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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第六章 「真夏の海と輪廻の華《ファイアーワークス》」
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チャプター 8-2



『さて……準備は良いかい?』

スピーカー越しに、ソウマの声が響く。

「もちろんよ!」

「......こっちもOK」

『それじゃあ、1ダウン取ったら勝ちってことで。 よーい……』

「え? それも聞いてな――」

ビーーッ!!

アイリの反論も空しく、開始を告げるブザーが鳴り響いた。

「......動作テストしたいから、兄さん、突っ込んできて」

「あ、ああ……攻撃すればいいんだな?」

ジェットノズルで宙に少し浮いたヒカリは、空中を指で叩いている。

どうやら、仮想キーボードでプログラムの追加を行っているらしい。

「いくぞっ!!」

ビームサーベルを2本取り出し、ヒカリの方へ駆ける。

「......うん。 調子いいみたい」

だが、一向に距離が縮まらない。

しかもヒカリの指は動いたままだ。

「おいおい……近付けないぞ?」

「......そういう風に組んだんだから、あたりまえ」

「冗談だろ……」

これでは俺は攻撃を仕掛けられない。

「だったら……これでどうだっ!!」

≪フォトンウィング≫を展開し、近付く速度を上げた。

「......んあっ……兄さん、激しい……」

「お前、わざとやってるだろ……」

それでも、機体自体の速度が相対的に上がっただけで、距離は変わらなかった。

「くっ……アイリ! まだなのか!?」

「うるさいわねっ! 今やってるわよ!」

アイリの機体は近接型だ。

そのため、射撃武装を装備するときは、それなりの準備がいるとの事。

≪カノープス≫戦以来、射撃武装を使っていなかったため、プログラムを近接よりに書き換えていたらしい。

なので、アイリもヒカリと同じように、仮想キーボードを叩く羽目になったというわけだ。

「......そろそろ鬼ごっこも疲れてきたし、やりますか」

ふぅ……とため息をついたヒカリは、腕のセンサーのリポーズを解除し、機動装甲の腕……というかビームライフルを操作し始めた。

「......追尾弾は撃てないから、安心して避けていいよ?」

……忠告はありがたいけど、安心要素皆無だからな?

