6 面白ーい
梨花が話し終わると、凛は、ポカンと口をあけて、そのあと、絶叫した。
「面白―い!!」
通りすがりの男子が、思わず持っていた本を取り落とす。
「凛、声でかいって。」
「何それ、何それ?」
凛が、メチャクチャ興奮してる。
こんなに喜ぶんなら、もっと早く教えれば良かった。
そして、もっと早く凛に相談すれば良かった。
実際のところ、、夢の中のリカの感情に振り回されて、現実世界の生活に支障が出ている梨花なのだ。
勉強も手がつかない。
常に、この夢のことが頭から離れない。
現実の榊と夢の中のキョウが別人であるだろうと思いはしても、目が離せない。
別に好きでも嫌いでもなかったのだ。
全然意識してもない新任教師の顔をした男を、始業式で会ったその日に、夢とはいえ、刺し殺し、しかも、その夢は今も続いている。
「ねえ、榊って、梨花のこと懐かしいって言ってたじゃん。」
凛が、何かを思いついたようだった。
「飼ってた犬に似てるからでしょ。」
梨花が頬をふくらませると、凛は、ブンブンとオーバーに手を振った。
「違うって。絶対、榊の方にも、何か梨花と縁を感じてるんだって。」
「縁?何の?」
凛は、自信たっぷりに答える。
「私は、前世だと思うな。」
「前世?」
「うん、絶対、前世の記憶だって。」
凛は断言するが、梨花は、首を傾げる。
「前世については私も考えたけど、何か、あてはまる時代がないってゆーか…」
「過去っぽくないってこと?」
「うーん、持ってる武器は、拳銃とかじゃなくて、剣だけなんだよね。そこは過去って感じなんだけど…。建物も、外観は、過去の中世のヨーロッパっぽいけど、どこか、近代的なイメージもあって…。でもって、私はリカで、先生はキョウ、もう一人出てきた仲間もタクミ。日本の名前っぽいじゃん?顔だって、日本人っつーか、この顔だし…。でも、持っている剣は、日本刀じゃないのよ。」
「ふーん。」
凛も首を傾げる。
「でも、絶対、前世だと思うけどなあ。」
「うーん。」
二人は同時に首を傾げた。
「連続する物語を、夢で見るって人の話も聞いた事あるから、前世とは関係ないドラマを脳内でつくってるのかも…。」
「じゃ、何で、榊を殺しちゃうわけ?」
それは、素朴な疑問だ。
「梨花は、別に榊のこと、気になったわけじゃないのに。」
「うん。勿論。年上すぎるもん。」
「たった、4,5歳なのに?」
「いや、先生って肩書きだけで、無理。」
「まあ、私らには考えにくいかもね。先生は、先生だもんね。何か、距離があるっつーか…。だったら、何で、榊と会ったその日から、夢がはじまったの?それって一体…。」
ブツブツと考え込む凛。
元々、オタッキーの資質がある。
こういう話は大好きなのだ。
小説にしてしまうかもしれない。
真剣に考え込む凛に苦笑して、梨花はフと顔をあげた。
さっき渡り廊下で準備室に向かっていたらしい榊が、職員室に戻ろうとしている姿が見える。
条件反射で、その姿を目が追ってしまう。
すると、同じように、職員室に向かう保健室の高階の姿が目に入った。
高階は、榊に、何かを書類を見せて、質問しているようだった。
親しげに、笑う二人の姿を見たとたん、何故か、梨花は、胸がざわつくのを感じた。