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ソウルメイト  作者: K
13/19

13 考えたくないけど…

どんよりした梨花に、凛が心配げに声をかける。

「どんな夢みたのよ?」

おそらくそれが夢のせいだということに、親友の凛は気づいている。

「考えたくない。」

「え?今までとは逆?」

「今日は、この話は無理。」

梨花の額から脂汗がにじんでることに気づいた凛は、その様子がただごとでないことに気が付いた。

「梨花、保健室に行こう。」

「大丈夫。」

「大丈夫じゃないよ。」

凛が、梨花の体を支えるようにして、二人は保健室に向かった。

「里村、どうしたんだ?」

その途中で、榊に見つかる。

そして、小柄な凛が必死で支えてる梨花の顔をのぞきこんで、あまりにも顔色が悪いことに気がつく。

「牧嶋?」

「先生。」

凛が、期待をこめて、榊を見上げる。

榊は、一瞬、困ったような顔をした。

おそらく、梨花から嫌われてるかもしれないと思い、躊躇したのだ。

「私を助けて。」

小さな身体で、梨花を支える凛が榊を睨む。

榊は、苦笑して、手に持っていた教材を床に置き、二人の目の前にしゃがんだ。

「俺の背中に乗せろ。」

「がってん。」

凛が嬉々として梨花の身体を榊にゆだねた。

榊が、梨花をしょって、そのあとを、榊の教材を持って、凛が小走りでついていく。

保健室に入ると、高階が、すばやくベッドの準備をして、梨花をゆっくり横たえた。

「こんなこと、多いのか?」

榊が、凛に尋ねている声がする。

その声を聞きながら、梨花の意識はゆっくり途切れていった。



西に向かうリカが、路地でばったり会ったのは、仲間のシュウだった。

リカもアイリの死を間近に見たばかりだったが、目の前のシュウの顔色も悪かった。

「どうして、一人なの?」

シュウが尋ねる。

リューが殺されたあと、各リーダーに伝言が伝わっているはず。仲間は、それぞれリーダーと行動を共にしているはずなのだ。

リカは、アイリの死を伝えた。

シュウは、うつむいた。

「貴重なヒーラーだったのに…。」

「間諜がいたということよね?」

「考えたくないけど…。」

シュウは、何か、言いよどんでいた。

リカは、思いついたように言った。

「シュウ、お願いがあるの。アイリが死んだことをタクミたちに伝えて欲しいの。」

「リカは?」

「私は、キョウを探す。まだ、死んでるとは限らないもの。どこかで怪我をして隠れてるかもしれない。」

「危険だわ。」

「大丈夫。探しながら、西を目指すから。それに、私は、ペーペーだから、狙われるとしても最後よ。」

シュウは恐ろしく顔を歪めた。

「待って、リカ。言っておかなければならないことが…。」

「何?」

シュウは、苦しそうな表情で、リカに爆弾を落とした。

「私、見ちゃったの。」

「何を?」

「キョウが長老の家から出ていくところを。」

「え?」

頭を木刀で殴られたかのような衝撃がリカを襲う。

「どういうこと?」

「こんなこと、怖くてまだ誰にも言ってないんだけど…。」

「え?」

リカは、自分の声がかすれているのがわかった。

「私の家が長老の家に一番近いことは知ってるわよね。」

シュウは、顔を歪めたままで、リカに説明する。

「キョウが、長老の家から出ていく意味を考えて、私、暫く、その場で考えてたのよ。あまりに衝撃すぎて、考えがまとまらなくて。そうしたら、憲兵たちが現れて、二つに分かれて出て行ったわ。私は隠れてたけど、一つは、リューの家の方向。もう一つは西の門の方向よ。」

「!!」

「わかってるでしょう? そのあと、リューが殺された。キョウがこういう事態に、西の門に集まることを知っているとしたら、西の門は待ち伏せされてるわ。」

リカは息をのんだ。

「リカ、考えて。間諜はキョウよ。」

考えたくない結論だった。

「そんなはずない…。」

とっさにリカは否定する。

「どうして、そう言い切れるの? 間諜について、聞いた事あるの? 彼等の仕事は、代々、秘密裡に長老に直に使える家業なのよ。生まれた時から決まっている使命ありきの人生なのよ。キョウだろうが、タクミだろうが、そういう家族に生まれていたなら…。」

「待って。でも、私を仲間に誘ってくれたのは、キョウなのよ。」

シュウは、気の毒そうに言った。

「リカが、大事な幼馴染をかばいたいのはわかるわ。けれども、間諜は、揺さぶるのよ。揺さぶって本当の心を試すのよ。キョウは、最初から手放しで、リカを歓迎した?」

「危険だからって、悩んでた。」

「試すのも、スパイの仕事なのよ。リカの望みが本物かどうか、やるのかやりたいだけなのか、危険分子かどうなのか、見極めるために、誘ったのよ。」

「でも…。」

「否定したい気持ちはよくわかる。こんな緊急時に、何が正しくて何が間違っているかなんて、誰にもわかるはずがないもの。」

「…。」

シュウは、少し寂し気だった。

「でも、迷ってる時間はないわよ。今、城塞内で逃げているはずの仲間を追ってる気配が少ないのは、腕のたつリュー、ヒーラーのアイリ、リーダー格のソーやタクミを殺せば、あとは、西の門で待ち伏せして一網打尽にするつもりだからだと思うわ。」

「…。」

「キョウと合流しようなんて思わない方がいい。それより、タクミにこのことを話すべきだわ。」

リカは、思考がストップしていた。

何がベストなのかがわからない。

キョウが裏切ったなんて、どうしても信じられない。

「戸惑うのもわかるけど、タクミたちに話す方が先よ。西の門が待ち伏せされていることを伝えないと、私達、全滅よ。」

「シュウ…。」

「キョウのことは、タクミに伝えたあとに考えて。タクミは早めに狙われるはず。別れて探しましょう。急がないと。」

「わかった。」

リカは、動揺していた。


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