表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第ニ章 「現在《いま》を駆ける探索者《シーカー》」
27/111

チャプター 4-1



「…………」


リビングでヒカリが燃え尽きている。


……そういえば、ライトもあまり顔色良くなかったわね……


朝から先生に召集され、午後から戦死者の追悼をしたというライト達。

そのライトは、ついさっきお風呂へ向かったところだ。


「えっと、ヒカリ……?」


悪いとは思いながらも、ヒカリに声をかける。


「......うん?」


ヒカリの声が返ってくるも、目は閉じられたままだった。


「一応聞いておきたいのだけど、先生達には何て言われたの?」

「......はぅ……それ、言わなきゃいけませんか……?」


ため息混じりの、なんとも気怠そうな声だった。


「い、いえ、別にいいわ……言いたくないのなら」


なんだか悪いことをした気分だった。


「......まぁ、言うならば、こんな状態になる……そんな話でしたよ」


疲れたのは追悼式のせいなのでは……というつっこみは、口を出ることは無かった。

クリスタルモンスターの発生ポイントが不明だった話、モンスターからドロップしたクリスタルの解析が行われている話、そして、ヒカリ達が試験に合格した話。

面倒くさそうにしている割には、律儀に話してくれた。


「......そういえば、モンスター討伐戦で死にかけたって、聞きましたけど……本当ですか?」

「ごほっごほっ!?」


……いったい誰がそんなことをっ!?


「......大丈夫ですか……?」

「え、ええ……。まぁ、その話は……嘘ではないわ」


あたしのセリフを聞いてヒカリは、予想に反して、驚いた表情を見せた。


……感情を読み取りにくい娘だとは聞いてたけど、それほどでもないじゃない……


「......また兄さんは、無茶なことを……」

「え?」

「......なんでもありません」


ヒカリはため息を吐くと、半開きの目をこちらに向け、指を立てた。


「......赤月先輩。そんな無茶は、もうしないでくださ

い」

「わかってるわよ……」


何度目かわからないその台詞に、もはや苦笑するしかなかった。


「......兄さんは、先輩がどんな無茶をしても、それを上回る無茶をして助けに来る……そういう人なんです」

「…………」


確かにあの時ライトは、あたしに見せなかった刀を振って、人間離れした攻撃を繰り出していた。


……あんな無茶苦茶……確かに、あれでは身体がいつ壊れてもおかしくない。


「......だから、兄さんにあまり無茶をさせないでください」

「ええ……わかったわ」

「......わかってもらえれば、それで良いんです。……さて、わたしもシャワー浴びてこようかな……」


ヒカリはそう言って、ライトの居るはずのバスルームへ歩いていった。


……ライトは……


ヒカリの座っていたソファーに腰掛ける。


……優しさで自分を殺すことになる。

人の優しさに頼ってばかりではいけない……


そう思っていたはずだった。

だが、年月が経ちすぎていたのか、その記憶を抹消したかったからか、どうも忘れていたらしい。

首にかけていたネックレスを引っ張り出す。

半月ハーフムーンを模ったペアネックレス。

もう片方を持って行ったあの人(・・・)は、今どこで何をしているのだろうか。


「……"兄さん"、か……」




*********

*********




「ふぅ……」


湯船につかりながら、今日聞かされた話を整理していく。


……いつになっても、死なれるのは嫌な気分だな……


そこに居た討伐科一年生たちの様子は、しばらく忘れられそうにない。


……いや、それよりも……


頭をふって、話を午前中に戻す。

どうやらステラが発見した"召喚ポイント"はまだバレてないらしい。

調査が進めば、そのうちわかるとは思うが、見に行くなら今のうちだ。


……でもポイントがあるってことは……誰かが召喚したことの証明になるんだよな。

いったい誰が、何のために?


その疑問の答えは、いくらでも推測できる。

だが、その推測が正しいという証明はまだ出来ない。


……そういえば、あの≪ゴライアス≫のクリスタルがドロップしたって言ってたな……


モンスターを倒すと、そのコアの一部がクリスタルとなってドロップすることがある。

ドロップしたクリスタルを加工すると、インスタントクリスタルにも永続クリスタルにもなると聞く。


……ビームサーベルの強化ついでにモン研にでも寄るか……


クリスタル関連を取り扱っている部活……モンスター研究部。

そこでは、武装のメンテをしてくれたり、クリスタルを調整してくれたりするサービスをしている。

去年は本当にお世話になった部活だ。


……明日の放課後に予約入れとくか。


そこまで考えていたときだった。


「......兄さん、まだ?」


ドアの向こう側から、ヒカリの声がした。


「......まだなら入るよ?」


……は?なんだと……


布切れの音が漏れ聞こえてくる。


……油断してた。どうしてまたこんなシチュに……


妹が兄の居る風呂場に突撃など、ゲームの中だけにしてくれッ……!


だが、俺は致命的なことに気づく。


……よく考えたら、このまま出たら裸同士でばったりとかいう可能性が……


ダメだ、落ち着け俺!


何か方法があるはず……!!


「......兄さん?入るよ?」

「ちょッ!待ってくれッ!」


俺はとりあえず湯船から出て、タオルでいろいろ隠し、ドア前で待機。


……そうだ、あの技なら……!


ヒカリが扉を開けて一歩踏み込んだ瞬間ーー


「......……?」


ヒカリの手をとり、ターンの要領でヒカリとの立ち位置を入れ替え、そのまま外へ脱出。


……うまく、行ったぞ……


ヒカリの残念な感じのボディーラインは見なかったことにして、身体をさっと拭いて服を着る。


……やれやれ。いったいなんのつもりだ……


「......兄さん、今の技って……」

「うわっ!」


扉が少し開いて、ヒカリが顔を覗かせた。


「……また後で教えてやるから、さっさと入れ」

「......ん。わかった」


そう言ってヒカリは引っ込んだ。


……油断大敵って、本当だよな……


そんなことを思いつつ、寝室へと向かったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