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戦闘訓練

シリアスな空気持ってきてもギャグが入ってきてしまうw作戦は自重しなくてはw

「……さて」

「はい」

 私はアンスールさんに連れられて、四諜専用の訓練棟に来ていた。

「……ここが四諜専用の訓練棟」

「はぁ……」

 訓練棟というだけあって広いというよりは高い印象を受ける。

 外見は三階建てで、城とおなじレンガ造り。

 城と繋がっているため、ブリーフィングルームからも程近い位置にあり、いつでも解放されているのだとか。

「それで……私はどうすれば?」

「……まず、キミの装備を決める」

「それもそうですよね……」

 建物の構造は三階が武器格納庫。訓練に使用する模擬魔法銃や木剣だけでなく、実践で使用する装備もここにある。二階と一階は全て訓練として使うらしい。

 既に訓練を始めているイスさん達のいる一階、二階を通り過ぎ、三階に到達する。

「……入って」

 ドアを開けて中に入ると、広い部屋の中に沢山の武器が保管されていた。

「うわぁ……」

「……訓練校の時の装備は?」

「え? いや……固定された装備は……」

「……じゃあ決めて。基本的に装備は固定だから」

 それもそうだ。

 基本的に遊撃兵はハンドガンと近接武器を選ぶらしい。たまに機銃や近接武器のみ、といった人もいるが珍しいそうだ。

「魔法銃はハンドガン系でいいとして……近接武器かぁ……」

 近接武器には、一般的なソード、ダガーナイフの他に、手にはめるタイプのクロウ、片手持ちでも使えるように短く調節されたハンドスピア、主に突撃兵が使うハンドアックスもある。

