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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第六章 「真夏の海と輪廻の華《ファイアーワークス》」
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チャプター 8-5



「よし、ビーチバレーしようぜ! ビーチバレー!」

そう言いだしたケンは、砂浜の用具倉庫からポールとネットを持ってきて、

「お前はボールを膨らませておいてくれ」

と、俺にしなびれたビニールの塊を渡してきた。

え……? 俺がやんの?

「二人はコートを書いてくれ。 その間に……ヒヨ、こっち側のポールを」

「うん、まかせてよ」

「わかったわ。 あんたはそっちをお願い」

「......ラジャ」

「え? ウチは待機!?」

ケンの指示に、皆が動き出す。

なんと言うか……こういうときのケンは輝いて見える。

俺がリーダーやってたときより、リーダーやってるというか。

「……何をボケッとしてるんだよ。 ボールが無かったら、始められないだろ」

「わかってるって」

手に持つ塊に視線を落とす。

……さて……空気穴はっと……

ずいぶん長い間使っていなかったらしく、カチカチだった。

おかげで空気穴を見つけるのに少し苦労した。

「……よし。 これでいいかな」

浮き輪を膨らませるのと同じ要領で、ボールの形に。

赤と青と白のストライプ柄で、大きさと耐久性は文句なさそうだ。

「準備できたか? じゃあ次は……チーム分けだな」

「はいはい! そう言うと思って、割り箸でくじを作ってきたで!」

ステラはそう言って、さっき作ったのであろうその割り箸の束を握る手を出す。

「ほらほら、引いてください!」

ステラに促され、皆は一本ずつ割り箸を抜き取っていく。

「ほな、色つきと色なしチームで分かれましょ」


「……で、どうしてこうなった」

色つき……所謂いわゆるあたりを引いたのは、俺、ケン、ヒヨ。

「いやぁ、ウチにはさっぱり――」

と、くじを引かせた張本人の台詞が終わるより先に、

「勝負よっ! 負けたチームはアイス奢りね!」

「はぁ!?」

ローザがそう捲くし立てると、ボールを空中に上げ、サーブを放った。

「ひぃ!?」

そのボールは、ちょうどヒヨの真正面へ。

「ヒヨ!!」

「えいぃ!!」

ポーンとボールは俺の上空へ。

いいぞ。 思っていたよりヒヨはバレーが出来る!

