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ソウルメイト  作者: K
10/19

10 家はどこだ?

夕課外が終わったあと、梨花は、榊に呼び止められた。

「牧嶋、家はどこだ?」

「え?」

「自転車組か?」

「いえ、バスです。」

「家まで送る。駐車場で待ってろ。片桐先生には了解済みだ。」

「大丈夫ですって。」

断ろうとする梨花だったが、湧いて出た凛に阻まれた。

「先生、私は?」

「こんな時は先生なんだな。」

榊は苦笑しながら、

「牧嶋と家は近いのか?」

と聞く。

凛は、満面の笑みを浮かべながら答える。

「はい、車だと10分かかりません。」

榊は、軽く吐息をついて、

「ついでだ。」

と、梨花の承諾もなく、勝手に送ることを決めてしまった。

「やったね。」

と現金に喜ぶ凛の肩越しに、華子たち親衛隊の姿が見える。

めっちゃ、睨んでるじゃん…。

面倒は、やなんだけどなー。

凛にひきずられるように、駐車場につくと、すぐに榊も降りてきた。

黒のホンダだ。梨花には、ホンダのロゴぐらいしか車のことはわからない。けれども、凛は、車の好きな従妹がいるらしく、梨花より詳しい。

「あ、このCR-Z、先生のだったんだ。」

「詳しいな。だったら、後部座席が狭いってことも知ってるな。」

「でしたねー。私入ります。」

凛が、先に後部座席にもぐりこんだあと、文句をたれる。

「マジでせまっ。」

「バスで帰るか?」

「いいえ。十分です。」

榊にうながされ、助手席に座る梨花。

校門を出る時に、華子たちの姿が見える。

こっちを見て騒いでる。

そりゃそうだ。

「先生、めっちゃ睨まれてますよ。私。」

梨花が華子たちから、できるだけ見られないように顔をそむけて言うと、

「何でだ?」

と、素朴な疑問が帰ってきた。

「先生のファンが、怒ってるんですよ。特別扱いしてるって。」

「俺のファンがいるのか?」

「いるもなにも、いつも取り巻きが、準備室に入り浸ってるじゃないですか。」

「ああ、理系女子がブームだからな。この学校には、生物に興味を持つ生徒が多いから、やり甲斐があるな。」

「華子たちのことですよ。」

「華子?ああ、新庄のことか。あいつが一番熱心だ。就職するには惜しい。あの情熱があれば、どこかに推薦で行けるかもしれないのに。」

梨花と凛は顔を見合わせた。

こいつ、生粋の天然だ。

「先生、彼女は?」

凛が、身を乗り出して聞くと

「いない。」

と、あっさりした答えが帰ってきた。

「前はいたんですよね。」

「ああ。」

これについては、榊があまり語りたくなさそうだったので、ひとまずこの話題はひっこめた。

次の口火を切ったのは、凛だった。

「先生、夢はよく見ます?」

「あまり、覚えていないな。」

「印象深い夢とか、あります?」

「何でだ?」

丁度信号が赤になり、榊が、凛を振り返った。

「梨花の夢が、結構、強烈なんですよ。」

榊は、助手席の梨花をじっと見つめる。

「牧嶋…。」

キョウの顔だ。

リカが信頼し、命を預け、そして殺したキョウの顔だ。

「悩みがあるのか?」

梨花と凛は、顔を見合わせる。

どうやら、榊は、夢を観てはいないらしい。

予想していたとはいえ、梨花は、少しがっかりした。


凛を降ろし、梨花の自宅前まできた榊は、親に今日倒れたことを、伝えようとするが、この時間、親は二人共留守だった。

「大丈夫か?」

榊は、梨花を一人にすることが心配だったらしい。

「大丈夫だって。貧血は、初めてじゃないし…。」

「そうか?」

「ありがとうございました。」

梨花がドアをあけ、降りようとすると、榊は、思い出したように声をかけた。

「牧嶋、どんな夢見るんだ?」

梨花は、榊を見た。

その姿にキョウがダブった。

「榊先生を刺し殺す夢。」

「え?」

「ごめんなさい。」

梨花は、急いで車から降りて、ドアを閉めた。

振り向くと、ショックを受けたらしい榊が呆然としている。

嘘じゃないし…

若干、傷つけた罪悪感を感じながら、家に駆けこんだ。

榊は、しばらく家の前で止まっていたが、やがて、ゆっくり車を発車させた。



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