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タウロス討伐作戦

三人で裏口で待つことしばし。先にティールさんが来た。

「ん? まだアンスール来てないのか?」

「調整してるんじゃない? ガリア作戦で殆ど出撃調整されてるだろうし」

「ああー……なるほどな」

 と、言っている内に装甲車のエンジン音が聞こえてくる。

 装甲車は私達の前で止まると、運転席のドアが開いた。

「……お待たせ。乗って」

「おう」

 装甲車は後ろに人を収容するスペースがあり、そこは小さなブリーフィングルームとしても機能する。

 アンスールさんは運転席、私達四人はその収容スペースに乗り込んだ。

「全員、装備はいいか?」

「おっけ」

「おっけ〜」

「大丈夫です」

『……問題なし』

「よし、アンスール、行け」

『……了解』

 そうして、私達はユミル平原に向けて出発した。



「……さて……今の内に討伐法決めとくか」

「はいはい!」

 さっそくイスさんが手をあげる。

「焼こうぜ」

「却下。つか、あいつそもそも燃えねぇだろうが」

 ティールさんが冷たくあしらう。

「いや、エオローとフェンリルちゃんなら……」

「余計却下だろ。つか、どう殺すかじゃなくて誰が中心になるかだっつの」

「あーはいはいなるほどー。前回はアンスールが中心だったっけ?」

 イスさんが運転するアンスールさんに話しかける。運転席と収容スペースにはプラスチック板で仕切られており、見る事も出来るし話も聞こえる。

『……うん』

「今回もそれで行くか? フェンリルいるし、それ確か一番安全な戦い方だったよな」

 結局、安全性を優先して遠距離射撃の得意なアンスールさんを中心に、私達四人は陽動する動きをする形で討伐する事になった。

 と、そこで端末に無線が入る。

『……こちら戦闘四部。四諜、聞こえるか?』

 こういった部隊間でのやりとりは基本的に隊長であるティールさんが応えることになっている。

「ああ、聞こえる。どうした?」

『我々戦闘四部も掃討作戦に向け発車した所だ。そちらの状況を報告せよ』

「アタシ達も出発してすぐだよ。もう少し時間はかかるさ」

『了解。四部は到着後そのままウロ掃討に移るが問題ないか?』

「ああ。そっちはお前らに任せるさ」

『了解』

 通信が終了する。

「ったく……そんなすぐ着くかっつの」

「あはは……」

『……ティール』

 不意に、運転席のアンスールさんが話しかけてきた。

「おう。どうした?」

『……見えてきた』

 アンスールさんがそう言うと、窓を覆っていた装甲が下りて、外の景色が見えた。

「……あれですか?」

 少し離れたところに、巨大な紫色の花があった。間違いなくタウロスだろう。

「よし……ペオース。応答しろ」

 ティールさんがペオースさんを無線で呼び出す。

『ん? なんだい?』

「目標を発見した。四諜はこれより作戦行動に移る」

『お、了解。頑張ってね』

 ペオースさんの頑張ってね、が私に言われたみたいで嬉しくなる。

「お? フェンリルちゃん嬉しそうだねぇ〜」

「そ、そうですか……? 気のせいですよっ」

「いいから、早く準備しろって」

「あ、はい。了解です」

 レイピアなど武器は普段、魔法によって異次元に移されているため、必要な時に喚び出せばいいが、他の装備品はそうも行かないのでポシェット等に入れて持ち歩く。

『……到着』

 アンスールさんが装甲車を止める。それとほぼ同時にイスさんが収容スペースのドアを開けた。

「出撃っ」

 全員素早く降りて、それぞれの武器を喚び出す。

 そういえば、エオローさん以外の武器見るのって初めてかも。

「イスさん、二丁拳銃ですか」

「ん? あ、見るの初めてだっけ。そうなんだよ〜」

 ティールさんは真っ黒なカタナ、アンスールさんはバレルの長いライフルだ。

「よし、行くぞ。作戦通りアタシ達は陽動、アンスールがトドメ役な」

「「了解」」

 私達は巨大な『タウロス』に向かって走り出した。

