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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第五章 「星降る夜の無垢なる純情《カラーレス・ホワイト》」
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チャプター 7-5



7月6日。

この日は前夜祭ということで、なんだか学校中が騒がしい。

俺たちのクラスでも、七夕祭で何をやるかについて議論中で、いつにも増して騒がしかった。

「天風君。 天風君は、どれがいいと思う?」

伝言係(仮)の双葉さんが俺に意見を求める。

「どれって……」

ホワイトボードに挙がっている候補は……

……おいおい。 文化祭じゃないんだぞ……

とてもじゃないが、天体観測目的のイベントとは思えない出し物が出揃っている。

「……普通に屋台で焼きそばでも焼いておけばどうだ?」

「ん。 夜店を開くってことね。 了解」

これ以上無いほど適当に言ったが、それでよかったらしい。

ホワイトボードに俺の意見が記入される。

「それじゃあ、今から投票を行いまーす」



*********



「……ま、そんなわけで、俺たちは自由を手に入れたわけだ」

「なにがそんなわけ、やねん。 わけわからんわ」

数時間後。

リビングでゲームをしていたステラに、さっきまでに起こったことを話していた。

「あ、そこの奥に宝箱があったはずだぞ」

「お、ほんまや。 ありがと、隊長さん」

ステラがテレビの前で胡坐をかいてやっているのは、俺が去年クリアして放置していた某RPG。

どうやら2個目のセーブデータを使って遊んでいるらしい。

「……それで、隊長さんは準備しなくていいんですか?」

戦闘に入ると操作が単調になるらしく、こっちを向いてそう聞いてくる。

「俺は会計の仕事をすることにしたから、仕事は一番最後だ」

結局俺の意見が通り、3、4人ペアを組んで屋台を出すことになった。

当然、運営をしていく上で本部は必要だ、ということになり、その中の仕事で一番自由時間が多そうな会計を選んだと言うわけだった。

「なるほどな……。 てか、それならそうと言ってくださいよ」

「いや、ごめんごめん……」

戦闘が終わったらしく、ステラはまた画面に視線を移した。

「で、ローザはどうしてるの?」

「ケンとヒヨに引っ張られて、何か屋台を受け持つらしい。 今はそのための講習中だそうで」

「へぇ。 講習はめんどいやろな……」

ステラは順調にダンジョンの仕掛けを解いていっている。

「ヒカリたちは?」

「うん? そういや、まだ何をするか聞いてなかったな……」

役割分担表に名前を書いてから、あの3人組に捕まらないように逃げてきたため、聞きそびれてしまっていた。

「そうなん? ……これで、3人でユニットを組んでステージ、とか言い始めたら、どないするん?」

「いや、どうもしないぞ……?」

一瞬あるかもしれないと思ったが、……うん、あいつらがやるわけがない。

そのとき、来訪者が来たことを知らせるインターホンが鳴り響いた。

「なんだ……? ステラ、誰か呼んだのか?」

「いや。 ウチはなにも」

「そうか」

俺は一応警戒しながら、玄関の扉を開けた。

「…………」

そこに立っていたのは、見知らぬ青年。

フードのついた、黒っぽいコートを着ている。

「えっと……」

用件を聞こうと口を開いた。

「あ、ごめん。 自己紹介がまだだったね」

青年は軽く膝を折ってお辞儀をする。

「俺は赤月ジーク。 ローザの兄だ」

「ローザの、兄……」

一瞬、時間が止まった気がした。

「ええええええ!?」

「うおう……」

驚きのあまり、声を上げてしまった。

「ま、まぁ、驚くのも無理ないと思うけど……」

ジークさんは苦笑いをする。

「……えっと、どうしてここへ?」

聞きたいことは山ほどあったが、とりあえず一番気になっていることを質問してみた。

「あ、そうそう。 用件をまだ伝えて無かった……」

ジークさんは咳払いをして、こちらをまっすぐ見た。

ローザにそっくりの赤い目が、俺を捉える。

「ルナに、会わせてほしい」

「……え?」

……ルナ、ルナ……か……

「……えっと、とりあえず中へどうぞ」

面倒ごとのにおいがしたので、一旦落ち着くことにする。

「ああ。 お邪魔します」

ジークさんは靴を脱いでリビングのほうへ。

……戦闘用ブーツ……

使い込まれているところを見る限り、かなり苦労しているみたいに見える。

「あ、そういえば……」

リビングに放置していたステラに何の説明もしていなかったことを思い出す。

急いでジークさんの後を追った。

「ちょ、ちょっと隊長さん!」

リビングに入るなり、ステラに首根っこをつかまれる。

「……誰なんや? えらいカッコええ人やけど……」

「……それが、ローザの兄さんらしくて……」

「……?」

ジークさんは俺たちを見て、首をかしげている。

