村人Aのお願い、気にせずいきました。
昨日、村の人達は飲むだけ飲んだ後、酔っ払って熟睡し、それぞれの家の人が回収していった。
ちなみに俺は、スキルで体内が改造されているので、酔わないし眠らない。
もうすでに夜は明けているのに、村長はさっき回収されたばかりである。
俺が村長宅の居間にいると、マナさんが起きてきた。
「シュウさん、おはようございます。それと昨日は父を助けていただきありがとうございます。お体の方は大丈夫でしょうか?」
うおお。天使だ。マナさんの天使力やべえ。
どこぞの暴力的なツンデレ死神ちゃんや、昨日エンカウントした精神力を削いでくる金髪美少女とは大違いだね。
「ああ、大丈夫だ。それよりなんで俺が村長を助けた事を知ってるんだ?」
「昨日みんなで窓から見てたんです。強いんですね。シュウさんは。」
スキルと称号が無かったら即死だったけどな。
「まあ、そうだな。」
「....私も、シュウさんのように強くなれるでしょうか?」
そんなことは分からない。俺と彼女では違いすぎる。なら俺が言える事は一つだ。
「....挑戦だ。諦めないで挑戦し続けてくれ。」
「はい。胸に刻んでおきます。」
挑戦しなければ、強くなれない。全てを賭けて、挑戦するのだ。人生とは、挑戦(ry
そんなことを思っていると、マリちゃんも起きてきた。
「おはようございますシュウさん。昨日は凄かったですね!私びっくりしました!」
マリちゃんは朝から元気だね。おにいさん嬉しいよ。
「うん、そうだな。」
「ねぇ、シュウさんは本当に旅人さんなんですか?」
ぶっ。唐突に聞かれたから顔に出そうになってしまった。
「そうだ。俺は旅人だよ。」
今はもう、旅人なのだよ。
「へぇー、そうなんですか?」
絶対こいつ疑ってるわ。おにいさん疑われてショック。
「では、私達も旅に連れて行ってもらえないでしょうか?」
「....はい?」
マナさんが急にそんな事を言ってきた。
「あらいいじゃない。シュウさん強いみたいだし、安心だわ。」
はいここで来ましたマナマリのママ。略してマママ。
「そうだな。シュウくん程の強さなら、娘達を預けても安心だな。」
おい村長、お前さっき眠ったばっかりだろ。なぜ起きてきたし。
「シュウさん、私からもお願いします。私連れて行ってください!」
俺は考える素振りをする。彼女らの熱意は伝わった。俺のスキルの事も、話せば解ってもらえるだろう。
だが、問題は旅に連れて行った後だ。まず、彼女らは普通の人間なので食べ物と水を持つ必要がある。
俺のスキルで作れそうなのだが...精神的に無理である。俺の身体からリンゴ作っても、食べて欲しくないし食べさせない。
それと移動だ。もし目的の場所が遠かったら、俺は着くまで走ったり、飛んだりするつもりだが、そんなことをしたら、彼女達は涙目になってしまう。
俺のスキルで車とか作れそうだが...それも嫌である。車の中が実は俺の体内とかホラー。
最後に戦闘だ。敵がいたら瞬殺すれば良いかもしれないが、戦闘では何があるか分からない。自分の身は自分で守ってもらいたい。
だからーー
「わかった。俺にもう少し余裕ができたらまたここへ来る。だからそれまでに強くなっていてくれ。」
それを聞いたマリちゃんは、少し残念なような顔になり、マナさんは決意したような顔になった。
「分かりました。約束ですよ?」
「ああ、待っていてくれ。マリもそれでいいな?」
「....はい。マリも頑張ります。...頑張って強くなるのでシュウさんも早く来てください。
」
「...健闘するよ。」
少し話が重くなってしまったな。話題を変えよう。
「二人はどこに行きたいんだ?」
「私は海に行きたいです!」
「私は....魔法都市に行ってみたいです。」
確か海がある都市はここから南で、魔法都市は、ここから東南東に行った所にあるらしい。
「じゃあそこは二人の為にとっておこう。じゃあ俺は...迷宮都市に行くとするよ。」
迷宮都市はここから北の、山のふもとにあるらしい。
他にもダンジョンはあるらしいのだが、大きいダンジョンの中では、そこが一番近いらしいので、そこにする。
「迷宮都市か。懐かしいな。」
「村長は行った事があるのか?」
「うむ。若い頃行っ事があってな。ダンジョンは自分の限界に挑戦できたよ。だが、危険だから無理はしないでくれ。」
「分かりました。」
「迷宮都市に行くなら、歩いてなら二週間以上はかかるわ。途中で二つ村があるけれど、一つ目まで行くにも四日はかかるわ。」
「そうなの?」
歩いて二週間以上か。なら俺が走って二十時間くらいだな。
「ええ、だからこれをあげるわ。三日分の干し肉と干し葡萄、それと水が入っているわ。」
そう言って大きめの膨らんだリュックが俺に渡された。
気持ちはありがたいし、ここで受け取らなかったら怪しまれるかもしれないので、受け取る。
「えーと、泊めてもらって、しかも食料まで頂いてしまって申し訳ないな。」
「そんなこと言うな。シュウくんは恩があるのだから。」
「ああ、ありがとう。」
俺はそう言いながら、照れくささを誤魔化すように、ポケットにある魔石を置いてから言う。
「じゃあ、行って来る。」
「どうか、お気をつけて。」
「絶対戻って来てね!」
「娘達のために頑張って来るのよ〜」
「そうだぞ!娘達に相応しい男になって来い!」
みんながそれぞれの言葉で送ってくれる。
最後の二つは無視して、村長宅を出る。
「俺も旅に連れていってください!」
「発情期が終わったらな。」
村を出る直前、昨日絡んできたアンなんとかくんに、そんなことを言われたが、気にせず行く。
さあ行くぜ迷宮都市!待ってろよダンジョン!今走って行くからな!