 タウロスは目が無いために視覚で敵を察知する事が出来ない。だからその分、地面や空気の震動に対して敏感らしい。

「……いいか、足音と、声はこれ以降交戦するまで出すな。先ずはアンスールが先制してからだ」

 ティールさんが小声で指示する。私達はそれに頷くと、なるべく足音を立たせずにタウロスの近くまで歩く。

 すでにアンスールさんは少し遠くで射撃体勢に入っていて、合図を送ればいつでも撃てる状態になっている。

 抜き足差し足で私達も位置につくと、ティールさんがゆっくりと手を挙げた。アンスールさんへの合図だ。

 パァンッ

 アンスールさんの発射音を合図にして私達もタウロスに攻撃を仕掛ける。

 弱点である花の中央に空いた穴に銃弾を撃ち込んで、その隙に近寄って根元から生えるツルを切るなりして抵抗不能にする。

 そうするとタウロスは全体攻撃の一つである毒ガスを吐く為に一瞬弱点が無防備になる。そこをアンスールさんがトドメをさす。という作戦らしい。

「っしゃ、イス、行くぞ!」

「了解っと!」

 ティールさんとイスさんは組んで前衛、私とエオローさんはそれを魔法で援護、といった隊形を組む。

 ティールさんが無数に襲いかかるツルを避けて、一気にタウロスの根元まで距離を詰める。

「先ずは……一本ッ!」

 ツルを根元から切り離して、一旦下がる。斬った所からガスが出るためだ。

「ティール後ろ!」

 と言いながらイスさんがティールさんの背後に迫ったツルを撃ち落とす。

「エオローさん。これ、私達要らなくないですか」

「あはは〜。まぁあの二人息ぴったりだしねぇ〜。それにフェンリルちゃんはまだ慣れてないから援護になってる訳だしね」

 タウロスが穴からヘドロ状の塊を吐き出す。

「うわっ」

 どうやら狙いはこちらのようで、慌てて避ける。

「う〜んどうしよっか〜」

「え? 何がですか?」

「私達も手伝おうかなって〜。慣れてなくても、全く戦わないのも上達しないし〜……って」

「あぁ……なるほど」

 確かに頼りっきりというのも気が引ける。

「ティール〜私達横に回っていい〜?」

「あ? 死ななきゃ好きにしな。アタシ達の所は平気だ」

 ティールさんがツルを避けながら言う。

「ありがと〜」

 タウロスの右側に回り込む。距離は十メートルくらい離れているけど、見上げると結構高い。

「さてと……フェンリルちゃん。取りあえず火球撃ってみようか」

「了解しました。……」

 エオローさんと詠唱体勢に入る。頭の中で詠唱して……

「はっ」

 光った所で手を広げて手を突き出す。すると、火球が放たれる。

 命中したものの、これといってタウロスに変化はない。

「タウロス魔法耐性あるもんね〜。連射しよっか」

 二人で同じ場所に向かって火球を連続で放つ。ようやく焦げ目がついたところで、タウロスがツルを振るう。

「っと……」

 タウロスは私達よりイスさん達を脅威と見なしているようで、こちらには殆ど攻撃してこない。

「フェンリルちゃん、今ならツル切れるかも。援護するからやってみて?」

「が、頑張りますっ」

 近付こうとした瞬間、タウロスのツルにあるトゲからガスが噴出した。

「きゃっ……」

 届かなかったけど、もう少しタイミングがずれていたらまともに浴びる所だった……。

「フェンリルちゃん大丈夫?」

 エオローさんが心配そうに声をかける。

「だ、大丈夫です」

 気を取り直して、二回目。

 急いで近づいて、ツルを斬り捨てる。

「フェンリルちゃん、上!」

「え? わっ!」

 慌ててバックステップで下がり、レイピアを構える。一本は減らせたものの、残っているツルからはガスが噴出している。

「これじゃ近づくのは難しいですよ……」

 見ると、銃を持っているイスさんはツルに攻撃できるけど、ティールさんは近付けずにいる。

「ティールさん、どうしますか!?」

「そうだな……アンスール」

『……何?』

「お前行けそうか?」

『……距離は問題ない。ただまだ穴は開いてない』

