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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第四章 「夢見る幸せの花嫁《ジューンブライド》」
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幕間5

幕間5




「天風君」

「うん?」

「お客さんみたいだよ?」

「そうか……わかった。 ありがとう」

「みぃー? 何やってるのー?」

「あ、今いくよー。 それじゃあね、天風君」

「ああ」

伝言係みたいになってきた双葉さんは、軽く微笑んで去っていった。

「客って、いったい誰だよ……」

そうぼやきつつ、教室の外へ出る。

「あ、お待ちしておりましたよ。 天風・・さん」

「え、えっと……?」

そこにいたのは、見慣れない制服を身に包んだ二人の少女。

「この方が、わたしを助けてくれた人……です?」

「ええ、そうよ。 アイリス」

……アイリスって……

どこかで聞いた名前に、視線を少し下げてその少女を見る。

「です?」

青色くせっ毛ロングヘアーの少女は、小首を傾げてこちらを見返してくれる。

……まさか、あのときの……

「……こほん」

そのわざとらしい咳に、後ろを振り向くアイリス。

「アイリ、風邪です?」

「違うから安心して、アイリス」

「それはよかったです」

どうやらアイリスの右後ろにいる娘はアイリというらしい。

「……そ、それで、こんなところまでどうしたの?」

呼ばれて来たことを思い出す。

「ああ、そうでしたね……」

アイリがどこか気恥ずかしそうに目を逸らす。

「えっと……」

「アイリ、ちゃんと言うですよ」

「うぅ……わかってるわよ」

アイリはそう言うと、一歩前へ。

「その……昨日はごめんなさい。 アイリスを助けていただいたのに、お礼もできなくて……」

「……だから、今日はありがとうを言いに来たです」

アイリスがそう続けた。

「……それに、ちょっと酷いこと言っちゃったし……」

「え?」

「な、なんでもない!」

アイリは少し赤い顔のまま、ブレザーのポケットから手紙と思われる封筒をとりだした。

「それで、お礼がしたいから、近いうちにあたし達の学院に来て欲しいの」

「これは学院からの招待状です!」

アイリとアイリスはそう言って俺にその手紙を渡してくる。

「あ、ああ……。 わざわざ悪いな……」

「い、いえ! 天風さんのおかげで、アイリスを失わずに済みましたし……」

「そうです! ありがとうです。 天風さん!」

「あはは……。 それは、どういたしまして……」

……まさかお礼を言われるとは思ってもみなかった……

「じゃあ、定期テストが終わったら行くよ」

受け取った手紙をポケットにしまっておいた。

「わかりました。 お待ちしてます」

「絶対来るですよ!」

俺が受託したと見たのか、2人はそう言うと足早に去って行った。

「……意外と律儀な奴らだな……」

どこかのツインテールみたいに説教してくるかと思ってたが……

「おい、ライト! 今の娘たちって、聖堂学院の生徒だろ? 何話してたんだよ?」

「やめろ! くっつくんじゃねぇ!!」

「ぐはぁッ!?」

ケンが背後から、俺の手紙をポケットから盗もうとしてきたので、肘打ちで沈めておく。

「まったく……」

手帳の時計を確認する。

……まだ時間あるな……



*********



「あら、天風くん。 おかえりなさい」

図書室の扉を開けると、カウンターで本を読んでいたマヒル先輩が出迎えてくれる。

「ええ。 それで……あれからあのコンピューターは使われているんですか?」

「何かわかったの?」

「はい。 誰が使ってるかも、大体予想がつきました」

「そうなの? それなら、今確かめに行くといいわ。 ちょうど今さっき、コンピュータールームに1人、入って行ったところなの」

「……わかりました。 行ってきます」

「もう変な事しちゃダメよ?」

「あ、あれは事故ですから!!」

「うふふ……わかってるわよ」

俺はまだ言いたいことがあったが、とりあえずコンピュータールームへ行くことに。

「…………」

扉を開けて中を覗くと、1番奥の席に1人、先客がいた。

……やっぱりな……

その後ろ姿には見覚えがあった。

一応警戒しながら、近づく。

画面を後ろから覗くと、いくつも同時に開かれているウィンドウに、どこかで見たようなキャラクター達が映っていた。

