面したのだ。



ゴブリンキングは、その高い再生力が非常に厄介で、倒すなら高火力の魔法で一気に消し飛ばすのが普通ね。


けれど彼は、ただ立って、ゴブリンキングを縦に切ったり、横に切ったりしていた。正面に立ったまま、ゴブリンキングの真横からも切っていたけれど、あれは魔法かしら?


しばらく切った後、彼は右手をゴブリンキングヘ向け、黒い霧のようなものを出した。それはまさに、光を一切反射しない、形を持った闇のようだった。その黒い霧がゴブリンキングを呑み込み、それから解放されたゴブリンキングはミイラのようになって消えていった。



私はそれを見ていて恐怖した。いや、正確には自分が恐怖した事に、驚いていた。自分が恐怖を感じる程の者に出会えた事に、興奮し、歓喜していた。


私が"感知"できない、彼を"鑑定"してもエラー。そしてあの圧倒的な力。興味は増すばかりだった。


私は我慢出来なくなり、彼に話かけてみる。



振り向いた彼は、私と同じくらいの歳で、顔付きは思ったより平凡な印象だが、よく見れば整っていた。


でも、そんなものよりも、私の興味は彼の目に惹かれていた。


彼の目は、死んだような、終わったような、まるでこの世が全てそう見えているような、輝きを忘れた灰色に見えた。

だが、目が合った瞬間その灰色の奥にある黒と、その中の一筋の光が見え、一瞬で自分の全てが覗かれたように感じた。私の興味はどんどん煽られていった。


彼に私が見た事を話している間、彼はずっと私の目を見ていてくれた。

普通の男は、私が話している間も、舐め回すように私の顔や身体に視線が行っている奴ばかりだったので少し嬉しかった。


彼は、思ったより見られていた事に動揺していたけれど、そのおかげで彼の名前を知る事ができた。


そしてシュウ君.......やっぱり彼の方がいいわね。そして彼は、暗に「ゴブリン達のドロップをやるから見なかった事にしてくれ」と言ってきのだけれど、そこで了承してしまったのが失敗だった。


彼は、私がゴブリン達のドロップを拾っている間に、居なくなっていた。

私は街の方に行ったと思い込んでしまい、街へ戻り、ドロップアイテムや魔石を換金してから彼を探したけれど、見付から無かった。



それが、先ほどのため息の理由ね。


彼は、街には居ない。そう私は確信している。


どこに行ったか分からないのだからもうどうしようもない。そう思って外を見ると、行商人の姿が目に入った。


ーそうよ、行商人に聞けば分かるかもしれない!そう思って私は外に出て、早速聞き込みを始めた。





彼の行方は、思ったよりすぐ分かった。

西の森の中にある村で、ダークマザーウルフの闇魔法を黒い煙のようなものを出して防ぎ村長を助け、指を振っただけでダークマザーウルフが真っ二つにした旅人がいたらしい。



ーと、いうことは彼はあの時、私が東の街にいる事を知った上で、その逆方向に向かったということになる。


「全く、面白い人だわ。」


けれど何故か怒りのような感情が沸き上がってくるのを感じる。




「馬車を出して頂戴。行き先は西の村よ。分かったわね?」


「はっ、はいぃ!」


私はすぐに馬車の従者を雇い、西の村へ向かうことを決定する。


「はぁ....ほんと、ふざけているわ。」


本日二回目のため息を吐きながら。

その頃シュウ君は、一つ目の村を走り抜けていた。



「ねぇ パパー、すごいのがはしってるよ〜」


「そうだねー、凄い速い人だったねー」


「でも パパー、これひとのあしあとじゃないよ〜?」


「....ソウダネー、スゴイハヤイヒトダッタネー」

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