チャプター 4-8
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『マスター!何か様子が変です!』
「変?」
トルの声に振り向くと、うつぶせに沈んでいるカノープスの頭が光っているように見える。
ちょうど俺が切断したところからだ。
『――ライトくん!』
「ヒヨ!?」
トル代わって、ヒヨの声が届く。
『カノープスの頭部から、多数のモンスターの反応が……うぅ……』
「なっ……」
視線を戻すと、確かにそこからわらわらと、カマキリのようなモンスターが沸いているのが見える。
多分、カノープスのミニチュア版だろう。
それでもサイズは2メートルほどあるが。
「ライト!さっさと始末するわよ!」
ローザの焦る声が飛ぶ。
「......うん。これは……ちょっとまずいかも……」
置かれた状況を頭の中で整理してみる。
……この数のモンスターに進軍されたら……
防衛ラインで仕留め切れなかったりしてみろ……一大事だぞ……!
「よし……やるぞっ!!」
ポケットからビームサーベルを取り出し、刃を展開する。
……さすがはつぼみん先生……グリップの調整も完璧だな……!
グリップの感覚を確かめ、四方へ散るカノープスを追いかける。
クリスタルを装填し、構えた。
「≪エクスパンド≫!!」
ビームサーベルを二振りに増やし、もう片方にもクリスタルを装填する。
「≪リーンフォース≫!!」
……強化項目は、≪俊敏力≫!!
粒子が身体を包み、俺の動きをアシストしてくれる。
……逃げ切られる前に、全て仕留める!!
「やぁああああああ!!」
鎌を上げて応戦するカノープスを、その鎌ごと切り飛ばす。
その勢いのまま、逆の剣で身体を両断する。
『―――ッ!!!』
カノープスは声にならない奇声をあげ、消滅した。
「くっ……!」
体勢を直したときには、新たなカノープスが迫っていた。
「≪天津風流龍剣術≫……」
近寄ってくる2体のカノープスめがけ、放つ。
「……≪弦月≫!!」
体術も加えた5連撃を叩き込み、同時に処理する。
『ライトくん……どんどん増えてるよ……』
『マスター!まだ来ます!』
「くそ……これじゃあ埒があかねぇ……」
見回すだけでも、まだ数十匹は動いている。
……考えろ……この状況を打破できる方法があるはずだ……!!
「……ローザ、ヒカリ! カノープスのコアを破壊しに行けないか?」
『......ちょっときつい……かな』
『こっちもまだ10匹は見えるわ……!』
二人ともその場を動けないらしい。
「くっ……」
そうしている間にも、こちらへ来るカノープスの数は刻一刻と増え続けている。
……くっそ……どうすれば……!!
『おい、ライト!聞こえるか!?』
「け、ケン!?」
今度はケンの声がサーチャーから響く。
『ヒヨから聞いたぞ!何とかこっちでも少人数だが殲滅部隊を……』
……ん?待てよ……
「なぁケン。アレは使えるか?」
『あ?なんの話だ?』
「……M9カスタムミサイル」
『お、おいおい……正気か? そこ一帯が焼け野原に変わるぞ?』
そんなミサイルを平気な顔して所持してるのはどうなんだ……?
「そんなの、カノープスに進入されるよりはマシだ!」
『……ったく。30秒で準備する。それまでにモンスターを中央に集めて逃げてくれ! くれぐれもローザとヒカリちゃんを一緒に焼かないでくれよ!』
コアごとすべてを焼き払うつもりらしい。
……てか、俺は焼かれてもいいのかよ!?
「……ああ。わかった!」
だが、そんなことを言ってる場合じゃない。
『ヒカリちゃん、ローザちゃん、今すぐ指定ポイントを通って移動して!ミサイルが来るわ!』
代わってヒヨが指示を飛ばす。
『な、ミサイル!?』
『早く!! 30カウントで発射されるって!!』
俺は近寄るカノープスのタゲを取り、カノープス本体のところまで誘導する。
強化を解除し、フォトンウィングを展開する。
「ローザ!! バインドだ!!」
ローザと合流するなり、指示を飛ばした。
「ええ! ≪血薔薇の拘束≫!!」
ヒカリがつれてきた分も含めて、数秒間の硬直状態にする。
「来るぞ!!」
二人の腕を掴み、全力で駆け出す。
『巻き込まれるんじゃねぇぞ!!』
力の限り地を蹴って、森の中へ退避した。
後ろを振り返ると、カノープスの向こう側から、光る物体が近づいてくるのが見えた。
それを確認したときには、視界がホワイトアウトした。
「うぉお!?」
恐ろしいほどの熱と爆風を受け、吹き飛ばされる。
耐えきれず腕を離してしまったが、気にしてなどいられなかった。
あたりの木々をすべて薙ぎ倒し、あるいは燃やし尽くしてしまうほどの衝撃が襲う。
カノープス本体の体を全て覆い尽くすほどの爆発が起こったらしい。視界が戻った時にはその空間全てが塵に変わっていた。
……やべぇ。ステラは大丈夫か……?
なんとか上空で体勢を整えた俺は、放置していたステラの様子を確認しに飛翔した。
……二人はまだ……大丈夫だろ……
「おい、ステラ!」
「――っ!!」
ステラが居る洞窟に戻ってきた俺を見るなり、ステラはなにやら焦った顔でこちらを振り向く。
「ちょ、隊長さん!さっきの地震は……って、そんなことより!」
「な、なんだよ?」
「早くこの手錠外してや!」
「なんでだよ?」
「え、そ、それは……」
ぐぬぬ……と言い淀んでしまうステラ。
「理由がないなら外せないな」
そう言うと、顔を真っ青にしたり赤くしたりしているステラは、吹っ切れたように叫んだ。
「もう、トイレですよ!トイレ!恥かしいこと言わせんといてください!!」
「ちょ!痛い!痛いから手錠で殴るのはやめてくれ!!」
俺はステラの抵抗を抑え、手錠を外してやる。
自由になったステラは、そのまま洞窟の奥へ小走りで向かっていった。
「そこから動いたらホンマに殺しますよッ!?」
「いいからさっさとしろよ!? 何怒ってるんだよ!?」
「そりゃあ怒りますよ!うちを辱めるの、そんなに楽しいんですか!?」
「なんの話だ!!」
『......マスターは不純なのですか?』
……どうしてこういう時だけポルは起きて来るんだ……もう寝とけよ……
顔を赤くして戻ってきたステラ。
「……なんか、ごめん」
「別にいいですよ。ちゃんと手錠外してくれましたし」
「外さないって選択肢はないだろ……」
嘆息しつつ、洞窟の外を見る。
「げ……降ってきてる……」
さっきまで曇りで保っていた空も、ついに限界を迎えたらしい。
まだマシとはいえ、かなりの雨が降っていた。
「……ステラ、そのコートって防水性だよな?」
「!!」
腕で自分をかばうようにして身を引くステラ。
「確認しただけだろ……?」
「ウチを虐めた次は、ウチの身包み剥がそうってことですかそうですか!」
『………………』
「誤解だ!!!」
……くそ……どうしてこうなるんだ!?




