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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第六章 「真夏の海と輪廻の華《ファイアーワークス》」
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チャプター 8-1

話的にはここからが後半戦! 最後まで走りますんで、どうかお付き合いください!




「はい、天風君」

「おう」

学級委員長であることが最近発覚した双葉さんから、プリントを受け取る。

「Aランクなんて、凄いね」

「そ、そうかな?」

「うん! この調子でがんばってね!」

ウィンクをして、次の人へプリントを渡しに行ってしまった。

……気にかけてもらえるのは嬉しいけどさ……

クラスの男子からの視線が痛い。

どうやら俺はかなりの問題児にされているらしく、委員長として放って置けないらしい。

いや、俺が悪いのは頭と成績のほうで、生活面的には問題ないよな……?

「Aランク取ったのか? なんだ、気が狂ったか?」

「ケン。 お前は言葉を選べ」

ケンも同じようなプリントを手に、俺の元へ。

「なんだよ。 この前まで底辺スレスレの成績だったんだから、そりゃ驚くだろ」

「驚いてたのかよ……」

手元のプリントを見る。

『学期末成績表』と書かれている。

「実技でほぼ満点取ったんだろ? 噂になってるぜ」

「マジかよ……」

「ついでに、筆記テストがゴミカスだったこともな」

「それはもっと最悪だっ!!」

何それ聞いてないんだけど!?

確認のために成績表に目をやる。

……うわ、この点数で、よくA乗ったな……

「……それで、急にどうしたんだよ?」

「何が?」

「とぼけても無駄だぞ。 お前が訳なくこんな成績を取るはずがない」

「……買い被り過ぎじゃないか?」

「……そうでもなかったら、今度は病院送りだぞ」

それは酷くないか?

「……まぁ、ランクがあったら、いろいろ便利なんだよ。 今後において」

「ふむ……」

「それだけだ」

「……そうか。 あまり無理はするなよ」

「わかってるよ」

……ったく、ケンの察しの良さは折り紙つきだな……

空気はまったく読めないけど。



************



そんなこんなで終業式も無事に終え、明日から夏休み。

始業式のときみたいなイベントごとは特に無いので、気が楽だ。

「先輩! 写真が焼けたので、渡しておきますね!」

「ああ。 ありがとう、アカリ」

食堂の一画を、俺、ヒカリ、ローザ、アカリ、アキラで占拠しての昼食。

ローザとヒカリは相変わらずドーナッツとワッフルを山積みにしている。

それだけ食べて、どうやってその体型をキープしているのだろうか。

「先輩は、この後何か予定でもあるんですか?」

写真を胸ポケットに仕舞ったのを見て、アカリが問う。

なぜか凄いデジャブ。

「そうだな……」

選択肢は色々あった。

なので、少し選択肢を絞ってみる。

久しぶりにゲーセンでも行こうかとも思ったが、

「……行っておきたい場所があるんだ」

ある人の台詞セリフがふと、頭をよぎり、思考を停止させた。

「行きたい場所?」

アキラはハンバーガーをモグモグしている。

「あ、アキラちゃん、食べながら話すのは行儀悪いよ!」

「ご、ごめん、アカリ……」

……なんだこれ、和む……

「……実は、聖堂学院に用事を残してるんだ。 夏休みに入る前に、片付けておきたくて」

そこでなぜか反応するツインテールとポニーテール。

「あたしはパスよ。 もう懲り懲りだわ」

「......兄さん、次は誘ってくれる約束」

……そんな約束したっけか? まぁ、いいけどさ……

「ヒカリが行くなら、わたしたちも行く! ね、アキラちゃん!」

「え、ボクは別に……」

「またそんなこと言って!」

「わかった! わかったから叩かないで!」

もはや茶番と化したアカリアキラペアのやり取りを眺めながら、携帯を取り出す。

「......兄さん、ちゃっかり連絡先まで……」

「……まぁ、流れでな」

雷光の騎士団(ブリッツェスオルデン)のサブリーダーらしいアイリに、今から向かう旨を伝える。

すぐに返事が来て、いつでも準備できているとのこと。

……いや、ちょっと補語がたりないんじゃないですかね?

