チャプター 8-4
4
「さ、着いたぞ」
「「「…………」」」
船で海を渡ること1時間半。
無人島じゃないかというぐらい、生活感のない島に上陸した俺たち。
「何もないね……」
「ねー」
アカリとアキラが若干引いてるまである。
「あははは……」
能天気ステラ様も困惑気味。
「……おいケン」
「うん?」
「どこだよ、ここ」
「そうだな……。 南の島、とかだったら雰囲気出る?」
「いや、ここまで森と海しかないような島で雰囲気も何も……」
「まぁまぁ、とりあえずついて来てくれ。 騙されたと思って、さ」
「…………」
ケンがそう言うので、仕方なく森の中に入って行く。
「……蛇とか出ないでしょうね……」
「……大丈夫だろ、多分」
某RPGのようにぞろぞろと、道無き道を歩く。
封印の祠を思い出すほどの急勾配が続く深い森なのにも関わらず、ケンの歩みに迷いはない。
「どれぐらい歩くんだ?」
「もうすぐ着くから、そう焦るなって」
「ひ、ヒヨさん!? 大丈夫ですか!?」
「え、ええ……」
「僕たちが肩を貸しますから、頑張ってください!」
「ありがとう、二人とも……」
ケンはともかく、ヒヨには少しキツい道のりだったかもしれない。
トラシャイのアシストでなんとかついて来ている感じだ。
「お、見えて来たぞ!」
先頭のケンがそう言ったと思ったら、
「……あれ?」
突然ケンの姿が消えた。
慌てて追いかけると……
「……うわっ!?」
道の先は続いておらず、崖になっていた。
ブレーキをかけるも、滑り降りてしまう。
「いてて……」
顔を上げると、
「……ようこそ。 ここが合宿場だ」
なぜか仁王立ちのケンが。
「……何もないように見えるが?」
どうやらここは、ちょうどカルデラのように、崖に囲まれた地形をしているらしい。
実際、高いところに位置しているはずなのに、海が見えないし。
だが、そこそこ広いここに、建物の類は見えない。
「もちろん、隠してあるんだよ」
ケンは手を振り上げる。
そして、指を鳴らした。
「……なるほどな」
ノイズ音と共に、"それ"が姿を現した。
「な、なによこれ……」
追いついて来たらしいローザたちも、驚きが隠せていない様子。
「......かっこいい……」
ヒカリは感動してるっぽいけど。
「いやぁ、夜になるとモンスターが襲ってくるらしいからさ。 こうして隠してるってわけ」
「よくもまぁ……こんな大掛かりな迷彩を……」
「光化学迷彩は今でも健在、ってね」
そう……姿を現したのは、どこかの秘密基地のような建物。
かなり大きい。 ぱっと見、家4つ分といったところか。
モンスターがいるのは確からしく、砲塔がいくつか見える。
「みんな降りて来たか? じゃあ、中を案内するよ」
後ろを確認してみる。
……うん。 全員居るな。
「行きましょう」
「ああ。 そうだな」
ケンの後を追いかけ、扉を開けた。
*********
「……で、ライトよ」
「あ?」
「……なに怒ってるんだよ」
「……お前と同じ部屋とか、ロクなこと起きなさそうなんだが」
「大丈夫だって! 教師の引率もない。 管理は全部オレの指揮下。 この条件下でやれることなんて限られてるって!」
「いや、その理論はおかしい」
とりあえず荷物を置いてくるようにと解散したのはいいが、まさか二人部屋しかないとは思ってもみなかった。
……まぁ、一人部屋なら一人部屋で、なにが起こるかわからん状況だけどもさ……
「それで、例のブツは持って来たのか?」
「ああ。 ……これだろ?」
ポケットから黒いブツを取り出し、ケンに投げた。
「おぉ……マイクがこれで、受信機がこれだな……」
さすがはウェポンマスター。 なにも言わなくても、次々にセッティングの準備を済ませてるぞ。
「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ。 鍵はオートロックで指紋認証式だから、登録しておけよ」
