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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第五章 「星降る夜の無垢なる純情《カラーレス・ホワイト》」
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幕間6

幕間6



「……よし。 これで送信……っと」

伸びをして、息を吐いた。

そして、側に置いていた目覚まし時計を横目で見る。

「結局、朝までかかったか……」

各部から届いた支出入表をまとめていたら、いつの間にか外が明るくなっていた。

「……ま、どうせ寝れなかっただろうし……」

あんなことがあった後だ。 落ち着いて寝られるわけが無いだろ……?

つい6時間ほど前のことを思い出して、自分を殴り殺したくなった。

……何やってんだろ、俺……

七夕祭の次の日の午前中は授業が無い。

なので、あと数時間は休めるわけだ。

……でも、どんな顔してローザに会ったらいいんだ?

パソコンを傍に置いて、そのままベッドに背中から倒れこむ。

罪悪感というか、自分への嫌悪というか。

そんなものに押しつぶされそうだ。

……どうして俺は……

確かにローザは大切な存在だ。

俺にとって特別だ。

それはヒカリともリリとも違う。ましてやヒヨとも。

でも、大切で特別なのは同じだ。

いったい、何が違ったのだろうか。

……守りたいと思ったのは確かだ。 この気持ちだって嘘じゃ無い……

考えれば考えるほど、わからない。

好きということが、どういうことなのか。

……リリにもヒカリにも、あれだけ言われてきたのにな……

皮肉な話だ。

俺はあいつらの気持ちを、何一つとして正しく理解できていなかったことになる。

自分で説明できないような感情だ。

言われて理解できるわけがない。

「だからって、今更聞くわけにも……」

「何を聞くんです?」

「うおぉっ!?」

「おはようございます。 隊長さん!」

なぜかニコニコしているステラ。

「お、おどかすなよ……」

リアルに心臓止まると思った。

「えへへ。 ここまで驚いてくれると、おどかした甲斐があるってもんやわ」

そう言ってステラは、俺の頬につめたい何かを押し当てた。

「……エナジードリンク?」

「徹夜明けなんですよね? ウチの奢りですから飲んでください!」

「あ、ああ。 ありがとう」

栓を開け、俺は一口にそれをあおった。

喉から鼻に抜ける炭酸が、見え隠れしていた眠気を飛ばしてくれる。

「目、覚めました?」

瓶の中身が空になると、俺を覗き込むようにしてそう聞いてきた。

ステラはパジャマのままのため、その姿勢だと……

「ああ。 おかげ様で」

ローザやヒカリよりかは発育の良いアレが見えそうなので、視線を逸らさざるを得ない。

「……それで、なんか聞きたいことがあったんやろ?」

ステラが思い出したように聞く。

「い、いや……えっと……」

勝手に隣に座ってきたステラ。

もう注意するのもめんどくさいのでしない。

「うん?」

ステラはあいかわらずニコニコしたままだ。

「……あのさ」

俺は意を決して聞いてみることに。

「……ステラは、誰かを好きになったことって、あるのか?」

「………はいいいっ!?」

真っ赤になって、わたわたわたっ、と手を振る。

「ちょ、ちょっと待ってや! なんでいきなりそんなことを!?」

おお、あの能天気で有名なステラ様が慌てていらっしゃる……

ジークさんが来たとき以上の慌てぶりだ。

「……ま、まさか、隊長さんにも好きな人が、で、出来たんですか!?」

あ、ちょっと冷静になった……

「それがさ……」

ステラはこう見えて、他人にべらべらしゃべるような人では……多分無いので、俺が好きという感情がわからないことについて話してみた。

「……なるほどなぁ……」

うんうん、と頷くステラ。

「……でも、その感情は、確かに"好き"って感情と同じですよ」

「そうなのか?」

「同じ言葉でも、たくさん意味があるんですよ」

俺がリリに好きだと言ったのと、ローザに言ったのとでは、意味が違う。

そういうことなのだろうか。

「自分のこと以上に彼女のことを思えているなら、それは確かに好きってことなんですよ」

本の受け売りですけど、と笑った。

……そうなのかな……

「隊長さんは深く考えすぎなんですよ。 もっと素直になってください!」

ステラは俺の背中を叩いた。

「うっ……。 わかったよ……」

頭の中で整理してみた。

……守りたい、特別な存在。

失いたくない、大切なもの。

それはいくらでもあった。

でも、逆だったんだ。

特別な存在だから、守りたい。

大切だから、失いたくない。

それが……そう思うことが、人を好きになるってこと……だったんだ。

「……ウチはそんな色恋沙汰は得意じゃありませんけど、応援してるで、隊長さん!」

ステラは、少しだけ寂しげに笑ってみせた。

「ありがとう。 ステラ」

「いいんですよ。 ウチはきっかけになれればそれで」



*********



いつまでも寝室に閉じこもって居るわけにもいかないので、リビングへ。

「あ……」

夜が明けたばかりだというのに、そこに彼女はいた。

「あら、ライト。 おはよ」

「あ、ああ。 おはよう」

朝焼けの空をバックに、ローザはベランダに佇んでいた。

その姿は様になっていて、思わず目を奪われてしまった。

「……な、なによ」

ローザは恥ずかしそうにそっぽを向いてしまう。

俺もまたあれこれ思い出してしまい、視線を合わせ辛い。

「……いや、綺麗だなって」

「……もう」

照れ隠しのつもりか、俺に背中を見せるようにして顔を押さえている。

でも、何だか嬉しそうだ。彼女に尻尾があったら、ブンブン振っていたかもしれない。

「うぅ……調子狂うわ……」

俺も同感だ。

「ほら、ボケっとしてないで、朝食の準備をするわよ!」

まだ少し赤いローザが俺を指差し、朝一番の命令。

「はいはい……」

このままその場にいたらなんだかマズイ気がしてたので、素直に命令に従う。

……最近慌ただしかったから、こういう朝は久しぶりだな……

いつものようにパンをトースターにセットし、フライパンを手に取る。

……今日ぐらい、まともに料理しても、いいよな……

「朝食済ませたら、来週からのランク査定に向けて、特訓するわよ!」

前言撤回。

軽く済ませないと地獄見るぞ、これ……



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