カチカチカチカチ…… と、マウスのクリック音が響く。

それにあわせて、キャラクター達がさまざまなアクションを起こしている。

……ってことは、やっぱり……

俺は覚悟を決めて、その子の肩に手を置いた。

「ひぃっ!?」

こっちがびっくりするほど驚いた様子で、椅子の上で飛び跳ねる。

「……え? ライト君?」

恐る恐る振り返って俺を見たのは、予想通り、ヒヨだった。

「まったく……こんなところでなにやってるんだよ?」

ヒヨの顔がみるみる赤くなっていき、ついに手で顔を覆い隠すようにして俯いてしまった。

「……うぅ……」

どうやら俺の推理通りだったらしいので、さらに追い討ちをかけていく。

「……なぁ、ヒヨ。 この盗聴器・・・なんだが……」

「……っ!」

「ヒヨがくれたシュークリームの箱の中に入ってたんだけど?」

「……ご……」

「ん?」

「ごめんなさいいぃぃ!!」

「うお!?」

ヒヨは俺の胸に飛び込むと、泣き出してしまった。

「全部わたしのせいなの……」

泣きながら、自分の罪を告白し始めるヒヨ。

嗚咽交じりの言葉を聞いていく。

「……えっと、つまり……。 俺が最近ヒヨにかまってなかったから、俺の様子が知りたくて盗聴器を仕掛けた……ってことなんだな?」

「うん……本当にごめんなさい……」

「ま、まぁ、 後でそのデータは没収な」

「え、ええ!?」

「いや、当然だろ……」

それで、と、さらに言及を続ける。

「それで、どうしてこんなとこでゲームなんてやってるんだよ?」

ヒヨはバツが悪そうに目を逸らすと、指をつんつんしながらこう言った。

「……部屋にコンピューターって、一つしかないでしょ? わたしのルームメイトが情報部員だから……」

「……部屋でできないってか?」

「……うん」

「はぁ……」

なんと言うか、調子抜けしてしまった。

……情報部か……盗聴器はそこからジャックしたな……?

「まったく……。 コンピューターをもう一個持っていけるように、先生に言っておくから」

「え、本当に?」

「ああ。 そんなことぐらい、言ったらなんとかなるだろ」

「ありがとう! ライト君!」

「お、おう……」

今度は腕を俺の背中まで回して、抱きついてくるヒヨ。

ローザと比べ物にならないほど育った胸が、押し当てられてしまう。

「……そうだ、時間……」

ヒヨをはがし、手帳を開ける。

「あ……そろそろ行かないと……」

「そうなの? わかったよ。 またお礼とかお詫びとか、考えておくね」

「いや、別にそれは……」

「ほらほら早く行かないと、遅れちゃうよ?」

「あ、ああ。 またな、ヒヨ」

少し寂しそうな笑みを浮かべて、ヒヨは手を振った。



*********



「まさか、ヒヨがあそこまでしてゲームをしたがるとは……」

……何かあったのだろうか……

そんなことを考えていたら、待ち合わせの場所に着いてしまった。

……昨日の今日だしな……

俺が何の装備も持っていなかったことを理由に、今日、例の転移クリスタルの説明を受けることになっていた。

寝る直前までローザから色々聞かされたので、だいたいの事情はわかっているつもりだが……

「おじゃまします」

「あ、ライト! 待ってたわよ!」

昨日からやけにテンションの高いローザ。

「早速で悪いけど、テストをするわよ!」

テストと聞いて少し焦ったが、実戦テストのことだとわかり、胸をなでおろす。

「……そういえば、あんたはちゃんと勉強してるの?」

……顔に出ていたのか……?

「し、してるわけないだろ……?」

「えぇ……そこは見栄はってでも、やってるって言うところでしょ?」

「そう言うなよ……事実なんだから……」

「そ、そう……」

気まずい空気が流れる。

「あ、ライトくん〜。 来てたんだね〜」

その時、奥の扉が開いて、つぼみん先生が顔を出した。

「あ、つぼみん先生」

その小さな腕で抱えているのは、転移クリスタルと思われる、蒼いクリスタルで一杯になっているダンボール。

「手伝いますよ?」

「いいよ〜。 自分でできるからっ!」

ドンッと音を立て、机の上にダンボールが置かれる。

「えっと……これ全部……?」

「うん。 どこまで飛べるかとか、色々撮りたいデータがあるから、頑張って付き合ってね?」

ある意味で悩殺されそうな仕草で、脅迫してくるつぼみん先生。

……途中で事故ったら、どうするつもりなんだよ……


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