「......兄さん……?」

ほら、横で覗いてたヒカリ様がお怒りに……

「きっとお前は誤解してる。 いや、間違いなくしてる」

頬をつねられるも、必死の弁解。

「......まぁ、兄さんにそんなこと(・・・・・)ができるほどの甲斐性があるとは、思えないし……」

「あはは……」

思わずローザの方を見てしまう。

「……なによ」

「なんでも……」

「…………」

ヒカリはもともと目つきの悪い目で、睨むように見てくる。

……まぁ、甲斐性がないのは確かだから。 うん……

なので睨まないで欲しい。 マジで。



*********



通行許可証とも言えるカードを見せて、聖堂学院の正門を抜ける。

転移クリスタルで連れて行ける最大人数は5人といわれていたので、まとめて連れてきた。

分けて行ったら、また誰かさんみたいに事故るかもだし。

「えっと、……第二格納庫か」

「それにしても、広いね」

「確かにね。 学院内で迷子になりそう……」

「......大丈夫よ。 迷子になっても、兄さんが探しに来てくれる」

どこか期待に溢れた目で見てくる、トライアドシャインズ。

「……とりあえず、迷子にならなかったらいいんだ。 だから気をつけてくれ」

「「......「はーい」」!」


某RPGみたいに隊列を組んで、指定された場所へ移動する。

途中、すれ違った生徒達が手を振ってくれたり挨拶してくれたりするので、トラシャイの3人は嬉しそうに返していた。

俺はいつ特別枠の生徒に襲われるかとビクビクしてたけどな。


数分歩くと、いかにもSFチックな格納庫に辿り着いた。

この格納庫一つ一つに機動装甲が収納されていると思うと、なんだか心強かった。

「お、来たわね!」

サイドテールを揺らして、アイリが振り返る。

「ようこそ。 聖堂学院第二格納庫へ!」

どうやらメンテナンス中だったらしく、アイリの頬に煤がついていた。

だが、服装は作業服ではなく、なぜか白衣。

「てか、今日はまたたくさん連れて来たわね……」

「来て見たいって言うんでね……」

こんな近くで機動装甲を見るのは初めてなのか、トラシャイの3人のテンションが高い。

なんて思っていたら、

「先輩! ちょっと見てきていいですか?」

ま、そうなるよな……

「ああ。 もちろんだ」

俺がOKを出すと、アカリの目が輝いた。

「あんまり騒がないようにねー」

アイリの忠告が入る。

「はーい! さ、行こっ! アキラちゃん!」

「いや、だからボクは……」

「ほらほらほら!」

「引っ張らないで! 押さないで! 行く! 行くからー!!」

「……元気いいわね。 うちのアイリスも、格納庫ここに居るときはあんな感じだわ」

「元気なのはいいことだ。 うん」

「......兄さん、爺くさい」

横からヒカリの一言。

「………お、お前は行かなくていいのか?」

自分でもちょっとやばいと思ったんだから、突っ込まないでくれ……

「......じゃ、お言葉に甘えて」

2人の後を追う様に、とてとてと駆けて行った。

「天風さん、妹さんがいたんですね。 ……全然似てないですけど」

「よく言われる」

「あはは……」

アイリは苦笑いで格納庫の奥へ案内してくれた。

「採らせていただいたデータを見てますと、どうも防御がおざなりになっている気がするんです」

「俺がか?」

「はい。 絶対的な矛に盾はいらないってことなんでしょうが、それでもあれは無茶です」

特にカウンターなんていう賭け勝負は、と付け加えるアイリ。

「うっ……」

痛いところついてくるな……

「……ですので、あたしが開発した、このデバイスを差し上げます」

デスクの上から引っ張ってきたのは、腕時計のようなもの。

「それは……?」

「≪プロテクトデバイス≫の改良版。 ≪防御壁シュッツマウアーデバイス≫よ!」

「シュッ……なんだって?」

「≪シュッツマウアーデバイス≫」

「……≪プロテクトデバイス≫のままの方が良いんじゃない?」

「なっ!? あたしが付けた名前に文句があるっていうの!?」

「い、いや、そういうつもりじゃ……」

「ふんっ! 良いわよ! これはあなたにあげるんだから、好きに呼んだら良いわ!」

そう言ってアイリはデバイスを押し付けてくる。

うーん。 困ったな……って……

「ん? 何の音だ……?」

「え……?」

不審な音の発生源である後ろを振り向くと、

