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NOISE.2  作者: 坂津狂鬼
本編 デート?
7/66

進展

突撃体勢を取ったら、次にやる事なんて決まってる。

俺は茶髪に突進するために大きく一歩踏み出す。

「……は?」

声を出したのは俺じゃない、茶髪の方だ。

まあ、声を出すのも当然だろう。端に追い詰められ、時間にも追い詰められ、大口叩いて、突撃して来た俺が

一歩目で大きく不自然に体勢を崩したんだから。少し重心を前に行かせ過ぎたように。

茶髪は俺の力を知っている。当然、対処法も知っている。だから不意打ちの様に1回だけ力を使ったってすぐに解かれてしまう。

その一瞬の隙で俺が茶髪に触れられるなら良いのだが、残念ながら俺の体はそこまで機敏に動けない。

だから最初にオトアに遭った時同様、力を6回一気に使って相手の動きを丸ごと封じるしかない。

だけど、その作戦も1回を連続でやるだけで、長くは保てない。動かれればすべてが一瞬で消える。相手が俺の力を知らないこそ出来る縫い付けなんだ。

つまり、俺の力が知られてる時点で相手の動きを止める選択肢は全部無効になってしまう。

となると、止めるんじゃなくて方向を変えるしかないわけだ。

6回中の1回を使って、相手の体を真逆に向かせる作戦しか。

一歩目で大きく不自然に前のめりになった俺の体は、二歩目でこれまた大きく踏み出し不自然に体勢を持ち直す。

これで茶髪との距離は充分詰められた。元々そんなに離れてなかったからな。

しかし今の俺の状態、重心が宙にあるから攻撃されてもかわせないし、体勢が崩れまくったから至るところが隙だらけで、まるで全力で殴ってください避けませんからって言ってるみたいだよなー。

茶髪が一歩足を引き、拳を構える。

そうだ、そうです、それでいい。出来るだけ全力で、全体重を掛けて俺を殴ろうとしろ。

………いや、俺はMとかじゃないですよ。出来れば全力で殴るとかは止めて欲しいですよ。かなりぶっ飛ぶと思うから。

ただ、全体重を掛けるって事はそれだけ全身を動かすって事で、俺の力が使えまくれるって事ですよ。

俺は断じてMじゃない、受けじゃない。能力は受動系だけど。

………って、そんな事はどうだっていい!

茶髪は全体重を掛けて俺を殴ろうとする。この状況が作れた。あとは脚色(ゆがめる)だけだ。

それで俺の勝ちは決定する。

引いた足を前に出して、腰を捻り拳を突き出そうとする茶髪。

だけど腰を捻ったその時、何かに回されたように不自然に後ろを向いてしまう。

これで茶髪の背中は見えた。距離も詰められてる。あとは手を伸ばして触れれば俺の勝ち。

俺の力を使われた事を理解して、瞬時に拳じゃなくて肘打ちに変えて攻撃しようとする茶髪も一瞬ならあと5回止められる。

しかし俺の体は、茶髪に全力で殴ってもらうために体勢を大きく崩しまくったせいで、バランスを保とうとする手を伸ばすのはとてもじゃないが、無理……と言いたくても、すでに俺の手は不自然に茶髪の背中に伸びてるんだけど。

その後、茶髪の背中を押すような形になって、地面に倒した後に俺が三途の川辺りまでボコボコに殴り飛ばされたのは言うまでも無い。



「死ぬわっ!」

シキの炎で蘇生(?)した後の俺の一言である。

「いや、お前がアタシの手を止めるから顔面がモロに地面にブチ当たっただろ? それで鼻を打った。アタシはとても痛い。その苦痛をお前にも味あわせてやっているだけだ」

「鼻打った程度で、地獄の底と天国の門を見たのかお前は!?」

「多分そうじゃないか? さあ、次こそは綺麗なお花畑をお前に見せてやろう」

「亜実、そろそろ止めにしてくれ。これでも小月はアタシの大切なペットなんだ」

「なら止めるとするか」

「ちょっと待てや馬鹿力コンビ」

誰がペットだ。っていうかペットだったら殴るの止めるのか。茶髪はどういう思考回路の持ち主だよ。

しかし、シキが助け舟を出してくれなければ今頃俺は死後硬直を始めていただろう。よかった、俺まだ生きてる。

「それじゃ次はシキだな」

「おい茶髪。俺の能力うんぬんはどうした? ありゃ出任せだったのか?」

出任せ、という事はないだろう。心肺が行動の範疇に含まれれば、どんな相手にも一瞬しか効果が無い。

でもオトアにはしっかりと効いていた。それとも、効いたように俺もオトアも勘違いをしていただけか?

「あぁ、その話だがな―――――」

茶髪が真相を語ろうと……ってそこまで大袈裟なことじゃないけど……真相を語ろうとした時、携帯の着信音が鳴った。

俺のではない。学校に来るときはマナーモードにしているから。

シキは持ってるかどうか分からないが、多分違う。

となると、茶髪のか?

学校に来るってのに、というか今日だって授業があるはずなのに、マナーモードにしないなんて……少し非常識だろ。

「あー、はいはい。アタシだけど」

女子用制服のスカートから携帯を取り出し、茶髪は電話に出る。

っていうかスカートにポケットとかあるのか? 男だから知らんけど。

茶髪は電話の応答中に「は? 何言ってる?」「ボケが!」「今すぐそっちに行く」と多分何かトラブルが起こったんだろうなーっと思わせる事を言っていた。出来れば俺は無関係でありますように。

電話を切った茶髪は俺の方を向き、一言。

「大変な事態になった」

聴きたくないです。知りたくないです。俺は無関係だ。何もしていない。

「死者が電話を掛けてきたそうだ。状況が進展するぞ」

「死者? 使者? 四者?」

俺はどのシシャか茶髪にふざけて問いかける。

だって話をまともに訊く気なんてさらさら無いし、そもそも死者なのかそれとも使者なのか分からなかったもの。ややこしいよね同じ読みの漢字って。

まあ、最後のは完全にふざけて言ったけど。

そんな俺に対し、茶髪はまた一言。

「張空陽介が、電話を掛けてきたそうだ」

さぁて、今回もタイトルとは違って何も進展なんかしませんでしたねぇ。

どうしましょうか?

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