表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第五章 「星降る夜の無垢なる純情《カラーレス・ホワイト》」
53/111

チャプター 7-1



「はぁ……」

「どうしたのよ?」

「いや……いつの間にか7月になってたからさ……」

「それで?」

「……いろいろ思うところがあってね……」

鉛筆が大活躍したテスト期間が無事に終了し、気づけば7月。

もうすぐ七夕とかいうそんな頃。

「ふぅん……思うところ、ねぇ……」

「なんだよ」

「別に」

ローザは少しつまらなさそうに視線を外す。

俺もつられて窓の外を見た。

学校の中庭にあたるところに、申し訳程度の笹が植えられていた。

「……ローザは願い事とか、書くのか?」

ふと思ったことを口にしてしまう。

「……まぁ、書かないわけじゃないけど……」

「へぇ。 何書くかはもう決めてるのか?」

「そうね……」

ローザはあごに手をあて、考える素振りを見せる。

すると、なぜかローザの顔が徐々に赤くなっていった。

「……あ、あんたは何を書くのよ?」

「え、俺?」

「そ、そうよ!」

必死に誤魔化そうとしているのがバレバレだった。

「そうだな……」

俺はあえて追及することを選ばず、考えてしまう。

……そういえば、去年は何を書いたんだっけ……

「……普通に、来年も生きてますように、って書こうかな」

「……なんだか切実ね……」

ローザが半分呆れたようにそう呟く。

「……あ、そういえば」

「ん?」

俺は入れっぱなしになっていた手紙を取り出す。

「それは?」

「この前助けた、聖堂学院の生徒からもらった招待状だ」

「いつの間に……」

……あのときローザは転移クリスタルに夢中だったからな……

「それで、そろそろ行こうと思ってるんだけど、ローザも来ないか?」

「いいの?」

「いや、まだ中身見てないからわからないけど」

「見てから言いなさいよ!」

「お、おう」

怒られたので、手紙を開封する。

中には、案内と一枚のカードが入っていた。

案内によると、このカードで3人まで同時に入れるらしい。

有効期限は特に書いていない。

「3人までいけるらしいぞ」

「そう。 ……じゃあせっかくだし、あたしも行こうかしら」

「あと1人誘えるのか……」

「…………」

ローザは腕を組んだまま、こちらの様子を伺っている。

……たまにはローザと二人ってのも、悪くないかもしれない……

「……みんな忙しそうだし、俺たちだけで行くか」

「……! そ、そうね!」

ローザは一瞬驚いた表情を見せたあと、嬉しそうに笑った。



************



来る前に連絡を入れて欲しいと書いてあったので、休み時間の間に電話をした。

話は通していたらしく、名前を言っただけで話が進んだ。


そうして放課後。

とりあえず場所を移そうということで、モン研に来ていた。

「そういえば、学校がどこにあるか聞いてなかったな……」

俺は今更ながら、聖堂学院の位置を調べることにする。

「関東エリアの北端……」

検索すると、すぐに数件ヒットした。

進藤先輩が言っていた通り、機動装甲の研究を主としているようだ。

「ローザ、どうやって行くかわかるか?」

「どうしてあたしが知ってなきゃいけないのよ?」

「そうだよな……」

逆ギレされた。

モンスターがうろついているせいで、電車や高速道路の類は全て地下に作り直されている。

ただ、この前のトーラスの一件で地下施設がそこそこの被害を受けたらしく、スピード制限がなされているとか。

「……でも、まぁ、交通機関を使う以外の選択肢も、あたしたちにはあるじゃない?」

ローザはわざとらしく咳払いをし、そう言ってくる。

「飛んでいくのか? さすがに関東エリアの真ん中通るとなると、途中で撃ち落とされるぞ」

「何言ってるのよ。 これがあるでしょ?」

取り出したのは、蒼い転移クリスタル。

テスト前に散々モルモットにされてデータを取られた、忌まわしきクリスタルだ。

「……なによ、その嫌そうな顔は」