「ケン!! ぶちかませ!」

「ああ!」

俺の元に落ちてきたボールを空に返す。

そして、ケンはタイミングを合わせて跳んだ。

「喰らえッ!」

「甘いで!!」

ケンのスパイクが炸裂するも、ステラがすかさずブロックに入る。

「くそっ」

ボールはステラの腕を跳ねて俺たちのコートに帰ってくる。

だが、あれなら……

「ライト君っ!!」

「わかってる!!」

間髪いれずにボールへとダッシュ。

コートギリギリに落ちそうだったボールを、滑り込んで上空へ叩いた。

……よし、間に合ったぞ……

と思った瞬間、

「......えい」

バシュッ!!! と音がし、ボールが砂浜にうずもれていた。

「......わたしにバレーで勝とうなんて、まさか思ってないよね? 兄さん」

うわ……目がマジだ。

ていうか、ヒカリがボール競技得意って忘れてたぜ……

「せんぱーーーーい!!! 助けてくださーーーい!!」

「「!!」」

突然響き渡るアカリの声。

「ちょ、ちょっとライト!! いつまでも寝そべってないで、あれ、あれ!!」

ローザがわたわたと指をさすその先には……

「な、なんだ……?」

触手……だろうか。 でも……でかいぞ。 それもとてつもなく。

よくわからないが……海に浮かぶあれは、おそらくモンスターだろう。

「行くぞ! お前の後輩なんだろ?」

「せやで、隊長さん! 行きますよ!」

みんな、切り替え早いな……

「わかった。 ……ヒカリ。 お前はヒヨの保護を」

「......えー。 まぁ、いいけど……」

「ご、ごめんね? ヒカリちゃん」

「ほら、さっさと行くわよ!」

ローザは腕を背中に回し……

「あ、あれ?」

いつも装備している大剣がないことに気づいたらしい。

「……さ、先に行ってて!!」

そう指示を出すなり、顔を真っ赤にして更衣室へ走っていってしまった。

「……行こうか」

「ああ」

科学武器ケミスタウェポンは当然の様に防水のため、水着のポケットに忍ばせていた。

だが、さすがにクリスタルは持ってきていない。

あるのはネックレスとシルバーリングとプロテクトデバイスぐらいだ。

「隊長さん! カニですよ! カニ!」

前を走るステラが、そんなことを言うので、

「いや、でも触手が……」

いつの間にか近くに迫っていたそのモンスターを見やった。

「せんぱーい!! 早く助けてくださいよーー!!」

まず見えたのは、アカリとアキラを捕らえている触手。

タコというよりはイカに近い形状をしている。

何やらやばそうな粘液で濡れているようだが……

「おいライト! ボケッとしてるんじゃねぇ!!」

先ほど言われたのとは気迫が違った。

……そうだ……ゆっくり観察してる場合か……

頭を振って、ビームサーベルを抜く。

ケンはビームライフルを忍ばせていたらしい。 その触手目掛けてビームを放っている。

いったいどこから持って来たのやら。

「隊長さん! 前!」

ステラの声に素早く反応し、横へ回避運動。

俺のすぐ横を、何やら硬そうなものが掠めていった。

それを目で追ってみると……

「……カニだ」

カニだった。 間違いない。

でも、やつの背中からは触手が生えている。

……まさに、海の怪物モンスター……

「……触手が気になるのは分かるが、集中しろ」

まるで自分に言い聞かせているかのように、ケンが呟く。

「……わかってる」

とりあえず、アカリとアキラの救出からだ。

「ステラ! タゲ頼む!」

「任せとき!!」

ステラは虚空から取り出していた曲刀を振るい、カニを挑発するように攻撃する。

触手の大半がケンを狙い、カニのハサミはステラを狙っている。

「アカリ! 無事か!?」

その隙に、ハサミを踏み台にしてカニの背中へ飛び乗り、アカリを見上げる。

「うん! で、でも、アキラちゃんが!!」

「え?」

アカリの隣に、アキラがいるのが見えた。

触手に弄ばれるようにプラプラと宙を踊っている。

どうやら気を失っているらしい。

「あ、後ろ! 後ろです!」

明らかな殺意が迫るのを感じ、横へ踏み出す。

「……≪朧月≫!!」

そして、カウンターで触手を切り裂いた。

「太いな……」

切断には至らず、痛みを訴えるように触手がのたうちまわり、血の代わりか、緑色の液体が振りまかれる。

酷い腐臭が辺りを満たした。

「…………」

手遅れとは思いつつも、腕で自分の口を塞いだ。

今のところ、麻痺も眠気もない。

だが、明らかにヤバイことだけはわかる。

……≪雷切≫……!!

触手に下手なちょっかいをかけられないことを悟った俺は、空いている片手を腰に構える。

そして、アカリとアキラを掴む触手めがけて放った。

『グオオオオォォオ!!』

イカってそんなうめき声上げるのか……確かめようが無いからなんとも言えないけど。

「大丈夫か、2人とも?」

プロテクトデバイスで生成した障壁を足場にして跳び、落ちて来た2人を抱える。

「あ、ありがとう、先輩!」

「…………」

アキラは気を失ったままでぐったりしてるが、大丈夫そうだな……

「あ、あの……そんなにジロジロと見てあげないで……」

「あ、ご、ごめん……」

あの粘液は、やはり服を溶かす効果があったらしい。 2人の水着はボロボロになっていた。

見えそうで見えないのは唯一の救いか。

……なんか今寒気が……気のせいかな……

「ライト! 救出出来たのね?」

俺が砂浜まで跳んで来たタイミングで、ローザがウィングで飛んで来た。

「ああ。 なんとかな」

両腕の2人を砂浜に降ろしてあげると、アカリはアキラとくっつき合うようにして、露出した部分を埋めようとゴソゴソし始めた。

結局、アカリがアキラの上に覆い被さるようにして落ち着いたらしく、顔を真っ赤にして振り向き、『何見てるんですか』と言いたげな目を向けてきた。

いや……すまん。 見てる場合じゃないよな……

「……ほら、行くわよ?」

「わかってる。 わかってるから大剣を向けないでくれ」


*********


アカリたちを置いて、ステラたちの元へ急いで戻る。

「ローザ。 クリスタルはあるか?」

「……あなたが欲しいのは、これかしら?」

ローザが取り出したのは、薄青く光るインスタントクリスタルだ。

「ああ。 借りるぞ」

「ええ。 3倍返しで頼むわね?」

それは勘弁してください……

「隊長さん! はよう来てください! もう持たん!」

モンスターのカニの部分……主に大きなハサミが眼に映る。

「よし、ステラ! バニッシュ!!」

「待ってました!!」

ステラは両手の剣を振りかぶり、思い切り向かって来たハサミを叩いた。

さらに、ケンのビームがカニの目を捉え、視覚を封じた。

「ナイスだ! 2人とも!!」

後ろのローザに振り向く。

……ローザも準備万端なようだ。

「行くぞ!!」

「任せなさい!!」

地を蹴り、カニに肉薄する。

「喰らえッ!! ≪クロスドライブ≫!!」

V字を描くようにカニの両腕を切り裂き、一直線に叩き斬った。

『〜〜〜ッ!!!』

声とは言いがたい轟音を轟かせ、モンスターは少し後退した。

「「今だッ!!」」

俺とケンが叫んだのは、ほぼ同時だった。

「やぁぁああああ!!」

ウィングで上昇したローザは、迫る触手を回転斬りで切り落として行き、

「≪メテオプレス≫!!」

クリスタルを発動させ、モンスターの脳天をブチ抜いた。

『〜〜〜〜…………』

モンスターは緑色の液体を飛び散らせながら、沈黙した。

「あれ? 消えないのか?」

「どうやらここのモンスターは、倒しても死骸が残るらしい」

「うぇ……マジかよ……」

ビームサーベルを振って、刃を仕舞う。

ああ、疲れた……

「うぅ……身体中ベタベタよ……」

モンスターの亡骸のそばで、泣きそうになりながら液体を流しているローザの姿が見えた。

「……そうだ。 こいつを昼飯にしようぜ」

「……は?」

「こいつをバーベキューで食っちまおう。 多分、美味しいはずだ」

「ケンって、意外とワイルドやなぁ……」

ステラに引かれてるぞ、ケン。

「そうと決まれば、さっさと解体しようぜ! 海が汚れちまう」

「いや……え、マジ?」

ケンは聞く耳を持たない。

……やれやれ……変な副作用とか、無いよな……?



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