チャプター 4-2
2
「おーい、ライト」
「ん?」
授業が終わり、モン研へ向かおうと席を立ったところを、ケンに呼び止められた。
「モン研行くんだって?遂につぼみん先生を口説きにいくのか?」
「バカ言うな……」
「冗談さ。オレも用事あるんだよね」
「……お前はあの部屋出入り禁止でいいんじゃないか?」
「まさかの出禁!?」
「冗談だ」
そんな会話をしつつ、俺たちはモン研の部室へ向かった。
*********
「こんちわーっす」
「あ、ケンくん、それにライくんも、よく来たね〜」
「…………」
余った袖を振って俺たちを招く、つぼみん先生こと小倉つぼみ先生。
小学生さながらの見た目と、その愛着のある仕草により、そんな呼ばれ方をしている。
ちなみに先生は椅子に座ると足が地に着かない。
「ケンくんに頼まれてたこれ、返しておくね〜」
そう言って奥から引っ張ってきたのは……
……ロケットランチャー!?
「ケン、それってまさか……」
「MM9、カスタムミサイルだ」
……平然と言いやがった。
軍用ミサイルの小型版、といったところか。
「そんなもの、どこで使うんだよ……?」
「対モンスター用に決まってんだろ?」
「………………」
真顔で言われては何も言い返せない。
「それより、お前も用事があったんだろ?」
「そうだよライくん~。とりあえずBS出しなよ~」
「あ、ああ……はい」
ポケットに仕舞っていたビームサーベルを取り出し、つぼみん先生に渡す。
「……ケンくん、悪いけど少し席をはずしてもらえないかな?」
俺の剣を手に取ると、ケンにそう言った。
「え……? わ、わかりました」
ケンは特に反論することなく、教室を出ていってしまった。
なんだなんだ……俺、怒られるのか……?
「……ライくん、この前の事件で出たモンスターを倒したのって、ライくんだよね?」
「そうですよ」
ごまかす必要もないので、素直にうなずく。
「……こんなになるまで……ライくん、無茶はだめだよ?」
ため息混じりに心配そうな目を向けてくるつぼみん先生。
「す、すいません」
「まったく~……もう……」
腰に手を当てそっぽを向くつぼみん先生。
怒っているらしいが、仕草がいちいち子供っぽい。
「……でも、ちゃんと帰ってきてくれて、先生うれしいぞ」
「………………」
屈託無い笑顔でそう言われると……気恥ずかしいぞ、なんか。
なんだこの天使。
「さて、パッと直しちゃいたいところだけど……」
「そ、そんなに酷いですか……?」
「そりゃあもうね~……少なくとも3日はかかるよ~」
「そ、そうですか……」
そんなにダメージ負ってたんだな……気づかなかった……
「修理し終えたら連絡するよ~」
「お願いします」
俺は礼を言いつつ部屋を出る。
「……なんだ、盗み聞きなんてよくないぞ?」
「何言ってる。これは敵の作戦を盗むためにだな……」
「ああはいはい」
「てめぇ、これでぶっ飛ばすぞ!?」
「やめろやめろッ!!」
こんなところでミサイルなんて撃たれたら、吹っ飛ぶのは壁どころじゃなくなるぞ……
*********
*********
「ごめん……ローザ。俺、もう……」
「……行かないでよ」
無駄だとはわかっていても、引き止めてしまう。
「俺はどうしても、行かなきゃいけないんだ」
この返答も、予想済みだ。
「……それなら、あたしが力ずくでも行かせない」
「………ッ!」
大剣を抜き、構える。
「はぁッ!!」
目の前の"彼"は、悲しそうに顔を伏せた。
「――≪月影一刀流≫……」
"彼"の右手に粒子が集まる。
「≪血薔薇の衝動≫!!」
全力の一撃を放ったタイミングで、
「……≪朧月≫」
閃光が弾け、二つの剣が交錯しあう。
「が……は……」
視界が追いついたときには、全てが終わっていた。
全身から力が抜けていき……膝から崩れ落ちてしまう。
「どう……して……」
「……安心しろ、相手の体力だけを奪う剣を使ったから……一日休めば元に戻る」
「う……うぅ……」
「……さよなら、ローザ」
頬を伝う水滴をぬぐってやり、"彼"は時計を取り出す。
「時間だ……もう行かなきゃ……」
歩を進め、表へ向かう。
「おにぃ……ちゃん……」
彼の背後でかすかに呟かれた声は、最後まで伝わることなく途絶えた。
「……大丈夫だ。すぐに終わらせる……」
*********
*********
「おい、ローザ?」
「う……うん……?」
「かなり魘されてたけど……大丈夫か?」
「……え、えぇ…………大丈夫よ」
ローザは目を擦り、体を起こした。
いったいどんな夢を見たのだろうか。
「それなら……良いんだが……」
ローザは「調べ物がある」と言って、図書室へ行っていた。
ケンを撒いて向かったはいいが、まさか寝てるとはな。
「そういえば、何を調べてたんだ?」
「これよ」
俺に見せるのは、プリントが挟まりまくった一冊の本。
「それって、未来から持ってきた本だよな?」
「そうよ。ここに書かれてることが本当か、一応見ておこうと思って……ふあぁ……」
欠伸混じりの返答をしたローザは、その本のページをめくった。
「とりあえず、今回のショッピングモールに現れた≪ゴライアス≫は、予定されていた出来事だったみたいね」
「そうか……」
ローザがいなかったら、街は半壊していたに違いない。
ローザの足止めがあったからこそ、被害が少なくて済んだ結末を掴めたのだから。
「この本には、≪防衛戦争≫の記述もあったわ」
「…………」
≪防衛戦争≫か……嫌なワードが出てきたな……
「気になって、今までのモンスターの出現パターンを割り出してみたの」
ローザはB5サイズの紙を見せてくる。
そこには、有名どころのモンスターとランクが表になっていた。
「どうもこのままだと、≪第3次世界大戦≫よりも早く、≪第2次防衛戦争≫が起きかねないわ」
「本当なのか?」
笑って冗談で済むという可能性を信じたかった。
だが、ローザがこんな冗談を言うはずもない。
「どうすればいい? 俺たちにできることはないのか……?」
ローザは指を立てて、目を閉じた。
「方法は、あるにはあるわ」
「それは?」
息を小さく吸って、ローザはこう言い放った。
「一週間以内に、具現化したモンスターを倒しにいくわよ。モンスター名は、≪カノープス≫」




