3話 強制的に新天地?
眼が覚めると嗅ぎ慣れた薬品の匂いがした。
寝てしまったのだろうか?
だとしたらここは療治院の中か。
状況が分からずあたりを見渡していると、白衣姿の若い女性が気付いて寄ってきてくれた。
「どうやら疲れて寝てしまったようです。帰りますので父を呼んでくれませんか?」
苦笑いしながら言うと、白衣の女性は小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、これがガイストの息子かと小さく呟いた。
なんか感じ悪いなぁ。
「なにも聞いてないようだね。ガイストは帰った。そんであんたは帰れないよ夏休みまでは我慢しな。」
夏休み…?
自慢じゃないが毎日ホリデーの自分に夏休みが来るとは思えない。
意味がわからないでいると、女性はなにやら封筒を突きつけてきた。
言われるがまま中を見ると、見慣れた筆跡が出てくる。
とりあえず良かった。誘拐じゃなかった。
一旦、流すように手紙の内容を確認する。
合点がいかなくて何度か読み返した後、堪らず瞠目した。
おとなしい奴を怒らせると怖いというのはこういう事か。
けど、学校に興味がないとは言ったが行かないとは言わなかった。どうしても行って欲しいなら言えばいいのに!
ーーワイズへ
お前がうちの家計に気を使ってくれているとは知らなかった。その上で調剤師なりたいようだから、父さん最善の方法を考えました。
善は急げという事で少し乱暴をしてしまった事は許してください。
さて、本題だけど父さんはお前を全寮制の学校に入れました。当然授業料もお高いので同時にアルバイトをして貰います。
せっせと薬作って授業料免除、寮付き、三食美味しく食べられるぞ。大きな図書館もあるらしい。夢のようだな。
リネアナは父さんがその学校で働いていた時の同僚だからお前のことも可愛がってくれるでしょう。
では、健闘を祈る。
父よりーー。
手紙の全文はこんな感じだ。
何これ。
確かに行きたくないだけの学校に、お金が掛かるからと言い訳したような気がします。どっちかといえば調剤師になりたいようなこと言ったと思います。図書館行きたいけど遠いからヤダとか言ったかもしれないです。
だからって全部採用しなくてもいいよね?
父さん、来季からはちゃんと就学するからこんな無茶しないで!いや、本当に勘弁してください頼むから。
拝み倒そうにも本人がいないので、涙目になりながら顔を上げて助け舟を待った。父の同僚だったというその人、リネアナ・エセナは今度ははっきり鼻で笑うと3つほど積み上げられた箱と鞄を指した。
「あれがあんたの荷物。さっさと部屋に運んで挨拶でもしといで。スケジュールはこれ。朝はここに来て納品を済ましてから行くんだよ。明日の分のオーダーはこれな。さ、元気ならさっさといなくなってくれ邪魔だよ。」
書類を何枚か無造作に渡され、保健室を放り出される。
ぜんぜん元気じゃない。
まだなんもしてないけど吐きそう。
しばらく呆然としていると制服姿の女子達とすれ違った。
目線が痛い。
私服だと目立ちすぎてつらいので、ひとまず鞄だけ持って寮とやらに向かった。