前奏 ハテヲ魂る朝焼けの唄
まだ夜も明けない暗い部屋のなかでぼやけた様な照明の明かりだけが、薄っすらと室内を照らしていた
「今回もご苦労だったな、星爾」
「有難う御座います」
いつもどうりの会話、この部屋の窓にあの人が手に持っているグラスの中の紅いワイン
温かく設えられた家具とは裏腹な醒めたような部屋
一面窓辺になっている所に椅子を置いて坐っているあの人
そう全部いつも通り。何も変っちゃいない
「今回のターゲットの腕はどうだった?まぁ全てお前が仕留めたと矢木那から聞いているが」
試すような質問
それでも俺は軽く口を開いた
「・・・・『俺等』が行くほどでもなかったように思いますが」
少しだけ皮肉ってみる
大体、アイツが現場に居たこと自体気に入らなかった
「はははそうか、心配して矢木那を行かせるまでもなかったな」
そう言ってあの人―――――俺達のボス『三条 聰太朗』は満面の笑みで言う
「今回のターゲットは前回の奴と少し関係があってな・・・・・」
俺は椅子に掛かっていたコートを持って、ショルダーに手をかけながらゆっくりと三条に向かって背を向けた
「・・・星爾?もう行くのか?」
「はい、先約がありますもので」
俺の言葉に、三条は少し困ったように続けた
「そうか・・・・なら仕方が無いが、次回についての仕事の話は矢木那に話しておくか・・・・?」
またアイツに?
冗談ならもっとふざけてくれよ
俺はドアに手をかけてから開け放った
「どんな任務でもコナシテ見せますよ、明日も任務なんで。じゃ、失礼します」
ドアを閉める音は多分聞き取れないくらいに小さい
「どんな任務でも・・・・・か」
ドアの向こうで、三条は嬉しそうにそのフレーズを繰り返していた
夜は明けた――――
俺の朝はハジマリを迎える