「やっぱりソードですよね……うん」

 結局、ハンドガンとソード、特に剣身が細いレイピアと呼ばれる分類のソードを使うことにした。

「……決まった?」

「はい」

「……じゃあ、二階で訓練」

「は、はい」

 二階に降りると、四諜のメンバーが揃っていた。

「あれ? 皆さん訓練しないんですか?」

「何言ってんだ。仲間の戦闘能力を知っとくのは重要なことだぞ」

「つまり〜私達監督かな〜」

 皆に見られながら戦うのか……。ちょっと恥ずかしい。ただでさえ能力は低いのに……。

「……キミの相手は魔法で作られた人間。今回は最初だから能力値は全てCに設定してある」

「あの……私ケガしたりします?」

「ケガはしないね。ただし痛みはあるから気をつけてねー」

 そりゃそうだよね……幻覚ってことか。

「……では、起動」

 アンスールさんがそういうと壁から何か機械が動いているような音がして、壁から一人の兵士が飛び出してきた。その兵士は私を見ると、驚いたような顔をして叫んだ。

『てっ敵襲!』

「えぇ!?」

「フェンリルちゃん! それを倒すの!」

 え、だってこれ……皇国兵じゃ……。

 兵士はソードを構えるとこちらに襲いかかってきた。

「うわっ!?」

 すんでのところを左にかわし、武器を持ち直す。

「ちょっと! 攻撃しなさいって!」

「いや、これ人間ですよね!?」

『うぉおぉ!!』

 兵士の雄叫びに驚き、動くのが遅くなってしまった。右肩目掛けて剣が振り下ろされる。動けないまま、固く目を閉じてしまった。

「ストップ!」

 ティールさんが号令をかけると、その兵士はまるで時が止まったかのようにピタリと動きを止めた。

「おいコラテメェ! 何突っ立ってんだよ!!」

 物凄い形相でティールさんがこちらにやってくる。

「死にてぇのかお前は! なんで何もしねぇんだ!」

「ひっ……」

「ちょ、ティール! 言い過ぎよね!」

 見かねたイスさんが止めにかかる。しかし、ティールさんはイスさんの手を振り払う。

「言い過ぎじゃねぇ! これが実際の戦闘ならとっくに死んでるんだぞ!? いくら蘇生が利くからって舐めんじゃねぇ!!」

 ティールさんの言うとおりだ。今のだってティールさんが止めていなければやられていただろう。

「はいはいティール〜そこまで〜」

 エオローさんがティールさんを引っ張っていく。

「チッ……見てられっかこんなもん……。お前らでやっとけ」

 ティールさんはそう言い残すと出て行ってしまった。

「あーあ……全くティールは……」

 そう言うと、イスさんはこちらへ歩いてくる。

「大丈夫?」

「ふぇ……」

「あーあー泣かない泣かない。あいつだって心配して言ってんだからさ」

 イスさんがそばまでやってきて、優しく言う。

「フェンリルちゃんはまだ急には慣れないよね〜。よしよし」

 エオローさんが私の頭を撫でる。

「……っく……」

 エオローさんに撫でられて、自然と涙が出て来る。

「大丈夫だよ。ティールも心配してるのをはっきりいえないだけだから……」

「……そう……かも、ですね……」

「でしょ〜? 夜ご飯の時にはいつも通りになってくれるよ」

「はい……」

 そう言って、私は立ち上がる。

「どうする? いきなり実戦訓練はやめとく?」

「いえ……やらせて下さい……。もう、迷ったりしないように」

「……分かったわ。じゃあアンスール、一度リセットして、もう一回初めからやろう」

「……らじゃー」

 先程から止まっていた兵士が消える。そして、少しして再び兵士が壁から出てくる。

『てっ敵襲!』

 今度こそ、迷わず兵士に剣を突き出した。



「……はいじゃあそこまで〜」

 エオローさんが合図すると、機械の駆動音が消えて、今倒した兵士も消える。

「……はっ……はぁ……」

 武器を持ったまま、膝に手をつく。一時間、動きっぱなしだ。

「うんまぁ、一時間で40じゃ合格だよね」

「そだね〜」

「……次から相手も二人くらいに」

「まぁそれはもうちょい先でいいとして……フェンリルちゃんお疲れ様ー」

「いや……これかなりきつくないですか……?」

「まぁCだからね。出落ちするEみたいにはいかないよ」

 出落ちってなんだ。

 相手も魔法を使ってくる上、こちらの攻撃をかわす場面もあった。

「それはそうと、フェンリルちゃん全然魔法使ってないじゃないかー」

「詠唱したら武器落としちゃいそうだったので……」

「問題!」

「はい!?」

「魔法はどうやって使うでしょう!」

 突然問題を出された。

「え……えっと……その、まず、手を握って、頭の中で詠唱して、手から光が溢れてきたら詠唱は完了で、そのまま手を開けば使えます」

「じゃー光には色がついているが、これは何を表すものでしょう!」

「光の色は、赤、青、黄、オレンジ、白とわかれており、それぞれが火、氷、雷、土、無属性の四つに対応します」

「へーそうなのか……」

「知らないで問題とか言ってたんですか!?」

 イスさんは手をひらひらさせて言う。

「だってー私そういうの専門じゃないしー使えるのっつったら『ヒール』と『シールド』くらいだしー」

「まぁ、イスは前衛タイプだもんね〜。ちなみに、攻撃魔法の種類は球を発射するシンプルな『ボール』タイプ、術者を中心に広範囲に広がる『フィールド』タイプ、それと地面とかにかけた後、任意のタイミングで爆発させられる『トラップ』タイプがあるっていうのは習った〜?」

「あ、はい。火、氷、雷、土属性共通の魔法ですよね」

「そうそう〜。で、無属性にはさっきイスが言った回復魔法の『ヒール』に銃弾、魔法から術者を防ぐ魔法陣を展開させる『シールド』、それから蘇生魔法の『アライブ』。では、他の属性の攻撃魔法にはなく、無属性のみで、唯一の攻撃魔法は〜?」

「えぇ? そんなのあるんですか……?」

「流石に習わないか〜。実はね〜無属性だけ『グングニル』っていう攻撃魔法があるんだよ〜。ちょっと見てみる?」

 そういうエオローさんは楽しそうにロッドを構える。

「じゃ、じゃあお願いします……あ、逃げた方がいいですか?」

「大丈夫〜当てないから」

 そうだろうけど……。

 初めて見るエオローさんの魔法に、緊張気味な状態で待つ。

 エオローさんが自身の身長より大きなロッドを持ち直す。魔導師が使うロッドは基本的に金属製の、シンプルな形状をした国からの支給品だが、エオローさんのように二級魔導師以上の人はそれぞれ自分に合ったロッドを使う。エオローさんは端に青い石がはめ込まれており、綺麗な装飾が施された木製のロッドを使っている。

「じゃ〜いくよ〜」

 エオローさんが手を握り、詠唱を始めるとそれに呼応するようにはめ込まれた青い石が光り出す。

 少しして、白い光が溢れる。詠唱が終わったらしい。

「……はっ!」

 エオローさんが手を上に掲げると、少し前の地面に強烈な光が降り注ぐ。

「……っ!」

 地面が割られる轟音に、思わず耳を塞ぎ、目をつむる。

 暫く砂埃が舞う。光の落下地点は……。

「ありゃ? ちょっと力加減間違っちゃった〜」

「いや、もう二階の床抜けてますよ!? どうするんですかこれ!?」

「大丈夫、今夜には直るよ〜」

 そういう問題だろうか。

「あーあ、エオローそれじゃもう訓練出来ないじゃん。二階から落ちるっていう訓練なら出来るけど」

「どういう訓練ですかそれ……」

「まー穴開いちゃったらしょーがない。基礎訓練に変更しよか」

 それから、腕立てや腹筋背筋と、訓練校での回数の数倍の量をやらされて、お昼頃には体中が悲鳴を上げた。



「……はい、みんな終了〜」

 エオローさんの掛け声でスクワットを止める。

「……も、もういい……」

「んだよーフェンリルちゃん体力ないねー」

「いや、もう訓練校の時の倍以上やってるんですけど」

 膝をついて息を整える。絶対筋肉痛になりそう……。

「……次は?」

「まだやるんですか!?」

「……ん?」

 不思議そうにアンスールさんが首を傾げる。

「まあ、今日は軽めでいいんじゃない? 明日はもう作戦日だし」

「……了解」

「そ、そういえばそうですよね……」

 足引っ張らないようにしないと……。

「失敗してもフォローはするから。そんなに気張んなくていいからね」

 緊張する私の肩をイスさんが叩く。

「ま〜私達についてくれば問題なしだよ〜」

「りょ、了解です」

「じゃあ、一回四諜に戻ろっか。もう少しでお昼だし、シャワーも浴びたいし」

 イスさんが身を翻してドアに向かう。それに続いて訓練棟を後にした。

「そういえば、武器片付けないと……」

 イスさんが振り向く。

「え?」

「え、なんですか?」

「なんで片付けるん?」

「え?」

「基本的に自分の武器は持っとくものよ。いつ敵襲があってもいいように」

 ああ、そうですか……。



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