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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第一章 「追跡者《チェイサー》すなわち過去」
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チャプター 3-4




「なぁ……今回の任務ミッションが終わったら、見せたいものがあるんだ」


隣に並ぶ少女は、少し困惑気味な視線を向けた。


「大丈夫だよ。きっと気に入ってくれると思うんだ」


そう言い聞かせつつ、出撃ゲートへ向かう。

ほとんど丸腰の少女も出撃命令を待つ。


「だからさ……」


――生きていてくれ――

本当に言いたいことはわかっていたのに、言えなかった。

かわりに俺はいつものように、彼女に笑いかけてこう言った。


「……俺が、守るから。安心してくれ……リリ(・・)





**********

*******




「クソッ……どうなってるんだ……!」


橋を潜って、海に出る。


「同時にランクB以上のモンスターが2体も……」


……人為的な策略か何かとしか思えない。

ぼやきながら、試験会場になっている空き地島に上陸する。

現在いままだ未開発のこのクリスタルの存在を確認されるとめんどう……という理由により、ローザから高度制限を命じられていた。

そのため、上空から事態の確認……というのもできない。


「無事だといいが……」


もとは貿易関連の仕事をしていた島というだけあって、建物は大きく丈夫なようだ。

崩れかかってはいるが、去年とさほど変わっていない。


「会場はもっと奥だったか……」


≪フォトンウィング≫を再展開し、廃墟と化した街に進入する。

小さな魔物がこちらに向かってこようとするのが横目に見えるが、今はそれどころではなかった。

瓦礫を迂回し、窓の壊れたビルを突っ切り、モンスターを振り切る。


「――!あそこか!」


念のため≪サーチャー≫を起動していたのが幸いし、戦闘音の発生ポイントを割り出せた。

……戦闘音が止んでないって事は、まだ生きてるのか……!