「だってさ……」

転移クリスタルの転移成功率は80パーセント。

3、4回ほど地球の反対側に出て、命の危機にさらされたことがあった。

帰りのクリスタルが正常に動いたからよかったものの、それで帰ってこれなかったらどうなっていたことやら……

「……だ、大丈夫よ! たぶん!」

「たぶんて……」

「そうと決まれば、さっそく行くわよ!」

ローザは俺の腕を掴んだ。

「いや、まだ何も決まってな――」

「≪転移テレポート≫!!」

俺が台詞を言い終わる前に、視界が青く染まって、暗転した。



************



「のわぁっ!?」

視界と意識がもどったときには、上空にいた。

重力に従って下に落ちて行き、木々の枝に叩かれながら地面に墜落する。

「くぅ……痛ぇ……」

芝生のおかげか、致命傷にはならなかったようだ。

「てか、ここどこだよ……」

起き上がって周りを観察する。

左手の奥にはコンクリートの壁。

床は芝生。

右手には少し低めの植木が並んでいる。

俺はあまりにも明るく見える、その植木の向こう側へと出る。

「うん?」

まず目に入ったのは、普通のブランコ。

その横に滑り台やジャングルジムなどが見える。

「公園……だよな……?」

だれかいるかと思ったが、子供1人いない。

「……まぁ、それもそうだよな……」

聖堂学院は、そこそこ防衛線から近い位置にあった。

つまり、モンスターとの遭遇率もそこそこあるということだ。

「……にしても、ローザはどこだ……?」

一緒に飛んだはずなのに、落ちてくる位置が違うのはどういうことなのか。

「あ、あれか」

公園を出ると、すぐそこに学校らしき建物が見えた。

周りのビルに負けじと、その存在感を放っていた。

「……とりあえず、連絡だけしておくか……」

聖堂学院に向かいながら、ローザに電話をかける。

学院までの道のりはきれいに舗装されていて、それだけ見ても、この辺りの平和度がうかがえた。

「あ、ローザ? 今どこに――」

『――この者の関係者ですか? 至急学院まで来ていただきたいのですが』

「……はい?」



************



「話は聞いていますよ。 ようこそ、天風さん」

「えっと、まず、どういうことか聞かせてくれないかな?」

数分後。

正門で二人分の認証を済ませた俺は、そのまま学院の会議室に呼ばれた。

そこで、機動装甲のアームに掴まれたローザと再会を果たした。

今のローザは、首元を吊り上げられた猫のようだった。

「中庭に突然あらわれたので、とりあえず捕獲しました」

「ああ……」

どうやらローザは、学院の中庭に降り立ったらしい。

完全に不法侵入者となってしまったローザは、力なくうなだれている。

……自業自得とはこのことか……

「あの……この子は俺の連れなんだ。 放してやってくれないかな?」

「それは構いませんが、どうやって入ったのですか?」

「えっと……」

……くそ……いきなり他校に話さないといけなくなるとは……

俺は空間移動で来たことを告げた。

「へぇ……そんな技術がもう出来ていたんですね……」

言及されるかと思ったが、逆に感心されてしまった。

「いえ、まだ実験段階で……。 現に、こうして失敗していますし……」

「なるほど。 ですが、興味深いですね……。 あとでお話、伺えませんか?」

「ま、まぁ、時間があれば……」

絶対ですよ! と言われ、俺はただ、頷くことしか出来なかった。

俺が了承したのを見て満足したのかローザを放すと、

「そういえば、みなさんがあなた方のことをお待ちですよ。 行きましょうか」

と言って会議室の扉を開けてくれた。

「あぅ……ごめん。 ライト……」

俺の後ろから、申し訳なさそうにローザが近づいてくる。

「……まぁ、中庭に落ちたのがローザでよかったよ……」

……俺が落ちていたら、絶対助からなかっただろうしな……

なんと言ってもこの学院は……

――男女比1対99という、お嬢様学校だったからだ……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