「……またややこしそうなことになりそうだけど、どうする……?」

「……どうせ邪魔になるだけやろうし、一旦引っ込んでるわ」

「……わかった」

ステラのヘッドロックから逃れ、ジークさんに向き直る。

「立ち話もあれですし、こちらへ」

食卓の椅子に座ってもらうように誘導する。

俺はジークさんの正面の席へ。

「えっと、ルナって言うのは……」

「……見た目は子供で、けも耳少女のルナだ」

「…………」

まさかそんな説明をされるとは思っても見なかった。

「明日、ルナと会う約束をしているんだ。 それで、ローザがいるこの次元(ここ)にいるかと思って訪ねた次第だ」

「この場所は誰から……?」

「ここにローザが持っているはずのネックレスの反応があったんだ。 それを追って来た」

……それってもしや……

「……今は君が持ってるんだよね? えっと……」

「ライトです」

「ライトか。 ローザがいつもお世話になってるみたいだね」

「い、いえ……」

……なんだこのシチュエーションは……

よく考えてみればおかしな話だ。

ローザは未来から来たはずなのに、そのローザの状況を理解して、その上追いかけて来たなんて……

それで挙句は、天界にいるルナに会わせて欲しいときた……

いろいろおかしすぎて、何から突っ込めばいいかわからなくなってしまう。

「そのネックレスは、大事な人が出来たら渡しても良いと言って置いたんだが……」

「え?」

「いや。 ……本題に戻そうか」

ジークさんは首を振る。

「それで、ローザと絡んでるってことは、ライト君。 君はルナを知っているんだろ?」

「……ええ。 まぁ、一応」

……死にかけた俺を何度も現世に還してくれる死神、ぐらいしか知らないけど……

そういわれてみれば、俺はルナのことについてこれっぽっちも知らない。

俺を起こして、俺の能力をいじるところぐらいしか見ていないし……

「……そうか。 あいつはちゃんと仕事をしているんだな。 安心したよ」

どうやら人の命を弄ぶことが仕事だったらしい。

「それだけわかれば十分だ。 ありがとう」

「どういたしまし、て?」

「そうかそうか。 ローザも良いやつに拾われたもんだ」

ジークさんは笑って、胸ポケットから時計を取り出した。

「……あと20分ぐらいでローザが帰ってくるみたいだね」

……いったい何者なんだろうか、ジークさんは……

「聞きたいことがあったら、今のうちに聞いてくれ」

ジークさんは時計を仕舞い、俺に質問を促す。

「……あの、ルナとはどういう関係なんですか?」

「……ま、強いて言うなら、あいつは俺の嫁だ」

「ぶふっ!?」

……いきなりだな……

「なんだよ、その反応。 心外だな」

「い、いや、想像の斜め上を行ったので……」

「……それもそうか。 あいつがそんなこと言うわけないし」

ジークさんは笑って天を仰いだ。

「あいつはまぁ、変なところもあるけど、良いやつだよ。 ライト。 また会うときは、話でも聞いてやってくれ」

「わ、わかりました……」

……だめだ。 ますますわけわからんことになってるぞ……

「それで、どうやって現在に? あのローザがここにいるって知ってるって事は、ジークさんも……」

「……ああ、そうだ。 俺も未来から来た」

……うわ、マジかよ……

「俺の仕事は、タイムキーパーだ。 ルナが天界あっちの管理、俺は現世こっちの管理をするのが仕事だ」

……てか、ルナがどこにいるかは知ってるのな……

「ルナはいろいろな時代を行き来するから、追いかけるのが毎回大変なんだよ。 今回だって、微妙に時間軸がずれてて面倒だったよ」

ジークさんが愚痴っていなさる。

「えっと、未来と過去を行き来するのって、そんな簡単に出来るものなんですか?」

「簡単じゃないよ。 飛べるタイミングは決まってるし」

「そうなんですか?」

「ああ。 ……ま、ローザがここへ来れたのはたまたまだろうね」

「へぇ……」

……方法は……あえて聞かないほうがよさそうだな……

「……そろそろ時間みたいだね。 じゃあ明日また来るよ。 そのときはよろしく」

「あ、はい。 わかりました……」

……何をどうよろしくされたのかわからないんだけど……

「ジークさん? 玄関はこっち……」

「いや、こっちから出させてもらうよ」

ジークさんは、何のためらいもなく窓を開けてベランダへ。

「あ、ローザには内緒にしておいてくれよ? あいつが絡むとまた面倒だから、さ?」

「大丈夫ですよ。 言っても混乱させるだけでしょうし」

それを聞いてジークさんは安心したのかニコリと笑うと、ベランダの柵を飛び越えてどこかへ消えた。

「……マジで、どうなってるんだ……」

追うようにしてベランダへ出たはいいが、ジークさんの後ろ姿がどこにもなかった。

「ただいまー」

リビングの奥から、ローザの声が。

「あ、おかえり」

……ま、ジークさんのことは、明日考えよう……

記憶と情報を整理するためにも一旦休もうと決め、俺はリビングに戻った。



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