「お前は?」
「もうしてるぜ。 ……オレが居ない間に、他の女子を連れ込んだりしないでくれよ?」
「誰がするかっ!」
「あはは、冗談だって。 せっかくだし、集合時間までこの施設を見て回ることをオススメするぜ」
また後でなー、と言い残し、ケンは部屋を出て行った。
……集合時間まで、まだ時間があるな……
「まずは指紋認証。 そのあとは……」
*********
「……なんというか、こうしてると昔を思い出すな……」
施設はイーストサイド、センターサイド、ウェストサイドの3つに分かれていた。
それぞれ、居住区、訓練区、総合区といった感じだ。
この施設の総合管理、及びモンスター撃退兵器のコントロールを行うのは総合区。 食堂などもここにある。
「......確かに。 兄さんと食べたドーナツを思い出す」
「……って言いながら、食ってるんじゃねぇよ」
「......だって、お腹空いたし」
「まったく……昼飯もちゃんと食べるんだぞ?」
「......わかってるわかってる」
部屋を出た途端にヒカリに捕まった俺は、仕方なくヒカリと一緒に見て回ることに。
そしてその道中で見つけたフードコート的なところで休憩しているところだ。
「それにしても……人がいないな。 食材とかどうしてるんだ?」
「......わたしに聞かれても」
「だったら、ウチに聞いてください!」
「お、ステラ」
いつの間にか、ステラが側に立っていた。
「隣、いいかな?」
「ああ」
ヒカリはモソモソとドーナツを食している。
「さっきコントロールルームを見て来たんやけど、育成場と同じパネルが何個かあったんですよ」
「……ってことは、この施設にも栽培場が?」
「その可能性が高いと思います」
「......なら、その話はこれで終わり」
これ以上この話題は嫌だと言うかのように、ヒカリは席を立った。
「......美味しければ良いの。 原材料が何であっても」
*********
「……じゃあ、ミーティングを始める」
訓練区のアリーナ横にあるブリーフィングルームで、今後の予定を話し合うらしいが……
「予定なら、しおりに書いてるんじゃないか?」
しおりには数時間毎に、大まかな用事が記されている。
今更何を決める必要があるのか。
なんて言っていたら、
「何言ってんだ。 それに従う理由はないだろ?」
平然とそう言いやがった。
「一週間もあるんだ。 こなさなきゃいけないノルマだけ達成して、あとは遊ばせてもらうぜ!」
ここに教師陣がいなくて、本当に良かったと思う。
「……ってなわけで、何からやりたい?」
「そう言われてもだな……」
他のメンバーの方を見る。
「はいはい! 海行きたい! 海!」
「ウチも賛成!」
「……まぁ、アカリがそう言うなら」
「私はみんなに任せるよ」
「……あたしは別に、なんでも良いわよ」
「……だ、そうだが?」
ケンはニヤリと笑うと、
「よし、じゃあ海に行くぞ! 荷物持って10分後にロビーで集合だ!」
高らかに、そう叫んだ。
*********
「いやぁ、こんなに早く拝めるチャンスが来るとはなぁ」
「まさかお前……」
「心配すんなって! さすがにカメラまでは付けてない」
「それでもダメだろ!?」
どうやらケンは読みを当てたようだ。
俺から授かったアレを、すでに設置済みらしい。
「……あれだ。 女子同士でないと話せないことだってあるだろ? そういうの、気になるだろ?」
「……まぁ、気にならないって言ったら嘘になるけどさ」
浜場の更衣室前で、女子グループが着替えるのを待つ俺たち。
俺とケンはすでに着替え済みだ。
「……にしても、こんな物まで隠しておく必要があったのか?」
砂浜に何もないとばかり思い込んでいたが、どうも全部迷彩で隠していたらしい。
更衣室から倉庫まで、改めて見れば色々完備されていた。
「そりゃあ、無人島だからってこんなもん建ててたら、色々うるさいだろ?」