生い茂った木々を越え、少し広めの空間に出る。

どうやらなにかの倉庫だったらしいここが、今回の会場だったらしい。


「報告どおり……虎型のモンスター!」


ビームサーベルを構え、飛び込んだ勢いで切りかかる。


「――離れろ!!」

「......兄さんッ!?」


最前線で交戦していたのは、やはりヒカリだった。

脇にいるのはアカリとアキラ。三人とも無事だったのか……

俺は虎型のモンスターの頭を剣で突き刺し、そのまま頭ごと壁まで押し込んだ。

不意を突けたからか、モンスターは体勢を直せないでいた。

後ろに大きく跳んで、ヒカリたちのもとへ戻る。


「状況を教えてくれ!」


ヒカリが言い難そうに、そして悔しそうに顔をゆがませる。


「......えっと……負傷者13名、死亡者が……2人」

「クソッ……先生達は何してるんだ!」

「……ボクたちが足止めしてる間に避難してもらったよ」


アキラが片腕を押さえながら近づいてくる。


「ひどい怪我じゃないか……早く治療しないと――」

「――治療をするなら、アカリを先にしてもらえないかな」


アキラは自身の武器である≪玄武≫という亀形のロボットに守らせていたアカリの方を見やる。


「あ、アカリ!」

「大丈夫……気を失ってるだけだから」


アカリは壁に寄りかかったまま、ピクリとも動かない。


「……もういい、お前達は下がってろ!」

「......……ッ!!」


ヒカリの肩が震えた。


「ヒカリ、お前は二人を避難所まで送り届けてくれ」

「......で、でも、兄さん。あれを一人でなんて――」

「――いいから早くしろ!!」


モンスターがこちらに突進しようとしてきているのが横目に見える。


「......ッ!……う、うん」


ヒカリはうなずくと、アキラの手を引いて外へ駆け出した。

それと同時に、≪玄武≫がアカリを乗せて動き始める。

そして、モンスターも突進を開始した。


「当たるかよッ!!」


向けられた牙を剣で弾きつつ、横に受け流す。

逃げていくヒカリたちを追おうとしたのか、こちらを振り向くことなく歩を進めた。


「お前の相手はこっちだ!――≪リーンフォース≫!!」


強化項目は……ビームサーベルの出力。

走る勢いで足を切り裂いて、反した剣で胴を叩く。


『グオオオオオォォ!!』


モンスターは痛みに怯んだように見えたが、すぐにこちらを向き直った。

モンスターの切り傷から煙が上がっているのが見える。

……≪自動修復≫能力持ちか……

どうやら半端な攻撃では、すぐに回復されてしまうようだ。

……ん?≪サーチャー≫に通信? 誰から……

モンスターの鉤爪攻撃を受け流しながら、通信に出る。


『ライトくん!大丈夫!?』

「その声は……ヒヨか!」


反撃の一閃をかまし、少し距離をとる。


『ヒカリちゃんからそのモンスター……≪ティーガー≫の情報が送られてきたから、伝えておくね』


……ヒカリ、あいつ……

今になって、あんな冷たい態度を取ったことを後悔した。

……あいつもちゃんと戦ってくれてたんじゃないか。それを俺は……


『……そのモンスターの通称名は≪ティーガー≫。武装は≪鉤爪≫と≪アサシンブレード≫、それに――』

「――照射型のビームライフル!」


虎型のモンスター……ティーガーの背中から出てきた銃口が、俺めがけてビームを放つ。

……距離をとってたら焼かれるぞッ……!

右側面に回りながら、ビームを避ける。


『だ、大丈夫?』

「あ、ああ。……それで、武装はそれだけなのか?」


反動で動けないところをカウンターで突く。

少しでもダメージを稼いでおきたいところではある。


『今わかってる武装はそれだけみたい……けど、まだ何かあるかもしれないし……』

「わかった。ありがとな、ヒヨ」

『うん。これ以上のことはしてあげられないけど……がんばって!』

「あ、ヒヨ」


通信が切れる直前に、ヒヨを呼び止める。


『な、なに?』

「……ローザは……ショッピングモールの方はどうなってるかわかるか?」

『ショッピングモール……って、あの巨人ジャイアントがいるところのこと?』

「ジャイアント……!?」


聞き覚えのありすぎる名前だった。


『巨人型のモンスターってことで、そう呼んでるけど、正確な名称はまだ決まってないの』

「そ、そうなのか……?」


ヒヨの言葉を聞き流しながら、体勢を整えたティーガーの攻撃を避けていく。


『10メートルはあるって言ってたけど……ごめん、ライトくん。そっちはまだ何も……』

「……そうか、すまない」

『ううん。また何かわかったら連絡するね』

「ああ。頼む」


そう言うと、通信は切れてしまった。

……画面越しなら、気絶しないんだな……


「……さて、そろそろ片付けないとな……」


ティーガーの腕から飛び出してくる≪アサシンブレード≫も、事前モーションがあるので避けれる。

鉤爪も、威力はそこそこだが、ビームサーベルで受けきれない強さではない。

問題は、どうやって倒すか。

サーチャーの解析完了率は87%。

弱点候補はいくつも上がっているが、全てを試しているほどの時間はなさそうだ。

……こっちはローザのところへ戻らなきゃなんでね……

俺は一旦体勢を立て直そうと、ティーガーの鉤爪を弾いて、後ろへ下がる。

……うん?

ティーガーも後ろへ大きく跳んで、距離をとったと思ったら、

……ティーガーの身体が……

もともとこういう仕組みだったのか、はたまた誰かの戦略か。

一瞬、強い光を放ったティーガーは、明らかにさっきまでとは違う雰囲気を醸し出していた。

背中には粒子の翼を展開し、腕や足にスパイクのよう

な武装が追加されている。


『グォォォァアアアア!!』

「……ここからが本番、ってか……!」


俺は剣を握りなおす。


「悪いけど、こんなところで遊んでる暇はないんだよ……」


そしてポケットからクリスタルを取り出し、装着した。


「≪エクスパンド≫!」


ビームサーベルを複製し、スキルセットを≪双剣≫に変更する。


「お前は、ここで倒させてもらう!」


俺と怪物との、第2ラウンドが幕を開けた。





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