 そう。まだタウロスは弱点を晒していない。これではトドメをさすことは出来ない。

「いや、このツルの破壊さ」

「ツルの破壊って……まさかアンスールにこれ切らせようって!?」

 イスさんがタウロスのツルを指差す。確かにそれなりに太いけど、ツルは動くし……。

「その通り。イスの拳銃じゃ口径が小さくて出来ねぇんだ。代わりに出来るか?」

『……ケーキがいいな』

 突然アンスールさんが変な事を言い出す。

「は?」

『……報酬。上手くいったらラフォーレのケーキがいい』

「お前、そこ確か高級な……」

『……無いなら出来ないな』

 アンスールさんが悪戯っぽく笑うのが聞こえた。

 ティールさんが目で『お前らも払えよ』と言っている。

 巻き込まれた!

「……ちっ。分かったよ。その代わりお前、失敗したら逆だぞ」

『……ふふっ。大丈夫。ティール達は少し離れて陽動して』

 通信が切れる。

「てことで、お前らも払えよ!」

「なんで私達も払うのさ! ティールが依頼したくせにー!」

「まぁまぁイスさん、四諜の連帯って事で……」

 あまりイスさんが暴走すると話が進まなくなるので、ティールさんの援護をする。

「そういうことだ。じゃ、陽動するぞ。散開!」

 イスさんとティールさん、私とエオローさんでツルを動かすように陽動する。

「えいっ」

 火球以外にも、雷球や氷球も撃ってみる。

 やっぱり効かないなー……。

「フェンリルちゃんちょっとどいて〜」

 ここでエオローさんが前に出る。

 詠唱した後、グングニルを放った。

 あの凄まじい地響きがして、地面が割れる音。

「あ、外しちゃった」

「えぇっ!? 当たってないんですか!?」

「動き速くて〜」

 そういうエオローさんの頭上にタウロスのツルが迫る。

「エオローさん!」

 叫ぶと同時に、そのツルが撃ち落とされる。

 イスさんかと思ったが、どうやらアンスールさんが射撃を始めたようだ。

 エオローさんを襲ったツルは4発で根元まで撃ち抜かれ、他にも2本、既に無くなっていた。

 タウロスが悲痛そうに、残った僅かなツルを大振りで攻撃してきた。

 私達4人は下がる。

 パァンッパァンッ

 動き回っている上、速いのに、次々とツルが撃ち抜かれる。

「はーっ……流石だね。私にはこの速度撃てる自信ないわ」

 イスさんが感心したように言う。

 ツルはあっという間に全て落とされ、巨大な花とそれを支える茎だけになった。

「よし、イス近づくぞ」

「了解っ」

 イスさんとティールさんが全体攻撃を誘う為にわざと近づく。

 普通なら自殺行為だけど……

 パァンッ

 ガスを吐く為に一瞬開いた口をアンスールさんが打ち抜いた。



「……おう、お疲れ」

「何というか……指定禁忌の割にあまり……」「だから言ったでしょー? あいつは毒だけだって」

「レベルも1だしね〜。拍子抜けした?」

「あはは……」

 確かに、もうちょっと強いのかと思ってた。実際は全然だったけど……。

「……ただいま」

「お、お疲れ。ありがとうな」

「……報酬のため」

「それにしても、凄いですよっ。かっこよかったです!」

「……そう言われると……」

 アンスールさんは照れたように顔を俯けてしまった。

「おいペオース。終わったぞ」

『お? ホントかい? じゃあ丁度いいし、もう一仕事してもらおうかな』

 嫌な予感が……。

『さっき戦闘四部から支援要請があってね。なんでもウロが予想以上にいっぱいいるみたいで。君達は手伝ってから帰投してね』

 言うだけ言って、一方的に切られてしまった。

「……」

 ティールさんが無言で戦闘四部に繋ぐ。

『ん? どこの部隊だ?』

「……先にお前ら掃討してやる」

『え? 何? 誰だ? ちょ、おい――』




 結局、怒ったティールさんのお陰で私達4人は何もしなくても大半を処理できた。

「ぉらぁっ! さっさとくたばれ!」

 ティールさんは終始、機嫌悪かったけど……


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