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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
プロローグ 「終わりの始まり」
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チャプター 1-3



弁当も食べ終わり、一段落といったところ。

用意の良いヒヨは箸を何膳か余分に持ってきていたため、ローザも食事に参加していたのだが、思っていた以上に溶け込めている様子だったので少し安心した。

はじめてあった時も自然な感じだったから、人付き合いは得意な方なのだろう。 うらやましい限りだ。


……それにしても、未だに信じられないな……


あんなに楽しそうに話しているローザが、討伐許可証を持ってるなんて。

許可証を取るやつは大概、それなりに闘う理由をもっている。

それは人助けのためだとか、モンスターが憎いだとか、色々だけれど。

ならば彼女は、いったいなぜ、わざわざ許可証をとったのだろうか。

好き好んで取るようなものでは、決して無いはずなのに。


「さて、これからどうすんだ? ライト」


ケンが話を振ってくる。 見れば弁当は綺麗に片付けられ、ヒヨの隣で塔を成していた。


「そうだな……俺は帰ってゲームでも――」


空気読めよ、見たいな目で見られた。 はいはい。 どうせ俺は行間読めないですよ。


「――ってのは冗談だ。 どっか行きたいところとかあるか?」

「せっかくだし、ゲーセン行こうぜ。 春休み中行けなかったし、新商品あるかもだし」

「じゃあそうしよう! ローザも来るよね?」

「面白そうだし、あたしも行くわ」

「よし、決まりだな。 じゃ、行こうぜ、ライト」


断る理由はない。 行きたくないわけでもないしな。





*********




……懐かしいな。 なぜか分からんが。


実家のような安心感が俺を包む。 この騒々しさが逆に落ち着くまである。


「ねぇ、ライト。 これ、どうやって遊ぶの?」


目を輝かせたローザが指差したのは……ほう、リズムゲームか。


「教えるよりも、一緒にやった方がわかりやすいだろ。 ほら、そこに立って」

「指図するんじゃないわよっ!?」

「そこで怒るなよ!?」


ポケットから、携帯を模した電子生徒手帳を取り出す。

この中には、取得した単位を換金した電子マネーが入っている。

学校の制度で、クエストやテストで稼いだ単位を換金できるシステムがある。

もちろん、持ってる単位全部換金することも可能だが、卒業するには一定の単位が必要だ。

……過去に、クエストだけ行って授業もテストもまともに受けずに遊びほうけていた先輩がいたとか言う話だが、卒業できたのだろうか……


……留年した(ダブりの)先輩なんて聞いたこと無いし、大丈夫なんだろうな。 さすがにそこまではしないけど。


手帳でゲーム機のクレジットを済ませ、起動する。


「音ゲー……歌に合わせてボタンを踏むゲームだ。 画面に映されるポーズをタイミングよく決めると加点になる」

「へぇ」


画面を足元のパネルで操作し、曲と難易度を選ぶ。

……これぐらいなら、ウォーミングアップにいいかもな。


「あ、その曲聴いたことあるわ」

「有名だからな。 じゃあ、いくぞ」


ノーツの速度を調整し、スタートさせた。

表示されたマークのパネルを押していくだけのゲームなのだが、パネルが足元に八つもある。

変な運足をするとこけてしまい、復帰できないなんてことが多発し、高難易度のクリア者は片手で数えられるほどしか居ないんだとか。

まぁさすがにこの曲で失敗するやつはいないだろうけど。 ヒヨは知らん。


「ふっ……はっ……」


簡単なように見えるが、思った通りに行かないのが、このゲームの醍醐味だ。

タイミングが合わずに、そして足が間に合わずにコンボが中断されてしまい、なかなか点数が伸びない。

久しぶりにやったせいか、勘を取り戻せないでいる俺は隣に目を遣ると……


「はっ!」


……うそだろ……


目を疑ってしまった。

さっきまで筐体も見たこと無いような初心者だったはずなのに、動きが俺に劣らない。 どころかむしろ俺よりも機敏な動きができている。

初心者なら戸惑うはずのポーズ要求も華麗に対応して見せ、得点を稼いでいる。

どうもローザはもともと運動神経がいいのかも知れない。 さすがは許可証持ちといったところか。


……はっ……見とれてる場合じゃねぇ!!


点数がどんどん離されていくのが見える。


「フィニッシュ!!」


バシッと横で決めポーズを取ったローザは、満面の笑みを浮かべていた。


「…………」


画面にはリザルト画面が映っている。

63000-81000という数字が表示されていた。

ちなみに前者のほうが俺の点数である。


「やったわ!! ……ふふん。 どうよ、見直した?」

「ああ。 ほんとに驚いたよ……」


ここまでされては何も言い返せない。

途中で見惚れてミスしまくったのは内緒だ。


「さ、次ぎ行きましょ! 次!」


……え? まだやるのか……?



*********



それから数十分後。


「ふんふふんふ~♪」


もはや歌いながら踊っているローザの、文字通り独壇場状態になっていた。


「なんつうスタミナだ……」


途中でギブした俺は、後ろでヒヨと2人並んで座っていた。


「すごいよね~。 私もあんなふうに踊れたらいいんだけど」

「そうだな。 あれだけ踊り続けられるスタミナは、ほんとに欲しいものだな」


……いったいどんな訓練をすれば、ああなるのだろうか。

まぁ、最盛期の俺はあそこまでやれたかもしれないけどさ。 いや、さすがに無いか。


「おっ。 やってるな」

「ケン! いったいどこ行ってたんだよ?」


ゲーセンに着いた矢先に姿をくらましていたケンは、なにやら大きな紙袋を大量に抱え込んでいる。


「ほれ」


そういって紙袋を押し付けてきた。

……って、重っ!?

中身は何かのフィギュアやらでいっぱいになっていた。


「これは……?」

「そこらにあるクレーンゲームの景品」


さらっとそう言われた。

……相変わらず器用なやつだな。 クレーンゲームのクレーンも、武器だって言い張れば使いこなせちまうってか? ほとんどチートだな。


「まぁ、後でみんなに分けるから、心配すんなって」


……心配なのはそこじゃないんだけどな……



*********



気づけばもう5時を回っていたので、今日はここで解散ということになった。


「そういえばローザ、お前の部屋はどうなってるんだ?」


本来、学生寮……というかアパートの部屋は組んでいるチームごとに振り分けられる。

俺は一応ヒヨとケンとで組んでいるが、去年そのことでクラス内で少しもめたので、一人逃げるように空いてる部屋に移り住んでいる。

できればローザに同じ体験はしてほしくない。

そう思って聞いてみたのだが。


「あの、ライト。 部屋に戻る前に、少し行っておきたい場所があるの」


ローザが少し遠慮がちにそう聞いてくる。

俺が振り向くと、ローザはこう続けた。


「もう一度行っておきたいの。今朝、あたしたちが出会った廃工場(あの場所)に」







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