↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第六章 「真夏の海と輪廻の華《ファイアーワークス》」
68/111

チャプター 8-7

前回のあらすじ

→1日目終了

7



『……スター! マスター!』

「う……うん……?」

何か聞こえる。

俺を……呼ぶ声……?

『マスター!!』

「のわぁ!?」

耳元で大声が聞こえ、思わず飛び起きてしまう。

「……って、ヒカリ?」

「......兄さん。 起床時間、過ぎてる」

「え……?」

ヒカリの持つ俺の携帯の時刻を見る。

とっくに8時を回っていた。

『そうですよ、マスター! 昨晩、私たちで遊んだからって、寝坊は感心しませんよ!』

「......兄さん……?」

「ちょ、トル! 接続詞間違ってるぞ!?」

『そうですか? 拗ねた私たちをつつきまわしておいて、白ばくれないで下さい!』

『…………』

トルの後ろのポルは無言で頷いている。

なんと言うか……物欲しそうな目をして。

「......詳しい話は、後できっちり聞かせてもらう」

早く来いと言わんばかりにヒカリは、俺の携帯を持ったまま背を向けて行ってしまった。

「……はぁ」

ため息が漏れた。

……そうだ。 早く行かないと……



*********



「さて、今日の予定だが……」

朝食が終わり、ケンがおもむろにそう切り出した。

「この合宿の目的でもある、この島の調査を行う」

「なんだよそれ、初耳だぞ!?」

「そりゃ、言ってねぇんだから当たり前だ」

「……ライト君、これ、これ」

後ろからヒヨがつついてくるので見てみると、

「……ちゃんと書いてるし……」

単に見落としていたことが露見してしまった。

「……しっかりしなさいよね」

ローザには呆れられる始末。

「……ま、そんなわけで、チーム分けをするぞ。 ついでにブリーフィングだ」

ケンは食堂のモニターに、この島の地図を映し出した。

「これだけの施設を作っておいてあれだが、実際、この島のことは何にも分かってない」

「マジかいな……」

「報告では、ある程度進むと、進めなくなるらしい」

「……は?」

「今回、お前とステラに行ってもらう森の話だ。 "マヨイの森"なんて言われてるらしいぞ」

なんだよそれ、マジで存在してるのか……?

「……てか、その組み合わせって誰が……」

すると、アカリが手を挙げて、

「わたしたちがさっき決めたんだ! ね、アキラちゃん?」

とアキラに振る。

「うん。 各個人の戦力をおおよそで計算して、組み合わせを考えたんだ」

「ちなみに、3つのグループに分かれることになってるぜ。 西海岸担当、東海岸担当、森林担当の3つだ」

「……俺とステラが森の調査として、お前たちは何をするんだよ?」

「島の全体図を正確に書き出すために、島の周辺を調べるんだよ。 資料によると、島の形がかなり変わってるんだと」

「モンスター反応も、あるみたいだよ?」

「そうね。 あんたがグースカ寝てる間にあたしたちが調べた限りではね」

ぐ……

「……ごめん、手伝えなくて」

「い、いいんだよ! 謝らなくたって……」

「……ふん。 反省しなさい」

「……そんなわけで、残りのメンバーもパパッと発表して、調査に出向くぞ」


「......なぜ、わたしがこっちなの……?」

「いいじゃん、ヒカリ! トラシャイの3人で動けるんだから!」

「そうだよ。 連携力なら、きっとナンバーワンだよ!」

「......うぅ……」

……すまん我が妹よ。 俺が決めたことじゃないんだ……

「……それはあたしのセリフよ。 あたしこそ、どうしてこっちなのよ?」

「まぁまぁ、オレ1人ってのはちょっとキツイからさ。 頼むよ」

ケンはそこでスッとローザの耳元に寄った。

「……ほら、これが終わったらゴニョゴニョ……」

「……え?」

なんだ……ローザに変な事吹き込んでないだろうな……?

「……それ、本当でしょうね?」

「……ああ、もちろん」

「?」

ヒヨが完全に置いていかれてるけど、大丈夫かな……

「……まったく、しょうがないわね」

ケンが離れると、ローザはため息まじりに首を振った。

「よし、それじゃあ出発だ。 何かあったら、各自インカムで知らせるように!」



*********



「……それで、ケンにはどこまで話したんだ?」

お昼に集合することだけを決めて別れた後、隣にいるステラに聞いてみた。

「どこまでって……ウチの”ステラ”って名前の由縁ぐらいしか……」

「……それぐらいなら、まぁ、いいか……」

『ウチも、全てを照らす、光になりたいんや!』と言っていたのを思い出す。

まさかそれが名前の由縁とは、言われるまで気づくまい。

「あ、もしかして、ケンさんがウチのことをステラって呼んでたから……?」

「……そうだ」

そういうところは無駄に鋭いよな……

「なんです? ヤキモチですか?」

「そうじゃない。 ただ……」

「ただ?」

「……あいつは俺たちと違うから、あまり背負わせたくないんだよ」

なるべく真剣な声色で、そう伝えた。

「……わかってるって。 でも、今のウチらは間違いなく人間やから。 それだけは、忘れないでください」

「……ああ」

間違いなく人間。

それは見た目の話か?

行動原理の話か?