「……そうか」
聞いたのが間違いだった。
「……お。 そろそろ来るみたいだ」
インカムで様子を聞いていたらしいケンは、着替えが終わったことを告げた。
「……へぇ、そうか……なるほどなー」
「……何ニヤニヤしてるんだよ。 キモいぞ」
「いや……そろそろお前のことを沈めてやろうかと思ってね」
「何にキレてるんだよ!?」
ニヤニヤしながら怒るって、なかなか器用なことを……
「ライト。 ……お、お待たせ」
最初に姿を現したのは、ローザ。
髪色に合わせたのか、ピンクっぽいフリフリのついた水着を着ている。
まな板具合をカモフラージュするためなのか、はたまたオシャレのためか……
視線を少し下にずらすと、お尻の方に大きめのリボンが着いていて、可愛さを強調するアクセントになっていた。浮き輪代わりとは思わないことにする。
なんと言うか……小学生と言われても仕方ないような。 少なくとも高校生とは……
「……な、なんとか言いなさいよっ!」
「え? しょ……」
あ、ヤベ……
「……しょ?」
ローザの笑みがなぜか怖い。
……誤魔化さないと……
「……正直、言葉が出なかった。 可愛すぎて」
「え……」
あー、何言ってんだ、俺。
ローザが顔真っ赤にして困っちゃってるじゃん……
言ったこっちまで恥ずかしくなってきた……
「…………」
なんとも言えない空気が流れる。
「......兄さん」
「うぉっ!?」
突然声をかけられ、思わず振り向く。
背後にいたのは、ヒカリ。
スポーツタイプの黒い水着を着ている。
肌の露出が多めなのは仕様なのか。
堂々と発展途上のボディーラインを見せているのは、ヒカリなりに自信を持っているからだろうか。 ローザと大差ないなんて言えないな……
「……って、何付けてるんだ?」
そのヒカリは、俺のサーチャーのような機器を装備していて、片目を半透明のディスプレイが覆っていた。
「......兄さんの興奮度チェッカー」
「はぁ!?」
「......兄さんの水着に仕込んだセンサーで、正直な身体の反応度を計っているの」
何かあるかと思ってはいたが……
「な、なんのために……」
問うとヒカリは唇を尖らせ、
「......気になるもん」
と呟いた。
「そ、そうですか……」
……何かの冗談だと言ってくれ……
これで変な時に変な反応をしてしまうと、全部ヒカリにバレると……
……いや、何もなければ大丈夫。 うん、大丈夫だ……
「海だー! 海だよー!!」
「待って! 待ってよアカリー!!」
なぜかスク水のアカリと、男子と間違われそうなパンツタイプの水着姿のアキラが、海へと走って行っている。
もう慣れたが、アキラはやはり、可愛いと言うよりかっこいい。
昔は何度か間違われたよなぁ……
アカリはもう、あえて何も言うまい。
「......兄さん、スク水の方が、よかった?」
「なんでそうなる……」
そんな心配そうに俺を見なくてもいいだろ……
「みんなぁ、お待たせ〜」
「いやぁ、ちょっと手間取ってもうたわー」
お、この声は……
「いや、大丈夫だぞ」
砂浜を駆けてきた2人の方を向く。
最後に到着したのは、パレオって言うらしい水着を着た、ヒヨとステラ。
ステラにこれを自慢された時に、水着の名前は覚えさせられたんだが……
……破壊力って言うのか、なんか、目のやり場に困る……
他の子と比べて幾分……どころじゃないくらい発育の良い2人は、これでもかと言うほど自分の武器を活かしている。
俺たち以外に誰もいなくてよかった。 この2人だと、ナンパされてもおかしくないし。
「「…………」」
ローザとヒカリの視線が痛い。
いや、仕方ないだろ……
て言うか、なんでローザまで……
「……よし、全員揃ったな」
珍しく黙っていたケンは手を叩くと、
「じゃあ、思いっきり遊ぶぞ!!」
高らかに宣言した。
「「......「おー!!」」」
なぜか皆息ぴったり。
「……はいはい。 付き合いますよ……」




