チャプター 5-6
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「......赤月先輩」
「何?」
病院を出て、フォトンウィングで学校近くまで移動しようとヒカリを抱えた時だった。
「......兄さんのこと、どう思う?」
「ぶふッ!!」
……どう思うって、それって……
「……それは、その……ライトは優しいしヘタレでバカだけど、別に嫌いっていうわけでも……」
「......何を言っているの?」
「え……?」
「......兄さんの容態について聞いたんだけど……」
「…………わ、わかってたわよ、そんなこと!」
……うぅ、無表情な目が冷たく見える……
「......今のはちょっと意地悪した。ごめん」
「え……」
ヒカリは意地悪っぽく微笑むと、首を少しかしげてこう聞いた。
「......赤月先輩も、好きなんだよね? 兄さんのこと」
「え、えぇっ!? い、いや、あたしは別に……」
な、何を言って……
「......わかるよ。わたしも同じ気持ちだから」
「え、えっと……?」
「......でも、兄さん何にもしてこないし……わたしのこと、どう思ってるんだろって、時々思うんだ」
「……う、うん」
……それはライトがヘタレとか言う以前に、兄妹という壁があるせいなのでは……
「……でも、あたしにも何もしてこないのは……」
あたしは頭を振って考えるのをやめる。
「......どうやったら、ちゃんと1人の"女の子"として、見てもらえるのかな……?」
「うーん……どうでしょうね……」
……"1人の女の子" か……
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*********
「なんじゃ、また来たのか、ライ坊」
「ルナ……」
意識と意識の狭間、認知不可能なこの不思議な空間で、1人の……少女がいた。
「こう見えて何百年も生きてるがな」
……この空間を司る存在なだけに、心を読むぐらいは楽勝ときている。
「まったく、ライ坊は何度死にかけたら気がすむんじゃ」
死にかけたじゃすまなかったこともあったけど、何回目かは忘れたな……
「……まぁ、そう言うなよ、ルナ。今回はああするしかなかったんだ」
「だからって、部分的とはいえサウザンドの能力を使うのは、自殺行為じゃろ」
「……その事なんだが」
「なんじゃ」
見えない何かに座って、足をプラプラさせるルナ。
「この力を、制限付きでも全開放できるようにできないか?」
「は、はぁ!? 御主、何を言ってるのかわかってるのか?」
「あぁ。近いうちにこいつの力が必要になる気がするんだ」
「そうは言っても……今回でかなり消耗しておるし……」
「ルナ、お前ならやれるだろ?」
「……本気なのか?」
「ああ。次は俺の……俺たちだけの力で、なんとかしたいんだ」
「次からここへ来ずに、死んでしまうかもしれんのだぞ?」
「死にはしないさ。死んだら悲しむやつがいるからな」
数人の顔が頭をよぎる。
あいつらの悲しむ顔は見たくない。
「……はぁ、わざわざそんな事を頼むために、無茶したわけではあるまいな?」
「……まぁ、ここへ来れるとは思ってたけどね」
「ふん。妾も暇ではないのじゃ。そう何回も助けてもらえると思わない事じゃな」
「あぁ。わかってるよ」
「……まったく……本当にあの頃から何も変わらんな」
「そうか?」
「そうじゃ。自己犠牲の精神は何も変わっとらん」
「……褒め言葉として受け取っておくよ」
「そのへらず口も変わらんの」
ルナはそこから降りて、俺を見上げた。
「一つ条件がある」
「なんだ?」
「必要以上に乱用しないでくれ。普段はビームサーベルを使って、極力能力を使うのは避けてくれ」
「…………」
「能力の開放は、今まで以上に御主の寿命を削る事になる。それはわかっておろう?」
能力の代償は、俺の命。
ルナが要求する対価は俺の寿命。
あの時から何も変わっていない、魔女の取引。
はじめは抵抗こそあったものの、今となっては俺の最後の生命線になっている。
「なんだ、心配してくれるのか?」
「バカ言え。妾の仕事が増えて面倒だからに決まっておろうが」
……素直じゃないな……
「うるさい! いつまでもこんなところで寝てないで、さっさと悪魔を封印しに行かんか!」
……状況は把握済みか。また月の鏡で覗いてたのか……?
「……わかってるよ。この能力は守りたいものを守るときだけに使うから」
「……まったく、もうわかったからさっさと行ってこい」
「ああ。ありがとな、ルナ」
「毎回妾をこき使いおって……便利屋じゃないんだぞ、まったく……」
ぶつくさ言いながら、ルナが奥へ消えていった。
同時に俺の意識も薄れていく。
……もう、ルナに頼るのはやめようって思ってたんだけどな……
「そう思うなら自重して欲しいの」
ルナのぼやきが聞こえたと同時に、意識が途絶えた。
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*********
「う……」
「た、隊長さん!?」
ステラの声が聞こえる。
……俺、まだ死んでないんだ……ありがとう、ルナ……
「隊長さん! はよ起きてや!」
「い、痛て! 押さないでくれ!」
俺が起き上がるや否や、ステラがまくし立てた。
「あのな、あのダイモニオンの事なんやけど……」
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「うーん……科学武器は生成に時間がかかるからねぇ~……。 まぁ、話は通しておくよ~」
「......あ、ありがとうございます!」
「よかったわね、ヒカリ」
「......うん。これで悪魔の再来も遠のいたわ」
「悪魔の再来か……」
いったいどれほどのものなのか、その悪魔は。
……あの日記帳に記述はあったかしら……
後で確認しようと思いつつ、モン研の部室を出る。
「......じゃあ、戻りましょうか」
「ええ。……行きがけに襲撃されるかと思ったけど、何もなくて拍子抜けしちゃったわ」
「......何もないのが一番」
「……ま、そうだけどね」
そう言った矢先、携帯が震えた。
「こんな時間に……って、ステラ!?」
確認すると、ステラからの電話だった。
繋げるや否や、ステラの声が響いた。
『大変や!また大型モンスターやで!!』




