19 まさかな
喫茶店を出た榊は、不思議な気持ちだった。
爽のいう事に、疑問を挟む余地はない。
理屈の問題じゃない。
感覚的にフィットするかどうかということ。
腑に落ちたと言った言葉に嘘はない。
証明はできるものはひとつもなかったが、自分の中に、爽の言葉が納得できるものがある。
結局は、信じるか、信じないかってことか。
歩いてやってきたカップルが、『ありす』に入ろうとしていた。
榊は、コースを譲り、駐車場に向かおうとして、楽しそうに会話をしているそのカップルとすれ違った。
「リューヤがここくるの、1ヶ月ぶりじゃない?」
「アイリの休みが、ここんとこずっと平日だったしな…」
リュー? アイリ?
『リューが死んだと聞いて、怖くなった。アイリが、殺されるのを見て、普通じゃなくなっていた…』
梨花の言葉がよみがえる。
二人は、思わず振り返る榊には気が付かず、楽しそうに、『ありす』の中に入っていった。
「まさかな。」
榊は、こじつけを考えそうになる自分が可笑しくなり、苦笑しながら、車に乗り込んだ。
キャラクターは、いつものことなんだけど、難産で、一話完結のつもりだったんだけど、前作の志筑兄弟を使ってしまいました。でも、そのおかげで、シリーズで書くという可能性が出てきて、それも面白いかなと思ってます。
弁当にあたって、死にかぶりながら、ここまで読んでいただいた方々に感謝しています。
ああ、タイトル、真面目に考えなきゃな。