「......じゃあ、ファイア!」

銃口を躊躇わずこちらへ向け、ビーム弾を乱射する。

「ちょっ! 当たる! 当たるって!!」

俺とヒカリはちょうどアリーナステージの内周をぐるぐる回ように、二人で追いかけっこをすることに。

「......狙ってるんだから、あたりまえ」

いや、それはそうかもしれないけどさ……

「......2倍速も出来るけど、やっとく?」

「遠慮しとく……って言っても、やるんだろ?」

「......もちろん」

ヒカリはニヤリと笑うと、両手のライフルを水平に構え、先ほどの倍の数の弾を撃ってきた。

「こ、このっ……!!」

避けるだけでは捌ききれないので、剣で弾いて弾道を変えて対処する。

ビームの熱が俺の頬とシャツを焼き、額に汗がにじみ始めたのを感じた。

「――天風さん!! 避けて!!」

「なっ――!?」

突然の指示が飛ぶ。

しかたなく俺は目の前に迫った弾を弾いて急上昇。

「絶対に打ち抜いてみせるっ!! ≪雷撃弾シュラークーゲル≫!!」

「......くっ……」

アイリが放ったその弾丸は、ヒカリだけを狙うかのように弾道を曲げ、ヒカリに迫った。

ヒカリは已む無く攻撃を中断し、回避に移る。

「ナイスだ! アイリ!!」

その隙に、ヒカリの背後を取るために先回りする俺。

「......させないっ……≪バースト≫!!」

「うあっ!!」

両手から先ほどの倍はあろうかというビームを放ち、俺の進行とアイリの銃弾を止めた。

「まだまだ行くわよ!!」

アイリのビームライフルは、ヒカリには劣るが連射性が高いらしい。 もう次の弾を発射している。

「......甘い!!」

ヒカリは呟くと、俺のほうへ急接近。

「ぐっ……!!」

いつものクセで、≪朧月≫の構えを取ろうとしてしまう。

「バカッ!! デバイスを使いなさい!!」

アイリの声が、俺に新たな選択肢をくれた。

「≪プロテクション≫!!」

左腕に装備していた例のデバイスを起動させ、手を前に掲げた。

「......きゃっ……」

ガンッ、と鈍い音がして、半透明の防御壁にヒカリがぶつかる。

「良くやったわ!! ……行けっ! ≪雷撃弾シュラークーゲル≫!!」

アイリが放った高速弾は、迷うことなくヒカリの方へ。

だが、ヒカリは不敵に笑った。

「......≪朧月≫!!」

「おい、それは俺の技……」

俺が言い終わるより早く、ヒカリはその弾を避け、その勢いを攻撃に転換し、

「......≪バースト≫!!」

つい足を止めてしまっていた俺と、攻撃後の硬直で動けないアイリを、同時に撃ち抜いた。

防御壁を展開する間も無く、≪プロテクトデバイス≫によって衝撃波と化した銃弾に全身を滅多打ちにされた。

そして気づいたら、地面に倒れていた。

「......ダウン。 これでわたしの勝ち」

「おいおい……マジかよ……」

ヒカリは勝ち誇ったようにピースサインをし、嬉しそうに微笑んだ。



*********



「いやぁ、本当に素晴らしいよ! ここまでのプログラムを組むなんて、キミは本当にすごいね!」

「......どうも」

照れているのか、ヒカリが赤くなっている。

「ぜひともうちにスカウトしたいところだけど――」

「断る」

「――ってことだから、データだけで満足させてもらうよ」

やれやれ……ようやく終わりか……

「データを採らせてもらったお礼だ。 その機体はキミにあげよう」

「......本当に?」

「ああ。 もちろん」

「ちょっと! 何勝手に……」

「まぁまぁ。 足りなくなったら、また作ればいいだろ?」

「作るのはあたしなのよ! あ、た、しっ!!」

涙目でハンマーパンチを繰り出すアイリ。

そしてそれを片手で押さえるソウマ。

「すごい、すごいよヒカリ! そんなかっこいいの貰えたの!?」

「ヒカリ! あとでボクも乗せてくれよ!」

あいかわらずトラシャイの3人は元気がいいなぁ……

なんてそんな様子を眺めていたら、

「……お疲れ様です。 天風さん」

「シエル……」

データを転送し終わったのか、アリーナ管理室からシエルが出てきた。

そして、はにかみながらこんな一言を俺に告げた。

「こんな私達ですけど、これからも仲良くしてくださいね?」

「あはは……こちらこそ」

そんなこといわれて、仲良くしないわけには、いかないよな……



*********



……なんて事を思っていながら、あの後食事に誘われたのに、そこまでしてもらうのは申し訳ないのでと断ってしまった。 特に後悔はしていない。

ヒカリはアカリとアキラを寮まで送ると言って、機動装甲に乗って先に行ってしまっていた。

「はぁ……疲れた……」

……にしても、あの機体性能、冗談じゃすまないぞ……

モンスター相手にどこまで通用するかわからないが、対人兵器としては最強と言っても過言ではないだろう。

正直、あそこまで圧倒されるとは思ってなかったし。

「……てか、あんなのどこに仕舞っておくつもりなんだよ……」

そんなことを考えながら、寮までの道を歩いていた時だった。

「ん? メールか……?」

携帯のほうに、メールが届いた。

「……ケンからか」

それだけで嫌な予感しかしない。

……いやいや。 ああ見えてあいつは俺の親友だ。 ちょっとぐらい信用してやらないとな……

「なになに……『せっかくの夏休みなのに、海で水着回をやらないのはないだろ? だから、別荘にみんなを連れて来い(はーと)』」

……ま、あいつならそうするよな……

ある意味で予想通りの提案に俺はため息をつくも、

「……まぁ、いいか……」

早くも俺の頭の中では、この旅行に向けての今後のプランが出来上がっていた。

夕焼けが紅く空を照らす中、俺はこの旨を伝えるため、寮へと早足に駆けていったのだった。





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