異世界のテンプレ、論破しました。
「それじゃあ早速聞きたいことがあるんだけどー?」
「何だ?」
俺は、何故か迷宮都市兵団の駐屯所を出てしばらく歩いた所にある、喫茶店の隅のテーブル席に連れて来られていた。早く迷宮に行きたいでござるのすけ。
「えっとー、君、名前はー?」
「シュウだ。」
「シュウさんだねー?私はヒメハルー。魔導の追究者ー。」
「ああ。そうか。」
よくわかんないけど自己紹介されたことはわかった。
「それとー、君の体質?団長さんとの戦いを見てたけどー、空間停止とか効いてなかったねー?それと体が切れても普通に生きてたー」
「スキルと称号のおかげだよ。」
「じゃあー、私には魔力が見えるんだけどー、空中にある魔力が君に吸い寄せられててー、でも君からは魔力を一切感じないんだよー?それもスキル?」
「そうだなスキルだ。」
俺の体内に置いてある「黒」くん、今も空中の魔力などのエネルギーを吸収し続けています。そして特に使い道はないのにどんどんエネルギーが蓄積されていってます。
解放したらスーパーヤサイ神にでもなれるかもしれない。
「そうなんだー、すごいスキルだねー」
「ああ。便利過ぎて手に負えないな。」
「そっかー。私はねー、"魔導追究"っていうスキルなんだー。魔法が思った通りにに作れるんだよー。」
「すごいスキルだな。」
思った通りの魔法とかやべえな。俺だったら真っ先に《'絶対者'と「黒化」ブレイク》っていう魔法作っちゃう。
「でもねー、作るのに時間がかかるー。だからー、時間魔法を作ってこの世界ではいっしゅんで作って出せるようにしちゃったー。」
「お、おう。」
お兄ちゃんはこの子がこの世界のバランスブレイカーになってないか心配!ちなみに俺はなってないから!なってないんだからねっ!
「それとねー、私はねー、魔法で食べ物も睡眠も要らないようにしちゃったんだよー。シュウさんも同じでしょ?」
「なんでそう思うんだ?」
うえぇまじか。自分の表情が変わってないか心配。
「えー? なんとなく? 違ったー?」
「....違くないな。お前と同じだ。」
「そっかー。シュウのはどんなスキルなのー?」
「俺のはへ....変形できるんだよ。体をな。」
あぶねえ。変態って言っちゃう所だった。お年頃な少女に向かって「俺のは変態なんだよ」とか言っちゃったら誤解しか招かないな。通報されるわ。
「どんなかんじー?」
「まあ見ててくれ。」
俺は人差し指を一瞬隠して風車に変えて出す。そして高速回転させる。
「わぁー、面白そうなスキルだねー」
「今は色々出来過ぎて手に余ってるよ。」
「あははー、私は出来ない事もあるからなー」
「出来ない事なんてあるのか。」
「魔力が足りないんだよー。」
「そんなことがあるのか。時間魔法作れるくらいなら何でも出来るだろ?」
「えー?でもシュウのステータスが分かるようになる魔法がどうしても出来ないー」
「ああ。俺の称号はかなり上位だからな。同じ物を持ってないと打ち消せないくらいには。」
「上位ー?この世界の法則を丸ごと書き換える程には魔力あるのになー」
フアッ!?やべえなこいつ。敵にしなくて良かった。
「この世界の称号を消す魔法作ってみたのにシュウには効いてないっぽかったー」
ファアァ?今それ作ったの!?超しれっとしてない!?何!?この子は冥界征服でもするの?
「やべえなヒメハルのスキル。スキルだけで戦ったら勝てる気がしないわ。」
「そぉー?でも私もシュウとは戦いたくないなー。」
「そいですか」
そう言いながら、俺は視線を感じて周りを見る。ここに来た時にはいなかった人達が、近くの席から俺を睨んでいる。何でだ?まぁいいや。
「それよりー、シュウはこれからどうするのー?」
「ああ。折角の迷宮都市だからな。迷宮に行ってみたいな。」
「へぇー、迷宮行ったことなかったんだー?
じゃあ私がついて行っていいー?シュウの戦い方とか見てみたいー」
そうヒメハルが言った時、周りで一斉に席を立つ音がした。見てみると、さっき睨んでいた人達がこっちに来る。雰囲気的には不良達が鍛えられたみたいな。
「おい。誰だよお前?」
なんかリーダー的な人が言ってる。
「ヒメハル、聞かれてるぞ?」
「こんにちはー、ヒメハルちゃんだよー?」
「おめぇだよ!!!」
おお。今のコントみたいなやつ一度やってみたかったんだよね。
「こんにちわー、シュウちゃんだよー。」
「お前が言っても可愛くねえんだよ!」
「そうか。それで何の用だ?」
「お前、ヒメハルちゃんを掛けて勝負しろよ。」
はい出ましたー。異世界テンプレ的なやつ。
そんな予感はしてた。むしろこうなる予感しかしなかった。
「いや、やだよ?」
「何だぁ?怖いのか?」
うっわテンプレー。でも言われてみるとうざいなこれ。
「逆にお前は俺に勝つ自信はあるのか?」
「...ぷっ!アッハッハッハ!負ける気がしないなぁー!」
うっわ何こいつら。返ってこっちが笑えてくるわぁー。
「そうかよ。つまりお前は自分より弱いと思ってる奴と同じ土俵で闘おうとしてる訳か。」
「何だと?」
「だってそうだろ?負ける気がしない奴とお前は今闘おうとしてる。俺だったらその事自体が出来ないな。恥ずかしすぎて。」
シュウはとりあえず相手を煽ってみた。そしてまだ俺のターン! シュウはまだ相手を煽る。
「しかも何を掛けるって?人掛けるって言った? 人が人掛けちゃうの? それってどうなの。法律とかそれ以前に人間としてどうなの。道徳って知ってる?」
相手はさっきまでの高笑いが嘘のように額にシワが寄っている。そして俺のターン!俺は最後に煽りを入れた!
「つまり、俺はそんなお前らと闘う道理は無いって事だ。お前らと闘ったら逆に俺が恥ずかしからな。...分かったら道徳と恥を知ってから帰って寝てくれ。」
ふう。俺の饒舌が火を吹いたぜ。
俺が奴の方を見ると、奴は、殴り掛かってきていた。
だが、そんなものは届かない。すでに指の先から極細の糸を出して動きを封じているのだよ。
「....それとひとつ言い忘れてたな。そう言われた後に、怒って、殴り掛かって、それで、手も足も出なかったら........
........控えめに言って、最高に恥だな。」