「ひ、ヒカリ!?」

「ちょっと!! 何やってるのよ!?」

猛スピードで急接近急停止を行った機動装甲に、なぜかヒカリが乗っていた。

頭には脳波ギアと半透明のディスプレイ。

両手に当たる部分には大経口ビームライフル。

背中にはスタビライザーとジェットノズルと排熱口が、X字を描くように取り付けられている。

「......面白そうだったから、動くようにした」

動くようにしたって……

「てかそれ、まだなんのプログラムもインストールしていなかったわよ!?」

「......大丈夫。 わたしがさっきそこで組み入れた」

無表情で親指を立てるヒカリ。

……いや、ドヤられても……

「ご、ごめんなさい! 止めさせようとしたんですけど、聞かなくて……」

「まったく……そういうことへの集中力は見習いたいレベルだよ……」

後から走ってきたアカリアキラペアは肩で息をしていた。

「アイリ! 調子は……って、なにやってるの……?」

奥の扉が開き、様子を見に来たらしいソウマが現れた。

「あ、ソウマ! 聞いてよ! 天風さんの妹さんったら、勝手に組み立て中の機動装甲を――」

「へぇ。 キミが」

「......ども」

「――って、無視しないでよ!」

「ライトさん、また会ったね。 どうやら面白いことになってるみたいだけど?」

「あはは……悪いな。 うちの妹が勝手なまねを……」

「いや。 実に興味深いよ」

「「え!?」」

アイリも俺も、まさかそんな反応が返ってくるとは思わなかったため、同時に反応してしまった。

「ねぇ、キミ。 名前は?」

「......ヒカリ」

「ヒカリちゃんか。 よろしく。 僕は草壁ソウマだよ」

……草壁? どっかで聞いたような……

「せっかくだからさ、ヒカリちゃんが組んだその機体のデータを採らせて欲しいんだけど、良いかな?」

「......機動装甲これを動かしていいってこと?」

「もちろんだよ。 その機体のプログラム、ぜひとも見せてもらいたいね」

あれ……? ソウマって、こんなキャラだっけ?

「……あれはスイッチ入っちゃってるわね……」

「スイッチ?」

「ソウマがああなったら、本人が満足するまでずっとあの調子よ」

やれやれ、と首を振るアイリ。

「せっかくだし、ヒカリちゃんの相手は、この2人にやってもらおう」

そう言って指名したのは……

「え? あ、あたし!?」

「そうだ。 この機動装甲は射撃機だ。 対射撃訓練が必要なアイリには、丁度良い相手だと思うが?」

「う……」

アイリは仕方なさそうに頷いた。

「ライトさんも、良いよね?」

「あ、ああ。 ……でも、俺は射撃なんてできないぞ?」

データを採るなら、格闘機と射撃機の両方を相手するほうがいいはずだ。

アイリはさっきのやり取り的に、俺と同じ近接タイプだろうし。

「大丈夫だ。 アイリにはビームライフルを使ってもらうから」

「えぇ!? ちょっと! 聞いてないわよ!!」

「あたりまえだ。 今決めたんだから」

「なによそれっ!!」

アイリが怒りのあまりグーパンをかましているが、ソウマが手を出してアイリの額を押さえるだけでリーチ的に届かない。

俺がローザを止めるのとまったく同じ光景だった。

「そんなわけで、ちょっと移動しようか?」

いまいちついて来れていないアカリとアキラを引きつれ、この前と同じようにアリーナへ通される。

ソウマは途中でシエルを拾うと、アリーナの準備を手伝うように言いつけていた。

「まったく……どうしていつもこうなるのかしら……」

「同感だよ……」

試合をする前から負けたような空気が流れる控え室。

今回は即席タッグを組むということで一緒の控え室にいる。

「ソウマも研究熱心なのはいいけど、巻き込まれて好き勝手使われるあたし達の身にもなってほしいわ」

苦労してるんだな……

「……ま、でも、決まったものはしょうがないし、やるしかないわね……」

立ち上がって伸びをするアイリ。

白衣を脱いだときに、中が夏制服だったせいで腋が丸見えだった。

「よっし、やるわよ!」

「あ、ああ……」

「何赤くなってるのよ……」

「いや、すまん。 最近風邪気味でな」

「誤魔化すの下手すぎでしょ」

「お前には言われたくない」

そんなやり取りをしながら、試合に向けての準備を進めたのだった。




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