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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第一章 「追跡者《チェイサー》すなわち過去」
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チャプター 3-5



「さて……っと」


だんだんと強くなっていく横風に吹かれて、揺れる自分の髪を押さえる。

……せっかくのデートだったのに……

けれど、そんなことも言っていられない。


「さっさと倒しちゃいたいところだけど……」


まだ、そいつは攻撃の届く距離にはいない。


「あれはいったい何なのかしらね……?」


……1人でショッピングモール(ここ)を守ると決めて、ライトを送り出したんだから……!

任務は全うしないと……と、自分を戒める。

近づいてくる、明らかに異質なあれ(・・)を見据えて。


「……まぁ、なんとかなるわ……たぶん」


背中から愛用の大剣を取り出し、構える。


現実こっちでも強いって事、証明してあげるわ」


≪フォトンウィング≫を展開し、モンスターに先制攻撃を仕掛けに地を蹴った。

……不安なんて、無いんだから……!!




**********

**********





「このッ……!!」


ティーガーは俺の攻撃パターンを学習しているのか、徐々に攻撃が当たらなくなっていく。


……さすがはBランク……


俺の≪双剣≫をもってしても、≪自動修復≫能力には敵わないらしい。


「これなら……どうだッ!!――≪フォーリングツイスト≫!!」


インスタントクリスタルを使って14連撃を繰り出すも、すぐさま修復されてしまう。

どうも、第二形態に入ってから修復能力が強化されているようだ。

≪サーチャー≫の数値は90%を超えた。

それでも尚、弱点であるコアは見つからない。

体力を削りきることがほぼ不可能な状態な上、この状況は……ほぼ詰みだ。


「くっ……!!」


こちらの連撃を修復しつつ、ティーガーは反撃カウンターを開始する。

粒子の翼を翻し、鉤爪で2連撃。

ビームサーベルで弾き返すも、その後に飛んできた≪アサシンブレード≫に、愛剣ビームサーベルを弾かれる。


「し、しま……ッ!!」


防御手段を失った俺は、続く突進をもろに喰らい、壁まで飛ばされた。


……ぐあッ……痛ぇ……


勢いを殺しきれず、壁に叩きつけられる。


「ごほっ……っ」


喉につっかえていたものを吐き出す。

口内に広がる錆びた鉄の味。

見れば、左手は真っ赤に血塗れてしまっていた。


……骨、何本か持っていかれたか……


どこかで頭を打ったらしく、視界も意識も朦朧としてくる。


……なさけねぇ……こんな程度で……


さすがに2年前のようにはいかないらしい。

ティーガーは容赦なく、追撃を加えるために近づいてくる。

だが、俺を弄んでいるのか、その速度は緩やかだ。


……ここでてこずっていちゃ、ローザの手助けなんて到底無理だろうな……


ランクが違うとは、このことを言うのか。

そう気づいたときには、その差を埋める手段を思い出していた。


……使うしかないのか……コイツ(・・・)を……


ちょうど心臓の辺りで疼く、確かな衝動。

はやく開放しろとばかりに自己主張をしてくる。


……去年は使わずに来れたのに……


コイツ(・・・)を使うのには、それなりのリスクと代償が要る。


……またあんなこと(・・・・・)にはなりたくないのに……


2年前のあの日から、この能力ちからは使わないと誓っていた。


……けど、そんなこと言ってる場合じゃねぇ……!!


俺は意識と意志を、腰の辺りに集中させる。

イメージは、刀。

空いている右手を、刀の柄にあたる位置に持っていく。


そこに刀は無いけれど、コイツ(・・・)が動いていれば……


俺は朦朧とする意志をかき集め、手に集中させた。


……これを半分とはいえ開放するからには、一撃で仕留めさせてもらうぞ……


コイツ(・・・)のおかげか、千切れかけていた意識は繋ぎ止められ、集中力が戻ってくる。

奇跡的にまだ動いていたサーチャーに示されている弱点候補を、全て切り裂くイメージを立てる。

ティーガーはすぐそこにまで来ていた。

身体を何とか起こし、片ひざをつく。

イメージの固まった俺は、右手を強く握った。

そこには期待通りの、確かに柄を握った感覚があった。


「――≪雷切サンダーショット≫」


2年ぶりに放つ……天津風流龍剣術の裏奥義。

俺の中学時代の集大成。


……こんなにはやく再び放つ日が来るとは、思ってもなかったが……


居合い切りの要領で、ティーガーの額から尾まで一閃。

反す刃で胴体を真っ二つに裂く。


『ゴアアアアアアアアアア!!!』


ティーガーの断末魔を聞きながら、着地する。


「……ッ」


紅く光る刀を握る右腕に、鋭い痛みが走る。

音速を超える攻撃の代償か、右腕には横に裂けたような傷跡があった。


……こんな傷、気にしてる場合じゃ……


何かに取り付かれたかのように、力の入らない足はふらふらと歩を進める。


「......に、兄さん!!」


普段なら絶対に聞こえないはずの大きな声がする。


「ヒカリ……」


避難所へ行っていたはずのヒカリが、工場の入り口から走ってくる。


「......ごめんなさい。ごめんなさい……」


ヒカリは半分泣き崩れるようにして俺に抱きつく。

なぜか謝罪の言葉と共に。


「......わたしが……わたしがしっかりしてなかったばっかりに……!!」


ヒカリがここまで取り乱すのは珍しい。


「何言ってんだ……お前はちゃんと戦ってくれてたじゃないか」

「......でも……でも……!!」


そう言って真っ赤に腫らした目を上げる。

俺はそんなヒカリの頭に手を置き、抱きよせる。


「……謝るのは俺の方だ。ごめん」

「……ッ!」

「1人でやるなんて……少し言い過ぎたよ……」

「......ううん……あの反応は、当然……だから……」

「ごめん、心配かけたよな……?」

「......本当に、兄さんはいつまでたっても仕方のない兄さんですね」


そう言って少しだけ、笑ってくれるのだった。



「……ヒカリ」

「......うん。 赤月先輩のところに、行くんでしょ?」


少し落ち着いてから、避難所での情報を送ってもらう。

身体の痛みは、この能力のおかげで徐々に引いていっていた。


……自動修復の機能もあったんだな……忘れてたよ……


「......ショッピングモールの方、戦闘が激化しているみたい」

「そうか……」


思わず、周囲を警戒してしまう。


「......レーダーに反応がないか見てるから、そっちのことは安心して」

「ああ。助かるよ」


もう1つの懸念材料。

それは……この力の解放により、ヤツ(・・)が狙いにくる可能性だった。

≪激情の悪魔≫と呼ばれている、SS級モンスター……

去年遭遇しなかったのも、この能力を抑えてきた故だ。

だが、そんなことも言っていられない。


「......兄さん、気をつけて……」

「ああ、わかってる」


俺は回収したビームサーベルでフォトンウィングを展開し、宙を舞う。


……待っててくれ、ローザ。


俺は電子手帳から鳴り響くコール音を無視して、ひたすらにローザの元へ向かった。


……代償は後で払ってやるし、罰ならいくらでも受けてやる……


それでも、俺はこれ以上大切な人が傷付くのは見たくなかった。


……絶対に、間に合ってみせる……!!






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