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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第ニ章 「現在《いま》を駆ける探索者《シーカー》」
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チャプター 4-4

4




『『お帰りなさいませ、ご主人様!』』


突然聞こえた声は、間違いなく俺に向けられたものだ。


「………………」


……は!? マジで俺に言ってるのか!?


『あれ?もしかして聞こえてないのかな……?』

『......それはないと思う。音響システムは正常に稼動している』

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

『あ、どうかしましたか?ご主人様』

「いや、どうかしたも何も……」


生徒手帳の画面に映る二人組の女の子。

見た感じ11か12ぐらいだと思う。

お揃いの衣装を見に纏い、こちらの出方を窺っている。


『......多分、私たちの自己紹介がまだだったからじゃ?』

『あ、それもそうか!』


装着しているサーチャーから、元気な声が聞こえる。


『私がトル!で、こっちが……』

『......ポルよ。よろしく、ご主人様(マスター)

「あ、あぁ……」


ぺこりと頭を下げる二人に、思考が追いつかないながらも、返事をする。


……えっと、先生から手帳もアップデートしてもらって、言われた通りにサーチャーとの連携をして起動したんだよな……


どうしててこうなった。


「……えっと、二人はその……≪ナビゲーター≫ってやつ……だよな?」

『......ええ。その解釈で間違いない』

「そ、そうか」


……先生……こんなの頼んでないぞ。

サービス精神が旺盛なのも困りものだな……要らなくはないが。


『......マスター、他に質問は』

「そ、そうだな……」


何もわからなさ過ぎて、逆に何を聞けばいいのか……


『ねぇねぇ、マスター。この写真って……』

「う、うわあ!! 仕舞え仕舞えッ!!」

『......はい。必要ないデータなら、私たちが処理しますね』

「え、処理?」


ポルはトルの持ってきた俺の秘蔵写真をくしゃくしゃに縮めると、画面の外へ投げてしまった。


『......ほい、終わり』

「………………」


あっけなく、処理が施されてしまった。


『あ、ポル、あれ後で食べていいんだよね?』

『......ええ。いいわよ』


どうやら、この二人が不要ファイルと判断したものは自動で削除してくれるらしい。

いやー、便利だなー……


『あれ? マスター、どうかしたの?』

「……いや、なんでもない」


もはや何も言うことは無かった。


……あとで先生を問い詰めてやる……



*********


*********



「なんだか悪いわね。こんな事につき合わせちゃって」

「ううん、良いよ、これぐらい!」

「そうそう、こういう事は一人よりみんなでやるもんだろ」


放課後、図書館でクリスタル鉱山について、ヒヨとケンとで調査をしていた。


未来を変えるためのカードとしては必要な調査だとあたし的には思っている。 二人にそんなことは告白できないけれど。


図書館の端末データには規制がかかっており、見れる情報が限られていたが、ケンの生徒会役員権限でいくつかの情報を解放する事ができた。

おかげで一人では手詰まりだった調査も再び順調に進行している。


「……そういえばローザ」


ついに調査も最終段階といった頃、ケンがおもむろに切り出した。


「なに?」

「ぶっちゃけ、ライトとの暮らしはどうなんだ?」

「ぶふっ!?」


もう少しでせっかくの資料をダメにするところだったじゃない!


「……それはどういう意味かしら?」


どうしてこのタイミングで……と怒りたいのも山々だが、とりあえず話を進めてみることに。


「い、いや、単に興味本位で……」

「は?」

「いやいや、気になるじゃん? なぁ?」

「うん。 私もちょっと気になるかな」


まさかヒヨまでそう言うとは予想外だった。

そこまで言うなら……答えてあげてもいいかもしれない。


「……ま、まぁ、悪くはないわよ」

「そ、そうなのか?」

「べ、別に悪くないだけで……文句はいくらでもあるし、気にかけてほしい事もいっぱいあるし……」


洗濯物の管理だとか、生活用備品の補充とか……もっとしっかりしてほしい。


「……でも」

「でも?」

「……ルームメイトがライト(あいつ)でよかったわ」


自分の顔が熱くなるのがわかる。


……なによこれ……こんな事まで言わなくても良かったじゃない! あたしのバカ……


「……そうか。少し安心したよ」

「え……?」


ケンは目を閉じて頷く。


「実はね、ライトくんがちゃんとルームメイトできてるか、不安だったの」


ヒヨも少し安心したような表情だった。


「あいつはああ見えても、割と不器用なやつだからさ」


やれやれと首を振るケン。


「ま、これからも仲良くしてやってくれよ」

改まって言われると、なんだか変な気分だ。

「……ふん。わかってるわよ……」


……あいつは良い友達を持ってるのね……少し妬いちゃうわ……


「……よし、これでオッケーよ」


などと話していたら、調べたかったことが粗方調べ終わってしまった。


「あ、ありがとうね、ヒヨ」

「えへへ〜。これぐらいなんてことないよ!」

「それにケンも。ありがと」

「ああ。……早く持って行ってやれよ。 必要なんだろ?」

「……わかってるわよ」


資料をまとめて、席を立つ。


「あ、そうだ、ローザ」


ケンが思い出したかのようにあたしを呼び止める。


「悪いけど、ついでにこいつも渡しておいてくれないか?」


突き出されたのは、クシャクシャになった紙袋。


「これは?」

「あいつのBS(ビームサーベル)と、先生からのメッセージだ」



*********


*********




「……まさか、お前も呼ばれてたとはな」

「......何か問題?」

「いや、逆に心強いよ」

「......もう、兄さんったら……」


……うん。 相変わらずチョロいな……


ローザから屋上で作戦会議をするとメッセージが来たので来てみれば、居ると思っていたローザの代わりにヒカリが居た。


……ま、二人であの山に乗り込むのは無謀だもんな……ヒカリを連れてけばなんとかなりそうだし。


「待たせたわね」


扉が開く音とともに、聞き慣れた声が響く。


「あ、ライト。これ、先に渡しておくわね」

「俺のBS(ビームサーベル)……忘れてた……」


……これは後で怒られるぞ……謝っておかないと……

昨日つぼみん先生から連絡をもらっていたのに、完全に忘れていた。


「あと、メッセージだって」


そう言ってローザは手紙を渡した。


……これは後で読もう。


手紙をしまって、向き直る。


「……さて、例の作戦を明日決行するわ」

「あ、明日?」

「ええ。善はなんとやらってね」


そういうもんなのか?


「調査部隊の応援要請をもらったの。これを理由にして乗り込むわよ」


ローザは抱えていた資料を広げ、俺たちに説明する。


「あくまで、今回の作戦の目的は、≪カノープス≫を討伐する事よ」


ローザ曰く、≪カノープス≫は、龍骨型のモンスターらしい。

クリスタル鉱山で出現するとか言っていたが、目撃情報はない。


「3人でできるのか?」

「ええ。あなたたちが本気を出してくれれば、不可能ではないわ」


自信満々で断言された。


「"本気"ねぇ……」

「……………」


ヒカリの心配そうな視線を受け取る。

ヒカリは多分、俺とは違った心配をしているのだろう。

そんな心配もよそに、ローザは話を進める。


「いい?今回の作戦名は……」


息を吸い、こう続けた。


「コード:スイーパー」







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