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プロローグ
その日、町外れの森の入り口に立つ薬売りの家に、控えめな産声があがった。
まるで遠慮するように泣く赤ん坊は小さくて白くて、両親は正直気が気でなかった。
「よし、この子の名前はワイルドだ。男の子なんだ、こうでないと!」
験担ぎというか願掛けというか、ともかくなんでもいい。
丈夫に元気に育ちさえすれば。
両親はようやく授かった一人息子を溺愛し、怪我をさせまい、病気をさせまいと大切に大切に育てた。
その甲斐あって無事成長した彼は、10歳の頃には立派な引きこもりになった。
日がな父の蔵書を読み漁り、気が向けば母の手伝いに薬草を煮詰めたりして暮らしていたので、気づいた頃には一層白く細く、そして背丈も小柄。当然体力も御察しの通りという有様。
両親は頭を抱えたが、当の本人はどこ吹く風。
こうして彼、ワイルド・ヒースは、順調に名前の割に大人しすぎる少年へと育っていったのである。