それとも……

「……ああ、もう! やめやめ! そんな辛気臭い顔せんとって下さい!」

ステラは手を叩くと、

「痛っ!」

バシバシ俺の背中を叩いた。

「ヒカリに教わった、『気合の入る魔法』や」

「暴力の間違いだろ……」

「ひぃっ!? 隊長さん、グリグリしないでっ!!」

ステラの頭を両拳で挟んでドリルの刑。

久しぶりにかました気がする。

「……あ、あれ、あれ見て!」

ステラは森の奥の方を指差した。

「そんなこと言って逃げようったって……ん?」

指差す方に視線を向けると……

『…………』

何かが、こちらを見ていた。

「なんだ……あれ?」

ステラを刑から解放し、こちらを見つめるそれを注視した。

ふわふわと浮いているように見える。

全長……30センチってところか。

小さな羽のようなものも確認できた。

『…………』

「あ!」

小さなそれは、ついっと森の奥へ行ってしまった。

「……あれ、なんだと思います? 隊長さん」

「うーん……」

森に出てくる小さな生き物……

あの体躯、あの雰囲気、そして……

「……あの感じだと、フェアリー、ってのが関の山じゃないか?」

明らかに顔と胴体と足が付いていた。

それも、人によく似たものをだ。

「ほぇ……。 存在、したんやなぁ……」

「……クリスタルが存在してるんだ。 なにが具現化されててもおかしくない」

「……せっかく感動に浸ってるんですから、正論で論破しないでくださいよ」

と、少し拗ねたように唇を尖らせたが、

「ま、それもそうか」

はぁ、とため息をついた。

「夢も空想も、現実になってしまうと、なんだか寂しいもんやな」

「『夢は夢だからこそ美しい』ってか?」

「なんやそれ。 誰の受け売りなん?」

……ヒメ……って言っても、わからないんだろうな……

「……それはそうとして、どうする? 追跡してみるか?」

「もちろん、追いかけるやんな?」

「よし、よく言った!」

食欲と好奇心には勝てないってね……

「さ、行きましょう!」

ステラの背中を追いかけるように、駆け出した。



*********


*********



「……それで、どういうつもりかしら?」

「なんの話かな?」

「とぼけないで。 あれよ、さっきの……」

「……うん? ああ。 あれね」

ケンははぐらかそうとしてるのか、あたしを弄んでるのか、戯けた態度を見せる。

「言った通りだ。 今夜、二人っきりになるチャンスをくれてやる。 バッチリ押していけよ?」

「う、うぅ……」

ケンにはバレバレだったみたい。 まさかこんな話に納得させられるなんて、思ってもいなかったわ……

「どうせ、最近ご無沙汰なんだろ? パパッとやっちまえよ」

「な、ななな!? あ、あたしたちは別に、そんな関係になったわけじゃ……!!」

「……なに話してるの?」

「ひ、ヒヨ?」

「ちょ、ちょっと待て、ヒヨ。 それはオレの肩が、肩がぁああああああ!!」

「はいはい、話はこっちで聞くからね〜」

木々の奥に連行されたケン。

なにやら勘違いしてるみたいだけど……知らぬがなんとかってね……

それにしても……

二人っきりって……どうするつもりなのかしら。

今夜は花火大会をするなんて言ってたけど……

そもそも、モンスターがいるのに、花火なんてできるのかしらね……?

「……バッチリ押していくって……うぅ……無理無理……」

羽織ってきたパーカーのフードをかぶり、その場でうずくまる。

落ち着け、あたし。 この世界が戦場なんだってことを、忘れてはだめよ……



*********


*********



「あれ? おっかしいなー。 ここ、さっきも通らんかった?」

「……通った気がする。 この花、さっきと同じ形角度で咲いてるし」

「それは根拠としてはどないなん……?」

追いかけたはいいが、見事なまでに道に迷っていた。

木々に遮られ、あたりは薄暗く、それほど見通しも良くない。

「おい、ポル! 聞こえるか?」

仕方なく俺はサーチャーを起動した。

『......んあ?』

数秒の間の後、ポルの気怠げな声が帰ってきた。

「このあたりの地図、出せるか?」

『......うーん……位置情報が特定できない。 簡易マップが限界』

「それでいい。 頼む」

『......ほい』

RPGで見たようなミニマップが、ディスプレイに映し出された。

「この赤いのが、モンスター……だよな?」

あたりをさっと見渡してみる。

「どうです? 隊長さん?」

カチカチ、とボタンを押して、倍率を下げる。

だが、いくら広域に設定しても、赤い点が集まっている箇所に続く道がわからない。

「うーん……かなり、ヤバイかも……」

「えぇ……」

その時、スッと視界の端を掠めたのを捉えた。

「っ! こっちだ!」

「ちょっ!? 隊長さん!」

画面に浮上した赤い点を、ひたすらに追いかけた。

低木を踏み倒し、草花を分入って、ただひたすら。

そして……どうやって来たのかわからぬまま、

「隊長さん! 見てくださいよ!」

……この島の、一番辿り着いてはいけない場所へ、辿り着いてしまった。

真宵の森の、最深部……モンスターの巣窟に。


そろそろ……結合しないとヤバそうだな……

近いうちに、結合処理を施しにかかります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。